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「子どもがいない私たちが亡くなったら、財産はどうなるのだろう?」――子なし夫婦の相続は、意外と複雑な仕組みになっています。
実は、お子さんがいないご夫婦の場合、一方が亡くなったとき、残された配偶者だけが全財産を受け取れるわけではありません。義理の親や兄弟姉妹が法定相続人になるケースがあり、「全部、夫(妻)に渡したい」という当たり前の希望が、法律上は当たり前でないことがあるのです。
でも、ご安心ください。遺言書をきちんと準備しておけば、大切なパートナーを確実に守ることができます。この記事では、法務省の公式資料をもとに、子なし夫婦が知っておくべき相続の仕組みと、具体的な備え方をていねいにご説明します。
目次
①まず知っておきたい|子なし夫婦の「法定相続」の仕組み

配偶者は「常に」相続人――でも、誰と一緒に相続するかが問題です
法律では、配偶者は常に相続人とされています。しかし、配偶者「だけ」が相続人になるとは限りません。亡くなった方(被相続人)にお子さんがいない場合、相続の順位は次のように変わります。
(出典:法務省・日本司法書士会連合会「エンディングノート」2023年8月改訂)
- 第1順位(子・孫など直系卑属):お子さんがいないため、この順位の相続人はいません。
- 第2順位(父母・祖父母など直系尊属):ご両親や祖父母が存命の場合、配偶者とともに相続人になります。
- 第3順位(兄弟姉妹・甥・姪):ご両親等がすでに亡くなっている場合、兄弟姉妹(またはその子)が相続人になります。
(出典:法務局「法定相続人の範囲・順位・法定相続分・遺留分」)
具体的にどのくらい配偶者に渡るの? 法定相続分の早見表

お子さんがいない場合、配偶者が受け取れる割合は相続人の組み合わせによって変わります。
- 配偶者 + 父母(直系尊属):配偶者が3分の2、父母が3分の1
- 配偶者 + 兄弟姉妹:配偶者が4分の3、兄弟姉妹が4分の1
- 配偶者のみ:全財産が配偶者へ(父母・兄弟姉妹も既に亡くなっている場合)
(出典:法務局「法定相続人の範囲・順位・法定相続分・遺留分」)
ちょっと驚きますよね。「夫(妻)に全部渡したい」と思っていても、義理のお兄さんやご両親が相続人として登場してくるケースがあるのです。
「遺留分」は兄弟姉妹にはない――これはポイントです
遺言書を作っても「遺留分」という権利があるため、相続人から一定割合を請求される場合があります。しかし、兄弟姉妹には遺留分がありません。つまり、兄弟姉妹が相続人になるケースでは、遺言書で「財産すべてを配偶者に」と書けば、その通りに実現できるのです。
(出典:法務省・日本司法書士会連合会「エンディングノート」2023年8月改訂)
「そんな複雑な仕組みになっているとは思わなかった」という方も多いはずです。でも、知っておけばちゃんと備えられます。
②子なし夫婦が「遺言書」を書くべき理由

遺言書があれば、配偶者に全財産を残せる
先ほどご説明したとおり、子なし夫婦の場合、何も準備していないと、義理の親や兄弟姉妹が相続人になります。しかし、有効な遺言書を残しておけば、法定相続分にかかわらず「妻(夫)にすべての財産を相続させる」と指定できます。
これが、子なし夫婦に遺言書が特に重要とされる大きな理由です。
(出典:法務省・日本司法書士会連合会「エンディングノート」2023年8月改訂)
遺言書がないと、遺産分割協議が必要になります
遺言書がない場合、相続人全員で「誰がどの財産を受け取るか」を話し合う「遺産分割協議」が必要になります。これは、義理の兄弟姉妹やその家族とも話し合いをしなければならないことを意味します。
残された配偶者にとって、精神的にも大きな負担です。遺言書一枚で、そのような苦労を防ぐことができます。
(出典:法務省「自筆証書遺言書保管制度」)
二人それぞれが遺言書を書いておくことが大切です
「夫婦で1枚の遺言書を書けばいいのでは?」と思われる方もいらっしゃいますが、法律上、遺言書は必ず一人一通を作成する必要があります(夫婦共同の遺言書は無効です)。お二人それぞれが遺言書を準備されることをおすすめします。
(出典:法務省・日本司法書士会連合会「エンディングノート」2023年8月改訂)
「遺言書って難しそう…」と感じていた方も、次のセクションを読むと、意外と身近に感じていただけると思います。
③自筆証書遺言書を「法務局」で保管する制度のご案内

法務局に預けるだけで、安心・安全に保管できます
令和2年7月10日から、自筆で書いた遺言書を法務局(遺言書保管所)に預けられる制度がスタートしました。全国312か所の法務局で利用できます。
この制度のメリットは大きく4つあります。
- ①紛失・改ざん・隠匿のおそれがない:法務局が原本を安全に管理します。(出典:法務省「自筆証書遺言書保管制度」)
- ②法務局職員が形式の不備を確認してくれる:書き方のミスがあっても、窓口で指摘してもらえます。(出典:法務省「自筆証書遺言書保管制度」)
- ③家庭裁判所での「検認」手続きが不要:残された配偶者の手続き負担が大幅に軽減されます。(出典:法務省「自筆証書遺言書保管制度」)
- ④相続開始後に相続人へ通知される:遺言書の存在が見落とされる心配がありません。(出典:法務省「自筆証書遺言書保管制度」)
保管手数料はわずか3,900円です
費用面もご安心ください。法務局への保管申請にかかる手数料は、1件あたり3,900円(収入印紙)のみです。弁護士や公証役場に依頼するよりも大幅に費用を抑えられます。
(出典:法務省民事局「自筆証書遺言書保管申請ガイドブック」令和7年度改訂版)
自筆証書遺言の「書き方ルール」を確認しましょう
法務局に預けるためには、遺言書が民法の定める要件(民法968条)を満たしている必要があります。主なルールは以下のとおりです。
- 全文・日付・氏名を自分の手で書く(代筆・パソコン入力は不可)(出典:法務省民事局「自筆証書遺言書保管申請ガイドブック」令和7年度改訂版)
- 押印が必要(スタンプ印不可)(出典:同上)
- 消えるボールペンは使用不可(出典:同上)
- 日付は「○月吉日」等は不可(具体的な年月日を記入)(出典:同上)
- 用紙はA4サイズ・片面のみ使用(出典:同上)
- 余白は上5mm以上・下10mm以上・左20mm以上・右5mm以上(出典:同上)
ちょっと細かく感じるかもしれませんが、法務局の窓口で確認してもらえますから、難しく考えなくて大丈夫ですよ。
法務局への予約はインターネットで24時間できます
遺言書保管の申請は、事前予約が必要です。インターネット予約サービスを使えば、24時間365日いつでも申し込みできます。
(出典:法務省民事局「自筆証書遺言書保管申請ガイドブック」令和7年度改訂版)
▶ 予約はこちら:法務局手続案内予約サービス(24時間・無料)
保管できる法務局はどこ?
遺言書を預けられるのは、次のいずれかを管轄する法務局(遺言書保管所)です。
- 遺言者の住所地を管轄する法務局
- 遺言者の本籍地を管轄する法務局
- 遺言者が所有する不動産の所在地を管轄する法務局
(出典:法務省「自筆証書遺言書保管制度」)
「どこに行けばいいかわからない」という方も、上の予約サービスで管轄の法務局を調べることができます。窓口の方が丁寧に教えてくれますので、安心してご来所ください。
④相続登記の義務化|子なし夫婦が知っておきたい不動産相続のルール

令和6年4月から、相続登記が義務になりました
「家の名義変更、後回しでいいか…」と思っていた方は要注意です。令和6年4月1日より、相続によって不動産を取得した場合、3年以内に相続登記(名義変更)を申請することが義務化されました。正当な理由なく怠ると、10万円以下の過料が科せられる場合があります。
(出典:法務省・日本司法書士会連合会「エンディングノート」2023年8月改訂)
子なし夫婦の場合、相続登記の手続きが複雑になることも
子なし夫婦の場合、配偶者が相続人になりますが、義理の親や兄弟姉妹が共同相続人になるケースでは、相続登記のために彼らの協力(署名・捺印など)が必要になる場合があります。
遺言書があれば、こうした手間を大幅に省くことができます。「相続人申告登記」という簡易的な手続きを使う方法もありますが、詳しくはお住まいの地域を管轄する法務局にご確認ください。
(出典:法務省「相続人申告登記」)
「法定相続情報証明制度」を活用すると手続きがスムーズです
相続の際には、銀行・証券会社・法務局などそれぞれに戸籍謄本等の書類を提出しなければなりませんが、法定相続情報証明制度を利用すると、一覧図(無料で取得可能)を各機関に同時提出できるので、手続きが格段にラクになります。
(出典:法務省・日本司法書士会連合会「エンディングノート」2023年8月改訂)
「相続登記って難しそう」と思っていても、遺言書と法定相続情報証明制度を組み合わせると、残された配偶者の負担をずいぶん軽くすることができます。
⑤エンディングノートと遺言書、二つを合わせて準備しましょう
エンディングノートは「家族への情報ノート」、遺言書は「法的な意思表示」
エンディングノートと遺言書は、どちらも大切な準備ですが、役割が違います。
- エンディングノート:法的効力はないが、財産の場所・葬儀の希望・介護の希望・デジタルデータの情報など、家族が困らないための「情報まとめノート」。(出典:法務省・日本司法書士会連合会「エンディングノート」2023年8月改訂)
- 遺言書:法的効力があり、財産の分配先を正式に指定できる「法律的な意思表示」。(出典:法務省民事局「自筆証書遺言書保管申請ガイドブック」令和7年度改訂版)
エンディングノートに書いておきたい項目(子なし夫婦向け)
法務省の公式エンディングノートには、次のような項目が記載されています。特に子なし夫婦の方に重要な項目をご紹介します。
- 財産の一覧:不動産・預貯金・生命保険・有価証券・借入金など。(出典:法務省・日本司法書士会連合会「エンディングノート」2023年8月改訂)
- 遺言書の有無と保管場所:遺言書をどこに保管したか、必ず書き残しておきましょう。(出典:同上)
- デジタルデータの整理:スマートフォン・パソコンのログイン情報、SNSアカウント、オンライン口座(銀行・株・仮想通貨など)の情報。(出典:同上)
- 介護・医療の希望:延命治療の希望、告知についての希望。(出典:同上)
- 葬儀・お墓の希望:どんな葬儀を望むか、お墓はどうするかなど。(出典:同上)
- パートナーへのメッセージ:言葉に出しにくいことも、書き残しておけます。(出典:同上)
「遺言書に書けることには限りがあるけれど、エンディングノートには思いをたっぷり書いておける」というのが、両方そろえる一番の理由です。
⑥子なし夫婦の「配偶者居住権」も知っておきましょう

配偶者居住権とは? 家に住み続ける権利を守る制度です
令和2年4月1日から施行された「配偶者居住権」は、配偶者が亡くなった後も、残された配偶者がそれまで住んでいた家に終身または一定期間、無償で住み続けることができる制度です。
(出典:法務省・日本司法書士会連合会「エンディングノート」2023年8月改訂)
子なし夫婦の場合、義理の兄弟姉妹等が共同相続人になったとき、住んでいる家の権利が複雑になるリスクがあります。配偶者居住権を遺言書に記載しておくことで、残されたパートナーが自宅に安心して住み続けられるよう備えることができます。詳しくはお住まいの地域を管轄する法務局や司法書士にご相談ください。
⑦成年後見制度|認知症になったときのために「任意後見」を準備する

子なし夫婦が直面しやすい「判断能力の低下」リスク
子なし夫婦の場合、お互いが頼りであることが多く、一方の判断能力が低下したとき(認知症など)に、財産管理や契約行為が困難になるリスクがあります。そこで活用したいのが、成年後見制度です。
(出典:法務省「成年後見制度」)
- 任意後見:判断能力があるうちに、自分で後見人を選んでおく制度。(出典:法務省・日本司法書士会連合会「エンディングノート」2023年8月改訂)
- 法定後見:すでに判断能力が低下してから、家庭裁判所が後見人を選ぶ制度(補助・保佐・後見の3段階)。(出典:同上)
「将来、自分がどうなるかわからないから、信頼できる人(専門家も含む)にあらかじめ頼んでおきたい」という場合は、任意後見契約の活用もぜひご検討ください。詳しくはお近くの法務局や司法書士会にご相談ください。
遺言書・エンディングノート・任意後見――この3点セットがそろえば、子なし夫婦の「もしも」への備えはかなり充実します。
まとめ|子なし夫婦の相続・終活対策 今日から始める5つのポイント
- ①法定相続の仕組みを確認する:子なし夫婦の場合、義理の親・兄弟姉妹が相続人になる可能性があります。配偶者の取り分は状況によって異なります。(出典:法務局「法定相続人の範囲・順位・法定相続分」)
- ②遺言書を二人それぞれが作成する:「配偶者にすべての財産を相続させる」と書いておくことで、大切なパートナーを守れます。兄弟姉妹には遺留分がないため、遺言書の効力がより確実に発揮されます。(出典:法務省・日本司法書士会連合会「エンディングノート」2023年8月改訂)
- ③法務局の遺言書保管制度を利用する:手数料3,900円で法務局に預けることができ、紛失・改ざんの心配がなく、検認手続きも不要になります。(出典:法務省民事局「自筆証書遺言書保管申請ガイドブック」令和7年度改訂版)
- ④相続登記の義務化に備える:令和6年4月施行の義務化により、不動産を相続したら3年以内に登記申請が必要です。怠ると過料が科せられる場合があります。(出典:法務省・日本司法書士会連合会「エンディングノート」2023年8月改訂)
- ⑤エンディングノートと任意後見で「もしも」に備える:財産の情報整理・介護の希望・デジタルデータなどをエンディングノートに記録し、認知症などへの備えとして任意後見の検討もおすすめします。(出典:法務省・日本司法書士会連合会「エンディングノート」2023年8月改訂)
二人で力を合わせて準備できるうちに、ぜひ一歩踏み出してみてください。「書いてよかった」と、きっと感じていただけるはずです。
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「遺言書の書き方がわからない」「法務局の窓口に行く前に確認したい」という方は、以下の窓口をご利用ください。
- お住まいの地域の法務局(遺言書保管所):法務省「自筆証書遺言書保管制度」
- 法務局手続案内予約サービス(24時間365日):予約はこちら
- 日本司法書士会連合会:相談窓口一覧
- 成年後見制度に関する相談:法務省「成年後見制度」
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「子どもがいないので、パートナーに確実に財産を残したい」というご希望は、遺言書一枚で実現できます。難しく考えず、まずは法務局の窓口に予約を入れてみましょう。インターネットで24時間いつでも予約できますし、当日は職員が丁寧にサポートしてくれます。
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「備えあれば憂いなし」。お二人でいられる今のうちに、少しずつ準備を進めていきましょう。








