遺体衛生保全士とは?なるには・資格・仕事内容・年収をわかりやすく解説

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「遺体衛生保全士」という言葉を聞いたことはありますか? エンバーマー、あるいはエンバーミングという言葉でご存じの方もいるかもしれません。漫画やドラマでも取り上げられ、タレントの壇蜜さんが資格を持っていることで話題になったこともある、少し珍しくてとても大切な仕事です。

この記事では、「遺体衛生保全士とは何か」「なるにはどうすればいいか」「資格の取り方・試験概要」「仕事内容や年収」「エンバーミングとの関係」まで、できるだけわかりやすくお伝えします。興味を持った方はぜひ最後までお読みください。


遺体衛生保全士(エンバーマー)とは?

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エンバーミングを行う専門の有資格者

遺体衛生保全士(エンバーマー・embalmer)とは、エンバーミング処理を行う専門の有資格者のことです。エンバーミング(embalming)とは、遺体を消毒・保存処理し、必要に応じて修復することで長期保存を可能にする技法で、日本語では「遺体衛生保全」といいます。

エンバーミングの具体的な工程は、①遺体の消毒・洗浄(洗髪・髭の剃毛)、②防腐剤の注入(頭部など小切開)、③血液や体液の排出(残存物の除去)、④遺体修復(切開部の縫合など)、⑤着付け・化粧——という流れになっています。最後の着付けは「身繕い(みづくろい)」、化粧は「エンゼルケア(エンゼルメイク)」とも呼ばれます。こうした一連の処置を行えるのが、「遺体衛生保全士」の資格を持つエンバーマーだけです。

エンバーミングとエンゼルケア・湯灌との違い

エンバーミングと混同されやすいものに「エンゼルケア」と「湯灌(ゆかん)」があります。それぞれの違いを整理しておきましょう。

名称
処置内容・目的
行う人
エンバーミング
殺菌・消毒・防腐処置・修復。血液を抜いて防腐液を注入し遺体を長期間(10〜14日程度)安全に保存する
遺体衛生保全士(エンバーマー)のみ
エンゼルケア
遺体の表面消毒・化粧。ドライアイスを用いた応急的な保存処置。お通夜〜火葬まで(2〜3日)の短期保存が目的
病院の看護師など医療従事者
湯灌(ゆかん)
納棺前に遺体をぬるま湯に入れて清める儀式。「現世での汚れを落とし清めてから来世へ」という意味を持つ
湯灌師など

エンバーミングはドライアイスを使わずに遺体を安全な状態で長く保てる点、そして生前に近い表情に修復できる点が大きな特徴です。「もう少し時間をかけてお別れしたい」「遠方の親族が集まるまで待ちたい」といった場面で、とくに力を発揮します。


エンバーミングの役割・メリット・デメリット

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エンバーミングの4つの役割

IFSA(一般社団法人 日本遺体衛生保全協会)では、エンバーミングの役割として次の4点を掲げています。(出典:IFSA(一般社団法人 日本遺体衛生保全協会)

  • 消毒・殺菌:感染症の原因となる病原菌・ウイルスを問わず、危険な感染を防ぐために遺体を消毒・殺菌します。遺体の中のウイルス・細菌は死後も生き続けることがあるため、対応が必要です。
  • 腐敗の防止:遺体は死後すぐ体内から腐敗が進むため、できるだけ早く薬剤で防腐処置を施します。処置後は臭いもほとんど感じられなくなります。
  • 修復・化粧:生前の安らかなお顔を取り戻し、ご遺族の心に良い思い出が残るよう施します。
  • 心ゆくまでのお別れ:衛生的に安全な状態となった遺体と、10〜14日程度ゆっくりとお別れができます。

エンバーミングのメリットとデメリット

メリット
デメリット
・病気や事故で変容した遺体を生前の状態に近く修復できる
・感染症リスクを軽減できる
・ドライアイス不要で遺体安置期間を長く保てる
・自宅の布団で安置し、近しく触れてお別れできる
・費用が15万〜20万円程度かかる(搬送費等は別途)
・防腐剤注入・切開が遺族に心理的負担となる場合がある
・火葬主流の日本では文化・慣習としてまだ浸透途上

費用の相場はIFSA(一般社団法人 日本遺体衛生保全協会)が基本料金を定めており、大きな差は出にくい仕組みになっています。ただし遺体の状態や葬儀社によって変動することがあります。悪質な業者の中には、エンゼルケアや湯灌をエンバーミングと称して高額請求するケースもあるという報告があります。依頼の際はエンバーマーの在籍有無を事前に確認することが大切です。

日本でのエンバーミング件数と法的位置づけ

日本にエンバーミングが導入されたのは1988年(191件)のことです。その後件数は年々増加し、2011年には約2万3,000件、2015年には約3万3,000件に達しています。2018年3月時点で処置を請け負う施設は58か所、費用は15〜20万円程度とされています。(出典:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』エンバーミングの項)

日本にはエンバーミングに関する専門の法律はなく、IFSAの自主規制のもとで施行されています。1994年には千葉県で「刑法190条(死体損壊罪)に該当するのではないか」という告発がありましたが、エンバーミングは死体損壊罪には当たらないと認められています。IFSAでは厳格な基準を定め、①本人または家族の署名による同意、②IFSA認定技術者のみによる施行、③最小限の切開・縫合・修復、④処置後50日を限度として火葬または埋葬——という4つのルールを厳守しています。(出典:IFSA(一般社団法人 日本遺体衛生保全協会)


遺体衛生保全士の資格・なるには

国家資格ではなく民間資格

エンバーマー(遺体衛生保全士)の資格は国家資格ではなく民間資格です。「遺体に直接触れる仕事なのになぜ?」と疑問に思う方もいるかもしれません。その背景には、日本が火葬文化であることが大きく関係しています。土葬が主流のアメリカやカナダでは、遺体からの感染症蔓延を防ぐためにエンバーミングが一般的・義務的に行われており、国家資格として整備されている国もあります。一方、火葬率が99%以上の日本では需要の絶対数が異なるため、現状は民間資格という位置づけになっています。

IFSAとしては国家資格化を目指して活動しており、若い世代への認知・普及にも力を入れています。エンバーミングに関する法律の整備が進み、国家資格となる日が来れば、より適正な実施体制が整うことが期待されます。

資格の取り方:IFSA認定の養成学校へ

遺体衛生保全士(エンバーマー)になるには、IFSA(一般社団法人 日本遺体衛生保全協会)が認定する養成学校に通い、資格を取得するのが王道のルートです。(出典:IFSA 認定養成校情報

資格取得の費用は概算で以下のとおりです。

  • 1年目:合計130万円
  • 2年目:115万円
  • 別途費用(2年間):32万円
  • 合計概算:約280万円前後※2026年実績のため、変更する場合あり

費用の面でハードルが高く感じられるかもしれませんが、企業によっては奨学金制度や資格取得支援を行っているケースもあります。検討の際は養成学校やエンバーミングセンターに直接問い合わせて確認するとよいでしょう。

なお、海外(アメリカ等)でエンバーマーの資格を取得する方法もありますが、ビザ取得の手間や現地での生活コストなど、さまざまな課題が生じる可能性があります。まずはIFSA認定の国内養成学校への問い合わせから始めることをおすすめします。

試験概要:養成校での2年間のカリキュラム

エンバーマー(遺体衛生保全士)の資格は、IFSA認定の養成学校での2年間のカリキュラムを修了することで取得できます。具体的には、解剖学・生理学・病理学・微生物学などの医学的知識に加え、防腐・修復・化粧などの実技を学びます。感染防止・衛生面や死後変化について適正な工程を学び、資格試験をクリアして従事しているのはエンバーマーだけとされており、納棺師や湯灌師とは異なる専門性を持ちます。

IFSA認定のエンバーマー資格についての問い合わせ窓口として、壇蜜さんも通学された以下の学校が知られています。

IFSA認定エンバーマー資格のお問い合わせ先
住所:神奈川県平塚市八重咲町7-30
TEL:0463-27-2002
学校法人鶴嶺学園
日本ヒューマンセレモニー専門学校 エンバーマーコース

IFSA加盟企業のエンバーミングセンターは、北海道(札幌)から鹿児島まで全国55施設(公式ホームページ掲載情報)にあります。資格取得後の求人・就職先としても把握しておくと参考になります。(出典:IFSA 加盟企業・施設一覧


遺体衛生保全士の仕事内容・年収

仕事内容:遺体の衛生保全から修復・化粧まで

遺体衛生保全士(エンバーマー)の仕事は、単に遺体を保存するだけではありません。ご遺族が「最後に笑顔で会えた」「生前と変わらない姿でお別れできた」と感じられるよう、遺体の尊厳を守りながら多岐にわたる専門的な処置を行います。

主な仕事の流れは次のとおりです。

  1. 遺体の消毒・洗浄(洗髪・剃毛を含む)
  2. 防腐液(衛生保全液)の注入(血液と交換する形で体全体に浸透させる)
  3. 血液・体液の排出
  4. 遺体の修復(事故や病気で損傷した部位の縫合・形成)
  5. 着付け(身繕い)と化粧(エンゼルメイク)

処置後の遺体はドライアイスなしで10〜14日程度安全に保てるようになり、遠方の親族が集まるまでの時間的余裕が生まれます。また、エンバーミングを施した遺体は布団で自宅安置でき、ご遺族が遺体に触れて温かみとともにお別れできるという点も、この仕事の大きな意義の一つです。

仕事柄、肉体的にも精神的にも負荷がかかる場面はありますが、「故人の尊厳を守り、遺族の悲しみに寄り添う」という使命感を持った方にとって、やりがいのある唯一無二の職種です。

年収・求人について

エンバーマーの求人は現状それほど多くはありません。これは日本国内のエンバーマー有資格者が2017年時点で約160人(IFSA認定エンバーマーがラジオ番組で語った情報)と、極めて少数精鋭の世界だからです。現在は増加していると思われますが、それでもごくわずかな有資格者で全国のエンバーミング処置を担っている状況で、深刻な人手不足が続いているといわれています。壇蜜さんも映画の公開記念トークショーの場でこの人手不足を指摘し、「これからどんどん必要になってくるお仕事だと思います」と将来性の高さを語っています。

給与・待遇については、冠婚葬祭企業「株式会社セルモ」(熊本県)の求人例では、年俸制+各種手当という形でベーシックコースからキャリアコースまで3段階の体系が設けられており、奨学金制度を活用した資格取得支援も行われていました(2019年11月現在の情報)。(出典:株式会社セルモ 公式サイト

具体的な年収の公開情報は限られていますが、専門性が高く代替の利かない職種であることから、一般的な葬祭業の平均よりも高い水準が期待できると考えられます。資格取得後は、IFSA加盟のエンバーミングセンターや葬儀社への就職が主なルートとなります。


エンバーミングと遺体衛生保全士の関係:なぜ「オンリーワン」なのか

故人をサポートする専門職には、映画「おくりびと」で広く知られた「納棺師」や、湯灌師などがいます。しかし、感染防止・衛生管理・死後変化について体系的に学び、資格試験をクリアして従事しているのはエンバーマーだけとされています。

エンバーミングは防腐液を毛細血管まで浸透させることで、体の表面まで殺菌・消毒が行き渡ります。ドライアイスで冷やすエンゼルケアとは根本的に異なる処置であり、修復・化粧の技術も含めて習得するには2年間の専門教育が必要です。こうした背景から、遺体衛生保全士は「唯一無二の存在」と呼ばれることもあります。

また、エンバーミングの始まりは古代エジプトのミイラにまでさかのぼるとも言われており、修復・防腐という工程はミイラと共通の意義を持つとされています。世界的に有名な例としては、イタリアの「世界一美しい少女のミイラ」と称されるロザリア・ロンバルド(1918〜1920年)があります。シチリア人エンバーマーによる処置で、死後100年近くたった今も生前に近い姿を保っていることが知られています。


壇蜜さんが資格を持つことで話題に

遺体衛生保全士(エンバーマー)の知名度を広めた出来事の一つが、タレント・壇蜜さんが資格保有者であることです。壇蜜さんは冠婚葬祭の専門学校「日本ヒューマンセレモニー専門学校」に通い、IFSA認定の遺体衛生保全士資格(エンバーマーライセンス)を取得しています。

資格取得のきっかけとして、学生の頃に漫画を通じて職業を知ったことは以前から語られていましたが、実際に取得へと踏み出した直接の契機は恩師の死を経験したことだといいます。壇蜜さんは映画『旅立ちのラストダンス』の公開記念トークショーに登壇した際、「生きると死ぬということの考え方が少し身近になった」と振り返り、「人はいつでも死んじゃうタイミングがあるし、命だって1つしかない。いずれ私たちだってあの世に行くんだなって、漠然と当たり前のことを思って。それを強く意識したら興味を持ちました」と語りました。

資格取得のために通った学校では、解剖学やホルマリンの扱いに関する座学に加え、実際に葬儀社へ赴いてエンバーミングの技術を学び、業務にも従事したといいます。同トークショーでは遺体衛生保全士が人手不足の状況にあることも指摘しており、「これからどんどん必要になってくるお仕事だと思います」と、この職種の重要性と将来性についても語っています。

このような背景から、壇蜜さんは終活関連のイベントにも招かれており、終活読本「ソナエ」の表紙を飾るなど、終活の分野とも縁が深い存在として知られています。


エンバーミングを題材にした漫画・映画

エンバーマーが登場する主な作品

エンバーミングやエンバーマーを題材にした作品は、「終活」という言葉が生まれるよりもずっと前から存在していました。

  • 「死化粧師(しげしょうし)」(三原ミツカズ著):エンバーマー・間宮心十郎が主人公のヒューマンストーリー。「FEEL YOUNG」で2002〜2013年連載。2007年にはテレビドラマ(テレビ東京)にもなりました。
  • 「黒鷺死体宅配便」(山崎峰水著):壇蜜さんがエンバーミングを知るきっかけとなった作品。エンバーミング能力を持つ若者たちが活躍する異色のコミック。
  • 「エンバーミング」(和月伸宏著、2007年発表):「るろうに剣心」の作者によるエンバーミングをテーマにした漫画。
  • 映画「エンバーミング(EM)」(1999年制作):高島礼子さん・松重豊さん出演。エンバーマーの存在が社会的に知られるきっかけとなった映画の一つ。

こうした作品が生まれ続けていること自体、エンバーマーという仕事が持つ深い人間的な意義——「生と死のあいだに寄り添う」という姿——への関心の高さを示しているのではないでしょうか。


まとめ|遺体衛生保全士(エンバーマー)を知るための5つのポイント

  • 遺体衛生保全士(エンバーマー)とは、エンバーミング(遺体衛生保全)処置を行う専門の有資格者のこと。消毒・防腐・修復・化粧まで一貫して行います。
  • 資格は民間資格(国家資格ではない)。IFSA(一般社団法人 日本遺体衛生保全協会)認定の養成学校で2年間学び、資格試験に合格することで取得できます。費用は概算240万円前後。(出典:IFSA公式サイト
  • 仕事内容は遺体の消毒・防腐液注入・修復・着付け・化粧まで多岐にわたります。処置後は10〜14日程度安全に保存でき、遺族がゆっくりお別れできる環境が生まれます。
  • 年収・求人は現状多くはありませんが、年俸制+手当の形が多く、専門性の高さから一定の評価を受けられる職種です。国内有資格者は2017年時点で約160人と希少な存在。
  • エンバーミングは日本でも件数が増加中。2015年時点で年間3万3,000件超に達しており(Wikipedia掲載情報)、今後も需要拡大が見込まれます。IFSAは国家資格化を目指しています。

エンバーマーという仕事は、「死」と向き合いながら、ご遺族の悲しみに寄り添い、故人の尊厳を守る、とても大切な仕事です。医療知識・技術・倫理観のすべてが問われるこの資格に興味を持った方は、ぜひIFSAや養成学校に問い合わせてみてください。


📞 資格・養成校についてのお問い合わせ

遺体衛生保全士(エンバーマー)の資格取得を検討している方は、まずIFSA認定養成校に相談するところから始めてみましょう。資格の詳細・費用・カリキュラムについて丁寧に教えてもらえます。

IFSA認定養成校の情報はこちら
日本ヒューマンセレモニー専門学校 エンバーマーコース(TEL:0463-27-2002)
IFSA(一般社団法人 日本遺体衛生保全協会)公式サイト

ちょっと難しく聞こえるかもしれませんが、気になる点は何でも問い合わせてみてください。窓口の方が丁寧に教えてくれるかと思います。

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