葬儀社の選び方|亡くなった後では比較しにくくなる理由

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親の葬儀を、どこに頼むか決めていますか。多くのご家庭では、この話題は先送りになりがちです。ところが実際に必要になったとき、家族には比較検討する時間がほとんど残されていません。

結論から言うと、葬儀社選びで本当に難しいのは「選び方を知らないこと」ではなく、「選ぶ時間がないこと」です。数十万円から数百万円の判断を、身内を亡くした直後の数時間で迫られることになります。

この記事では、なぜ時間がなくなるのかという仕組み、実際に起きているトラブル、費用の内訳、見積書で確認すべき点、そして生前に見積もりを取っておく進め方をまとめました。すでに時間がない状況の方に向けた項目も用意しています。

この記事でわかること

  • 亡くなった後に葬儀社を選ぶのが難しくなる仕組み
  • 実際に寄せられている料金トラブルの中身
  • 葬儀費用は何にいくらかかるのか(出典つき)
  • 見積書で必ず確認する4つの点
  • 生前に見積もりを取っておく進め方
  • 急かされたとき、時間がないときの対処

まずは30秒|いまどの段階にいるか

いま置かれている状況によって、先に読むべき場所が変わります。時間がない方は、当てはまる行から確認してください。

いまの状況先に読む場所
親は元気だが、そろそろ考えておきたい「生前に見積もりを取っておく進め方」
入院中などで、近い将来に備えたい「見積書で必ず確認する4つの点」
すでに亡くなり、これから決める「それでも時間がないときの最低限の確認」
葬儀社から契約を急かされている「急かされたときは、その場で決めない」
費用を用意できるか不安がある「費用の負担を軽くする公的な制度」

なぜ「亡くなってから探す」と比較しにくくなるのか

葬儀社を十分に比較しないまま決めてしまう背景には、はっきりした仕組みがあります。本人や家族の準備不足というより、状況そのものが選択の余地を狭めます。

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検討する時間がないまま決めることになる

この点は、国民生活センターの見守り情報でも次のように指摘されています。

葬儀は規模によっては数百万円と高額になるにもかかわらず、検討や準備のための時間がありません。そのため事前の情報収集が大切です。

住宅や自動車なら何日もかけて比較するのに、葬儀だけは数時間で決めることになります。この時間のなさが、葬儀社選びを難しくする大きな理由です。

搬送・安置を頼んだ葬儀社に、そのまま依頼しやすい

病院や施設で亡くなった場合、遺体は長くその場に置いておけません。家族はまず搬送先を決める必要があり、この時点で葬儀社に連絡することになります。搬送と安置を引き受けた葬儀社に、そのまま葬儀まで依頼する流れは自然に生まれます。

搬送を頼んだ葬儀社に、葬儀まで必ず依頼しなければならない決まりはありません。ただし、いったん預けた遺体を別の葬儀社に移すには、追加の搬送費用と家族の労力がかかります。そのため、別の葬儀社には切り替えにくくなります。

つまり、最初に搬送を依頼した葬儀社へ、そのまま葬儀を依頼する流れになりやすいため、十分に比較する余裕がなくなります。

実際に起きているトラブル|相談は年間900件前後

国民生活センターが2026年6月3日に公表した資料によると、全国の消費生活センター等に寄せられる葬儀サービスに関する相談は、年間で900件前後で推移しています。

年度相談件数うち「高価格・料金」の割合
2019年度632件33.2%
2022年度951件50.9%
2024年度978件49.4%
2025年度917件52.6%

料金に関する相談の割合は、2019年度の33.2%から2025年度は52.6%へと増えています。相談の半分以上が費用をめぐるものになっている計算です。

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「家族葬だから安い」とは限らない

先ほどの資料は、「家族葬だから安い」と思っていませんか?という副題を掲げています。参列者を絞る形式であっても、内容によって費用は変わります。

資料に掲載されている相談事例のひとつは、次のような内容です。「家族葬50万円」との表示を見て葬儀社に依頼したところ、高額なプランを案内された。見積書には明細がなく、追加費用も発生したため、総額200万円を超えたというものです。

広告の最低価格で収まるとは限らない

見守り情報には、さらに具体的な事例が載っています。広告で「家族葬約40万円から」と見て葬儀社に安置を依頼したところ、担当者から「お宅はこのプランではできません」と言われてオプションが追加され、合計額が300万円近くになったという60歳代の方の相談です。

こうした事例は、葬儀社が特別に不誠実だから起きるとは限りません。「時間がない」「他と比べられない」「気持ちの整理がついていない」という三つが重なれば、誰であっても、提示された条件をそのまま受け入れやすくなります。個人の注意深さの問題として片づけないほうが、対策を立てられます。

葬儀費用は何にいくらかかるのか

費用の総額を考える前に、何にお金がかかるのかを分けて把握しておくと、見積書の中身をつかめます。葬儀費用は、葬儀そのものにかかる費用、宗教者への謝礼、飲食費、返礼品など複数の項目に分かれます。全日本葬祭業協同組合連合会(全葬連)は、次の4つに整理しています。

区分含まれるもの
① 葬儀基本費用棺、骨壺、祭壇、遺影写真、霊柩車、火葬料など
② 宗教者への謝礼お布施、戒名料、心付けなど
③ 飲食接待費通夜振る舞い、精進落とし、会葬御礼など
④ その他返礼品(香典返し)、会場使用料、生花、案内状、礼状など

調査による全国平均は161.9万円

費用の総額については、一般財団法人日本消費者協会の第12回「葬儀についてのアンケート調査」(2022年)で、葬儀費用の合計の全国平均が161.9万円と報告されています。

161.9万円という数字の読み方

  • 2021年8月から12月に行われた調査をまとめた、2022年時点の数字です
  • 仏壇・墓石の費用は含みません
  • 調査対象や集計方法によって、何をどこまで含めるかは調査ごとに異なります
  • 葬儀の種類・規模・地域によって大きく変わる、あくまで調査上の平均値であり、自分の家に当てはまる金額ではありません

よく見かける「種類別の相場」には注意する

インターネット上には「一般葬は◯◯万円、家族葬は◯◯万円」といった種類別の相場が数多く出ています。こうした数字は、出典がはっきりしないまま引用されていることがあります。金額の根拠を確かめずに予算の目安にすると、実際の見積もりとの差に驚くことになりかねません。

金額を調べるときは、その数字が「いつの」「誰の」調査によるもので、「何を含んだ」金額なのかを確認してください。この記事で161.9万円に長い注釈を付けているのも、同じ理由によるものです。

見積書で必ず確認する4つの点

国民生活センターは消費者へのアドバイスとして、見積書は必ず受領し、内容(明細)をよく確認することを挙げています。確認すべき点を具体的に整理します。

① 明細が書かれているか

先ほどの総額200万円超の事例では、見積書に明細がありませんでした。「一式」「プラン料金」とだけ書かれた見積書では、何にいくらかかっているのか検証できません。品目ごとの単価と数量が書かれた見積書を受け取ってください。

② 追加費用が発生する条件

全葬連も、追加料金が発生する可能性の有無を契約前に必ず確認するよう案内しています。参列者が想定より増えた場合、安置の日数が延びた場合、式場の空き状況で日程がずれた場合など、どういうときに、いくら増えるのかを事前に聞いておきます。

③ 含まれていないものは何か

見積書に載っていない費用こそ、後から効いてきます。お布施などの宗教者への謝礼火葬料返礼品飲食費は、葬儀社のプランに含まれない場合があります。含まれていないものを一覧にしてもらうと、総額の見通しが立ちます。

④ 総額はいくらか

ここまでの3点を踏まえたうえで、「今わかっている範囲で、最終的な支払いはいくらになりますか」と質問してください。プラン料金ではなく、家族が実際に払う金額を確認するための質問です。

見積書を受け取らないまま契約しない

口頭の説明だけで契約すると、後から金額の食い違いが起きても確認する手段がありません。国民生活センターは葬儀社との打ち合わせを、親族や第三者など複数人で行うことも勧めています。一人で聞くと、聞き漏らしや思い込みが起こりやすくなります。

生前に見積もりを取っておく進め方

ここまで見てきたとおり、じっくり比較するなら、亡くなる前に動いておくのが理想です。事前相談を受け付けている葬儀社は多く、見積もりだけを取ることもできます。

いつ動くか

比較できる期間 親が元気なうち/入院中 何社でも見積もりを取れる 亡くなった後 数時間 搬送先を決める じっくり比較できるのは、この線より前 ※国民生活センターの情報をもとに作成

親が元気なうちに動くのが最も余裕があります。ただ、健康なうちに葬儀の話を切り出すのは難しいものです。入院や施設への入居がきっかけになることもあります。遅くとも「もしものときが近いかもしれない」と感じた時点で、家族が情報を集め始めておくと、選択肢が残ります。

何社に聞くか

全葬連は、複数の葬儀社から見積もりを取って比較検討することを勧めており、相見積もりは少なくとも3社から取るとよいとしています。1社だけでは、提示された金額が高いのか妥当なのか判断する材料がありません。

事前相談では、家族が次の点を伝えると見積もりが具体的になります。

  • おおよその参列人数(家族だけか、親族を呼ぶか、知人まで声をかけるか)
  • 宗教・宗派の希望、菩提寺の有無
  • 希望する式場の地域
  • 予算の上限

親に切り出しにくいときの伝え方

葬儀の話は、切り出し方によっては親本人が「早く死ねということか」と受け取ることがあります。費用や段取りの話から入るより、「希望を聞かせてほしい」という形にすると伝わりやすくなります。

たとえば、家族が「誰に来てほしいか」「どんな写真を使いたいか」と尋ねる形なら、親本人が自分の意思を示す機会として受け止められます。看取りについて家族で決めておくことを話し合うタイミングで、あわせて確認しておく方法もあります。

どうしても切り出しにくい場合は、家族だけで情報を集めておくだけでも意味があります。見積もりを取ること自体は、親の同意がなくてもできます。

急かされたときは、その場で決めない

事前に準備できないまま、その場で判断を迫られることもあります。

急かされても、内容を確認せずその場で契約しない

  • 「今日中に決めていただかないと、日程が押さえられません」
  • 「このプランは今お申し込みの方だけの価格です」
  • 「皆さんこちらを選ばれています」

火葬場や式場の空き状況は事実として存在しますが、それは契約を急ぐ理由にはなっても、明細を確認しない理由にはなりません。日程の確保と、費用の内訳を確認することは別の話です。

迷ったら「家族と相談してから返事をします」と伝えて、いったん席を外してください。これは失礼な対応ではありません。国民生活センターも、打ち合わせを複数人で行うよう案内しています。その場にいない家族に電話で確認するだけでも、判断の材料が増えます。

契約後や葬儀後であっても、金額に納得できない場合は相談先があります。不安に思った場合やトラブルが生じた場合は、消費者ホットライン「188」に電話すると、最寄りの消費生活センター等を案内してもらえます。

それでも時間がないときの最低限の確認

すでに亡くなっていて、これから決めなければならない状況の方に向けて、優先順位をつけた確認事項をまとめます。

優先度確認すること
最優先明細の入った見積書を、契約前に受け取る
最優先「最終的な支払総額はいくらか」を口頭ではなく書面で確認する
プランに含まれないもの(お布施・火葬料・返礼品・飲食費)を聞く
追加費用が発生する条件を聞く
家族の誰かに同席してもらう、または電話をつないで一緒に聞く

搬送だけを依頼して、葬儀は別の葬儀社に頼むことも制度上は可能です。ただし追加の搬送費用と家族の負担が生じるため、実際に切り替えるかどうかは、金額の差と手間を比べて判断してください。

費用を抑えたい場合、葬儀社に依頼せず家族で進める方法もあります。手続きの範囲や必要な作業は家族葬を自分たちで行う準備にまとめられています。また、火葬そのものの流れと費用は火葬の流れと費用で確認できます。

費用の負担を軽くする公的な制度

葬儀費用の負担を軽くする公的な制度があります。制度によって対象者や申請するタイミングが異なるため、事前に確認しておきましょう。葬儀社選びとは別に、家族が忘れずに手続きしてください。

制度対象申請のタイミング
葬祭費・埋葬料国民健康保険、後期高齢者医療制度、健康保険の加入者が亡くなった場合葬儀を行った後
(申請期限あり)
葬祭扶助生活保護法の要件を満たし、葬祭費用を負担することが困難な場合原則として葬儀を行う前
(葬儀社と契約する前に相談)

葬祭費には申請期限があり、金額は制度や市区町村によって異なります。葬祭扶助は、原則として葬儀を行う前に申請が必要です。該当しそうな場合は、葬儀社と契約する前に自治体の窓口へ相談してください。

よくある質問

Q. 病院で紹介された葬儀社に、必ず頼まないといけませんか?

必ず依頼しなければならない決まりはありません。ただし搬送と安置を引き受けてもらった後で別の葬儀社に変更すると、追加の搬送費用と家族の手間がかかります。切り替えるかどうかは、金額の差と負担を見比べたうえで決めてください。

Q. 葬儀費用の全国平均はいくらですか?

日本消費者協会の第12回「葬儀についてのアンケート調査」(2022年)では、葬儀費用の合計の全国平均は161.9万円と報告されています。仏壇・墓石の費用は含みません。2021年8月から12月に行われた調査の数字で、葬儀の種類・規模・地域によって大きく変わる、あくまで調査上の平均値です。

Q. 見積書はどの段階でもらえますか?

事前相談の段階でも受け取れます。国民生活センターは、見積書を必ず受領し、内容(明細)をよく確認するよう案内しています。契約前に明細の入った見積書を求めてください。

Q. 相見積もりは何社くらい取ればよいですか?

全葬連は、少なくとも3社から取るとよいとしています。1社だけでは、提示された金額が妥当かどうかを判断する材料がありません。

Q. 「今日中に決めてください」と言われました。どうすればよいですか?

その場で契約せず、「家族と相談してから返事をします」と伝えて構いません。日程を確保することと、費用の明細を確認することは別の話です。不安な場合は消費者ホットライン「188」に相談できます。

Q. 家族葬にすれば費用は安くなりますか?

参列者を絞る形式ですが、内容によって費用は変わります。国民生活センターは「家族葬だから安い」と思い込まないよう注意を呼び掛けており、「家族葬50万円」の表示を見て依頼した結果、総額200万円を超えた相談事例を公表しています。

Q. すでに契約してしまいましたが、金額に納得できません。

不安に思った場合やトラブルが生じた場合は、すぐに最寄りの消費生活センター等に相談してください。消費者ホットライン「188」に電話すると、お住まいの地域の窓口を案内してもらえます。

まとめ

  • 葬儀社を十分に比較するなら、亡くなる前に情報収集しておくのが理想
  • 搬送・安置を頼んだ葬儀社にそのまま依頼する流れになりやすく、これは家族の不注意ではなく状況の問題
  • 料金に関する相談は増加傾向で、2025年度は相談全体の52.6%を占める(国民生活センター)
  • 調査による費用の全国平均は161.9万円。仏壇・墓石を含まない、調査上の平均値(日本消費者協会 第12回調査・2022年)
  • 見積書は明細・追加費用の条件・含まれないもの・総額の4点を確認する
  • 相見積もりは少なくとも3社(全葬連)。打ち合わせは家族など複数人で行う
  • 急かされても、内容を確認せずその場で契約しない。困ったときは消費者ホットライン188

親が元気なうちに葬儀の話を切り出すのは、気が進まないものです。それでも、家族が事前に見積もりを取っておけば、いざというときに選ぶ余地が残ります。まずは「どんな見送り方を希望するか」を親に尋ねることから始めてみてください。

※本記事は葬儀社を選ぶ際の一般的な考え方をまとめたものです。特定の葬儀社を推奨するものではありません。費用や制度の内容は、地域・規模・葬儀社・自治体によって異なります。

※統計や制度の内容は変更される場合があります。最新の情報は国民生活センター・各自治体の公式サイトでご確認ください。(2026年8月時点の情報です)

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