耳が遠い親との話し方7つのコツ|大声が逆効果になる理由と聞こえを補う道具

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「今の、聞こえてた?」と確かめる回数が増えた。同じことを二度、三度と言い直している。返事はするのに、どこかかみ合っていない——。実家に帰るたび、親との会話が以前ほど続かなくなった

と感じる方は少なくありません。

厄介なのは、この状態が「物覚えが悪くなった」ようにも「話を聞く気がない」ようにも見えてしまうことです。こちらが声を張り上げれば「そんな大きな声を出さなくても聞こえる」と怒られる。会話が減れば、話しかけること自体が億劫になっていきます。

結論|最初にやめるのは「大きな声で話すこと」

結論から申し上げます。親の耳が遠くなったと感じたとき、最初にやめたほうがよいのは「声を大きくすること」です。

加齢性難聴で先に落ちるのは、音の大きさを感じる力ではなく、言葉を聞き分ける力です。声を張り上げても言葉の輪郭は戻らず、うるさく響くだけに終わることがあります。MSDマニュアル家庭版は、大きな声を出すと低い周波数の母音ばかりが強調されるため、言葉の認識はほとんど改善されないと説明しています。

代わりに効くのは、次の3つです。

① 音を静かにする テレビと換気扇を止めてから話しかける
② 正面に回る 顔と口元が見える位置に移動してから話す
③ 言い換える 通じなかった言葉を繰り返さず、別の言い方に変える

この3つは費用がかからず、今日の会話から試せます。それでも足りない部分を、耳鼻咽喉科の受診と道具で埋めていく——という順番になります。

この記事でわかること

  • 「音は聞こえているのに言葉が分からない」が起きる仕組み
  • 今日から使える、耳が遠い親との話し方7つのコツ
  • 大きな声・繰り返し・後ろからの声かけが逆効果になる理由
  • 道具を買う前に確かめる3つのこと(耳あかの詰まりを含む)
  • 聞こえを補う集音器2製品の違いと、どちらを選ぶかの判断基準

30秒でわかる|親の様子別・まず試すこと

会話が続かないと言っても、詰まっている場所は人によって違います。実家での親の様子に近いものから読み進めてください。

親の様子まず試すこと
「え?」と何度も聞き返されるテレビと換気扇を止めてから話しかける
声は届いているのに、返事がずれる同じ言葉を繰り返さず、別の言い方に変える
「そんな大きな声を出さなくても」と怒られる声量を普段に戻し、低めの声でゆっくり区切って話す
テレビの音量が、家族には大きすぎる耳鼻咽喉科で聴力検査を受ける
電話だと、特に用件が伝わらない大事な用件は対面か、文字で伝える形に切り替える
ここ数か月で急に聞こえが落ちた耳あかの詰まりも含めて、早めに耳鼻咽喉科を受診する

※急に片耳だけ聞こえなくなった場合は加齢とは別の原因が考えられます。様子を見ずに受診してください。

なぜ「聞こえているのに、伝わらない」のか

最初に、加齢で耳に何が起きるのかを整理します。この仕組みが分かると、後で紹介する話し方のコツが、なぜその形なのかもつながります。

高い音から先に聞こえなくなる

日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会は、加齢による聴力の低下は一般的に高音域から始まると説明しています。済生会の解説によれば、最初に落ちるのは体温計の電子音のような4〜8kHzの高い音で、この段階では本人が聞こえにくさを自覚することはあまりありません。その後、会話で使う1kHz前後の音の聞こえも徐々に悪くなり、そこで初めて難聴を自覚するようになります。

MSDマニュアル家庭版によれば、加齢による難聴の症状が始まるのはおおむね55〜65歳ごろです。70代、80代で急に始まったものではなく、何年もかけて進んできた変化の途中にある、と考えたほうが実態に近いことになります。

高い音に含まれているのは「子音」

ここが、この記事でいちばん押さえていただきたい部分です。

日本語でも英語でも、言葉を聞き分ける手がかりになる子音は、高い周波数の成分でできています。MSDマニュアル家庭版は、K・S・T・P・C・Dといった子音が高周波の音であり、話し言葉を理解するうえで極めて重要な役割を果たすと説明しています。

母音の「アイウエオ」は低い音なので、加齢性難聴でも比較的よく残ります。落ちるのは子音のほうです。その結果、こういうことが起こります。

実際に起きる聞き間違いの例
「しちじ」が「いちじ」に聞こえる
「ひろい」が「しろい」に聞こえる

母音の並びは同じで、違うのは子音だけです。ここが抜け落ちると、音は届いているのに意味が変わってしまいます。

「聞こえてはいるようなのに、話が通じない」という家族側の感覚は、正確です。実際に音は届いていて、届いていないのは子音だけだからです。

だから、声を大きくしても解決しない

そして、大きな声が効かない理由もここにあります。

MSDマニュアル家庭版は、話し手が大きな声を出すと、通常は周波数が低い母音のほうが強調されるため、言葉の認識はほとんど改善されないと述べています。大声を出すと、もともと聞こえている母音だけがさらに大きくなり、聞こえていない子音は増えないということです。

さらに、感音難聴では小さい音は聞こえにくいのに大きい音は響いてうるさく感じる、という状態が起こります。大きな音に耐えられない方のために、最大音量を抑える電子回路を持った補聴器が必要になる場合があるほどです。

親に「そんな大きな声を出さなくても聞こえる」と言われた経験があるなら、それは反抗でも気分の問題でもありません。音量は足りていて、足りないのは音の質のほうだと、耳が正直に伝えていることになります。

どのくらいの人に起きているのか

珍しいことではありません。日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会は、難聴の割合を次のように示しています。

年齢難聴のある割合
65〜74歳3人に1人
75歳以上約半数

同学会は、難聴が認知症の発症リスクを大きくすることにも触れ、「耳が聞こえづらいのは年のせいだ」と決めつけずに、必ず耳鼻咽喉科医に診てもらうよう勧めています。聞こえと認知症の関係については加齢性難聴は認知症のサイン?聞こえにくさの原因とセルフチェックで詳しく整理しています。

耳が遠い親との話し方 7つのコツ

ここからは、今日の会話から使える具体的な工夫です。7つありますが、上から3つを押さえるだけでも会話の通りやすさは変わります。

コツ具体的にどうするか効く理由
1. 先に音を止めるテレビ・ラジオ・換気扇・水道を止めてから話しかける雑音があると、弱い子音から先にかき消される
2. 正面に回る1〜2メートルの距離で向かい合い、顔が明るく見える位置に立つ口の形と表情が、抜けた子音を補う手がかりになる
3. 大きくせず、低く声量は普段どおり。少し低めの声で、ゆっくり短く区切る大声は母音だけを強め、響いて不快になる
4. 繰り返さず言い換える「7時」が通じなければ「夕方の7時、夜ご飯のころ」に変える同じ音は、何度言っても同じように抜ける
5. 話題を先に言う「病院の話だけど」と前置きしてから本題に入る話の枠が決まると、少ない情報でも推測が働く
6. 死角から話しかけない背後・別の部屋・歩きながらの声かけをやめる口元が見えず、聞く準備も整っていない
7. 数字と固有名詞は書く日付・時刻・金額・薬の名前は紙かスマホの画面に書いて渡す聞き間違いが起きても、実害が出ない

この7つのうち、特に効き目が大きい3つを掘り下げたうえで、人が集まる日の席の決め方を補足します。

1つ目の「先に音を止める」がいちばん効く

7つの中で、最も手間が少なく効果が大きいのが、1つ目の「先に音を止める」です。

テレビをつけたまま話しかけている家庭は多いはずです。しかし加齢性難聴では、弱く高い子音から先に雑音へ埋もれます。健聴の家族にとっては「小さな背景音」でも、聞こえにくい耳にとっては会話をまるごと覆い隠す壁になります。

MSDマニュアル家庭版も、難聴のある方への配慮として、混雑していない静かな時間帯を選ぶ、外の音をある程度遮断できる個室を希望する、といった環境面の工夫を挙げています。家の中でも同じで、話しかける前にリモコンで音を消す、換気扇を止める、蛇口を閉める——それだけで通りやすさは変わります。

2つ目の「正面に回る」と、口の形が子音を補う

聞こえにくい方は、無意識のうちに口の形を読んで、抜けた子音を補っています。MSDマニュアル家庭版も、難聴のある方への配慮として自分のほうに顔を向けて話してもらうよう頼むことを挙げています。逆に言えば、話す側が顔を見せるだけで、その手がかりを渡せます。

距離は1〜2メートルが目安です。近すぎると口元を見るために視線を動かす必要が出て、遠すぎると音が届きません。逆光で顔が影になる位置も避けてください。

マスクをしていると急に通じなくなる理由
口元が隠れて手がかりが消えるうえ、布が高い周波数の音を弱めます。病院や外出先で「急に話が通じなくなった」と感じたら、聞こえが悪化したのではなく、条件が悪くなっているだけの場合があります。

4つ目の「繰り返さず言い換える」を、家族はいちばん破りやすい

上の7つのうち、家族が無意識に破ってしまうのが、4つ目の「繰り返さず言い換える」です。

通じなかったとき、人は同じ言葉をもう一度、今度は大きな声で言います。しかし抜け落ちた子音は、同じ言葉を繰り返しても同じように抜けます。三度目も同じです。そして声だけが大きくなり、親は「怒られている」と受け取ります。

やることは、言葉そのものを変えることです。

✕「7時ね」→「7時!」→「ナ・ナ・ジ!」
 ○ 「7時ね」→「夕方の7時、夜ご飯のころ」

✕「病院」→「ビョーイン!」
 ○ 「病院」→「いつも行ってる内科、田中先生のところ」

✕「そうじゃなくて」を繰り返す
 ○ 「一回、別の言い方をするね」と断ってから言い換える

人が集まる日は、座る位置を先に決めておく

法事や正月のように人が集まる日は、話し方だけでは追いつきません。席をどう決めるかで、会話に入れるかどうかが決まります。親が「集まりになると急に黙る」場合、性格の問題ではなく、席が悪いだけということが珍しくありません。

押さえる点は4つです。

決めること理由
壁を背にして座ってもらう背後からの音が減り、正面の声だけが届きやすくなる
端ではなく、中央寄りの席にする端に座ると、反対側の会話がまったく届かなくなる
換気扇・エアコン・テレビから離す連続した機械音は、弱い子音を丸ごと覆い隠す
聞こえのよい側の耳を、人が多いほうへ向ける左右で聞こえに差があることが多く、向きだけで拾える量が変わる

加えて、集まりの最中に誰か一人が「通訳役」を引き受けると、会話から外れる時間が大幅に減ります。全員が親に配慮するのは現実には続きません。隣に座った一人が、話題が変わったときだけ「今、○○の話になった」と短く伝える——それだけで、話に戻る手がかりになります。

やりがちな話し方と、通じる話し方

ここまでの内容を、家族がやってしまいがちな行動と対にして並べます。

✕ 声を張り上げる
 ○ 声量は普段どおりで、低めにゆっくり区切る

✕ テレビをつけたまま話しかける
 ○ 音を止めてから話し始める

✕ 台所や別の部屋から呼びかける
 ○ 同じ部屋に入り、正面に立ってから話す

✕ 通じないので同じ言葉を繰り返す
 ○ 別の言い方に置き換える

✕ 早口で一気に用件を伝える
 ○ 一文を短くして、間を空ける

✕ 通じないと諦めて、本人抜きで話を決める
 ○ 紙に書いてでも、本人に確認を取る

この対比の最後にある「本人抜きで話を決める」は、聞こえの問題が家族関係に及ぼす影響として、いちばん見過ごされやすいものです。会話が面倒になると、家族は本人を飛ばして物事を決めるようになります。本人はますます話に加われなくなり、結果として認知機能にも影響しかねません。東京都健康長寿医療センターも、加齢性難聴では人との会話を減らさないようにすることが、悪化の速度を緩めるうえで大切だとしています。

道具を買う前に確かめる3つのこと

話し方を変えても足りないとき、次に検討するのが道具です。ただし買う前に確認しておくことが3つあります。順番を飛ばすと、無駄な出費になったり、原因を見落としたりします。

STEP 1

耳あかが詰まっていないか確かめる
耳鼻咽喉科で診てもらう。取るだけで聞こえが戻る場合がある

STEP 2

聴力検査を受ける
どの音域がどれだけ落ちているかを数字で把握する

STEP 3

補聴器か集音器かを決める
検査結果をもとに、医師の判断を聞いてから選ぶ

1つ目|耳あかが詰まっているだけのことがある

意外に見落とされているのが、耳あかの詰まり(耳垢栓塞)です。

日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会は、鼓膜が観察できないほど耳あかが溜まっている人は、そうでない人に比べて平均7dBも聴力が低いという調査結果を紹介しています。さらに、アメリカの高齢者施設での調査では、耳あかを取ったことで入所者の聴力が改善しただけでなく、認知機能も改善したと報告されています。

耳あかを自分で押し出す力は加齢とともに弱まるため、詰まりは高齢者に多く見られます。数万円の道具を買う前に、数百円で済む処置で解決する可能性があるということです。

家族が耳かきをしてあげるのは避けてください。
同学会は、硬い耳かきを奥まで入れるのは思わぬ怪我につながり非常に危険であるとして、自宅での処置は外耳道の入り口から1cm以内にとどめるよう促しています。奥に溜まった耳あかは、耳鼻咽喉科で取ってもらうほうが安全です。押し込んでしまうと、かえって詰まりを悪化させます。

2つ目|聴力検査で「どの音域が落ちているか」を数字にする

済生会は、日常生活で聞き取りにくい場面が増えてきたと感じる方に、耳鼻科での聴力検査を受けるよう勧めています。検査を受ける意味は、単に難聴かどうかを判定することではありません。どの高さの音がどれだけ落ちているかが分かると、道具を選ぶ基準ができます。

また、加齢以外の原因(中耳炎、突発性難聴、薬の影響など)が隠れていないかを確かめられるのも、受診の価値です。特に片耳だけ、あるいは短期間で急に悪くなった場合は、加齢では説明がつきません。

3つ目|費用の目安を先に把握しておく

ここまでに出てきた選択肢の費用を並べます。

選択肢費用の目安
話し方を変える0円
耳あかの除去
(耳垢栓塞除去・複雑なもの)
保険適用。片側90点・両側160点のため、3割負担で約270〜480円(診察料は別)
聴力検査保険適用。検査の種類により異なる
集音器1万円前後〜6万円弱。医療機器ではない
補聴器機種による幅が大きい。管理医療機器で、公的な助成の対象になる場合がある

※簡単な耳あかの除去は基本診療料に含まれ、別に算定されません。金額は目安であり、医療機関や診療内容によって変わります。

補聴器と集音器は法律上まったく別のもので、価格差の理由も、買ったあとの流れも異なります。この違いは補聴器と集音器の違い|費用相場・選び方と失敗しない試し方で詳しく解説しています。補聴器を検討する場合は、障害者手帳による補装具費支給や医療費控除が使えることがあるため、補聴器の助成金はいくら?障害者手帳の等級・医療費控除・申請の流れもあわせてご覧ください。先に自費で買ってしまうと、助成の対象外になる制度があります。

よくある失敗 3つ

1. 本人に相談せず、家族が勝手に買ってくる

耳につける道具は、本人が使う気にならなければ引き出しに入ったままになります。「聞こえていない」と決めつけられたと受け取られると、道具そのものを拒む理由にもなります。買う前に、本人と一緒に困っている場面を具体的に挙げるところから始めてください。

2. 耳あかと受診を飛ばして、いきなり道具を買う

耳あかが詰まったまま集音器を入れても、音は通りません。原因が別にある場合、道具では解決しないうえ、その原因の発見も遅れます。数百円の処置で済む可能性を先に潰しておくべきです。

3. 一度つけて「合わない」で終わりにする

集音器も補聴器も、それまで聞こえていなかった音が急に入ってくるため、最初は雑音がうるさく感じられます。静かな部屋で短時間から慣らしていく期間が必要です。初日の印象だけで判断すると、使えたはずの道具を手放すことになります。

そろそろ道具を検討する目安

話し方を変えれば、多くの場面は通るようになります。しかし工夫だけでは届かない領域もあり、そこを見きわめないまま粘ると、会話そのものが減っていきます。どこまでが工夫の担当で、どこからが道具の担当かを整理しておきます。

場面話し方の工夫で届くか補足
静かな部屋での1対1◎ 届く音を止めて正面に回れば、多くの場合は通じる
家族が集まる場、外食△ 席の工夫では限界がある複数の声が重なると、工夫だけでは追いつかない
テレビ・ラジオ✕ 届かない話し手が配慮できないため、工夫の余地がない
病院・銀行・役所の窓口✕ 届かない家族が同席しない場面では、聞き漏らしが実害になる
電話✕ 届かない文字に切り替えるほうが確実

この表のうち、下の3つ——テレビ、窓口、電話——は家族がそばにいても解決できない場面です。ここで困っているなら、話し方の工夫だけを続けても状況は変わりません。

次の5つのうち3つ以上当てはまるなら、検討の時期です

  • 静かな部屋で正面から話しても、聞き返される
  • テレビの音量を家族が我慢している
  • 一人での受診や窓口の手続きを不安がる、または避けるようになった
  • 人の集まる場所へ出かけたがらなくなった
  • 電話に出ようとしなくなった

特に注意したいのが、4つ目と5つ目です。聞こえにくさは、外出や電話を避ける形で先に表れます。本人は「面倒だから」と説明しますが、実際には聞き取れない場面を避けているだけということがあります。東京都健康長寿医療センターが指摘するとおり、人との会話が減ること自体が聞こえの悪化を早めかねないため、この段階での対処には意味があります。

道具で補うという選択|会話のどこを助けたいかで選ぶ

耳あかの確認と受診を済ませたうえで、それでも会話が続かない場合に検討するのが集音器です。集音器は医療機器ではなく、音を大きくして聞き取りを補うための機器です。難聴そのものを治すものではありませんが、補聴器に踏み切る前の段階や、本人が補聴器を強く拒んでいる場面では現実的な選択肢になります。

ここでは特徴の異なる2製品を取り上げます。選ぶ基準は価格ではなく、会話のどの場面を助けたいかです。

家族が集まると誰の声か分からない|立体集音器 みみ太郎

みみ太郎は、株式会社SinasSP シマダ事業所が扱う集音器です。特徴は、人の耳たぶ(耳介)をかたどった「人工耳介」で音を集める特許技術にあります。単に音を大きくするのではなく、人が耳で聞くのに近い状態で集めるため、音の方向や距離感が分かる形で届きます。

この構造が効くのは、複数人が同時に話す場面です。法事や正月の集まりで「誰かが何か言ったのは分かるが、どこの誰が話しているのか分からない」という状態は、音量ではなく方向感の問題です。1対1では困らないのに集まりだと黙ってしまう親には、この軸が合います。

機種のSX-013は、1台で片耳でも両耳でも使える耳掛け式で、価格は55,000円(税込)です。金額としては小さくありませんが、10日間の無料貸出があり、返却時の送料のみ実費負担で試せます。買ってから合わないと分かる事態を避けられる点が、この製品を最初に挙げる理由です。

10日間の無料貸出を申し込む(みみ太郎)

※貸出は専用機です。返却時の送料は自己負担となります

1対1の会話とテレビをまず何とかしたい|ミミクリア

ミミクリアは、DREXELが販売する耳掛けタイプの集音器です。公式サイトには「本製品は集音器です。医療機器である補聴器ではありません」と明記されています。

高感度のCICチップを搭載し、公式サイトでは最大35倍まで音を大きくできるとしています。ノイズフィルターとハウリング抑制も備え、本体は約5gと軽量です。充電は約1.5時間で、最大40時間の連続使用に対応します。電池を頻繁に買い替える手間がない点は、離れて暮らす家族にとって実用的な差になります。

価格は1個9,980円(税込)、2個セットで15,968円(税込)。1年間の保証書が付きます。集音器を試したことがなく、まず1対1の会話とテレビの音を何とかしたいという段階に向いた価格帯です。

価格と機能を確認する(ミミクリア)

※価格・仕様は変更される場合があります

2つを並べて比べる

項目みみ太郎ミミクリア
種類集音器(医療機器ではありません)集音器(医療機器ではありません)
音の作り方人工耳介で立体的に集音。音の方向と距離感が分かるCICチップで最大35倍に増幅。ノイズフィルターとハウリング抑制
形状耳掛け式。1台で片耳でも両耳でも使える(SX-013)耳掛けタイプ。約5g。左右どちらの耳にも使える
価格(税込)55,000円(SX-013)9,980円(1個)/15,968円(2個セット)
買う前に試せるか 10日間の無料貸出(返却時の送料のみ実費)— 貸出の記載なし。1年間の保証書付き
電源機種により異なる充電式。約1.5時間の充電で最大40時間
向いている方複数人の会話や集まりで、誰が話しているか分からなくなる方1対1の会話とテレビを、まず手の届く金額で試したい方

どちらを選ぶかの判断基準

この2つは競合ではなく、助ける場面が違います。実家での親の困り方に近いほうを選んでください。

1対1なら話せるのに、家族が集まると黙ってしまう
みみ太郎(音の方向が分かる立体集音。10日間試してから決められる)

みみ太郎

まずテレビと1対1の会話だけ何とかしたい/高額な買い物には踏み切れない
ミミクリア(1万円を切る価格帯。充電式で電池交換の手間がない)

ミミクリア

※価格・仕様・貸出条件は変更される場合があります。申し込み前に各公式サイトで最新の内容をご確認ください。※集音器は医療機器ではなく、難聴の治療を目的とした製品ではありません。聞こえに不安がある場合は、先に耳鼻咽喉科を受診してください。

ケース別|こんなときどうする

本人が「ちゃんと聞こえている」と言い張る

加齢性難聴は高い音から少しずつ進むため、本人に自覚が生まれにくい性質があります。責めるのではなく、起きた事実を1つ挙げるのが有効です。「テレビの音、私には少し大きく感じる」「この前、7時と1時を聞き違えたよね」と、出来事だけを伝えます。本人の耳を否定するのではなく、家族が困っている場面として話すほうが、受診につながりやすくなります。

補聴器を勧めたら怒られた

補聴器には「年寄りの道具」という印象が根強く残っています。その場合、まず耳鼻咽喉科での聴力検査だけを提案してください。検査は治療の決定ではなく、現状を数字にするだけです。数字を見てから改めて話すと、議論が感情ではなく事実の上に乗ります。集音器から試す道もありますが、その位置づけは補聴器と集音器の違いで整理しています。

離れて暮らしていて、電話でしか話せない

電話は口元が見えないうえ、伝わる音の帯域が狭いため、聞こえにくい方には最も条件の悪い手段です。用件のある連絡は、文字が残る手段に切り替えてください。日付・時刻・金額・薬の名前など、聞き間違いが実害につながるものは必ず文字で送ります。ビデオ通話が使える環境なら、顔が見えるだけで通りやすさが変わります。

病院やデイサービスでは困っていないと言われる

施設や診察室は静かで、相手が正面から、ゆっくり話す環境です。条件が整った場所では困らないのに、家庭やにぎやかな場所では通じない——これは加齢性難聴の典型的な現れ方で、「困っていない」という報告と矛盾しません。実家での様子を具体的に医師へ伝えてください。

会話は通じるのに、テレビの音量だけが極端に大きい

テレビの音声は、会話より速く、口元も見えず、効果音や音楽が重なります。会話より難易度が高いため、テレビの音量は聞こえの変化が最初に表れる場所になります。家族が音量を我慢している段階なら、受診を検討する時期に来ています。

認知症ではないかと心配している

返事がかみ合わないという状態は、聞こえの問題でも認知機能の問題でも起こります。切り分けの目安として、紙に書いて渡したときに正しく答えられるかを見てください。文字で通じるなら、詰まっているのは耳の側です。判断に迷う場合は加齢性難聴は認知症のサイン?のセルフチェックが役立ちます。判断力があるうちに進めておく手続きについては認知症になると終活はできなくなる|判断力があるうちにやることにまとめています。

よくある質問

Q. 大きな声で話すのは、本当に逆効果ですか

効果がほとんどない、というのが正確な表現です。MSDマニュアル家庭版は、大きな声を出すと低い周波数の母音が強調されるため、言葉の認識はほとんど改善されないと説明しています。加えて、感音難聴では大きな音が響いて不快に感じられることがあります。声量を上げるより、静かな場所で、正面から、低めの声でゆっくり話すほうが通じます。

Q. 集音器を使えば難聴は治りますか

治りません。集音器は音を大きくする機器であり、医療機器ではありません。加齢性難聴そのものを元に戻す方法は現在のところなく、聞こえを補いながら会話を維持することが目的になります。

Q. 家族が耳あかを取ってあげてもいいですか

奥の耳あかには手を出さないでください。日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会は、硬い耳かきを奥まで入れることは怪我につながり非常に危険だとして、自宅での処置は外耳道の入り口から1cm以内にとどめるよう促しています。押し込むと詰まりが悪化します。奥に溜まっている場合は耳鼻咽喉科で除去してもらってください。

Q. 補聴器と集音器、どちらを先に検討すべきですか

順番としては、耳鼻咽喉科の受診が先です。検査結果を見たうえで、医師の判断を踏まえて選びます。補聴器は管理医療機器で、障害の程度によっては公的な助成の対象になります。助成を使う可能性がある場合、先に自費で購入すると対象外になる制度があるため、購入前に確認してください。詳しくは補聴器の助成金はいくら?で解説しています。

Q. 何科を受診すればいいですか

耳鼻咽喉科です。日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会は、「耳が聞こえづらいのは年のせいだ」と決めつけずに、必ず耳鼻咽喉科医の診察を受けるよう勧めています。かかりつけの内科がある場合は、そこから紹介してもらう形でも構いません。

Q. マスクをしていると、急に通じにくくなるのはなぜですか

口の形が見えなくなり、抜けた子音を補う手がかりが失われるためです。加えて、布が高い周波数の音を弱めます。聞こえが悪化したわけではなく、条件が悪くなっているだけの場合があります。

Q. 女性や孫の声が特に通じにくいのはなぜですか

加齢性難聴は高い音から先に落ちるため、声そのものの高さが影響します。低い声のほうが届きやすいので、話しかけるときは意識して少し低めの声を出すと通りが変わります。

Q. 聞こえにくいまま放っておくと、どうなりますか

日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会は、難聴が認知症の発症リスクを大きくすることを示しています。また東京都健康長寿医療センターは、人との会話を減らさないことが悪化の速度を緩めるうえで大切だとしています。会話が減ること自体が次の問題を呼ぶため、通じにくさを放置しないことに意味があります。

まとめ

親との会話が続かなくなったとき、最初に見直すのは道具ではなく話し方です。加齢性難聴で抜けるのは高い周波数の子音であり、声を大きくしても母音が強まるだけで、言葉の輪郭は戻りません。

今日からできる順番

  1. テレビと換気扇を止めてから話しかける
  2. 正面に回り、顔が見える位置で、低めの声でゆっくり話す
  3. 通じなかったら繰り返さず、別の言い方に変える
  4. 耳鼻咽喉科で耳あかの詰まりと聴力を確認する
  5. それでも足りない部分を、補聴器または集音器で補う

1から3までは費用がかかりません。4は数百円から始められます。道具の検討は5番目で、そこに至るまでにできることがまだ残っている——この順番を押さえておくと、無駄な出費も、原因の見落としも避けられます。

会話が通じにくいまま放っておくと、家族は本人を飛ばして物事を決めるようになります。聞こえを補うことは、単に音を届ける話ではなく、親が自分のことを自分で決められる時間を延ばす話でもあります。

次に読む記事

※本記事は、日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会、済生会、東京都健康長寿医療センター、MSDマニュアル家庭版の公表資料をもとにまとめたものです。
※記載の費用・点数・製品仕様は執筆時点のものです。診療報酬は改定され、製品の価格や貸出条件も変更される場合があります。
※本記事は医学的な診断・治療を目的としたものではありません。聞こえに不安がある場合は耳鼻咽喉科を受診してください。
※集音器は医療機器ではなく、難聴を治療する製品ではありません。

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