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同性のパートナーと長く暮らしていても、日本の法律では相続人になりません。つまり何も準備しないまま一方が亡くなると、財産は1円も渡らず、疎遠な親族へ引き継がれます。住まいが亡くなった側の名義なら、住み続けられなくなることもあります。ただし、やるべきことははっきりしています。この記事では、遺言書・任意後見契約・死後事務委任契約・医療の場面への備えという4つの柱を、順番に沿って整理します。
この記事の結論
- 同性パートナーは法定相続人になりません。遺言書がなければ財産は渡りません
- 用意するのは4つ。遺言書・任意後見契約・死後事務委任契約・医療の場面への備え
- 遺言書は公正証書を強くおすすめします。争いになりやすいためです
- 遺言執行者を必ず指定してください。これがないと手続きが止まります
- 遺贈になるため、相続税は2割加算されます
- 自治体のパートナーシップ制度は相続の問題を解決しません(できることは別にあります)
この記事でわかること
- 何もしないと何が起きるか
- 備えの全体像(4つの柱)
- 遺言書の作り方と、公正証書をすすめる理由
- 遺留分と相続税の2割加算
- 任意後見契約と死後事務委任契約
- 医療の場面(面会・説明・同意)への備え
- パートナーシップ制度でできること・できないこと
- 養子縁組という選択肢と、その重さ
- カミングアウトしていない場合の進め方
同性パートナーは法定相続人になりません
| 関係 | 法定相続人になるか |
|---|---|
| 法律上の配偶者 | なる(常に相続人) |
| 子 | なる |
| 親 | 子がいなければなる |
| 兄弟姉妹 | 子も親もいなければなる |
| 同性のパートナー | ならない |
| 内縁・事実婚の相手(異性) | ならない |
同居年数も、生計を一つにしていたことも関係ありません
何十年一緒に暮らしていても、家計を共にしていても、法定相続人にはなりません。これは同性間に限らず、婚姻していない相手すべてに共通する扱いです。だからこそ、「書面で作る」しかありません。気持ちや実態では代替できない部分です。
何もしないと何が起きるか
| 場面 | 準備がないと | 準備があると |
|---|---|---|
| 財産 | 1円も渡らず、親族へ | 遺言書で渡せる |
| 住まい(亡くなった側の名義) | 住み続けられなくなることがある | 遺言書で残せる |
| 住まい(賃貸で名義が相手) | 契約は相続人へ。明け渡しを求められることも | 名義や取り決めで対応できる |
| 入院中の面会・説明 | 断られることがある | 書面と事前の申し出で通ることが多い |
| 判断力が落ちたとき | 代わりに手続きできない | 任意後見契約で対応できる |
| 亡くなったあとの手続き | 葬儀も部屋の片づけもできない | 死後事務委任契約で頼める |
| 遺骨・お墓 | 親族が引き取り、会えなくなることも | 希望を残し、契約で担保できる |
| 共有していたお金 | 口座名義人のものとして扱われる | 記録と書面で整理しておく |
備えの全体像|4つの柱
| 柱 | いつ効くか | 方式 | 優先度 |
|---|---|---|---|
| ①遺言書 | 亡くなった後 | 公正証書がおすすめ | 最優先 |
| ②任意後見契約 | 判断力が落ちたとき | 公正証書(必須) | 高い |
| ③死後事務委任契約 | 亡くなった直後 | 書面(公正証書が望ましい) | 高い |
| ④医療の場面への備え | 入院・急変のとき | 事前指示書・委任状など | 今日からできる |
4つで、生きている間と亡くなった後の全部をカバーします
財産の行き先は①、判断力が落ちてから亡くなるまでは②、亡くなった直後の事務は③、入院や急変の場面は④。ひとつでも欠けると、そこに空白ができます。①②③はいずれも判断能力があるうちにしか作れません。④は今日からでも用意できます。
①遺言書|これがすべての土台
| 書き方 | 「◯◯(パートナーの氏名・生年月日・住所)に、下記の財産を遺贈する」 |
|---|---|
| 相続と遺贈の違い | 相続人でない人に渡すことを遺贈という |
| 特定するもの | 不動産は登記事項のとおりに、預金は金融機関名・支店名・口座番号まで |
| 方式 | 公正証書遺言/自筆証書遺言(法務局の保管制度を使うと安全) |
| 遺言執行者 | 必ず指定する(次章) |
| 付言事項 | なぜこう決めたかを自分の言葉で書ける(法的効力はない) |
「全財産を◯◯に」だけでは足りないことがあります
財産を特定していないと、金融機関や法務局で手続きが進まないことがあります。不動産は登記事項証明書のとおりに、預金は金融機関名・支店名・口座番号まで書いてください。あわせて受け取る人の氏名・生年月日・住所も正確に。同姓同名の可能性を排除するためです。
遺言書は公正証書を強くすすめます
| 自筆証書遺言(自宅保管) | 自筆+法務局保管 | 公正証書遺言 | |
|---|---|---|---|
| 費用 | かからない | 手数料 | 手数料 |
| 形式の不備 | 無効になることがある | 形式のチェックあり | まず起きない |
| 紛失・隠匿 | おそれがある | 防げる | 防げる |
| 検認 | 必要 | 不要 | 不要 |
| 作成能力を争われたとき | 争いやすい | 争われ得る | 公証人が関与しており強い |
| 手続きの進めやすさ | 時間がかかる | 比較的早い | 最も早い |
争われる可能性を前提に選んでください
法定相続人でない相手に財産を渡す遺言書は、相続人から「本当に本人が書いたのか」「そのとき判断能力があったのか」と争われる可能性が、通常より高くなります。公正証書遺言は公証人が本人の意思と能力を確認して作成するため、この点で最も強くなります。費用はかかりますが、ここは節約するところではありません。
遺言執行者を必ず指定する
| 指定しないと | 指定すると |
|---|---|
| 相続人の協力がないと手続きが進まないことがある | 執行者が単独で手続きを進められる |
| 金融機関で解約が滞る | 解約や名義変更を進められる |
| 不動産の登記が止まる | 登記の申請ができる |
| 相続人と直接やり取りすることになる | 執行者が窓口になり、直接の接触を避けられる |
最後の行が、実は大きい
相続人と面識がない、あるいは関係が良くない場合、手続きのたびに直接やり取りするのは、精神的な負担が非常に大きくなります。遺言執行者を弁護士や司法書士などの第三者にしておくと、その窓口を代わってもらえます。パートナー本人を執行者にすることもできますが、第三者のほうが摩擦は少なくなります。
遺留分に注意する
| 亡くなった方に | 遺留分 | 結果 |
|---|---|---|
| 子がいる | あり | 遺留分を請求される可能性がある |
| 子はいないが親が健在 | あり | 同上 |
| 子も親もおらず、兄弟姉妹のみ | なし | 遺言書だけで全部渡せる |
| 相続人が誰もいない | なし | 遺言書がなければ最終的に国庫へ |
まず「自分に子と親がいるか」を確認してください
子も親もおらず、兄弟姉妹しかいない場合、遺留分はありません。つまり遺言書1通で、財産を全部パートナーに渡せます。逆に親が健在なら、遺留分を請求される可能性があります。その場合は、遺留分に相当する分を現金で用意しておく、生命保険を活用するといった対応を、弁護士と検討してください。
相続税は2割加算されます
| 2割加算の対象 | 配偶者および一親等の血族(子・親)以外が財産を取得した場合 |
|---|---|
| 同性パートナー | 対象になる(相続税額が2割増しになる) |
| 配偶者の税額軽減 | 使えない(法律上の配偶者ではないため) |
| 基礎控除 | 3,000万円+600万円×法定相続人の数(パートナーは人数に含まれない) |
| 小規模宅地等の特例 | 要件が細かい。適用の可否は個別に確認が必要 |
※ 税額の計算・適用要件は制度改正で変わります。必ず国税庁の情報をご確認のうえ、税務署または税理士にご相談ください。
「渡せるが、税負担は重い」という前提で計画してください
遺言書があれば財産は渡せます。ただし配偶者の税額軽減は使えず、税額は2割加算されます。納税は原則として現金です。不動産だけを遺贈すると、受け取った側が納税資金を用意できないことがあります。相続税がかかりそうな場合は、現金をあわせて残すか、生命保険を検討してください。必ず税理士にご相談ください。
②任意後見契約|判断力が落ちたとき
- 公正証書で作成しなければならない
- 誰を後見人にするかを自分で決められる(パートナーを指定できる)
- 結んだ時点では効力が生じない。判断力が低下してから、家庭裁判所が監督人を選任して開始
- これがないと、判断力が落ちたときに親族が法定後見を申し立てることになりかねない
- 財産管理と、生活・療養に関する手続きを任せられる
- 判断能力があるうちにしか結べない
「誰が後見人になるか」を自分で決められる制度です
任意後見契約がないまま判断力が低下すると、家庭裁判所が後見人を選ぶ法定後見になります。申し立てるのは親族などで、選ばれるのがパートナーとは限りません。そうなると、日々の生活の判断にパートナーが関われなくなるおそれがあります。先に決めておけるのは、いましかありません。
③死後事務委任契約|亡くなった直後
| 頼めること | 内容 |
|---|---|
| 死亡の届出 | 死亡届の提出、火葬許可の取得 |
| 葬儀・火葬 | 形式と規模を事前に決めておける |
| 納骨・供養 | どこに納めるかまで指定できる |
| 関係者への連絡 | 知らせてほしい人の名簿を渡しておく |
| 住まいの明け渡し | 賃貸の解約、家財の処分 |
| 契約の解約 | 電気・ガス・水道・通信・月額サービス |
| 行政手続き | 健康保険・年金・介護保険の届出 |
遺言書ではこれらを頼めません
遺言書で決められるのはおもに財産の行き先です。「葬儀をしてほしい」「部屋を片づけてほしい」といった事務は、遺言書に書いても実行を確保できません。死後事務委任契約は、遺言書とは別に必要です。費用の手当てもあわせて決めておいてください。
④医療の場面への備え
| 場面 | 実際に起きること | 備え方 |
|---|---|---|
| 面会 | 「ご家族のみ」と言われることがある | 事前に病院へ申し出て、書面を示す |
| 病状の説明 | 同席を断られることがある | 本人が「この人に説明してほしい」と書いておく |
| 手術などの同意 | 本人以外の署名を求められることがある | 本人の意思表示を書面で残す |
| 急変時の連絡先 | 親族に連絡が行く | 緊急連絡先として届け出ておく |
| 延命治療の希望 | 家族が判断することになる | 事前指示書に書いておく |
法律で「家族以外は不可」と決まっているわけではありません
面会や説明の範囲は、法律ではなく各病院の運用です。したがってあらかじめ申し出て、本人の意思を示す書面を用意しておけば、認められることが少なくありません。入院が決まった時点で、「この人に付き添い・説明をお願いしたい」と本人から伝えるのが最も確実です。書面は一筆で構いません。
医療の場面で示す書面の例(本人が書きます)
私◯◯◯◯(生年月日)は、私の療養および入院に関して、下記の者に付き添い、病状の説明を受け、私の意思を伝えることを委任します。
氏名:◯◯◯◯(生年月日・住所)
私との関係:長年生活を共にしているパートナーです
また、私が自分の意思を伝えられない状態になったときは、上記の者の意見を尊重していただきたく思います。
◯年◯月◯日 署名
自治体のパートナーシップ制度でできること・できないこと
できることがある
- 公営住宅への申し込み
- 病院での面会・説明の配慮
- 自治体の一部の手続き
- 職場や民間サービスでの扱い
- 関係を示す書面として使える
できないこと
- 相続人になること
- 配偶者の税額軽減を受けること
- 法定後見で優先されること
- 配偶者としての年金の受給
- 婚姻と同じ法的効果
制度があっても、遺言書は必要です
パートナーシップ制度は日常の場面で扱いが変わるという点で大きな意味があります。ところが相続の問題は解決しません。「制度に登録したから安心」と考えて遺言書を作らないでいると、亡くなったときに財産は渡りません。両方を用意してください。なお制度の有無・名称・利用できる場面は自治体によって異なるため、お住まいの市区町村にご確認ください。
養子縁組という選択肢と、その重さ
| できるようになること | 知っておくべきこと | |
|---|---|---|
| 相続 | 相続人になる(実子と同じ扱い) | 遺言書がなくても相続できる |
| 相続税 | 2割加算の対象外になる | 基礎控除の人数にも算入される |
| 戸籍 | 親子として記載される | 戸籍上の関係が変わる |
| 年齢 | — | 年長者を養子にすることはできない |
| 解消 | — | 合意できないと簡単には解消できない |
| 将来 | — | 親子関係になるため、その後の選択に影響する |
実務上の効果は大きい一方、後戻りしにくい選択です
養子縁組は相続の問題を根本から解決します。相続人になり、相続税の2割加算も対象外になります。ただし戸籍上は親子となり、関係の解消には相手の合意が必要です。また将来の選択に影響する面もあります。「相続対策として手軽な方法」ではありません。選ぶ場合は、二人でよく話し合い、弁護士などの専門家に相談したうえで判断してください。
生命保険の受取人
- 受取人は戸籍上の配偶者や二親等内の血族に限る扱いが一般的だった
- 近年は同性パートナーを受取人に指定できる保険会社が出てきている
- その場合、同居の期間や、自治体のパートナーシップ証明などの確認を求められることがある
- 会社ごとに取り扱いが違うので、加入前に必ず確認する
- 受け取った保険金は相続税の対象になり、非課税枠は相続人でないと使えない
- 納税資金の確保という点では有効な手段になり得る
保険は「渡す手段」としても「納税資金」としても使えます
生命保険は遺産分割の対象にならず、受取人に直接支払われるという性質があります。したがって、遺留分の問題や納税資金の確保に効くことがあります。ただし取り扱いは会社によって異なり、税の扱いも複雑です。加入前に保険会社と税理士の両方に確認してください。
住まいをどうするか
| 住まいの形 | 起きること | 備え方 |
|---|---|---|
| 持ち家・相手の単独名義 | 相続人のものになる | 遺言書で遺贈する |
| 持ち家・共有名義 | 相手の持分が相続人へ | 遺言書で持分を遺贈する |
| 賃貸・相手が契約者 | 賃借権は相続人へ。明け渡しを求められることも | 連名にする/取り決めを作る |
| 賃貸・自分が契約者 | 相手が亡くなっても継続できる | — |
| 公営住宅 | 制度により扱いが異なる | 自治体に確認する |
賃貸は、契約者を誰にするかで結果が変わります
賃貸借契約は借主が亡くなっても終了せず、賃借権は相続人に引き継がれます。つまり相手が契約者だった場合、相続人から明け渡しを求められる可能性があります。可能であれば契約を連名にする、または貸主・管理会社と取り決めを作っておくのが確実です。契約時に相談してみてください。
葬儀とお墓
- 喪主に法律上の決まりはありません。パートナーが務めることもできます
- ただし親族が引き取ると主張した場合、実務上は難しくなることがある
- だから死後事務委任契約で、葬儀を行う人を決めておく
- 費用の手当ても契約に含めておく
- お墓は「誰まで入れるか」が規約で決まっているので、名指しで確認する
- 永代供養墓や樹木葬など、二人で入れる形を用意している施設もある
- 散骨や手元供養という選択もある
お墓は「入れるかどうか」を必ず名指しで確認してください
多くの墓地・霊園では、使用規約で「誰が埋蔵できるか」が定められています。「家族なら大丈夫だろう」は通じません。「同性のパートナーと二人で入れますか」と、契約前に具体的に確認してください。受け入れている施設は実際にあります。
カミングアウトしていない場合の進め方
| 心配 | 実際は |
|---|---|
| 公証役場で関係を説明しないといけないのでは | 遺贈の理由まで説明する必要はない |
| 遺言書の内容が生前に知られるのでは | 公正証書遺言の内容は本人の同意なく開示されない |
| 証人に知られるのでは | 公証役場で証人を紹介してもらえる場合がある |
| 亡くなった後には知られてしまう | 遺言の内容は相続人に伝わる。ここは避けにくい |
| 付言事項に書かないといけないのでは | 書かなくてよい。任意です |
専門家には守秘義務があります
公証人、弁護士、司法書士、行政書士には、いずれも職務上知り得た秘密を守る義務があります。相談することで周囲に知られることはありません。相談の際に、どこまで話す必要があるかを最初に確認しても構いません。「関係を詳しく話さずに進められますか」と聞いてよいのです。
進める順番
- 自分に子と親がいるかを確認する(10分)遺留分の有無が決まります。ここが出発点です。
- 財産の一覧を作る(1時間)不動産、預貯金、保険、証券。二人分それぞれ作ります。
- 公証役場に相談する遺言書・任意後見・死後事務委任は、まとめて相談できます。
- 遺言書を作る(最優先)公正証書で。遺言執行者の指定を忘れずに。
- 任意後見契約・死後事務委任契約を結ぶ同じ公証役場で続けて進められます。
- 医療の場面の書面を用意する(今日でもできる)一筆で構いません。二人で持っておきます。
- 住まいと保険を確認する賃貸の契約者、保険の受取人の指定可否。
- 二人とも同じ準備をする片方だけでは、逆の順番になったときに困ります。
最後の1行を忘れないでください
どちらが先に亡くなるかは分かりません。片方だけが遺言書を作っても、逆の順番になれば同じ問題が起きます。費用は倍かかりますが、二人分そろえて初めて備えになります。公証役場では、二人分をまとめて相談できます。
相談できる窓口
| 窓口 | 相談できること | 費用 |
|---|---|---|
| 公証役場 | 公正証書遺言・任意後見契約・死後事務委任契約 | 手数料 |
| 市区町村の無料法律相談 | 遺言・相続・遺留分の相談 | 無料 |
| 法テラス | 法制度と相談先の案内 | 情報提供は無料 |
| 弁護士会・司法書士会 | 遺言書、遺留分、登記 | 相談会は無料のことも |
| 税務署・税理士 | 相続税の2割加算、納税資金 | 税務署は無料 |
| 市区町村の担当窓口 | パートナーシップ制度の有無と使える場面 | 無料 |
| 法務局 | 自筆証書遺言書保管制度、相続登記 | 手数料 |
よくある質問
- 同性パートナーは相続人になれますか。
- なれません。同居年数や家計を共にしていたことは関係ありません。これは同性間に限らず、婚姻していない相手すべてに共通する扱いです。財産を渡すには遺言書が必須です。
- まず何をすればよいですか。
- 自分に子と親がいるかを確認することからです。ここで遺留分の有無が決まり、必要な対策が変わります。そのうえで公正証書遺言を作ってください。これがすべての土台です。
- 遺言書は自分で書いたものでもよいですか。
- 形式を満たせば有効ですが、公正証書遺言を強くおすすめします。法定相続人でない相手に渡す遺言書は、「本当に本人が書いたのか」「判断能力があったのか」と争われる可能性が通常より高くなります。公証人が本人の意思と能力を確認して作成するため、この点で最も強くなります。
- 遺言執行者は必要ですか。
- 必ず指定してください。指定がないと、金融機関の解約や不動産の登記で相続人の協力が必要になることがあります。また弁護士や司法書士などの第三者を執行者にすると、相続人と直接やり取りせずに済みます。これは精神的な負担の面でも大きな違いになります。
- 遺留分を請求されることはありますか。
- 亡くなった方に子または親がいる場合はあり得ます。子も親もおらず兄弟姉妹しかいない場合は、兄弟姉妹に遺留分がないため、遺言書だけで全部渡せます。親が健在な場合は、遺留分に相当する現金を用意しておくなどの対応を弁護士とご検討ください。
- 相続税はどうなりますか。
- 遺贈になるため、相続税額が2割加算されます。また配偶者の税額軽減は使えません。納税は原則として現金なので、不動産だけを遺贈すると受け取った側が納税資金を用意できないことがあります。現金をあわせて残すか、生命保険の活用を税理士とご検討ください。
- パートナーシップ制度に登録すれば安心ですか。
- いいえ。制度は相続の問題を解決しません。公営住宅の申し込みや病院での対応など日常の場面で意味はありますが、相続人になることはできません。制度と遺言書の両方を用意してください。制度の有無や使える場面は自治体によって異なります。
- 入院したとき、面会や説明を受けられますか。
- 法律で「家族以外は不可」と決まっているわけではありません。面会や説明の範囲は各病院の運用です。したがって入院が決まった時点で本人から「この人に付き添い・説明をお願いしたい」と申し出て、その旨を書いた書面を示しておくと、認められることが少なくありません。書面は一筆で構いません。
- 養子縁組をしたほうがよいですか。
- 相続の問題は根本から解決します(相続人になり、2割加算の対象外になります)。ただし戸籍上は親子となり、解消には相手の合意が必要です。将来の選択に影響する面もあります。「手軽な相続対策」ではありません。二人でよく話し合い、弁護士などの専門家に相談したうえで判断してください。
- 賃貸に住んでいます。相手が契約者です。
- 賃貸借契約は借主が亡くなっても終了せず、賃借権は相続人に引き継がれます。そのため明け渡しを求められる可能性があります。可能であれば契約を連名にする、または貸主・管理会社と取り決めを作っておくことをおすすめします。契約時や更新時に相談してみてください。
- 周囲に知られたくないのですが、相談できますか。
- できます。公証人・弁護士・司法書士・行政書士には、いずれも守秘義務があります。相談したことで周囲に知られることはありません。また、遺贈の理由を説明する必要はありません。公正証書遺言の内容も、本人の同意なく開示されることはありません。相談の際に「関係を詳しく話さずに進められますか」と最初に確認しても構いません。
- 二人とも準備が必要ですか。
- 必要です。どちらが先に亡くなるかは分かりません。片方だけが遺言書を作っても、逆の順番になれば同じ問題が起きます。費用は倍かかりますが、二人分そろえて初めて備えになります。公証役場では二人分をまとめて相談できます。
まとめ|書面でしか作れないものがあります
何十年一緒に暮らしていても、同性のパートナーは法定相続人になりません。これは気持ちや実態では変えられず、書面でしか作れない部分です。逆にいえば、書面さえ作れば、多くのことは実現できます。
用意するのは4つ。①遺言書(公正証書で、遺言執行者を指定して)②任意後見契約 ③死後事務委任契約 ④医療の場面への備え。①②③はいずれも判断能力があるうちにしか作れません。④は今日からでも用意できます。
最初にやることは、自分に子と親がいるかを確認することです。ここで遺留分の有無が決まり、必要な対策が変わります。子も親もおらず兄弟姉妹しかいないなら、遺言書1通で財産を全部渡せます。
そして、二人分そろえてください。どちらが先になるかは分かりません。片方だけでは、逆の順番になったときに同じ問題が起きます。公証役場では、遺言書・任意後見・死後事務委任をまとめて相談できます。周囲に知られる心配も要りません。専門家には守秘義務があります。
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本記事は、編集部が法令および公的機関の公開情報、ならびに一般的な実務の流れをもとにまとめたものです。個別の事案について法的・税務的な助言を行うものではありません。遺言書・任意後見契約・死後事務委任契約は方式や要件が法律で定められており、要件を満たさないと効力が生じません。相続税の2割加算、基礎控除、各種特例の適用要件は制度改正により変わることがあります。必ず国税庁の最新情報をご確認のうえ、税務署または税理士にご相談ください。自治体のパートナーシップ制度は、実施の有無・名称・利用できる場面が地域によって大きく異なります。お住まいの市区町村にご確認ください。生命保険の受取人の指定可否、病院における面会・説明の取り扱い、墓地の使用規約は、それぞれ保険会社・医療機関・墓地管理者によって異なります。実際の準備にあたっては、公証役場、弁護士・司法書士・行政書士等の専門家、または市区町村の無料法律相談にご相談ください。

























