終活の引継書とは?エンディングノートとの違いと書き方テンプレート

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会社で担当が変わるとき、必ず引継書を作ります。後任が困らないように、やり方・置き場所・連絡先を書いた資料です。終活でも、まったく同じものが必要になります。家族はある日突然、あなたの「後任」になるからです。ところが多くの場合、渡されるのは分厚いエンディングノートか、あるいは何もありません。この記事では、引継書とは何か、エンディングノートとどう違うのか、何を書けばよいのかを、そのまま書き写せる形で整理します。

この記事の結論

  • 引継書とは「家族が手続きで困らないために必要な事実だけ」を渡す書面
  • エンディングノートとの違いは気持ちを書かないこと。事務だけに絞る
  • 1冊にまとめない。渡す相手ごと、渡す時期ごとに分けるのが要点
  • 書くのは10項目。金額は不要。「どこにあるか」だけでよい
  • 暗証番号とパスワードは絶対に書かない。置き場所だけを書く
  • 作ったら年1回15分だけ見直す。それで維持できます

この記事でわかること

  1. 引継書とは何か、なぜ「引継書」と呼ぶのか
  2. エンディングノート・遺言書・財産目録との役割分担
  3. 引継書がないと家族に何が起きるのか
  4. 引き継ぐ相手ごとに分けるという考え方
  5. 書くべき10項目と、その書き方
  6. 書いてはいけないこと
  7. そのまま書き写せる1枚テンプレート
  8. 保管場所・渡し方・更新のしかた
  9. 親に書いてもらう場合の進め方

引継書とは何か

引継書とは、自分がいなくなったあと、家族が手続きを進めるために必要な情報をまとめた書面です。法律で決まった様式はなく、紙1枚でも構いません。

目的家族が「探す」時間をなくすこと
書く内容手続きに直結する事実だけ
書かない内容気持ち、思い出、自分史
法的効力ない(財産の行き先を決めるなら遺言書)
分量紙1枚から数枚
作る時間30分から1時間

引継書の役割は、たったひとつです

「どこに何があるか」を伝えること。これだけです。金額を書く必要も、理由を説明する必要もありません。家族が最も苦労するのは、金額の多さではなく「そもそも何があるか分からない」という状態だからです。

なぜ「引継書」と呼ぶのか|会社の引継書との共通点

会社の引継書終活の引継書
渡す相手後任の担当者家族(相続人)
書くこと手順・置き場所・連絡先手順・置き場所・連絡先
書かないこと個人的な感想個人的な感想
良い引継書とは読めばそのまま動けるもの読めばそのまま動けるもの
悪い引継書とは長すぎて要点が分からないもの長すぎて要点が分からないもの
渡すタイミング異動の前元気なうち

会社で引継書を作った経験のある方なら、感覚はそのまま使えます。「後任が最初の1週間で困ること」から書く。これが基本です。終活でいえば、亡くなった直後の2週間で家族が困ることから書けばよいということになります。

エンディングノートとの違い

エンディングノート

  • 気持ちも思い出も書く
  • 項目が数十〜数百
  • 完成に数か月かかることも
  • 自分のために書く面もある
  • 市販のものは分厚い
  • 途中で止まりやすい

引継書

  • 事実だけを書く
  • 項目は10前後
  • 30分〜1時間で終わる
  • 完全に相手のために書く
  • 紙1枚でよい
  • 確実に終わる

どちらが良いという話ではありません

エンディングノートには、引継書にない価値があります。気持ちを残せること、自分の人生を振り返れること。ただし、それを書き始めると多くの人が途中で止まります。そして止まったノートは、家族の役に立ちません。まず引継書を完成させ、余力があればエンディングノートに進む。この順番をおすすめします。

遺言書・財産目録との役割分担

引継書エンディングノート財産目録遺言書
主な目的探す手間をなくす希望と気持ちを伝える財産を一覧にする財産の行き先を決める
法的効力なしなしなしあり
様式の決まりなしなしなしあり(厳格)
金額を書くか書かなくてよい任意書く特定できればよい
作る手間30分〜1時間数週間〜数か月1〜2時間数日〜数週間
優先順位1番目3番目2番目財産があるなら最優先

迷ったら、この順番で作ってください

①引継書(30分)→ ②財産目録(1〜2時間)→ ③遺言書(財産がある場合)→ ④エンディングノート。
引継書を最初に置く理由は、最も短時間で完成し、しかも家族への効果が最も大きいからです。ただし、分けたい財産があって相続人が複数いる場合は、遺言書の優先度が最も高くなります。

引継書がないと家族に起きること

場面引継書がないとあると
誰に知らせるか年賀状と携帯の履歴から推測する名簿を見て連絡する
口座を探す家中の通帳と郵便物を探す金融機関名の一覧を見る
保険の請求証券が見つからず請求できないことがある会社名と保管場所が分かる
月額サービスの解約請求が延々と続く一覧を見て順に解約する
借入の有無あとから督促状で知る「なし」と書いてあれば安心できる
延命治療の判断家族が決めることになり、長く後悔が残る本人の希望に沿える
葬儀の規模「これでよかったのか」が残る希望どおりにできる
ペットの世話誰が引き取るかで揉める決まっている

いちばん多い困りごとは「解約できない契約」です

携帯電話、インターネット回線、動画や音楽の月額サービス、有料アプリ、定期購入。本人しか知らない契約は、家族が存在を知らないため解約されず、引き落としが続きます。気づくのは通帳を見返したときで、そのときには何か月分も引き落とされています。「契約しているものの一覧」は、引継書のなかで最も費用対効果の高い項目です。

引継書は1冊にしない|相手別に分ける

ここが、この記事でいちばんお伝えしたい考え方です。すべてを1冊にまとめないでください。

分け方内容渡す時期
いま渡す分医療・介護の希望、緊急連絡先、かかりつけ医すぐ渡す
置き場所を伝えておく分口座・保険・契約・不動産の一覧場所だけ伝える
死後に開く分葬儀の希望、知らせてほしい人、形見の行き先封をして保管
配偶者に渡す分生活に直結する情報(公共料金・カード・鍵)すぐ渡す
子に渡す分相続・不動産・借入に関する情報場所だけ伝える
仕事関係に渡す分事業をしている場合の引き継ぎ別に用意する

なぜ分けるのか

理由は3つあります。①全部を1冊にすると、そのノートを失くしたときの被害が大きい。②見られたくない情報があると、書くこと自体をためらってしまう。③家族は、必要な情報だけを渡されたほうが早く動ける。
とくに②が重要です。「全部書かなければ」と思うから書けなくなるのです。分けてよいと分かれば、書ける項目から書けます。

誰に何を引き継ぐか

相手渡す情報ひとこと
配偶者生活に必要なもの一式。公共料金・銀行・鍵・保険最も詳しく
相続・不動産・借入・葬儀の希望場所を伝えておく
きょうだい・親族連絡してほしい範囲名簿だけでよい
友人・知人知らせてほしい人の連絡先家族は知らないことが多い
かかりつけ医延命についての考え家族と共有しておく
ペットを託す人食事・薬・かかりつけの動物病院事前に承諾をもらう
仕事の関係者取引・鍵・データの場所事業をしている場合

引継書に書く10項目

項目書く内容時間
1知らせてほしい人名前・電話番号・関係5分
2医療と介護の希望かかりつけ医・持病・薬・延命の考え5分
3お金の置き場所金融機関名と支店名。残高は不要5分
4契約と月額サービス携帯・回線・電気ガス水道・定期購入5分
5デジタル関係使っている端末とサービスの名前だけ3分
6保険会社名と、証券の保管場所3分
7借入と保証なければ「なし」と書く2分
8不動産と重要書類権利証・実印・印鑑登録証の場所3分
9大切なもの・ペット託したい相手と、その連絡先3分
10葬儀とお墓の希望規模と、知らせる範囲5分

合計で39分です。難しい調べものはひとつもありません。いま分かることだけ書けば、それで引継書は完成します。

項目1〜3|人・医療・お金の置き場所

  • 項目1…家族が知らない交友関係を書く。囲碁の会、元同僚、遠方の友人。3人でも意味がある
  • 項目1…逆に「知らせなくてよい相手」も書いておくと、家族が迷わない
  • 項目2…病院名・持病・飲んでいる薬。お薬手帳の保管場所を書くだけでも足りる
  • 項目2…延命についての考えは一行でよい。「望まない」「家族に任せる」でも構わない
  • 項目3…金融機関名と支店名だけ。残高も口座番号も書かなくてよい
  • 項目3…ネット銀行・ネット証券は通帳がないため見つかりにくい。必ず書く

残高を書かないほうがよい理由

残高は変わります。書けば更新が必要になり、更新が面倒になれば引継書ごと放置されます。家族が必要としているのは金額ではなく「どこの銀行か」です。銀行名さえ分かれば、あとは手続きで確認できます。

項目4〜6|契約・デジタル・保険

種類書き方の例見落としやすいもの
通信携帯会社名/インターネット回線の会社名使っていない古い回線
公共料金電気・ガス・水道の契約者名と支払い方法名義が故人のままだと止まることがある
月額サービス動画・音楽・新聞・クラウドの名前アプリ内の自動更新
定期購入健康食品・水・雑誌など年払いのもの
デジタル使っている端末と主なサービスの名前パスワードは書かない
保険生命保険・医療保険・火災保険の会社名勤務先の団体保険、共済

デジタルは「名前だけ」でよいのです

パスワードや暗証番号を書く必要はありません。サービス名が分かれば、家族は問い合わせて手続きを進められます。むしろ書いてしまうと、引継書が紛失したときの危険が跳ね上がります。引継書は「鍵」ではなく「地図」です。

項目7〜8|借入と不動産

項目7は「なし」と書くことに価値があります

借入がない場合でも、「借入なし・保証人になっているものなし」と書いてください。これがないと、家族は「本当にないのか」を確認するために時間を使います。相続放棄の期限は3か月です。「なし」の一行が、その3か月を安心して過ごせるかどうかを決めます。

  • 借入がある場合は、借入先の名前だけ書く。金額は不要(変わるため)
  • 誰かの保証人になっている場合は必ず書く。これは家族が知りようがない
  • 不動産は、所在地の市区町村名と、権利証(登記識別情報)の保管場所
  • 実印・印鑑登録証・マイナンバーカードの保管場所
  • 貸金庫を借りている場合は、その銀行名
  • 他人に貸しているお金があれば、それも書く

項目9〜10|大切なものと、最期の希望

書くこと書き方の例
ペット誰に託すか(事前に承諾を得る)・かかりつけの動物病院・食事と薬
形見にしたいもの「この時計は◯◯に」。理由は不要
処分してよいもの「日記は読まずに処分してほしい」など
葬儀の規模家族だけ/知人も/宗教の希望
お墓すでにある場合は所在地と管理者の連絡先
遺影使ってほしい写真の場所

「処分してよいもの」を書くと、家族はとても助かります

遺品整理でいちばん時間がかかるのは、「これは捨ててよいのか」と迷う時間です。日記、手紙、写真、趣味の道具。「読まずに処分してよい」と一行書いてあるだけで、家族は迷わずに進められます。

書いてはいけないこと

次の3つは、引継書に書かないでください

  • 暗証番号・パスワード・合言葉…紛失時の被害が大きすぎます
  • 金融機関に届け出ている印影の見本…実印や銀行印を押さないでください
  • 特定の家族への非難…読んだ人が傷つき、争いの火種になります

また、財産の分け方を書いても法的効力はありません。「長男に家を」と書きたい場合は、引継書ではなく遺言書で行ってください。

そのまま書き写せる1枚テンプレート

引継書(◯年◯月◯日現在)

1.知らせてほしい人
 ◯◯ ◯◯(囲碁の会)090-◯◯◯◯-◯◯◯◯
 ◯◯ ◯◯(元同僚)   ◯◯-◯◯◯◯-◯◯◯◯
 ※ ◯◯には知らせなくてよいです

2.医療・介護
 かかりつけ医:◯◯医院(◯◯-◯◯◯◯)
 持病:◯◯/薬:お薬手帳は台所の引き出しに
 延命治療:望みません(家族の判断を尊重します)

3.お金の置き場所
 ◯◯銀行 ◯◯支店/◯◯信用金庫 ◯◯支店
 ネット銀行:◯◯銀行(通帳はありません)
 通帳と印鑑:寝室のたんす上段

4.契約しているもの
 携帯:◯◯/回線:◯◯/電気ガス水道:口座引き落とし
 月額:◯◯(動画)、◯◯(新聞)

5.デジタル
 使っている端末:スマートフォン1台、パソコン1台
 主なサービス:◯◯、◯◯ ※ パスワードは書きません

6.保険
 ◯◯生命/◯◯共済 証券は書斎の茶色いファイル

7.借入・保証
 借入なし。保証人になっているものもありません

8.不動産・重要書類
 自宅(◯◯市)権利証は金庫/実印・印鑑登録証も金庫
 金庫の鍵:食器棚の一番上

9.大切なもの
 猫の◯◯は◯◯にお願いしてあります(承諾済み)
 日記は読まずに処分してください

10.葬儀・お墓
 家族だけで簡素に。お墓は◯◯霊園(管理事務所 ◯◯-◯◯◯◯)
 遺影は居間のアルバム3冊目の写真を

                ◯◯ ◯◯(署名)

この形でA4用紙1〜2枚に収まります

手書きでもパソコンでも構いません。大事なのは、日付を必ず入れること。どの時点の情報なのかが分かれば、家族は判断できます。

どこまで詳しく書けばよいか

書きすぎちょうどよい足りない
口座口座番号と残高銀行名と支店名「銀行に口座あり」
保険証券番号と保障内容会社名と証券の場所「保険に入っている」
連絡先住所と経歴名前・電話・関係名前だけ
デジタルパスワードサービス名だけ書かない
葬儀細かい進行の指定規模と知らせる範囲「任せる」だけ

保管場所の決め方

置き場所良い点気をつける点
自宅の決まった引き出しすぐ見つかる誰でも見られる
自宅の金庫安全鍵の場所を伝えないと開けられない
銀行の貸金庫安全亡くなると開けるのに手続きが要る
信頼できる家族に預ける確実に届くその人が先に亡くなる場合を考える
パソコンの中だけ更新しやすい開けない。おすすめしません

貸金庫に入れるのは避けてください

銀行の貸金庫は、名義人が亡くなると開けるのに相続の手続きが必要になります。いちばん必要な時期に、取り出せません。引継書は自宅の決まった場所に置き、その場所を家族に伝えるのが最も確実です。

家族への渡し方

  • まず存在を伝える「万一のときのメモを作った」。これだけで十分です。中身の説明は不要です。
  • 場所を伝える「◯◯の引き出しに入れてある」。ここまでで9割の目的は達成されます。
  • 医療の希望だけは口頭でも伝える延命についての考えは、書面より先に会話で共有しておくと確実です。
  • 重い話にしない「歳だから」「もしものときに」と切り出すと、家族は身構えます。「片づけのついでに作った」くらいがちょうどよいのです。
  • 渡してしまってもよい見られて困ることを書いていなければ、そのまま渡して構いません。

更新のしかた|年1回15分

見直す項目変わりやすさ
飲んでいる薬・かかりつけ医変わりやすい
契約している月額サービス変わりやすい
知らせてほしい人数年に一度
金融機関数年に一度
保険数年に一度
葬儀・お墓の希望ほとんど変わらない

更新日を決めてしまうのがコツです

誕生日、または年末。どちらかに決めて、その日に15分だけ見直します。全部を書き直す必要はありません。変わったところに二重線を引いて書き直し、日付を新しくする。それだけで十分です。「きれいに作り直そう」と思うと、続きません。

事業や会社をしている場合

引き継ぐこと内容
取引先主要な取引先と担当者の連絡先
金融機関事業用の口座、借入、保証
顧問税理士・社会保険労務士・弁護士の連絡先
鍵とデータ事務所の鍵、重要データの保管場所
従業員雇用に関する書類の場所
許認可更新時期と担当窓口
後継者誰に継がせるか。継がせない場合の方針

事業の引継書は、家庭用と必ず分けてください

事業に関する情報は量が多く、関係する人も違います。家庭の引継書に混ぜると、どちらも読みにくくなります。また、事業の承継には税務や法務の論点が多く含まれるため、顧問税理士や専門家に早めにご相談ください。個人保証の有無は、家族に必ず伝えておいてください。

親に書いてもらう場合の進め方

  • 「終活」「もしものとき」という言葉を使わない
  • まず自分が書いて見せる。「こういうの作ったんだけど」から入る
  • 10項目全部を求めない。項目1と2(連絡先・かかりつけ医)だけでよい
  • 金額や財産の話は、最初はしない
  • その場で書かせようとしない。用紙だけ置いて帰る
  • 入院や引っ越しなど、きっかけのある時期に頼む
  • 断られたら引く。半年後にもう一度

最初に頼むなら「かかりつけ医と薬」です

財産の話から入ると、たいてい警戒されます。ところが「かかりつけの病院と、飲んでいる薬を書いておいてほしい」なら、断られることはほとんどありません。そして、これは救急搬送されたときに実際に役立ちます。ここから始めて、少しずつ広げてください。

よくある質問

引継書とエンディングノートは何が違うのですか。
引継書は事実だけ、エンディングノートは気持ちも書きます。引継書は10項目・30分程度で完成し、家族が手続きで困らないことだけを目的にします。エンディングノートは項目が多く、完成に時間がかかりますが、希望や思い出を残せます。先に引継書を完成させることをおすすめします。
引継書に法的効力はありますか。
ありません。財産の分け方を書いても、そのとおりにはなりません。分けたい財産があって相続人が複数いる場合は、遺言書を作ってください。引継書はあくまで「どこに何があるか」を伝えるための書面です。
どのくらいの量を書けばよいですか。
A4用紙1〜2枚で十分です。長く書くほど読まれにくくなります。金額も口座番号も不要です。「どこの銀行か」「証券はどこにあるか」が分かれば、あとは家族が手続きで確認できます。
暗証番号やパスワードは書いたほうが親切ではないですか。
書かないでください。紛失や盗難があったときの被害が大きすぎます。サービス名や金融機関名が分かれば、家族は正規の手続きで進められます。引継書は「鍵」ではなく「地図」だと考えてください。
1冊にまとめないほうがよいのはなぜですか。
3つ理由があります。①失くしたときの被害が大きい ②見られたくない情報があると書くのをためらう ③家族は必要な情報だけのほうが早く動ける。とくに②が大きく、「全部書かなければ」と思うから手が止まります。分けてよいと分かれば、書ける項目から書けます。
借入がありません。それでも項目7は書きますか。
必ず書いてください。「借入なし・保証人になっているものもなし」と書くことに価値があります。これがないと、家族は本当にないのかを確認するために時間を使います。相続放棄の判断期限は3か月なので、この一行が家族の3か月を左右します。
どこに保管すればよいですか。
自宅の決まった場所です。銀行の貸金庫は、亡くなると開けるのに相続手続きが必要になるため避けてください。パソコンの中だけというのも、開けないおそれがあるため避けてください。置き場所を家族に伝えるところまでが準備です。
家族にどう切り出せばよいですか。
「万一のときのメモを作ったから、◯◯の引き出しに入れてある」。これだけで十分です。中身の説明は要りません。重い話にしないことがコツで、「片づけのついでに作った」くらいの調子が続きます。
どのくらいの頻度で更新すればよいですか。
年1回、15分で十分です。誕生日か年末に日を決めてください。全部を書き直す必要はなく、変わったところに二重線を引いて書き直し、日付を新しくするだけで構いません。きれいに作り直そうとすると続きません。
親に書いてほしいのですが、嫌がられます。
「かかりつけの病院と、飲んでいる薬だけ書いておいて」から始めてください。財産の話から入ると警戒されますが、これなら断られることはほとんどありません。しかも救急搬送されたときに実際に役立ちます。まず自分が書いて見せることも有効です。
ひとり暮らしで、渡す家族がいません。
その場合こそ引継書が重要になります。誰かに手続きをしてもらう必要があるからです。死後事務委任契約を結ぶ、任意後見契約を結ぶ、自治体の終活情報登録制度を利用するといった方法があります。引継書は、その相手に渡す資料として使えます。まずは地域包括支援センターにご相談ください。
財産目録も作ったほうがよいですか。
引継書が終わったら、次に作るとよいのが財産目録です。引継書は「どこにあるか」、財産目録は「いくらあるか」を書くもので、役割が違います。相続税がかかりそうな場合や、相続人が複数いる場合は、財産目録まで作っておくと家族の負担が大きく減ります。

まとめ|今日30分で、いちばん効くものが作れます

終活で作るものはいくつもありますが、費用対効果がいちばん高いのは引継書です。30分から1時間で完成し、費用はかからず、それでいて家族が困る場面の大半をなくせます。

書くのは10項目。知らせてほしい人、かかりつけ医と薬、金融機関名、契約しているもの、デジタルのサービス名、保険、借入の有無、重要書類の場所、託したいもの、葬儀の希望。金額も口座番号も要りません。「どこにあるか」だけで十分です。

そして、この記事でいちばんお伝えしたかったのは、1冊にまとめないでよいということです。すぐ渡すもの、場所だけ伝えるもの、死後に開くもの。分けてよいと分かれば、書ける項目から書けます。「全部書かなければ」という思い込みが、いちばんの障害です。

最後にひとつだけ。作っただけでは意味がありません。「万一のときのメモを、◯◯の引き出しに入れてある」。この一言を家族に伝えてください。そこまでやって、引継書は完成です。

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本記事は、編集部が公開情報と一般的な実務の流れをもとにまとめたものです。引継書には法的効力がありません。財産の行き先を決める必要がある場合は、必ず遺言書を作成してください。遺言書には方式に関する厳格な決まりがあり、要件を満たさないと無効になります。作成にあたっては公証役場、法務局(自筆証書遺言書保管制度)、司法書士・弁護士等の専門家にご相談ください。また、事業の承継や個人保証に関する事項は、税務・法務の論点を多く含むため、顧問税理士や専門家にご相談ください。暗証番号・パスワード等の秘密情報は、いかなる書面にも記載しないことをおすすめします。

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