贈与税の計算方法|年110万円の非課税枠と使える特例5つ

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「年間110万円までなら贈与税はかからない」。これは正しいのですが、この知識だけで生前贈与を始めると、かえって損をすることがあります。

理由は2つ。ひとつは、そもそも相続税がかからない家庭が生前贈与をしても意味がないこと。もうひとつは、亡くなる前7年以内の贈与は相続財産に加算されるようになったことです。

この記事では、贈与税の計算方法を速算表と計算例で示したうえで、どんな場合に生前贈与が有効で、どんな場合に無駄になるかまで整理します。

目次

  • 贈与税の計算方法(速算表+計算例つき)
  • 暦年課税と相続時精算課税の違いと選び方
  • 使える特例5つ(住宅・教育・結婚子育て・おしどり贈与・都度贈与)
  • 7年に延長された生前贈与加算
  • そもそも贈与税がかからないもの
  • 生前贈与が逆効果になるケース

目次

  1. 贈与税とは|誰が払うのか
  2. 2つの課税方法
  3. 暦年課税の計算方法
  4. 贈与税の速算表
  5. 計算例3パターン
  6. 相続時精算課税
  7. 2つの課税方法の比較
  8. 7年に延長された生前贈与加算
  9. 使える特例5つ
  10. そもそも贈与税がかからないもの
  11. 生前贈与が逆効果になるケース
  12. 贈与を認めてもらうための3条件
  13. 申告と納付
  14. 贈与税の計算でよく聞かれること
  15. 贈与税の非課税枠で押さえること

贈与税とは|誰が払うのか

贈与税は、個人から財産をもらった人(受贈者)が払う税金です。あげた人ではありません。

項目内容
誰が払うかもらった人
いつの分か1月1日〜12月31日の1年間にもらった財産の合計
申告期限翌年2月1日〜3月15日
提出先もらった人の住所地を管轄する税務署
基礎控除年110万円(もらった人1人あたり)

110万円は「あげる人ごと」ではありません

よくある誤解です。基礎控除110万円はもらう人1人あたりの年間合計に対する枠です。

  • 父から100万円、母から100万円 → 合計200万円 → 90万円が課税対象
  • 父から子Aへ110万円、父から子Bへ110万円 → どちらも非課税(もらった人が別々のため)

2つの課税方法

贈与税には暦年課税と相続時精算課税の2つがあり、どちらかを選びます。

暦年課税相続時精算課税
基礎控除年110万円年110万円
(2024年1月から新設)
特別控除-累計2,500万円
税率累進(10〜55%)2,500万円超の部分に一律20%
誰でも使えるか誰でも60歳以上の父母・祖父母から
18歳以上の子・孫へ
相続時の扱い一定期間内の贈与を加算贈与財産を相続財産に加算して精算
やり直し-一度選ぶと暦年課税に戻せません
届出不要初回に「相続時精算課税選択届出書」が必要

暦年課税の計算方法

計算の式

(1年間にもらった財産の合計 − 110万円)× 税率 − 控除額

税率表は2種類あります。誰からもらったかで変わります。

区分対象
特例贈与財産直系尊属(父母・祖父母)から、18歳以上の子・孫への贈与。税率が低い
一般贈与財産上記以外。夫婦間、兄弟間、他人から、未成年の子への贈与など

贈与税の速算表

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特例贈与財産(父母・祖父母から18歳以上の子・孫へ)

基礎控除後の課税価格税率控除額
200万円以下10%-
400万円以下15%10万円
600万円以下20%30万円
1,000万円以下30%90万円
1,500万円以下40%190万円
3,000万円以下45%265万円
4,500万円以下50%415万円
4,500万円超55%640万円

一般贈与財産(上記以外)

基礎控除後の課税価格税率控除額
200万円以下10%-
300万円以下15%10万円
400万円以下20%25万円
600万円以下30%65万円
1,000万円以下40%125万円
1,500万円以下45%175万円
3,000万円以下50%250万円
3,000万円超55%400万円

計算例3パターン

例1 父から25歳の子へ 500万円(特例贈与)

もらった額500万円
基礎控除− 110万円
課税価格390万円
税率15%(400万円以下)− 控除10万円390万×0.15−10万
贈与税額48万5,000円

例2 叔父から甥へ 500万円(一般贈与)

課税価格390万円
税率20%(400万円以下)− 控除25万円390万×0.20−25万
贈与税額53万円

例3 父から30歳の子へ 110万円(特例贈与)

もらった額110万円
基礎控除− 110万円
贈与税額(申告も不要)0円

同じ500万円でも、続柄で4万5,000円違います

例1と例2の差は、「直系尊属から18歳以上の子・孫へ」かどうかだけです。祖父母から孫への贈与も特例贈与にあたるので、税率が低くなります。

相続時精算課税

累計2,500万円まで贈与税がかからない制度です。ただし、その財産は相続時に相続財産へ加算されます。

項目内容
あげる人60歳以上の父母・祖父母
もらう人18歳以上の子・孫(推定相続人または孫)
特別控除累計2,500万円まで贈与税がかからない
年110万円の基礎控除2024年1月から新設。この分は相続財産に加算されません
2,500万円を超えた分一律20%の贈与税(相続時に精算されます)
手続き最初の贈与の翌年に「相続時精算課税選択届出書」を提出

一度選ぶと、その相手からの贈与は暦年課税に戻せません

「父からの贈与」に相続時精算課税を選ぶと、その後の父からの贈与はすべてこの方式になります。暦年課税の年110万円の基礎控除は、父からの贈与には使えなくなります。

ただしあげる人ごとに選べるので、「父は相続時精算課税、母は暦年課税」という使い分けは可能です。

2024年の改正で、使いやすくなりました

従来、相続時精算課税は「贈与した全額が相続財産に加算される」ため、節税効果が乏しいとされていました。

2024年1月から年110万円の基礎控除が新設され、この分は相続財産に加算されません。しかも暦年課税と違い、生前贈与加算の対象にもなりません。

「相続直前でも、年110万円までは確実に相続財産から外せる」ようになったのは大きな変化です。高齢になってから贈与を始める場合、暦年課税より有利になることがあります。

2つの課税方法の比較

こんな場合向いている方式理由
まだ若く、長期間かけて贈与できる暦年課税毎年110万円を長く続けられる
高齢で、贈与できる期間が短い相続時精算課税年110万円分が生前贈与加算の対象外
まとまった額を一度に渡したい相続時精算課税2,500万円まで贈与税がかからない
相続人以外(孫やひ孫)に渡したい暦年課税相続人でなければ生前贈与加算の対象外になることが多い
今後値上がりしそうな財産を渡したい相続時精算課税贈与時の価額で相続財産に加算される
そもそも相続税がかからないどちらも不要贈与税を払うだけ損になります

7年に延長された生前贈与加算

暦年課税の最大の注意点です。亡くなる前の一定期間内に相続人等へ贈与した財産は、相続財産に加算されます。

3年から7年へ、段階的に延長

2024年1月1日以後の贈与について、加算期間が3年から7年へ段階的に延長されています。

ただし、延長された4年間分(相続開始前4〜7年)については、合計100万円まで加算されません。

「駆け込み贈与」はもう効きません

余命が短いと分かってから慌てて贈与しても、その分は相続財産に戻されます。暦年課税による生前贈与は、長期にわたる計画的な実行が前提になりました。

なお、加算されるのは相続や遺贈で財産を取得した人への贈与です。相続人でない孫やひ孫への贈与は、原則として加算対象外になります(ただしその孫が遺贈を受けたり、生命保険金を受け取ったりすると対象になります)。

使える特例5つ

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①住宅取得等資金の贈与

項目内容
非課税枠省エネ等住宅 1,000万円/それ以外 500万円
あげる人父母・祖父母(直系尊属)
もらう人18歳以上の子・孫。所得要件あり
用途自宅の新築・取得・増改築の資金
注意適用期限があります。また基礎控除110万円と併用できます

②教育資金の一括贈与

父母・祖父母から30歳未満の子・孫へ、教育資金を一括で贈与する場合、最大1,500万円まで非課税(学校等以外への支払いは500万円まで)。金融機関で専用口座を開設する必要があります。

③結婚・子育て資金の一括贈与

18歳以上50歳未満の子・孫へ、結婚・出産・育児の資金を一括で贈与する場合、最大1,000万円まで非課税(結婚関係は300万円まで)。こちらも専用口座が必要です。

②③は使い切れないと課税されます

教育資金は受贈者が30歳になった時点、結婚・子育て資金は50歳になった時点で残額があると、その残額に贈与税がかかります。

また、贈与した人が途中で亡くなった場合、残額が相続財産に加算されることがあります(条件により異なります)。

「必要な都度、必要な額を渡す」ほうが、非課税で確実なことも多いので、後述の⑤も検討してください。

④贈与税の配偶者控除(おしどり贈与)

項目内容
非課税枠2,000万円(基礎控除110万円と合わせて2,110万円)
条件婚姻期間20年以上の夫婦間
対象居住用不動産、またはその取得資金
回数同じ配偶者からは一生に1回
利点生前贈与加算の対象になりません

ただし「使うべきか」は別問題です

おしどり贈与は生前贈与加算の対象外という強みがある一方、不動産取得税と登録免許税がかかります(相続で取得すれば不動産取得税は非課税、登録免許税も0.4%で済みます)。

さらに、相続なら配偶者の税額軽減で1億6,000万円まで非課税です。そもそも相続税がかからない家庭では、この特例を使う意味はほとんどありません。

⑤都度贈与(扶養義務者からの生活費・教育費)

これが最も使いやすい非課税制度です。

扶養義務者からの生活費・教育費は非課税

父母や祖父母が、子や孫の生活費や教育費として、必要な都度、必要な額を渡す分には、贈与税はかかりません。金額の上限も定められていません。

  • 孫の大学の学費を、毎年直接大学に振り込む
  • 子の家賃や生活費を毎月援助する
  • 医療費を負担する

これらは非課税です。手続きも届出も不要。

条件は「必要な都度」であること

「将来の学費として」とまとめて渡し、受け取った側が預金したままにしていると、生活費・教育費としての非課税は認められません。

ポイントは①必要になった都度渡す ②実際にその用途に使われるの2点。可能なら学校や病院へ直接振り込むと、証拠としても明確になります。

そもそも贈与税がかからないもの

  • 年110万円以下の贈与(基礎控除内)
  • 扶養義務者からの生活費・教育費(必要な都度)
  • 社会通念上相当な範囲の香典・祝儀・見舞金・お中元お歳暮
  • 法人からの贈与(こちらは所得税の対象になります)
  • 相続があった年に、被相続人から受けた贈与(相続税の対象になります)
  • 公益目的の事業に使われる財産
  • 特定障害者への信託受益権(一定額まで)

生前贈与が逆効果になるケース

まず「自分の家に相続税がかかるか」を確認してください

相続税の基礎控除は3,000万円+600万円×法定相続人の数です。相続人が3人なら4,800万円。

この基礎控除以下の家庭が生前贈与をすると、本来かからなかったはずの贈与税を払うだけになります。加えて、不動産を贈与すれば登録免許税2%と不動産取得税もかかります。

順番を間違えないでください。①財産目録を作る → ②基礎控除と比べる → ③超えていたら初めて贈与を検討する。この順です。

その他の逆効果パターン

ケース何が起きるか
相続税がかからない家庭での贈与贈与税だけ払うことになる
不動産の生前贈与登録免許税2%+不動産取得税。相続なら0.4%+非課税
亡くなる直前の駆け込み贈与7年以内なら相続財産に加算される
自宅の生前贈与小規模宅地等の特例(80%減額)が使えなくなることがある
老後資金を渡しすぎる自分の生活が立ち行かなくなる。最も深刻な失敗

相続税の計算方法は相続税の計算方法と申告、その他の税金は終活で関わる税金一覧で解説しています。

贈与を認めてもらうための3条件

税務調査で最も指摘されるのが名義預金です。「毎年110万円ずつ孫名義の口座に積み立てていた」というケースは、贈与と認められないことがあります。

贈与として認められる3条件

  1. あげる意思と、もらう意思の両方があること/片方が知らないのは贈与ではありません
  2. もらった人が自由に使える状態にあること/通帳と印鑑を渡す人が管理していたらアウト
  3. 実際に財産が移転していること/口座振込など記録が残る形で
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証拠を残す方法

  • 贈与契約書を作る/簡単なもので構いません。日付・当事者・金額・署名押印
  • 銀行振込で渡す/現金手渡しは記録が残りません
  • 通帳・印鑑・キャッシュカードは、もらった人が管理する
  • 110万円を少し超える額を贈与し、あえて申告する/申告記録が証拠になります

「定期贈与」とみなされるリスク

「毎年100万円を10年間贈与する」と最初から約束していた場合、1,000万円を一括で贈与する契約とみなされ、その年に贈与税がかかる可能性があります。

対策としては、毎年その都度、贈与契約書を作る、金額や時期を毎年変える、といった方法が挙げられます。

申告と納付

項目内容
申告期限贈与を受けた年の翌年2月1日〜3月15日
申告先もらった人の住所地の税務署
申告が必要な場合年110万円を超えた/特例を使う(税額0円でも申告必要)/相続時精算課税を選ぶ
申告が不要な場合年110万円以下(暦年課税で特例を使わない場合)
納付方法現金、口座振替、クレジットカード、電子納税、コンビニ納付など
遅れた場合無申告加算税、延滞税がかかります

特例を使うなら、税額0円でも申告してください

住宅取得等資金、教育資金、結婚・子育て資金、おしどり贈与。これらの特例は、申告して初めて適用されます。

「非課税だから何もしなくていい」と考えて申告せず、後から課税されるケースは実際に起こります。

贈与税の計算でよく聞かれること

年110万円以下なら、申告も何も要りませんか?
暦年課税で特例を使わないなら、申告は不要です。ただし名義預金と疑われないよう、贈与契約書と振込記録は残しておいてください。相続時に「これは実質的に故人の財産だった」と判断されると、相続税の対象になります。
孫への贈与は相続財産に加算されますか?
原則として加算されません。生前贈与加算の対象は「相続や遺贈で財産を取得した人」への贈与だからです。ただし孫が遺言で財産を受け取ったり、生命保険金の受取人になっていたりすると対象になります。孫への贈与は相続対策として有効とされるのは、この理由です。
現金を手渡しでもらいました。バレますか?
税務署は過去の預金の動きを把握できます。あげた側の口座から多額の引き出しがあり、もらった側で不動産を買っていれば、調査で明らかになります。また、記録がないと「贈与だった」という主張も通りません。振込にして記録を残すほうが、双方にとって安全です。
親から借りたお金は贈与になりますか?
実態が伴えば借入です。ただし「ある時払いの催促なし」「返済実績がない」と判断されると贈与とみなされます。金銭消費貸借契約書を作り、返済期限と利息を定め、実際に返済を続けてください。
夫婦間でお金を移動させたら贈与税がかかりますか?
生活費として使う分には問題ありません。ただし夫の収入を妻名義の口座に貯め続けている場合は、実質的に夫の財産(名義預金)と判断されることがあり、相続時に問題になります。専業主婦(主夫)世帯では特に注意が必要です。
贈与税と相続税、どちらが安いですか?
税率だけ見れば贈与税のほうが高いのですが、贈与は「毎年少しずつ」できる点が違います。相続税の税率が高くなる資産家では、贈与税を払ってでも生前に移したほうが有利になることがあります。ただしこれは相続税がかかる家庭の話で、かからない家庭には当てはまりません。
贈与税を払えない場合はどうなりますか?
贈与税にも延納の制度があります(一定の要件と担保が必要)。物納はありません。なお、もらった人が払えない場合、あげた人が連帯納付義務を負うことがあります。

贈与税の非課税枠で押さえること

贈与税・要点

  • 払うのはもらった人。基礎控除は年110万円(もらう人1人あたり)
  • 税率表は2種類。直系尊属から18歳以上の子・孫なら税率が低い
  • 相続時精算課税は2024年改正で使いやすくなった。年110万円分は生前贈与加算の対象外
  • 暦年課税の生前贈与加算は3年→7年へ段階的に延長。駆け込み贈与は効かない
  • 孫への贈与は原則として加算対象外
  • 「必要な都度」の生活費・教育費は非課税。最も使いやすい
  • 不動産は贈与より相続のほうが税負担が軽いのが通常
  • 特例を使うなら税額0円でも申告が必要
  • 名義預金に注意。贈与契約書と振込記録を残す
  • まず相続税がかかるか確認する。かからないなら贈与は不要

贈与税の話は複雑ですが、判断の順番はシンプルです。

財産目録を作る → 相続税の基礎控除と比べる → 超えていたら贈与を検討する。この順番さえ守れば、意味のない贈与税を払わずに済みます。

※ 本記事は一般的な情報をまとめたものです。税率・控除額・特例の内容および適用期限は、税制改正によって変更されます。計算例は制度の仕組みを説明するための簡略化したものであり、実際の税額を保証するものではありません。特例の適用要件は細かく定められています。必ず国税庁の公式情報を確認のうえ、税理士にご相談ください。

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