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テレビの音量が、去年より明らかに上がっている。同じことを二度、三度と聞き返される。後ろから呼びかけても振り向かない。——親のそうした変化に気づいたとき、「耳が遠くなっただけ」という考えと、「もしかして認知症の始まりでは」という不安が、同時に浮かぶ方は少なくありません。
結論から申し上げます。聞こえにくさそのものは、認知症の症状ではありません。加齢で耳の機能が落ちることと、認知症が始まることは、別の現象です。聞き返しが増えたからといって、認知症を心配する必要は直ちにはありません。
ただし、次の2点だけは押さえておく必要があります。ひとつは、聞こえにくさを放置した状態が続くと、認知症の危険因子になると国際的に指摘されていること。もうひとつは、「聞こえにくい」の中に、治療で治るものが混ざっていることです。この2つを知らないまま「年のせい」で片づけてしまうことが、いちばん避けたい進み方になります。
この記事でわかること
- 加齢性難聴で「音は聞こえるのに、ことばが分からない」が起きる理由
- 聞こえにくさと認知症をつなぐ3つの経路と、混同してはいけない境界線
- 家庭でできるセルフチェック18項目と、受診すべき目安
- すぐに受診したほうがよい聞こえ方——加齢性難聴では説明できないサイン
- 補聴器相談医・身体障害者手帳・医療費控除など、使える制度と相談窓口
まずは30秒|親の様子から見当をつける
ひとくちに「聞こえにくい」といっても、原因はひとつではありません。当てはまる行だけ読んでも、次に何をすべきかは判断できます。
| 親の様子 | 考えられること | 最初にすること |
|---|---|---|
| 聞き返しが増えたが、正面から話せば通じる | 加齢性難聴 | 耳鼻咽喉科で聴力検査 |
| 数日〜数週間で急に聞こえなくなった | 治療が必要な難聴 | できるだけ早く耳鼻咽喉科へ |
| 片方の耳だけ聞こえにくい | 加齢だけでは説明しにくい | 耳鼻咽喉科で原因の確認を |
| 耳がつまる・こもる感じがある | 耳あかのつまり、中耳の病気 | 耳鼻咽喉科へ(自分で取らない) |
| 音は聞こえるが、ことばが聞き取れない | 加齢性難聴の典型 | 聴力検査+ことばの聞き取りの検査 |
| 耳鳴りが続いている | 難聴を伴っていることが多い | 耳鼻咽喉科で聴力を測る |
| 聞こえに加えて、日付や場所があいまい/同じ話を繰り返す | 聞こえとは別の評価が必要 | かかりつけ医か地域包括支援センター |
迷ったら、順番は「耳鼻咽喉科が先」です
認知症が心配で物忘れ外来を先に予約する方がいますが、聞こえていない状態で認知機能の検査を受けると、実際より低い結果が出ることがあります。質問が聞き取れなければ、答えられないのは当然だからです。聞こえを整えてから認知機能を診てもらうほうが、正確な評価につながります。
加齢性難聴とは何か
加齢性難聴は、年齢とともに耳の聞こえが少しずつ落ちていく現象です。病気というより、白髪や老眼と同じ老化の一種と考えられています。個人差は大きいものの、多くの方が60代から70代にかけて自覚し始めます。
高い音から、少しずつ失われていく
加齢性難聴の特徴は、高い音から先に聞こえにくくなることです。内耳にある有毛細胞という音を感じ取る細胞のうち、高い音を担当する部分から傷んでいくためです。
そして、この変化は非常にゆっくり進みます。1年単位ではほとんど変化を感じないため、本人に自覚が生まれにくいという厄介さがあります。気づくのは、たいてい周囲の家族のほうが先です。
「音は聞こえるのに、ことばが分からない」の正体
加齢性難聴の方がいちばん困るのは、音量ではなくことばの聞き分けです。「聞こえないわけじゃない。何を言っているのか分からないんだ」という訴えは、加齢性難聴では典型的なものです。
理由は、日本語の子音の多くが高い音の成分でできているからです。母音(あ・い・う・え・お)は低い音の成分が中心なので比較的よく届きますが、サ行・カ行・タ行・ハ行といった子音は高い音の成分に支えられており、先に聞き取れなくなります。
子音が抜けると、こう聞こえます
「しちじ(7時)」 → 「いちじ(1時)」
「さとうさん(佐藤さん)」 → 「かとうさん(加藤さん)」
「ひゃく(100)」 → 「やく(約)」
声は届いている。だから本人は「聞こえた」と思って返事をします。その返事が的外れになるため、家族の側は「話がかみ合わない」と感じます。これを認知症の兆候と受け取ってしまうことが、非常に多いのです。
難聴には3つの種類がある
「聞こえにくい」は原因によって3つに分かれます。どれに当たるかで、その後の対応がまったく変わります。
| 種類 | どこに原因があるか | 治療で改善するか |
|---|---|---|
| 伝音難聴 | 外耳や中耳。耳あかのつまり、中耳炎、鼓膜の異常など | 治療で改善することが多い |
| 感音難聴 | 内耳や聴神経。加齢性難聴はここ | 元に戻すことは難しく、補聴器などで補う |
| 混合性難聴 | 上の両方が重なっている | 治せる部分だけ治療し、残りを補う |
ここが重要な点です。高齢の方の聞こえにくさには、伝音難聴が混ざっていることが珍しくありません。とくに耳あかが外耳道をふさいでいるだけ、というケースは実際にあります。耳あかがたまって耳をふさいだ状態は、取り除くだけで聞こえが戻ります。これを「年のせい」と決めつけて放置するのは、あまりにもったいない話です。
聞こえの程度は「デシベル」で表す
耳鼻咽喉科では聴力をデシベル(dB)という単位で測ります。数字が大きいほど、大きな音でないと聞こえないという意味です。日本聴覚医学会の分類では、おおむね次のように区分されています。
| 程度 | 聴力レベル | 日常での現れ方 |
|---|---|---|
| 軽度 | 25〜40dB未満 | 小さな声や騒がしい場所での会話が聞き取りにくい |
| 中等度 | 40〜70dB未満 | 普通の大きさの会話が聞き取りにくい。補聴器を検討する段階 |
| 高度 | 70〜90dB未満 | 大きな声でないと聞こえない。身体障害者手帳の対象になりうる |
| 重度 | 90dB以上 | 耳元で叫んでも聞き取りにくい |
日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会は、補聴器を使い始める目安について「日常の会話で聞き取りにくいことが多くなったと感じたり、重要な会話が正しく聞けないと感じたら検討を」としています(補聴器のやさしい解説)。何デシベルになったら、という一律の線引きはありません。どんな生活を送っているかによって、必要になる時期は変わります。
聞こえにくさと認知症は、どうつながっているのか
難聴が認知症の話題と並べて語られるようになったのは、ここ10年ほどのことです。医学誌『ランセット』の国際委員会が、認知症の危険因子のうち生活習慣などで対処しうるものの一覧に「難聴」を挙げ、その中でも寄与の大きい項目のひとつとして報告したことが、大きなきっかけになりました。
ここで、言葉の意味を正確にしておきます。「危険因子」であることと、「難聴が認知症を引き起こす」ことは同じではありません。関連が繰り返し観察されている、という段階です。そして「補聴器を使えば認知症を防げる」と証明されたわけでもありません。そこまで踏み込んだ説明を見かけたら、いったん疑ってかかったほうが安全です。
そのうえで、なぜ関連があると考えられているのか。研究で説明として挙げられているのは、主に次の3つの経路です。
経路① 脳に届く音の情報が減る
耳から入る音は、脳にとっての情報です。聞こえにくい状態が長く続くと、音を処理する脳の領域に届く刺激が慢性的に減ります。使われない機能が衰えていくことは、体の他の部分と同じです。
経路② 会話がおっくうになり、人と会わなくなる
これが、家族から見ていちばん分かりやすい経路です。聞き取れないと会話が苦痛になります。何度も聞き返すのは気が引ける。適当に相槌を打つ。やがて集まりに行かなくなり、電話にも出なくなる。
社会的な孤立と、会話の機会の減少そのものが、認知機能に影響すると考えられています。聞こえの問題は、耳だけの問題として完結しません。外出が減れば足腰も落ち、食事も簡単なもので済ませるようになります。高齢者の低栄養が始まる入口にもなりうる、という点は覚えておいてよいところです。
経路③ 聞き取ることに、脳の力を使ってしまう
聞こえにくい状態で会話をすると、断片的に届いた音から内容を推測する作業が必要になります。この「推測する」に脳の力が割かれるため、話の内容を覚えておく余力が減ります。
会話のあとで「さっき何の話だったか思い出せない」となれば、家族には物忘れに見えます。しかし実際には、記憶する以前に聞き取りへ資源を使い切っていた、ということが起こりえます。
「聞こえにくい」と「認知症」はこう見分ける
両者は重なることもありますが、家庭で観察できる違いははっきりしています。
| 場面 | 聞こえにくさが原因のとき | 別の評価が必要なとき |
|---|---|---|
| 静かな場所での会話 | 通じる。騒がしい場所でだけ困る | 静かでも話がかみ合わない |
| 紙に書いて見せる | 正しく答えられる | 書いても内容が入っていかない |
| 話題の流れ | 話題そのものは理解している | 話題が変わったことに気づかない |
| 日付・場所 | 正しく答えられる | あいまいになる、間違える |
| 本人の自覚 | 「聞こえにくい」と困っている | 困っていること自体を認識しにくい |
| 同じ話 | 聞き返しは多いが、繰り返し話すことはない | 同じ話を短い間隔で繰り返す |
いちばん簡単な切り分けは「紙に書くこと」です
会話がかみ合わないと感じたとき、同じ内容を大きめの字で紙に書いて見せてみてください。すらすら答えが返ってくるなら、問題は理解力ではなく届き方にあります。この確認は道具も費用もいらず、その場でできます。
家庭でできるセルフチェック
受診の判断材料になるチェックリストです。本人が答えるものと家族が観察するものに分けてあります。両方を見ると精度が上がります。
本人が答える10項目
- 会話の中で、聞き返すことが増えた
- 音は聞こえるのに、何と言ったか分からないことがある
- 大勢が集まる場所での会話が、特につらい
- 電話の声が聞き取りにくい
- テレビの音量が、家族には大きいと言われる
- 後ろから呼ばれても気づかないことがある
- 高い音(電子音、体温計、電子レンジ)が聞こえにくい
- 耳鳴りがある
- 聞き間違いから、話がかみ合わなくなることがある
- 会話に加わるのが、以前よりおっくうになった
家族が観察する8項目
- テレビの音量が、以前より明らかに上がった
- 聞き返しが減って、代わりに相槌だけになった(あきらめのサイン)
- 返事が的外れなことがある
- 電話に出たがらない、こちらからかけてこなくなった
- 集まりや外出を断るようになった
- 話しかけると、こちらの口元をじっと見る
- 玄関のチャイムやインターホンに気づかない
- 怒りっぽくなった、話しかけると不機嫌になる
何個当てはまったら受診するか
目安として、どちらかのリストで3項目以上に当てはまるなら、一度聴力を測っておく段階と考えてください。難聴の程度を数字で把握しておくこと自体に意味があります。次に測ったときと比べられるからです。
ただし個数に関係なく、「急に聞こえなくなった」「片耳だけ聞こえにくい」「耳に痛みや耳だれがある」「めまいを伴う」場合は、個数を数える前に受診してください。これらは加齢性難聴では説明しにくい現れ方で、治療の開始が早いほどよい病気が隠れていることがあります。
家庭でできる簡易テスト
親の耳から30センチほど離れたところで、親指と人差し指をこすり合わせて「シャッ」という音を出します。左右それぞれで、聞こえるかを確認してください。左右で差がある場合は、その差自体が受診の理由になります。ただしこれはあくまで気づきのきっかけであり、検査の代わりにはなりません。
やってしまいがちな3つのこと
✕ 大きな声で話す ○ 低い声で、ゆっくり、正面から
聞こえにくいと分かると、多くの家族は声を張り上げます。しかしこれは逆効果になりがちです。大きな声は自然と高い音になり、加齢性難聴でいちばん届きにくい帯域に寄ってしまうからです。声を張ることで音が割れ、かえって聞き取りにくくなることもあります。
正しい方向は、音量ではなく伝わり方を変えることです。少し低めの声で、いつもよりゆっくり、正面から顔を見せて話す。テレビを消し、換気扇を止める。文の切れ目で一拍置く。これだけで通じ方はかなり変わります。そして怒鳴られていると感じさせないことは、会話を続けてもらううえで想像以上に大切です。
✕ 耳あかを綿棒で取る ○ 耳鼻咽喉科で取ってもらう
聞こえが悪いと聞くと、家族が綿棒や耳かきで耳あかを取ろうとすることがあります。これは耳あかを奥へ押し込む結果になりやすく、外耳道や鼓膜を傷つける危険もあります。高齢になると耳あかが乾いて固まりやすく、自力では取れないことも増えます。耳鼻咽喉科では専用の器具と顕微鏡で安全に除去でき、その場で聞こえが戻ることもあります。
✕ 通販の集音器をいきなり買う ○ まず難聴の種類を診断してもらう
「補聴器は高い」と聞いて、先に安価な集音器を試そうとする流れはよくあります。しかし順番が逆です。まだ何が原因で聞こえにくいのかが分かっていない段階だからです。
日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会は、「自分自身や家族の判断で補聴器が必要か、効果があるかを正しく決めることはできません」と明記しています(補聴器のやさしい解説)。伝音難聴なら治療で戻るかもしれず、感音難聴なら調整された機器が要る。その切り分けは検査をしないと分かりません。
ついでに、補聴器と集音器の違いにも触れておきます。補聴器は薬機法上の管理医療機器であり、集音器は医療機器ではありません。この一点が、両者を分ける決定的な差です。
補聴器は「その人の聞こえに合わせて調整する」ことを前提に作られた機器です。学会も「微細な調整は素人やコンピュータではできません」として、医師の方針と、言語聴覚士や補聴器技能者の技術が必要だと説明しています。
一方の集音器は、周囲の音をまとめて大きくする機器です。ここに落とし穴があります。加齢性難聴で落ちているのは高い音だけなのに、集音器ではすでにちゃんと聞こえている低い音まで一緒に大きくなります。その結果、「うるさいだけで、肝心のことばは相変わらず聞き取れない」という状態が起こりえます。買ったのに使わなくなる理由の多くは、ここにあります。
集音器そのものに意味がないわけではありません。ただ、検査を受けて感音難聴だと分かったうえで選ぶのと、原因が分からないまま買うのとでは、結果がまったく違います。やはり順番の問題です。
耳鼻咽喉科では何をするのか
受診をためらう理由の多くは「何をされるか分からない」ことです。実際の流れは単純です。
受診の流れ
| 手順 | 内容 |
|---|---|
| 1. 問診 | いつから、どんな場面で困るか。家族が同席して具体例を伝えると精度が上がります |
| 2. 耳の診察 | 鼓膜や外耳道を見ます。耳あかがたまっていればここで除去 |
| 3. 聴力検査 | 防音室でヘッドホンを着け、音が聞こえたらボタンを押す検査。痛みはありません |
| 4. ことばの検査 | 単語や音を聞き取れるかを調べます。補聴器の効果を予測する材料になります |
| 5. 説明 | 難聴の種類と程度、治療が可能か、補聴器が必要かの判断 |
費用の目安
初診料と聴力検査を合わせて、健康保険の3割負担でおおむね1,000〜3,000円程度が目安です。検査の種類や医療機関によって変わりますし、追加の検査があれば増えます。高額な検査ではありません。「調べるだけでお金がかかる」と思って先延ばしにするほどの金額ではない、という点は伝えておく価値があります。
「補聴器相談医」という資格
耳鼻咽喉科の中でも、日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会が委嘱している補聴器相談医という資格があります。学会の説明によれば、補聴器相談医は耳の状態を診察して難聴の種類を診断し、治せる難聴には治療を行い、治せない難聴には本当に補聴器が必要かを判断する役割を担っています(補聴器相談医とは?)。
補聴器を検討する可能性が少しでもあるなら、最初から補聴器相談医のいる医療機関を選んでおくと、あとの手続きがそのままつながります。後述する医療費控除にも、この資格が関わってきます。近くの医療機関は学会の耳鼻咽喉科専門医の検索ページから探せます。
よくある失敗 3つ
1. 「年のせい」で片づけて、5年放置する
加齢性難聴の進み方はゆるやかなので、放置しても悪化を実感しにくいという特徴があります。しかし会話を避ける習慣は、その5年でしっかり定着します。いざ補聴器を勧めても、本人が「今さら必要ない」と受け付けなくなります。早く動くことの価値は、機器そのものより「本人が受け入れられるうちに始める」点にあります。
2. 家族だけで決めて、本人不在で機器を買う
よかれと思って家族が調べ、購入し、渡す。この形で買われた機器は、引き出しにしまわれる確率が非常に高いです。聞こえの機器は本人が使う気にならなければ意味がありません。検査に同席し、説明を一緒に聞き、本人に決めてもらう順番を守ってください。
3. 大きな声で話し続けて、会話そのものが減る
怒鳴るように話されることが続くと、本人は「責められている」と感じます。結果として口数が減り、家族の側も「話しても通じない」と話しかけなくなる。聞こえの問題が、そのまま会話量の減少に直結してしまいます。音量ではなく、静かな環境と低めの声、正面から、という形に変えてください。
関連する制度・窓口
聞こえの問題には、使える公的な仕組みがいくつかあります。ここでは全体像を示します。
身体障害者手帳(聴覚障害)
難聴の程度が一定の基準を超えると、身体障害者手帳の対象になります。学会も「難聴が重く身体障害者に認定されれば、聴力に見合う補聴器を購入する際に、一定額の費用が支給されます」と説明しています。
ただし正直に書いておくと、加齢性難聴だけで手帳の基準に達する方は多くありません。基準はおおむね高度以上の難聴が対象で、日常会話に困る程度では届かないことがあります。該当するかどうかは指定医の判定によりますので、まず聴力検査を受けたうえで、市区町村の障害福祉担当窓口に相談してください。
自治体独自の補聴器購入助成
手帳に該当しない方向けに、市区町村が独自に補聴器の購入費を助成している場合があります。年齢・所得・医師の意見書などの条件は自治体ごとに違い、実施していない自治体もあります。「隣の市ではこうだった」が通用しない領域です。お住まいの市区町村の高齢福祉課に確認してください。
医療費控除
一定の手順を踏めば、補聴器の購入費が医療費控除の対象になります。学会が示している手順は次のとおりです(補聴器購入者が医療費控除を受けるために)。
医療費控除を受けるための手順
- 補聴器相談医のいる耳鼻咽喉科を受診し、必要な問診・検査を受ける。必要と認められれば「補聴器適合に関する診療情報提供書(2018)」を作成してもらう
- その書類を持って認定補聴器専門店へ行き、購入時に書類の写しと領収書を受け取る
- 確定申告の際に医療費控除として申告する(書類と領収書は保管しておく)
注意すべき点があります。認定補聴器専門店もしくは認定補聴器技能者以外から購入した場合には、医療費控除を受けることができません。順番も重要で、先に購入してしまうと書類が後追いになります。受診が先、購入が後です。
地域包括支援センター
「どこに相談すればいいか分からない」段階では、市区町村が設置している地域包括支援センターが入口になります。要介護認定を受けていなくても無料で相談でき、離れて暮らす家族が、親の住む地域のセンターに電話して相談することもできます。自治体の助成制度の有無も、ここで確認できます。
| 知りたいこと | 相談先 |
|---|---|
| 難聴の種類と程度 | 耳鼻咽喉科(できれば補聴器相談医) |
| 手帳に該当するか | 市区町村の障害福祉担当窓口 |
| 自治体の購入助成があるか | 市区町村の高齢福祉課 |
| 医療費控除の手続き | 税務署/確定申告 |
| 何から始めればいいか分からない | 地域包括支援センター(無料) |
よくある質問
Q. 聞こえにくいだけで、認知症を心配する必要はありますか
聞こえにくさ自体は認知症の症状ではありません。ただし放置した状態が続くことは危険因子として指摘されています。心配するより、聴力を測って現状を数字で把握しておくほうが建設的です。
Q. 補聴器を使えば認知症を予防できますか
予防できると証明されたわけではありません。研究は進んでいますが、断定できる段階ではないというのが現在の位置づけです。そう言い切っている広告を見かけたら、内容を慎重に確かめてください。補聴器の目的は、まず会話ができるようになることです。
Q. 親が受診を嫌がります
「補聴器をつけろと言われる」と身構えている場合が多いので、「まず耳あかを見てもらうだけ」「検査は痛くないし、3割負担で数千円」という切り出し方が通りやすくなります。健康診断のついで、という形も現実的です。切り出し方そのものに困っている場合は、親が終活をしない理由と切り出し方の考え方が応用できます。
Q. 加齢性難聴は治りますか
加齢性難聴は感音難聴なので、元の聞こえに戻す治療は現在のところありません。ただし耳あかや中耳の病気が重なっている場合は、その部分は治療で改善します。「治らない」と決めつける前に、治せる部分が混ざっていないかを確認する価値があります。
Q. 何歳から気をつければいいですか
自覚が出るのは60代以降が多いものの、変化は50代から始まっていることも珍しくありません。気になり始めた時点が、測っておくのによい時期です。1回測っておけば、次に測ったときに変化が分かります。
Q. 片耳だけ聞こえにくいのですが、加齢性難聴ですか
加齢性難聴は通常、両耳に同じように現れます。片耳だけという場合は別の原因が隠れている可能性があるため、早めに耳鼻咽喉科を受診してください。
Q. 耳鳴りがありますが、関係ありますか
耳鳴りは難聴を伴っていることが多いとされています。耳鳴りを訴えて受診したら難聴が見つかった、という順序も珍しくありません。耳鳴り単独の悩みとして抱え込まず、聴力検査を受けてみてください。
Q. 検査だけ受けて、補聴器は断ってもいいですか
問題ありません。検査は現状を知るためのものです。結果を聞いたうえで、まだ必要ないと判断することもできます。むしろ数字が分かっていれば、後で判断するときの材料になります。
まとめ
聞こえにくさは認知症のサインではありません。しかし放置された聞こえにくさは、会話を減らし、外出を減らし、認知機能にとって不利な条件をそろえていきます。そして家族の側からは、聞き間違いによるかみ合わない会話が、物忘れのように見えてしまいます。
進める順番
- 紙に書いて見せてみる——費用ゼロ。聞こえの問題か、そうでないかがその場で分かります
- チェックリストで当てはまる項目を数える——3項目以上なら受診の段階
- 耳鼻咽喉科で聴力を測る——できれば補聴器相談医のいる医療機関を選ぶ
- 治せる難聴が混ざっていないか確認する——耳あかだけ、ということもあります
- 制度を確認するのは、検査のあと——手帳・自治体助成・医療費控除は、いずれも診断が起点です
もっとも避けたいのは、聞こえの問題を「年のせい」として何年も置いておくことです。検査は痛くもなく、費用も数千円で済みます。まずは現状を数字にするところから始めてください。
聞こえと補聴器についてもう少し詳しく知りたい場合は、日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会の難聴でお困りの方へにまとまっています。認知症についての国の取り組みは、厚生労働省の認知症施策のページで確認できます。
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- 高齢者の低栄養|親の食事が心配なときに見る5つのサインとチェックリスト——外出と会話が減った先で起きること
- 人生会議(ACP)とは?家族と何を話すか・進め方5ステップと終活との違い——会話ができるうちに話しておきたいこと
※本記事は一般的な情報の解説であり、個別の診断・治療方針を示すものではありません。聞こえに不安がある場合は、必ず耳鼻咽喉科を受診してください。
※身体障害者手帳の認定基準、自治体の助成制度、医療費控除の取り扱いは変更される場合があります。最新の情報は各公式サイトまたは窓口でご確認ください。
※自治体独自の補聴器購入助成は、実施の有無・対象条件が市区町村ごとに異なります。お住まいの市区町村にご確認ください。























