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かつて忌明けの食事の意味合いがあった精進落とし(しょうじんおとし)ですが、現代における精進落としは目的や行われるタイミングが変わってきています。
現代の精進落としが持つ意味や料理のメニュー、金額の相場、席でのマナー、香典返しとの関係性など様々な角度から精進落としについてまとめています。
▼この記事を読んで理解できること ・精進落としの意味や内容 ・精進落としはいつ行うのか? ・精進落としの席順やマナー ・精進落としの費用相場 など |
終活中に自身の葬儀の事について考える機会はあると思います。
ひとくちに葬儀といってもお通夜や告別式といったように儀式が幾つかあり、この記事で紹介する精進落としも儀式と捉える事ができます。
終活中に葬儀の事を考える際、精進落としについて知っておくべき事をできる限りわかりやすく解説しているので、ぜひ最後までお読み下さい。
目次
精進落としとは?
「精進落とし(しょうじんおとし)」とは、どんな意味なのかをウィキペディア(Wikipedia)で調べてみると、2つの意味で記述されています。
▼精進落としの意味と由来
精進落とし(しょうじんおとし)とは、寺社巡礼・祭礼・神事など、精進潔斎が必要な行事が終わった後に、肉・酒の摂取や異性との交わりを再開したり、親類に不幸があって通常の食事を断って精進料理を摂っていた人が、四十九日の忌明けに精進料理から通常の食事に戻すことなどを言う。
1つ目の意味は、本来の「精進落とし」の意味として記述されていますが、現代の「精進落とし」としては、次のように記述されています。
▼現代の精進落としの意味
現代における「精進落とし」の用法は、初七日法要(本来は死後7日目に行うものだが、現代ではほとんどの地域で火葬場から戻った後に行う。)の際に、僧侶や世話役などの労をねぎらう宴席において食事が行われることが多いが、この食事を「精進落とし」と称することが一般的となっている。
わかりやすく言うと、現代における「精進落とし」とは、初七日法要の際に僧侶や参列者に対して、労をねぎらうための食事の意味合いになっています。
▼「精進落とし」の別称
・精進明け(しょうじんあけ)
・精進上げ(しょうじんあげ)
・精進落ち(しょうじんおち)
ほか、「精進落し」と表記される事もあります。
精進落としの意味をまとめると以下の通りです。
・本来は忌明けにあたる四十九日が済んでから行われるものだった ・遺族は四十九日が過ぎるまで喪に服して、魚や肉を避けた食事(精進料理)を摂るべきだとされていた 通常通りの生活に戻るための区切りとして精進落としがあった 現代において、精進落としは「葬儀の際の疲れをねぎらうもの、葬儀の区切り」、「僧侶や参列者へのおもてなし」となっている |
このように、精進落としは時の流れを経て、意味合いが現代のようになっていったと捉えられます。
※精進落としがいつ行われるのかについては、このあと「精進落としはいつ行う?」にて解説しています。
また、精進落としが元々の意味合いと現代における精進落としの意味合いが変わってきているという点では「精進落としの鯉」も、かつての意味合いと変わってきているようです。
「精進落としの鯉」とは?
日本で最も歴史がある巡礼行であると言われている西国三十三所の三十三番札所、岐阜県に位置する華厳寺の本堂入口の二本の柱につけられている青銅製の鯉の事を言います。
※西国三十三所とは、近畿や岐阜県に33か所ある観音信仰の霊場
かつての巡礼者達は華厳寺で参拝を済ませ、この鯉に触れる(撫でる)事により精進生活からすっかり開放された気持ちになった事から「精進落としの鯉」と呼ばれるようになったそうです。
「精進落としの鯉」は、今でも多くの参拝者が撫でていくようです。
ですが、ほとんどの人は単に観光参拝者であり、精進落としとは何の関係もないという形でみられています。
鯉に触る事は、特に意味のない一種の儀式のようになっていると見解されています。
このように、「精進落とし」の意味合いの変化につれて「精進落としの鯉」も変化を見せているという事もわかります。
もし華厳寺に行く機会があれば、「精進落としの鯉」を触る事で自分自身を労うような気持ちになれるかも知れません。
そのほかの「精進落とし」にまつわる話 江戸時代、伊勢参りの参拝後に「精進落とし」をする人々が増加したことにより、古市(ふるいち)という大きな遊郭(歓楽街)が栄えた ⇒古市(ふるいち)とは、三重県伊勢市の地名(古市町) |
「精進落とし」英語では?
考察1.精進落とし本来の意味を踏まえると「Vegetarian Dropped(ベジタリアン ドロップド)」または「Vegetarian quit(ベジタリアン クゥイト)」
⇒ どちらの英語も菜食をやめるという意味になるので、精進落とし本来の意味である「忌明けに精進料理から通常の食事に戻す」に該当するものと考えられます
考察2.英文例などを観ると、「Shojin Otoshi」とローマ字表記の場合が多くみられます
精進落としはいつ行う?
精進落としは、初七日法要の後に行われるのが一般的です。
初七日法要(しょなぬかほうよう)とは? 故人が亡くなった日から七日目に行う法要 読み方は「しょなぬかほうよう」の他に「しょなのかほうよう」とも言われます |
ただ、近年は初七日法要を葬儀当日に行う事が多くなっています。
⇒ 火葬場から戻った際、精進落としの会場へ移動して行われている
※地域によっては火葬中の待ち時間に精進落としを行うところもあります
精進落としと通夜振る舞いの違い
精進落としに似ているもので、通夜振る舞い(つやぶるまい)があります。
どちらも「お酒や料理でおもてなす」いう点では共通していますが、それぞれ行われるタイミングと食事のおもてなし方に違いがあります。
精進落とし | ▼いつ?タイミング 初七日法要の後(火葬後または火葬中) ▼おもてなし方 大皿料理は避ける 1人分ずつ用意(人数分の膳を用意) |
通夜振る舞い | ▼いつ?タイミング 通夜の後 ▼おもてなし方 ・取り分けしやすい大皿料理(オードブルやお寿司など) ・少し多めの人数分で用意 |
精進落とし、通夜振る舞いはどちらも仏式の葬儀において行われるものです。
ちなみに浄土真宗では「通夜振る舞い」「精進落とし」どちらも「お斎(おとき)」と言います。
そのため、葬儀社によっては精進落としを行う場所の事を「お斎室(おときしつ)」と表記しているところもあります。
仏式以外での精進落とし
仏式の精進落としのような振る舞い、おもてなしは神式(神道)でも行われる場合があります。
神式の場合は直会(なおらい)と呼ばれるもので、これが精進落としにあたります。
直会は神事の最後に供物やお酒を飲食する事になります。
神様へと捧げた供物を口にする事で、身を清めるといった意味合いもあるようです。
神式の場合は葬儀も神事となりますが、葬儀だけでなく神事すべてにおいて直会を行うのが基本とされています。
※地域や宗派によって異なる場合もあります
このように、神式では仏式の精進落としのような飲食の席が直会として行われますが、キリスト教の場合はまた違ってきます。
キリスト教の場合はお酒や料理といった形ではなく、お茶菓子で振る舞われる事が多くなっています。
精進落としの内容について
次に、精進落としの内容について解説していきます。
精進落としでの食事はどんなものなのか?
精進落としのタイミングや挨拶とは?
など、それぞれ解説していきますので、実際に精進落としを行う際、お役立て頂けると幸いです。
料理や弁当・メニュー
現在の精進落としのメニューは、和食が多いのが一般的です。
葬儀社の葬儀プランに「精進落としメニュー」として、食材に合わせて料金別で幾つか用意されていたりもします。
その場合、季節の食材を生かし、見た目としても多彩な盛り合わせになっているメニューが多く見られます。
精進料理そのものは魚や肉を摂らないものですが、近年の精進落としにはお肉や油を使った「こってり系」の料理も増えてきています。
※肉や魚を入れるかどうかは地域や精進落としメニューがある葬儀社によって異なります
精進落としのメニュー例 | |
お寿司 | 季節野菜のお浸し |
黒飯(黒豆おこわ) | 酢の物 |
炊き込みご飯 | お吸い物 |
基本的に精進落としは懐石料理のような形で出される事が多いですが、仕出し弁当(重箱に詰められたお弁当)を用意するケースも見られます。
また、何処で精進落としをするのか、その場所によってメニューを決めたりもします。
※例えばご自宅や斎場なら仕出し弁当、料亭で懐石料理にて行う、など。
ちなみに、めでたいイメージが連想される事から、鯛や伊勢海老は精進落としのメニューとして不向きだと言われています。
精進落としの挨拶・献杯の挨拶
▼精進落としの時の挨拶について
精進落としの挨拶のタイミング | 精進落としをする会場で全員が席に着いたら |
誰が挨拶するのか? | 喪主または親族代表 |
▼精進落とし開始の挨拶例 皆様、本日は誠に有難うございました。 皆様のご厚意、お力添えのおかげで、葬儀を無事に終える事ができました。 誠にささやかではありますが、皆様への感謝と慰労の思いを込めまして精進落としの席をご用意いたしました。 故人の思い出話などをしながら、ゆっくりとお過ごしいただければと存じます。 本日は有難うございました。 |
そして、精進落としの挨拶の際に行うのが献杯(けんぱい)になります。
法要などの席では乾杯の言葉は使わず、献杯が使われるのが一般的です。
▼精進落としの献杯の挨拶について
献杯のタイミング | 精進落としの挨拶をする際(挨拶のはじめに) |
誰が献杯の挨拶するのか? | 喪主または親族代表(挨拶をする方が行っても問題ありません) |
▼精進落としの挨拶をする方が行う場合 それでは皆様、これより献杯をさせて頂きます。 どうぞ、お手元のグラスをお持ち下さい。 (この間で故人との思い出話を一言添える) 故人の御冥福と、皆様の御健勝を祈念いたしまして献杯させて頂きます。 皆様、御唱和をお願いします。 献杯。 ▼他の方が献杯を行う場合 皆様、ただいま精進落としの挨拶を行いました喪主の○○(または親族の○○)に代わりまして、私、○○が献杯の辞を述べさせていただきます。 (この間で故人との思い出話を一言添える) 故人の御冥福と、皆様の御健勝を祈念いたしまして献杯させて頂きます。 皆様、御唱和をお願いします。 献杯。 |
「献杯」と発する際、祝辞席での乾杯ではないので、なるべく静かに言うように心がけましょう。
※献杯の際、隣同士でグラスを乾杯して音を立てないようにしましょう
そして、ほどよく時間も経過した後、開始の挨拶をされた方(他の遺族の方でも)が、精進落としの締めの挨拶を行います。
▼精進落としの締めの挨拶例 皆様、本日はお忙しい中、有難うございました。 皆様からの故人の思い出話などもっとお伺いしたいところですが、皆様もお疲れの事と思いますので、この辺でお開きとさせて頂きたいと存じます。 本日は誠に有難うございました。 |
開始の挨拶にも言える事ですが、参列者の方々へのおもてなしの気持ちを意識して挨拶すれば、細かな挨拶内容はさほど気にしないでもいいと思われます。
精進落としの流れ
上記の挨拶を含め、精進落としの一般的な流れについて紹介しておきます。
▼精進落としの流れ 火葬後(または火葬中)、精進落としを行う会場へと移動します 遺族側であらかじめ決めておいた精進落としの席順通りに配置、着席 喪主(または他の遺族)による精進落とし開始の挨拶 精進落とし献杯の挨拶(開始挨拶を行った方または親族) ・静かな声で献杯の発声、唱和 ・合掌(または黙とう) 飲食開始 ・喪主や遺族の方は参列者へお酌しながらお礼を述べて1人づつ回る 精進落としの締めの挨拶 |
※地域や宗派によって順番が異なる場合もあります
精進落としは会食(飲食)の場ですが、食事の時間は大体1~2時間くらいなのが一般的です。
精進落としにかかる金額
精進落としにかかる費用としては、以下のようになっています。
・お酒や料理などの飲食代
・お膳料やお車代(僧侶が出席しない場合)
・引き出物代(地域による)
順にそれぞれ解説していきます。
▼お酒や料理などの飲食代
精進落としでのお酒(ジュース含む)や料理は、次の4つから選択する形です。
✔ 料亭など懐石料理店で注文配達
✔ 料亭など懐石料理店で直接会食
✔ 仕出し弁当店に注文
✔ 葬儀社で手配(葬儀社による精進落としのメニューがある、または代行)
値段に関して、平均的な相場は3,000円~5,000円(1人あたりの料金)が一般的となっています。
料理はどれくらいの数を用意すればいいのか?
人によって家族・親戚の人数は違いますが、結果として料理が余る事によって費用がかさんでしまう事よりも、料理が人数分足りなくて参列者に失礼な結果になってしまう事を気にされる方のほうが多いようです。
「予想人数+少し余分に」というのが無難だと言えます。
▼お膳料・お車代
お膳料やお車代とは、僧侶やお坊さんなど、宗教者の方が精進落しに出席されない場合に必要な費用となります。
✔ お膳料(御膳料とも表記される)…精進落としの料理(お膳)の代わりに渡すお布施(※)
✔ お車代…僧侶に対して用意する交通費の事
平均的な相場は5,000円~10,000円(お膳料・お車代と合わせて)ぐらいが多くなっています。
お車代は僧侶の移動費ですので、近くからなのか遠方からなのかで大きく変動する場合もあります。
(※)お布施について詳しくはこちらの記事でまとめていますので、合わせてお読み下さい
▼引き出物代
地域によって精進落としの際、引き出物を渡しているところもあるようです。
精進落としに限らず、故人を供養する法要(法事)において、お招きした方々に差し上げる返礼品(手土産)は「法事の引き出物」と呼ばれています。
精進落としの引き出物を準備する場合、一般的な法事の引き出物と同じように考えればいいでしょう。
⇒ 食品や消耗品、日用的な実用品など
費用相場ですが、一般的には3,000円~5,000円と言われています。
精進落としのマナー
精進落としにおいて、一番のマナー違反は「精進落としを行わない事」です。
葬儀や法要は何かと費用のかかってしまうものではあるものの、参列していただく方へおもてなしをする費用は削ってはいけないものと認識されているのが一般的なので、精進落としをしないという行為はマナー違反とされます。
※やむをえず精進落としをしない場合は、折り詰めの料理などを参列者にお渡しするものとなっています
精進落としにおける基本的なマナーは、特に意識するような難しいものはないと言えます。
✔ 献杯の挨拶より前にお酒、料理に手をつけてはいけない
✔ 献杯の際、誰であっても乾杯のようにグラスとグラスで「チン」という音をさせてはいけない(乾杯ではないため)
✔ 大声は出さない
✔ 笑い声は出さない
など、精進落としの席でのマナーは、一般良識の範囲内だと言えます。
久しぶりに親族一同が集まる事により、何かと話が盛り上がる事も多いようですが、大声や笑い声はマナー違反にあたるので覚えておくようにしましょう。
また、一般的な常識ですが、車の運転をする方にお酒をすすめるのも当然NG行為です。
基本的には普段の飲み会のようになってしまわないように注意すれば問題ないでしょう。
精進落としの時の服装について 服装に関しては葬式、火葬に参列した際の服装で問題ありません また、精進落としに参列するにあたって何か特別な持ち物が必要になる事もありません |
精進落としでの席順
精進落としの席は、その席順が決められているのが基本です。
以下の座席図例を参考に、基本的には上座に僧侶の方を、次に世話役代表や世話役の方々、友人、近親者といった配置になります。
精進落としでの席順図
喪主や遺族は精進落としにて「もてなす」側となるため、末席(入口付近)に座るのがマナーとされています。
参列者が何処に座っていいのか迷ったりしないように、あらかじめ席を決めておくようにしましょう。
精進落としに香典は必要?
「精進落としってお香典は包むもの?」
精進落としの席に参列する方からすると、気になる方はわりといらっしゃるようです。
結論から言うと、地域差や個人差があると言えます。
精進落としは喪主、遺族の方からのお礼(おもてなし)という意味合いがあるので、香典に関しては気にしないでいいというのが基本的なようですが、葬儀の際の香典に少し多めに包むという方もいらっしゃいます。
地域によって香典とは別で包むという事もあるようです。
飲食代など喪主や遺族の負担も考えた金額分を、葬儀の際の香典に包む事が配慮として間違いないと言えるのではないでしょうか。
まとめ
精進落とし(しょうじんおとし)について、できる限りわかりやすく紹介しました。
最後におさらいとして、要点をそれぞれまとめておきます。
✔ 「精進落とし」本来は忌明けにあたる四十九日が過ぎるまでは精進料理を摂って喪に服し、通常通りの生活に戻るための区切りの意味 ✔ 「精進落とし」現代は葬儀の際の疲れをねぎらうもの、葬儀の区切り、僧侶や参列者へのおもてなしの意味を持った会食(お酒や料理) ✔ 現代における精進落としは、初七日法要の後に行われるのが一般的 ✔ 精進落としは仏式の教えで、神式の場合は直会(なおらい)が精進落としにあたる ※キリスト教はお茶菓子で振る舞われる事が多い ✔ 精進落としのメニューは和食が多いのが一般的、費用相場は3,000円~5,000円(1人あたりの料金) ✔ お膳料・お車代の相場は5,000円~10,000円(お膳料・お車代と合わせて) ✔ 引き出物を用意する場合、3,000円~5,000円が一般的 ✔ 献杯の挨拶は参列者への感謝と労いの気持ちで ✔ 精進落としの席順は、上座から僧侶の方、世話役代表や世話役、友人、近親者の順で、喪主や遺族は精進落としにて「もてなす」側なので末席に座るのがマナー ✔ 精進落としの時の香典は地域差や個人差があるが、葬儀の際の香典に少し多めに包むよう配慮したいもの |
精進落としのように、「何となく知ってる」「聞いた事があるけど具体的によく知らない」といったケースが葬儀関係には多く見られるように思います。
今回の記事が皆さんのお役に立てば幸いです。