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「エアコンをつけて」と言っても、親が「大丈夫」と取り合ってくれない。離れて暮らしていると、家の中の暑さまでは見えず、心配だけが募ります。
結論から言うと、高齢者の熱中症の多くは、外出中ではなく自宅の中で起きています。暑さを感じにくくなるという年齢による変化が背景にあり、これは気合いや慣れの問題ではありません。
この記事では、室温と湿度の目安、親がエアコンを使いたがらない理由への対処、離れて暮らす家族にできることを順にまとめました。読み終えたときには、電話で何を確認すればよいかがはっきりする内容です。
この記事でわかること
- 高齢者が熱中症になりやすい理由と、家の中で起きる割合
- 室温・湿度の目安(何度・何%にすればよいか)
- 「エアコンをつけてくれない」への対処4パターン
- 離れて暮らす家族が今日からできること
- 危ないサインと、そのときすぐにやること
まずは30秒|親の家はどの状態か
該当するものが多いほど、対策の優先度が高くなります。
| 状況 | 確認すること |
|---|---|
| 「もったいないから」とエアコンを使いたがらない | この記事の「対処4パターン」を確認 |
| 日中、家に一人でいる時間が長い | 室温計を置けているか確認 |
| 最近、食欲や水分の摂り方が落ちている | 「水分と塩分の取り方」を確認 |
| 2階や西向きの部屋で寝ている | 「夜間・就寝中」の項目を確認 |
| 頻繁に電話で様子を確認できない | 「離れて暮らす家族ができること」を確認 |
なぜ高齢者は熱中症になりやすいのか
加齢にともなう体の変化が、複数重なって起こります。環境省の熱中症予防情報サイトでも、高齢者は特に注意が必要な層として挙げられています。
暑さを感じにくくなる
加齢により、暑さやのどの渇きを感じるセンサーの働きが鈍くなるとされています。本人が「暑い」と感じていなくても、体の中では熱がこもっていることがあります。本人の申告だけをあてにできないのは、このためです。
のどの渇きを自覚しにくい
喉の渇きを感じる前に、体はすでに水分不足の状態に入っていることがあります。「まだ大丈夫」という本人の感覚をあてにするのは危険です。体の実際の状態とはずれが生じやすくなります。
体にためられる水分が少ない
加齢により体内の水分量そのものが少なくなる傾向があるとされ、同じ汗のかき方でも若い頃より脱水に近づきやすくなります。加齢に伴って腎機能が低下することで水分や塩分の調整力も落ちていくとされ、暑さへの抵抗力は複数の要因が重なって下がっていきます。
これらはどれも珍しいことではなく、誰にでも起こりうる自然な変化です。本人の意志や我慢強さとは関係のないところで、体の反応が変わっているととらえるほうが、対策を考えやすくなります。
熱中症の多くは家の中で起きている
高齢者の熱中症は、屋外の炎天下よりも、自宅の室内で発生する割合が高いことが知られています。詳しくは厚生労働省の熱中症関連情報にまとめられています。
窓を開けているから、風通しがよいから、という理由でエアコンを使わずに過ごす方は少なくありません。しかし風だけでは、湿度が高い日の熱はこもったままになります。「外は暑いが家の中は平気」という思い込みが、対策を遅らせる原因になります。
室温と湿度の目安|何度にすればよいか
感覚だけに頼らず、数字で確認できるようにしておくと安心です。
室温28度以下・湿度60%程度が目安
一般に、室温28度以下、湿度60%程度がエアコンを使う際の目安として案内されています。この数値は誰にでも一律にあてはまる基準ではなく、体調や服装、その日の暑さ指数もあわせて確認するための目安として捉えてください。
温度計はどこに置くか
エアコンの設定温度と、部屋の実際の室温は一致しないことがあります。設定を28度にしていても、日当たりや窓の位置によって実際の室温はもっと高いことがあります。エアコンのリモコンではなく、部屋に温度計を置いて確認するのが確実です。
エアコン以外でできる室温対策
エアコンだけに頼らなくても、室温の上がり方をゆるやかにする工夫はあります。使いたがらない親にも、エアコンの前段階として提案しやすい方法です。
日中の熱の入り方を減らす
すだれや遮熱カーテンで、窓から入る日差しを遮るだけでも、室温の上がり方はゆるやかになります。とくに西日が入る部屋は、午後になるほど室温が上がりやすいため、優先して対策しておきたい場所です。
換気のタイミングを選ぶ
「風を通したほうが涼しい」という感覚は、必ずしも正しいとは限りません。外気温が室温より高い日中は、窓を開けるとかえって暑い空気が入り込みます。換気は、外気温が下がる早朝や夜間に短時間で済ませるほうが効果的です。
打ち水や緑のカーテン
ベランダや玄関先への打ち水、朝顔やゴーヤなどを使った緑のカーテンも、直射日光を和らげる方法として知られています。すぐに効果が出るものではありませんが、エアコンの設定温度を下げすぎずに済むという点で、あわせて取り入れる価値があります。
これらはあくまで室温の上がり方をゆるやかにする補助的な方法です。室温が28度を超えている場合は、エアコンによる対策を優先してください。
「エアコンをつけてくれない」への対処 4パターン
ここは、家族が特に悩みやすいポイントです。理由がわかれば、伝え方も変えられます。
①「もったいない」と言われたら
電気代を気にしている場合は、「熱中症で入院するほうが、よほど負担が大きい」という具体的な話のほうが響くことがあります。高齢者だから一律に安くなる料金プランがあるわけではありませんが、契約プランの見直しで負担を抑えられる場合もあるので、一緒に確認してみるのも一つの方法です。
②「体に悪い」と言われたら
エアコンの風が体に悪いと感じている場合は、風が直接体に当たらない向きに調整する、あるいはサーキュレーターを併用して空気を循環させる方法があります。「涼しくする」のではなく「空気を動かす」という説明のほうが受け入れられることがあります。
③「今まで大丈夫だった」と言われたら
「今まで平気だった」は、次も平気であることを保証しません
体の暑さへの感じ方は、年齢とともに少しずつ変わっていきます。去年までの体感と今年の体感が同じとは限らないことを、責めるのではなく事実として伝えるほうが伝わりやすくなります。
④ 操作が分からない場合
リモコンのボタンが多すぎて操作が分からず、結果的に使わなくなっているケースもあります。よく使うボタンに印を付けるなど、誤操作しにくい状態にしておくという工夫で解決することもあります。
離れて暮らす家族ができること
毎日会いに行くのは難しくても、できることはあります。
- 電話やメッセージで、その日の室温を聞く習慣をつくる。数字で確認すると感覚のずれに気づきやすくなります
- 帰省したときに、温度計をリビングと寝室の両方に置く
- エアコンの設定を、消しにくい・分かりやすい状態にしておく
- 心配な場合は、見守りサービスの活用も選択肢になります
一人暮らしで様子が分かりにくい場合は、見守りサービスの比較もあわせてご覧ください。
敬老の日や誕生日に、暑さ対策になるものを贈るという形で気にかけていることを伝える方法もあります。選び方は70代の親へのプレゼント選びにまとめています。
水分と塩分の取り方
のどが渇いてから飲むのでは遅いことがあります。時間を決めて、こまめに摂るほうが確実です。
| タイミング | 目安 |
|---|---|
| 起床後・食事の前後 | コップ1杯(150〜200ml程度) |
| 日中(2〜3時間おき) | 少量ずつ、こまめに |
| 汗を多くかいたとき | 水分だけでなく塩分も一緒に |
※持病があり水分摂取に制限がある場合は、かかりつけ医の指示を優先してください。この記事の目安より、医師の指示が常に優先されます。
普段は水やお茶などでこまめに水分を補給し、大量に汗をかいたときは塩分も適切に補給します。熱中症が疑われる場合は経口補水液も選択肢になりますが、持病がある場合は摂取量についてかかりつけ医に確認してください。ジュースなど糖分の多い飲み物は、水分補給の目的では優先度を下げて考えてください。
危ないサインと、すぐにやること
ここは特に注意して確認してください。
こんな様子があれば、すぐに対応してください
- 呼びかけへの反応がおかしい・意識がはっきりしない
- 自分で水を飲めない
- めまい、筋肉のけいれん、ぐったりしている
- 顔色が悪い、汗のかき方が急に変わった
意識がはっきりしない場合、自分で水が飲めない場合は、様子を見ずにすぐに救急車を呼んでください。涼しい場所に移動させ、衣服を緩め、可能であれば首や脇の下を冷やしながら到着を待ちます。
意識ははっきりしているが心配な場合は、涼しい場所で休ませ、水分と塩分を摂らせたうえで様子を見て、改善しなければ医療機関に相談してください。詳しい対応の手順は環境省の熱中症環境保健マニュアルにまとめられています。
救急車を呼ぶ場合は、「熱中症の疑いがある」ことをまず伝えてください。年齢、いつからその様子か、持病や服薬の有無を聞かれることが多いため、分かる範囲で答えられるよう落ち着いて準備しておくと、到着後の対応がスムーズになります。かかりつけの病院名や、お薬手帳の保管場所を日頃から家族間で共有しておくことも、いざというときの助けになります。
夜間・就寝中に気をつけること
熱中症は日中だけでなく、寝ている間にも起こります。就寝中はエアコンを消してしまう習慣がある場合、注意が必要です。
タイマーで切るのではなく、朝まで稼働させたままにするほうが安全とされています。エアコンの設定温度ではなく、温湿度計を確認しながら、実際の室温が28度以下になるよう調整します。窓を少し開けて風の通り道をつくる場合も、室温計での確認は続けてください。
室温が高い場合、扇風機だけでは十分な熱中症対策にならないため、エアコンのある部屋へ移動することを優先します。やむを得ず寝室にエアコンが無く扇風機だけで過ごす場合は、枕元ではなく壁に向けて風を送り、室内の空気を循環させる使い方のほうが体を冷やしすぎずに済みます。就寝前にコップ1杯の水を飲んでおく習慣も、あわせて取り入れやすい対策です。
ケース別|こんなときどうする
同居しているが、日中は仕事で家にいない場合
朝、出かける前にエアコンをつけたままにするか迷う方は多いはずです。電気代より、日中の室温が上がりきった状態で帰宅後に対応するほうが負担は大きくなります。タイマーで切るのではなく、一日中稼働させたままにし、設定温度ではなく温湿度計の実測値を見ながら室温28度以下を保つほうが、結果的に無理のない使い方になります。
近くに住んでいて、頻繁には会えない場合
週に1回程度の訪問でも、室温計の数字を見せてもらうことが、状況を把握する手がかりになります。訪問時に温度計の電池が切れていないか、見やすい場所に置かれているかも確認してください。
遠方で、年に数回しか会えない場合
帰省のタイミングで、エアコンの操作を分かりやすくしておくことが最も効果的です。リモコンに「室温28度を超えたら冷房」「暑い日は冷房を消さない」と書いた付箋を貼っておくなど、離れていても迷わない工夫を残しておきます。電話やビデオ通話で室温を確認する頻度を、あらかじめ決めておくのもよい方法です。
デイサービスや訪問介護を利用している場合
ケアマネジャーや訪問スタッフに、自宅での室温管理について気になっていることを伝えておくと、日々の様子を共有してもらいやすくなります。家族だけで抱え込まず、関わる人に相談先を広げておくことも一つの対策です。
よくある質問
Q. エアコンが苦手な親には、扇風機だけで十分ですか?
湿度が高い日は、扇風機の風だけでは体の熱を十分に逃がせないことがあります。室温が高い場合はエアコンとの併用が望ましいとされています。
Q. 室温計はどんなものを選べばよいですか?
数字が大きく表示される、湿度も同時に分かるタイプが確認しやすくおすすめです。特別な機能は必要なく、リビングと寝室に1つずつあれば十分です。
Q. 電気代が気になる親には、どんな対策がありますか?
高齢者だから一律に電気料金が安くなる制度があるわけではありません。契約プランの見直しや、自治体・電力会社の支援策がないか確認してみましょう。電力会社によっては、電力使用量をもとにした見守りサービスを提供している場合もあります。
Q. 熱中症になりやすい時間帯はありますか?
気温が上がる日中はもちろん、室内に熱がこもった状態が続く夕方から夜にかけても注意が必要とされています。
Q. 認知症がある場合、特に気をつけることはありますか?
暑さや水分不足を自分で訴えられないことがあるため、周囲が室温と水分摂取をこまめに確認する必要があります。詳しくはかかりつけ医や地域包括支援センターに相談してください。
Q. 一人暮らしの親が心配です。何から始めればよいですか?
まずは室温計を置き、電話で室温を確認する習慣をつくることから始められます。頻繁に確認できない場合は、見守りサービスの利用も選択肢になります。
まとめ
- 高齢者の熱中症は屋外より自宅の中で多く起きている
- 暑さを感じにくくなるのは加齢による変化であり、本人の申告だけをあてにしない
- 室温28度以下・湿度60%程度が目安。温度計で数字を確認する
- 「エアコンをつけてくれない」場合は、理由に合わせて伝え方を変える
- 水分と塩分は、のどが渇く前に時間を決めて摂る
- 意識がはっきりしない・自分で水が飲めない場合は、すぐに救急車を呼ぶ
離れて暮らしていると、室温までは目で見て確認できません。まずは電話で「今、部屋は何度?」と聞くことから始めてみてください。
※本記事は一般的な熱中症対策をまとめたものです。持病がある場合や体調に不安がある場合は、かかりつけ医にご相談ください。緊急の場合はためらわず救急車を呼んでください。
※室温・湿度の数値や制度の内容は変更される場合があります。最新の情報は環境省・厚生労働省の公式サイトでご確認ください。(2026年8月時点の情報です)























