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故人の財産はプラスもマイナス分も含めた財産として、相続の対象となります。
その対象は相続人ですが、相続人がいない場合、国庫に帰属することになります。(民法959条)
この記事では単独世帯のおひとりさまの方の死後、財産が国のお金にならないようにするための終活準備について書いています。
終活として何をすればいいのか、是非最後までお読みください。
目次
増える単独世帯
出典:平成30年版高齢社会白書(全体版)
上の表は内閣府の平成30年版高齢社会白書(全体版)の資料で、「65歳以上のひとり暮らしの方の動向」を表したものになります。
65歳以上の一人暮らしの者の増加は男女ともに顕著であり、昭和55(1980)年には男性約19万人、女性約69万人、65歳以上人口に占める割合は男性4.3%、女性11.2%であったが、平成27(2015)年には男性約192万人、女性約400万人、65歳以上人口に占める割合は男性13.3%、女性21.1%となっている
ご覧の通り平成27年時点で約600万人もの数の65歳以上でひとり暮らしをされてる方がいるのがわかります。
近年、「独居老人」や「おひとりさま」といった言葉をニュースなどで観ることは多くなっています。
「おひとりさま」を女性だけだと思われている人も多いようですが、そうではありません。
配偶者に先立たれた方や、身内・身寄りがなく独居生活されている方も「おひとりさま」です。
そんな「おひとりさま」と呼ばれる単独世帯は年々増加傾向にあるという現況になっています。
身寄りなしのおひとりさまの相続
身寄りなしの独居老人が亡くなった場合、財産(遺産)はどうなってしまうのでしょうか。
通常、人が亡くなると遺産は法定相続分(ほうていそうぞくぶん)に基づいて分配される流れになります。
出典元:国税庁
法定相続分はあくまで目安となる割合で、必ずこの通りにしなくてはいけないといったものではありません。
相続人同士の話し合いで皆が納得している場合は、この割合ではない遺産分割をしても問題ないとされています。
このように、人が亡くなると相続人が故人の遺産を相続することになります。
しかし、身寄りなしの独居老人の方が亡くなった場合、最終的に相続遺産は国のものとなってしまう可能性があります。
「国のもの」とは、国庫に入るということになります。
ただ、故人の死後すぐに国庫に入ってしまうわけではありません。
このあと詳しく解説していきますので、続けてお読みください。
相身続人不在で国庫入り遺産は500億円超え
民法第959条で
前条の規定により処分されなかった相続財産は、国庫に帰属する。この場合においては、第九百五十六条第二項の規定を準用する。
出典: 民法第九百五十九条
と、定められています。
「前条の規定」とは、簡潔にいうと相続人が全くいない場合ということになります。
相続人が全くいないケースで、中には数億円もの財産がすべて国庫に帰属した実際の話もあります。
おひとりさま故人の死後、相続人不在で国庫入りした遺産は500億円を超えています。
前述したように、故人の死後すぐに国に入ってしまうというわけではありません。
このあたりのことを次で解説します。
相身続人不在で遺産が国庫入りするまでの流れ
原則として相続人は配偶者と子どもになります。
配偶者・子どもが両方いない場合、両親・祖父母が相続人となります。
両親も祖父母も亡くなっている場合、兄弟姉妹が相続人となりますが、兄弟姉妹もいない場合は相続人がいないということになります。
では、誰が相続の手続きをするのか?
ということになってしまうわけですが、故人に対して債権を持っている利害関係者や検察官が家庭裁判所に相続財産管理人の選任の申立てを行う形になります。
申立てにより、相続財産管理人が選任されます。
このとき、家庭裁判所は相続財産管理人が選ばれたことを官報に載せます。(公告期間2ヶ月)
公告期間内にもしも相続人がいれば、申し出ることができます。
公告期間の2ヶ月経過後でも相続人がいない(相続人が現れない)場合、さらに2ヶ月間官報に公告掲載されます。
2ヶ月(計4ヶ月)経っても相続人がいない場合、相続財産管理人が故人への債権者などに対して財産を分配することになります。
これと並行してさらに6ヶ月間、相続人を探す期間があります。
この6ヶ月間は相続人に向けて「この6ヶ月間以内に相続の権利を主張してください」という公告です。
つまり、この6ヶ月の期間が満了しても相続人がいない場合、相続人不在(相続人の不存在)が確定します。
相続人が相続を放棄したり承認しない場合、相続人不在が確定する事例もあるようです。
特別縁故者の申立て
上記のように、最終的に6ヶ月間経過して相続人不在が確定すると、以降3ヶ月以内であれば故人(被相続人)と特に縁がある人は家庭裁判所に特別縁故者として申立てすることができます。
それが特別縁故者の相続財産分与の申立てです。
民法958条の項目より引用抜粋すると
相当と認めるときは、家庭裁判所は、被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めた者その他被相続人と特別の縁故があった者の請求によって、これらの者に、清算後残存すべき相続財産の全部又は一部を与えることができる。
出典: 民法第九百五十八条の三
と、定められています。
「生計を同じくしていた者」とは、故人(被相続人)と同居していた等、「療養看護に努めた者」とは、故人の病気看護や介護をしていた人ということになります。
特別縁故者に相当すると家庭裁判所が認めた場合、財産の一部が分与されるという流れになります。(分与の額はケースによって異なる)
遺言書が頼りに
「自身の財産が国に吸収されてしまうのは嫌だ」
死人に口なしなので、亡くなられた身寄りなしの独居老人の方の心意をは計ることはできませんが、
「一緒に暮らす○○さんへ」
「お世話になった○○さんへ」
「○○団体や○○市へ寄付したい」
と、内心では考えていたかもしれません。
生きている間にそう思うようであれば、遺言書が頼りになります。
遺言書はエンディングノートと同様に、終活の一環として作成する方はここ数年で増えてきています。
ひと口に遺言書を作成といっても自身で作成する自筆証書遺言や、遺言をする方が内容を話して公証人が記入して作成する公正証書遺言など種類があります。
遺言書について詳しくは【終活で重要な遺言書とは?種類や書き方、遺書やエンディングノートとの違いを簡単に解説】にてわかりやすくまとめていますので、便宜参考にしていただければと思います。
まとめ
身寄りのないおひとりさまの死後、財産を国に帰属させないようにするための終活準備について解説しました。
財産が国に入るまでの流れや、終活として何をしておくべきかを理解していただけたかと思います。
最後に今回の要点をまとめると
■身寄りなしのおひとりさまの死後、相続人不在で財産が国庫に帰属するケースが増えている
■身寄りなしのおひとりさまの死後、家庭裁判所が定める期間内で相続人が現れない場合、相続財産管理人が債権者へ財産分配・清算、また特別縁故者へ財産の一部を分配⇒残りは全て国へ帰属となる
■身寄りなしのおひとりさまの財産管理において、終活として遺言書の作成を行っておく
配偶者を亡くして独り身になる形だけでなく、生涯独身のまま過ごす割合(生涯独身率)も近年増加していることから、今後も単独世帯の数は増え続けていくことかと思われます。
国が財政難ではあるものの、自身の死後に財産が国庫に入ってしまうことは果たして望まれることなのでしょうか。
身寄りのない単独世帯にお住まいの方で、「財産は身の回りの世話をしてくれた○○へ」といった思いが少しでもあるようでしたら、終活として遺言書を作成しておくのがよいでしょう。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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