高齢者が眠れない原因|寝床にいる時間は8時間までが目安と受診すべきサイン

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「夜中に何度も目が覚める」「朝、4時には目が覚めてしまう」「布団に入っても寝つけない」——実家に帰ったとき、親からこう聞かされた方は少なくないはずです。

心配になって「もっとしっかり寝ないと」と伝える。あるいは早めに床に就くようすすめる。ところが翌朝もまた「眠れなかった」と言われる——この繰り返しには、理由があります。

結論|「長く寝よう」とするのをやめるのが先

結論から申し上げます。高齢の親が眠れないとき、まず見直すのは「寝床にいる時間」です。睡眠時間を延ばすことではありません。

厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」によれば、夜間に実際に眠ることのできる時間は加齢とともに短くなり、65歳ではおよそ6時間です。ところが寝床にいる時間は逆に増えていき、75歳では7.5時間を超える傾向があります。

眠れる時間は短くなっているのに、寝床にいる時間は長くなっている。この差が「寝つけない」「途中で目が覚める」の正体です。睡眠ガイド2023は、必要な睡眠時間以上に床の上で長く過ごすと、寝つくまでに時間がかかり、途中で目が覚める回数が増え、熟眠感が減ると明記しています。

高齢者に「8時間睡眠」はすすめられていません。
厚生労働省が高齢者に示す目安は、寝床にいる時間が8時間以上にならないことです。8時間以上の長時間睡眠は、将来の死亡リスクが1.33倍という報告があり、7時間未満の短時間睡眠の1.07倍を上回ります。高齢世代では、短く眠ることより長く寝床にいることのほうが問題になります。

この記事でわかること

  • 加齢で睡眠に起こる4つの変化と、その理由
  • 厚生労働省が高齢者に示している3つの推奨事項
  • 寝床にいる時間の適切な長さと、その計算方法
  • 長く寝ることのリスクを示した具体的な数字
  • 生活の工夫では改善しない、受診すべきサイン

30秒でわかる|症状別・まず試すこと

ひとくちに「眠れない」と言っても、詰まっている場所は違います。親の訴えに近いものから読み進めてください。

親の訴え考えられることまず試すこと
寝つけない床に就く時間が早すぎる眠くなってから寝床に入る
夜中に何度も目が覚める寝床にいる時間が長すぎる床上時間を8時間未満に抑える
朝早く目が覚めてしまう体内時計の朝型化(加齢による変化)日中に太陽の光を浴びる時間を増やす
日中うとうとしている昼寝が長い/夜間の睡眠の質が低い昼寝を30分未満にする
いびきがひどい・呼吸が止まる閉塞性睡眠時無呼吸の可能性生活の工夫ではなく受診
寝る前に脚がむずむずするむずむず脚症候群の可能性生活の工夫ではなく受診

※下2行は生活習慣の見直しでは改善しません。詳しくは「受診を考えるサイン」の章で説明します。

加齢で睡眠はどう変わるのか

「年をとると眠れなくなる」は感覚の問題ではなく、測定された事実です。厚生労働省の睡眠ガイド2023をもとに、起きている変化を4つに分けて整理します。

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変化1|眠れる時間そのものが短くなる

脳波を用いて夜間の睡眠時間を厳密に調べた研究では、実際に眠ることのできる時間が次のように変化していくことが示されています。

年齢夜間に眠ることのできる時間
15歳前後約8時間
25歳約7時間
45歳約6.5時間
65歳約6時間

成人後は20年ごとに30分程度の割合で、夜間の睡眠時間が減っていきます。若い頃と同じだけ眠れないのは当然で、異常ではありません。

変化2|寝床にいる時間は、逆に増えていく

ここが問題の核心です。眠れる時間が減る一方で、寝床にいる時間(床上時間)は増えます。

睡眠ガイド2023によれば、夜間の床上時間は20〜30歳代では7時間程度ですが、45歳以上で徐々に増加し、75歳では7.5時間を超える傾向があります。定年退職で自宅にいる時間が増え、家庭内での役割も減っていくことが背景にあります。

65歳〜75歳で起きていること

眠れる時間 約6時間

に対して

寝床にいる時間 7.5時間超

差し引き1.5時間以上、眠れないまま寝床にいる計算になります。
この時間が「寝つけない」「夜中に目が覚める」として自覚されます。

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変化3|早寝早起きになる(体内時計の朝型化)

加齢が進むと、睡眠に関わる体温やホルモン分泌のリズムが早い時間にずれ、朝型化していきます。厚生労働省はこの傾向が特に男性で強いとしています。

夕方から眠気が出て早く床に就き、その結果として深夜から早朝に目が覚める。本人は「朝早く目が覚めてしまう」と訴えますが、起きている現象は睡眠が前倒しになっただけのことが多くあります。就床時刻を確認すると、実は21時に寝ていた、というケースは珍しくありません。

変化4|深い眠りが減り、途中で目が覚めやすくなる

日本睡眠学会は、高齢期には深い眠りが著しく減少し、夜間の中途覚醒が増えて睡眠が細切れになると説明しています。早朝覚醒も増加します。

この変化自体は加齢による生理的なもので、元に戻すことはできません。ただし、寝床にいる時間が長いほど中途覚醒は増えるため、床上時間を適切にすることで、細切れの度合いは軽くできます。

厚生労働省が高齢者に示している3つの推奨事項

厚生労働省は2024年2月、「健康づくりのための睡眠指針2014」を約10年ぶりに改訂し、「健康づくりのための睡眠ガイド2023」を策定しました。大きな変更点は、推奨事項を「成人」「こども」「高齢者」の年代別にまとめたことです。

高齢者版の推奨事項は、次の3つです。

高齢者版 推奨事項(原文)

  1. 長い床上時間は健康リスクとなるため、床上時間が8時間以上にならないことを目安に、必要な睡眠時間を確保する。
  2. 食生活や運動等の生活習慣、寝室の睡眠環境等を見直して、睡眠休養感を高める。
  3. 長い昼寝は夜間の良眠を妨げるため、日中の長時間の昼寝は避け、活動的に過ごす

成人版の推奨が「6時間以上を目安に睡眠時間を確保する」であるのに対し、高齢者版では睡眠時間ではなく床上時間が主役になっている点が決定的な違いです。長く眠ることを目標にしていません。

「睡眠休養感」という新しい指標

2つ目の推奨事項にある睡眠休養感とは、睡眠で休養がとれている感覚のことです。睡眠時間が睡眠の「量」を測る指標だとすれば、睡眠休養感は「質」を反映する指標にあたります。

厚生労働省はこの睡眠休養感を重視しており、朝目覚めたときに休まった感じがあるかどうかを、良い睡眠の目安として示しています。何時間眠ったかではなく、朝どう感じているかを尋ねるほうが、実態をつかめます。

床上時間の目安は「平均睡眠時間+30分」

では、寝床にいる時間はどのくらいが適切なのか。睡眠ガイド2023は具体的な計算方法を示しています。

床上時間の目安 = 1週間の平均睡眠時間(実際に眠っている時間)+ 30分程度

ただし、床上時間が8時間以上にならないことが前提です。また床上時間を自分で短縮する場合、6時間を限度とすることがすすめられています。それ以上短くするのは逆効果になりかねません。

必要な睡眠時間には個人差があります。厚生労働省も、高齢世代でも日中に忙しく過ごしている人では、成人と同等の睡眠時間が必要な場合があるとしています。一律に短くするのではなく、6時間以上を目安に、睡眠休養感が得られる長さを探すという考え方です。

長く寝ることのリスクを、数字で見る

「長く寝るほうが体にいい」という感覚は根強くあります。しかし高齢世代に限れば、調査結果はその逆を示しています。

条件将来の死亡リスク
7時間未満の短時間睡眠1.07倍
8時間以上の長時間睡眠1.33倍
30分以上の昼寝を習慣にしている1.27倍(昼寝習慣がない人との比較)

※いずれも厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」が引用している研究結果です。

さらに睡眠ガイド2023は、9時間以上の長時間睡眠がアルツハイマー病の発症リスクを増加させるという報告や、長い昼寝・頻回の昼寝が認知機能の低下リスクを増加させるという報告も紹介しています。

65歳以上では、睡眠時間そのものと総死亡率の関連ははっきりしない一方、床上時間が約8時間以上の場合に総死亡率が増加すると報告されています。ここでも問題になっているのは睡眠時間ではなく床上時間です。

誤解しないでいただきたいこと
これは「寝るな」という話ではありません。心血管疾患や呼吸器疾患、腰や膝の関節疾患などで、寝床で過ごす時間を減らすことが難しい方もいます。睡眠ガイド2023が警告しているのは、必要以上に活動を控えて寝床で過ごす時間を増やしすぎることです。

今夜からできる3ステップ

床上時間を見直すには、まず現状を知る必要があります。厚生労働省の睡眠ガイド2023は、自分の睡眠状態を1週間記録することをすすめています。

STEP 1

1週間、2つの時刻を記録する
寝床に入った時刻・出た時刻(床上時間)と、実際に眠っていた時間を区別して書く

STEP 2

床上時間の目安を計算する
1週間の平均睡眠時間+30分。ただし8時間未満、短くするなら6時間まで

STEP 3

起床時刻を固定し、就床時刻を遅らせる
起きる時間は動かさず、寝床に入る時間を後ろにずらして床上時間を縮める

記録で最も大切なのは、床上時間と睡眠時間を分けて書くことです。厚生労働省は、自覚する睡眠時間は床上時間を反映しやすく、やや不正確である可能性を指摘しています。「8時間寝た」と思っていても、実際に眠っていたのは6時間ということが起こります。

眠れないまま寝床にいない

もう1つ、睡眠ガイド2023が具体的に示している対処があります。

なかなか眠れないときは、いったん寝床を離れる。
寝床以外の静かで暗めの、安心感が得られる場所で、眠気が訪れるまで安静に過ごします。しばらくして眠気が来てから寝床に戻ります。寝床で考えごとをするのは避けてください。

眠れないまま寝床で粘ると、寝床が「眠れない場所」として意識に結びついていきます。不眠が続くと、眠れないことへの不安や寝室への恐怖感が強まり、悪循環に陥ることが知られています。

寝室の環境を見直す

睡眠ガイド2023は、気づかないうちに良眠の妨げになっている寝室環境として、テレビやラジオをつけたまま寝ること、電気をつけたまま寝ることを具体的に挙げています。高齢の親の寝室で、実際によく見られる状態です。

また日中については、できるだけ長く太陽の光を浴びること習慣的に運動を行うことがすすめられています。地域のラジオ体操やヨガなどのイベントを活用して運動習慣をつけることも、良質な睡眠の確保に役立つとしています。人とのつながりが睡眠や身体活動を促進する、という点も挙げられています。

やりがちなことと、正しい方向

家族がよかれと思ってすすめる対応が、逆方向を向いていることがあります。

✕「早く寝たら」と、就床時刻を早める
 ○ 眠くなってから寝床に入るようすすめる

✕「8時間は寝ないと」と目標を立てる
 ○ 朝の休養感で判断する(何時間眠れたかは問わない)

✕ 眠れないと言うので昼寝をすすめる
 ○ 昼寝は30分未満。目覚ましをかけてもらう

✕ 寝つきが悪いので寝酒をすすめる
 ○ 飲酒は入眠困難と中途覚醒を招くため、すすめない

✕ 眠れないまま寝床で朝まで粘る
 ○ いったん寝床を離れ、眠気が来てから戻る

✕ テレビをつけたまま寝る習慣をそのままにする
 ○ 寝室の音と光を落とす

この対比の4つ目にある寝酒について補足します。睡眠ガイド2023は、過度の飲酒や睡眠薬代わりの寝酒は、入眠困難や中途覚醒を引き起こし、睡眠休養感を低下させるとしています。カフェインやニコチンも同様です。「眠れないから一杯」は、その晩の寝つきを助けても、夜半以降の睡眠を壊します。

また意外な要因として、塩分の過剰摂取が挙げられています。夜間頻尿を生じさせ、中途覚醒を増やすためです。食事の塩分が睡眠に返ってくる、という関係になります。親の食事全体が気になる場合は高齢者の低栄養|親の食事が心配なときに見る5つのサインとチェックリストもあわせてご覧ください。

受診を考えるサイン

ここまでは、生活の工夫で改善が見込める範囲の話です。しかし工夫では動かない「眠れない」があります。

睡眠ガイド2023は、生活習慣や睡眠環境を是正しても症状が改善しない場合、背後に睡眠障害が潜んでいる可能性があるとし、睡眠障害が疑われる場合は速やかに医療機関を受診するよう示しています。50歳代から徐々に、不眠症・閉塞性睡眠時無呼吸・むずむず脚症候群・周期性四肢運動障害といった睡眠障害が出現しやすくなります。

高齢者に多い4つの睡眠障害

睡眠障害特徴誤解されやすい形
閉塞性睡眠時無呼吸睡眠中に気道が狭まり呼吸が止まる。いびきを伴うことが多い。中途覚醒を繰り返し、日中の眠気が出る中途覚醒型の不眠症
むずむず脚症候群寝る前の安静時に脚(特に下肢)に不快感が生じ、寝つけない入眠困難型の不眠症
周期性四肢運動障害睡眠中に脚が繰り返し動き、中途覚醒を来たす。本人の自覚に乏しい中途覚醒型の不眠症
睡眠・覚醒相前進障害高齢者に多い。極端な早寝早起き。夕方から夜の早い時間に眠気が出て、深夜から早朝に目が覚める早朝覚醒型の不眠症

この表で注目していただきたいのは、いちばん右の列です。4つとも「不眠症」と間違われやすい形をとります。本人も家族も「眠れないだけ」と受け取り、市販の睡眠改善薬や寝酒で対処してしまうことがありますが、原因が別にあれば当然改善しません。

特に周期性四肢運動障害は本人の自覚が乏しいため、同じ部屋で寝た家族しか気づけません。帰省で親と同室になる機会があれば、脚の動きも見ておく価値があります。

受診の目安

次のいずれかが当てはまるなら、医療機関へ

  • 床上時間を見直しても、眠れない状態が続いている
  • 睡眠時間は足りているのに、休養感がまったく得られない
  • いびきが大きい、寝ている間に呼吸が止まっている
  • 寝る前に脚がむずむずして眠れないと訴える
  • 日中の眠気や居眠りが強く、生活に支障が出ている
  • 気分の落ち込みを伴っている(うつ病の初期症状として現れることがあります)

受診先は、かかりつけ医への相談から始めて構いません。睡眠時無呼吸が疑われる場合は呼吸器内科や耳鼻咽喉科、睡眠外来を設けている医療機関につながることがあります。ガイドの全文や関連資料は厚生労働省の睡眠対策のページで公開されています。

なお睡眠薬については、高齢者では転倒などのリスクがあるため、自己判断で市販薬を続けるのではなく、必ず医師に相談してください。閉塞性睡眠時無呼吸がある状態で睡眠薬を使うと、かえって危険な場合があります。

よくある失敗 3つ

1. 「何時間眠れた?」とだけ聞く

自覚する睡眠時間は床上時間を反映しやすく、正確ではありません。聞くなら「朝起きたとき、休まった感じはある?」「何時に布団に入って、何時に出た?」の2つです。前者が睡眠休養感、後者が床上時間にあたります。

2. 眠れないと聞いて、早寝をすすめる

床上時間が延び、中途覚醒が増えるという逆効果になります。眠れないと訴える親ほど、実際には寝床にいる時間が長くなっています。動かすべきは就床時刻であって、それも早めるのではなく遅らせる方向です。

3. いびきを「よく眠れている証拠」と受け取る

大きないびきは閉塞性睡眠時無呼吸のサインであることがあります。睡眠ガイド2023は、閉塞性睡眠時無呼吸が高血圧、脳卒中、心筋梗塞、心不全といった循環器疾患や糖尿病の誘因にもなるとしています。肥満が最大の危険因子ですが、下顎が小さい、下顎が後退している、首が短いといった特徴でも起こるため、痩せているから大丈夫とは言えません。

関連する制度・窓口

睡眠の問題は、それ単独では制度の対象になりにくい分野です。ただし相談できる先はあります。

窓口相談できること費用
かかりつけ医最初の相談先。服用中の薬が睡眠に影響していないかの確認も含む保険適用
地域包括支援センター昼夜逆転や閉じこもりを伴う場合の総合相談。介護予防の通いの場の案内無料
介護予防・日常生活支援総合事業体操教室など、日中の活動量を増やす場。基本チェックリストの該当で利用できる自治体による
睡眠外来・睡眠障害の専門医療機関睡眠時無呼吸の検査など。かかりつけ医からの紹介が一般的保険適用

日中の活動量を増やすことが睡眠の改善につながるため、介護予防の通いの場や地域の体操教室は、実は睡眠対策としても機能します。地域包括支援センターの使い方や、要介護認定を受けていなくても利用できる制度については離れて暮らす親の健康チェック4項目|食事・聞こえ・足腰・口の衰えサインで整理しています。

よくある質問

Q. 高齢でも8時間眠れる人がいます。問題ですか

必要な睡眠時間には個人差があり、厚生労働省の睡眠ガイド2023も高齢世代でも日中に忙しく過ごしている人では成人と同等の睡眠時間が必要な場合があるとしています。10時間を超える睡眠を必要とする人(ロングスリーパー)も一定数存在し、そうした人が8時間に短くするとかえって睡眠不足になる可能性があるとも明記されています。判断の基準は時間ではなく、日中の眠気と朝の休養感です。

Q. 昼寝はしてはいけないのですか

短い昼寝まで否定されているわけではありません。避けるべきは日中の長時間の昼寝です。30分以上の昼寝を習慣にしている人は、昼寝習慣がない人と比べて将来の死亡リスクが1.27倍という報告があります。厚生労働省の睡眠ガイド2023は、目覚ましをかける、同居者に起こしてもらうといった工夫を挙げています。

Q. 床上時間を短くすると、余計に寝不足になりませんか

短くしすぎればそうなります。だからこそ厚生労働省の睡眠ガイド2023は、自分で床上時間を短縮する際は6時間を限度にするようすすめています。目安は「1週間の平均睡眠時間+30分」で、まず現状を記録してから決めてください。いきなり大幅に削るやり方は取らないでください。

Q. 朝4時に目が覚めるのは異常ですか

就床時刻によります。21時に寝ていれば7時間眠っている計算で、加齢による朝型化の範囲です。ただし夕方から強い眠気が出て、深夜から早朝に完全に目が覚めてしまい、家族と生活リズムが合わないという状態が続く場合は、睡眠・覚醒相前進障害の可能性があります。まず就床時刻を確認してください。

Q. 市販の睡眠改善薬を使ってもいいですか

継続的な使用は避け、医師に相談してください。高齢者では転倒などのリスクがあります。また閉塞性睡眠時無呼吸やむずむず脚症候群が原因の場合、睡眠薬では改善しないばかりか、状態を悪くすることがあります。原因を確かめないまま薬でふたをしないことが大切です。

Q. 認知症になると睡眠はどうなりますか

厚生労働省の睡眠ガイド2023は、6〜7割の認知症患者が睡眠の乱れで悩んでいるとされることを紹介しています。認知症では体内時計の機能変化がさらに進み、昼夜のメリハリが弱まって、活動パターンが完全に昼夜逆転する人もいます。太陽光の活用、日中の運動習慣、社会的交流が調整に役立つことがありますが、困難な場合は医師に相談してください。判断力があるうちに進めておく手続きについては認知症になると終活はできなくなる|判断力があるうちにやることにまとめています。

Q. 離れて暮らしていて、親の睡眠の様子が分かりません

電話で聞くなら「何時に布団に入って、何時に起きた?」と時刻を2つ尋ねてください。時間の長さを聞くより正確です。帰省したときは、寝室にテレビや照明がついたままになっていないか、日中うとうとしている時間がどれくらいかを見ておくと、状況がつかめます。

まとめ

年をとって眠れなくなるのは、体の異常ではありません。夜間に眠れる時間は65歳でおよそ6時間まで減る一方、寝床にいる時間は75歳で7.5時間を超えていきます。「眠れない」の多くは、この差が生んでいます。

押さえておく5つ

  1. 目標にするのは睡眠時間ではなく床上時間8時間未満
  2. 床上時間の目安は1週間の平均睡眠時間+30分(短縮は6時間まで)
  3. 判断の基準は「何時間眠れたか」ではなく朝の睡眠休養感
  4. 昼寝は30分未満。日中は光を浴びて活動的に過ごす
  5. 工夫しても改善しない、いびきが大きい、脚がむずむずする——このいずれかなら受診

家族ができるいちばん確実なことは、早寝をすすめることではなく、「何時に布団に入って、何時に起きた?」と時刻を2つ聞くことです。そこで床上時間が8時間を超えていれば、打つ手はもう見えています。

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※本記事は、厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」および日本睡眠学会の公表資料をもとにまとめたものです。
※記載の数値・推奨事項は執筆時点のものです。指針やガイドは改訂されることがあります。
※本記事は医学的な診断・治療を目的としたものではありません。睡眠の不調が続く場合は医療機関を受診してください。
※睡眠薬・睡眠改善薬の使用や中止は、必ず医師の指示に従ってください。

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