相続放棄の手続きと期限|3か月を過ぎたときの対応と必要書類

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亡くなった方に借金がありそうだ——そう気づいたとき、真っ先に確かめてほしいのが「いつから3か月なのか」です。相続放棄の期限は、亡くなった日からではありません。そして期限内であっても、やってしまうと放棄できなくなる行為があります。この記事では、期限の数え始め、「処分」にあたる行為とそうでない行為、3か月を過ぎたときの対応、手続きの流れと必要書類、そして放棄しても残る管理の義務までを順に整理しました。

この記事の結論

  • 期限は「自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内」です
  • 亡くなった日から3か月ではありません。ここを取り違える方がとても多いです
  • 財産を処分すると、放棄できなくなることがあります
  • 3か月では調べきれないときは期間を延ばす申立てができます
  • 放棄すると、次の順位の人が相続人になります。必ず連絡してください
  • 放棄しても、財産を現に占有していれば管理の義務が残ることがあります
  • 手続きは家庭裁判所への申述。相続人一人でもできます

この記事でわかること

  1. 期限は3か月。数え始めに注意
  2. 相続放棄とは何をすることか
  3. 借金も相続されます
  4. 3つの選択肢
  5. 3か月の数え始め
  6. 放棄できなくなる行為
  7. やっても差し支えないこと
  8. 3か月を過ぎたとき
  9. 期間を延ばす方法
  10. 手続きの流れ7ステップ
  11. 必要書類の一覧
  12. 費用の目安
  13. どこの家庭裁判所か
  14. 照会書への答え方
  15. 受理されたあとにすること
  16. 放棄しても残る管理の義務
  17. 次の順位の人へ移ります
  18. 未成年の子がいる場合
  19. よくある質問12問

まず結論|期限は3か月。数え始めに注意します

よくある思い込み実際は
1亡くなった日から3か月「自己のために相続の開始があったことを知った時」から3か月です
2期限を過ぎたら絶対にできない事情によっては認められることがあります
3相続人全員でやる必要がある一人でもできます
4役所に届け出る家庭裁判所へ申述します
5放棄すればもう関係ない管理の義務が残ることがあります

いちばん多い誤解が1つ目です。疎遠だった親族が亡くなり、あとから債権者の通知で相続人だと知った——という場合、3か月はその通知を受け取った時から数えます。亡くなってから何年も経っていても、放棄できることがあります。

迷っている間に、財産に手をつけないでください

期限内であっても、故人の預貯金を引き出して使う、遺品を売る、債務を代わりに支払うといった行為をすると、相続を承認したとみなされ、放棄できなくなることがあります。「調べているだけ」の段階では、動かさない・使わない・払わない——この3つを守ってください。

相続放棄とは何をすることか

項目内容
どういう手続きかはじめから相続人でなかったものとして扱われます
どこへ家庭裁判所へ申述します
誰が相続人が単独でできます
引き継ぐものプラスもマイナスも、何も引き継ぎません
撤回受理されたあとの撤回はできません
相続人の地位次の順位の人へ移ります

「一部だけ放棄する」ということはできません。借金だけ放棄して預貯金は受け取る、という選び方は認められていません。全部引き継ぐか、全部放棄するか——原則としてこの二択です(例外として限定承認があります)。

借金も財産と同じように相続されます

引き継ぐもの
プラスの財産預貯金・不動産・有価証券・車・保険金の一部
マイナスの財産借入金・住宅ローン・カードの未払い・滞納した税や家賃
保証人の地位連帯保証も引き継がれます
未払いの医療費引き継ぎます
引き継がないもの年金の受給権、生活保護の受給権など

いちばん見落とされるのは「保証人の地位」です

故人が誰かの連帯保証人になっていた場合、その立場も相続されます。本人に借金がなくても、保証していた人が返せなくなれば、請求は相続人に来ます。しかも保証は通帳を見ても分かりません。契約書・郵便物・信用情報の開示で確かめてください。

3つの選択肢【単純承認・限定承認・相続放棄】

単純承認限定承認相続放棄
引き継ぐもの全部プラスの範囲でマイナスも何も引き継ぎません
手続き不要(何もしなければこれ)家庭裁判所へ申述家庭裁判所へ申述
期限3か月以内3か月以内
誰が相続人全員で行います一人でもできます
使われる場面ほとんどの相続財産と借金のどちらが多いか分からない借金のほうが明らかに多い
手間とても重い比較的軽い

限定承認は理屈のうえでは便利ですが、実際にはあまり使われません。相続人全員でそろって申述する必要があり、その後の清算手続きも複雑だからです。「借金のほうが多そうなら放棄、分からないなら期間を延ばして調べる」という進め方が現実的です。

期限「3か月」の数え始めはいつか

状況数え始め
同居していて、その日に亡くなったことを知った亡くなった日
後日、親族から知らせを受けた知らせを受けた日
先順位の人が放棄して、自分が相続人になったそのことを知った日
債権者からの通知で初めて知った通知を受け取った日
疎遠で、何年も経ってから知った知った日から3か月です

「知った」ことを示せる資料を残しておいてください

数え始めが争いになったときに効くのは、いつ知ったかを示す記録です。債権者からの通知の封筒(消印つき)、家庭裁判所からの書面、親族からの連絡の記録を保管しておいてください。捨ててしまうと、あとから説明が難しくなります。

やってしまうと放棄できなくなる行為

行為扱われ方の傾向
×故人の預貯金を引き出して使う処分とみなされやすい行為です
×遺品を売る・価値のある品を譲る同上
×債務を代わりに支払う同上
×不動産の名義を自分に変える承認とみなされます
×賃貸の解約や敷金の受け取り事情によります。先に相談してください
×遺産分割の話し合いに応じて合意する承認とみなされます
×家財をまとめて処分する処分とみなされることがあります
×故人のカードのポイントを使う財産の処分にあたりえます

個別の事情によって判断は変わります。ここでの整理は一般的な傾向です。実際の判断は弁護士・司法書士にご確認ください。

やっても差し支えないこと

行為説明
財産と借金を調べる調べるだけなら問題になりにくいとされます
何があるかを写真に撮って記録するむしろやっておくべきことです
形見として写真や手紙を持ち帰る経済的価値のないものは問題になりにくいとされます
葬儀を行う社会的に相当な範囲であれば、問題とされにくいとされます
債権者に「放棄を検討中」と伝える請求を止めてもらえることがあります
信用情報の開示を請求する借金の有無を確かめるために必要です
葬儀費用を故人の預金から支払う争いになりやすい行為です。先に相談してください

葬儀費用を故人の口座から出すのは、慎重に

葬儀を行うこと自体は問題とされにくいとされますが、その費用を故人の預貯金から支払うと、「処分」とみなされる余地が出ます。相続放棄を考えているなら、いったん自分のお金で立て替え、領収書を残しておくほうが安全です。金額が大きい場合は、支払う前に専門家へ相談してください。

3か月を過ぎてしまったときの対応

状況考え方
借金の存在をまったく知らなかった知った時から3か月と主張できる場合があります
財産がないと信じる相当な理由があった認められた例があります
単に忘れていた認められにくいとされます
すでに財産を処分している難しくなります
債権者から突然請求が来たすぐに専門家へ相談してください

「3か月を過ぎたからもう無理」とあきらめないでください。とくに疎遠だった親族の借金を、債権者からの通知で初めて知ったという場合は、認められる可能性があります。ただし事情の説明が必要になるため、自力で進めるより専門家に依頼するほうが確実です。

期間を延ばす方法(熟慮期間の伸長)

項目内容
手続きの名前相続の承認又は放棄の期間の伸長の申立て
どこへ被相続人の最後の住所地の家庭裁判所
いつまでに3か月の期間内に申し立てます
誰が相続人・利害関係人など
認められる場合財産の調査に時間がかかる相当な理由があるとき
延ばせる期間裁判所が事情に応じて定めます

「調べきれない」と思ったら、期限内に申し立ててください

財産や借金の全体像が3か月で分からないことは、珍しくありません。そのときに使うのがこの申立てです。大切なのは、3か月を過ぎてからでは申し立てられないという点です。間に合わないと感じたら、早めに家庭裁判所か専門家へ相談してください。

相続放棄の手続きの流れ【7ステップ】

  1. 財産と借金を調べます(通帳・郵便物・契約書・信用情報の開示)
  2. 放棄するかどうかを決めます
  3. 必要書類を集めます(戸籍が中心です)
  4. 申述書を作成します(家庭裁判所の様式があります
  5. 被相続人の最後の住所地の家庭裁判所へ提出します
  6. 照会書が届いたら回答して返送します
  7. 受理されると相続放棄申述受理通知書が届きます
段階かかる期間の目安
戸籍の取り寄せ郵送だと2〜4週間かかることがあります
申述書の提出1日
照会書の往復2〜3週間
受理まで提出から1か月前後が目安です

戸籍集めに時間がかかります。逆算してください

3か月のうち、いちばん時間を取られるのが戸籍の取り寄せです。本籍地が遠方だと郵送のやり取りが必要になり、2〜4週間かかることがあります。関係が遠い相続人ほど、集める戸籍の数も増えます。「あと1か月ある」と思っていると間に合いません。

必要書類【続柄別の一覧】

書類配偶者・子父母兄弟姉妹
相続放棄の申述書必要必要必要
被相続人の住民票除票または戸籍附票必要必要必要
申述人の戸籍謄本必要必要必要
被相続人の死亡が分かる戸籍必要必要必要
被相続人の出生から死亡までの戸籍必要必要
先順位の相続人の死亡が分かる戸籍場合により必要
収入印紙・郵便切手必要必要必要

必要書類は家庭裁判所や事案によって異なります。申述先の家庭裁判所に確認してから集めてください。関係が遠くなるほど、必要な戸籍は増えます。

費用の目安

費目内容
収入印紙申述人1人につき数百円程度
郵便切手裁判所が指定する額を納めます
戸籍などの取得費通数が増えるほどかかります
専門家へ依頼する場合事務所によって異なります。事前に見積りを取ります
自分で行う場合実費だけで済みます

自分で手続きすること自体は、それほど難しくありません。ただし3か月を過ぎている、財産をすでに動かしてしまった、相続人の関係が複雑——こうした事情があるなら、専門家に依頼したほうが確実です。

申述先はどこの家庭裁判所か

項目内容
申述先被相続人(亡くなった方)の最後の住所地を管轄する家庭裁判所
自分の住所地ではないここを間違える方が多いところです
調べ方裁判所の公式サイトに管轄の一覧があります
遠方の場合郵送で提出できます
最後の住所が分からない住民票除票や戸籍の附票で確認します

照会書が届いたときの答え方

よく聞かれること答え方の考え方
いつ相続の開始を知りましたか実際に知った日を、根拠とともに書きます
放棄する理由は何ですか正直に書きます(借金がある、関わりたくない等)
財産を処分していませんかしていないことを明確に書きます
本人の意思で申述していますかそのとおり書きます
期限を過ぎている場合知らなかった事情を具体的に説明します

照会書を返送しないと、受理されません

申述書を出したあと、家庭裁判所から照会書(回答書)が郵送されてきます。これを返送しないと手続きが進みません。期限も書かれています。難しく考えず、事実をそのまま書いて返送してください。迷う項目があれば、家庭裁判所へ電話で聞けば教えてもらえます。

相続放棄が受理されたあとにすること

  • 相続放棄申述受理通知書を大切に保管します
  • 債権者から請求が来たら、放棄した旨を伝えます
  • 必要なら相続放棄申述受理証明書を交付してもらいます
  • 次の順位の相続人に連絡します
  • 故人の家財に手をつけないようにします
  • 賃貸の部屋がある場合は、管理会社へ状況を伝えます
  • ほかの手続き(年金の停止など)は、放棄と別に必要なことがあります

通知書と証明書は別のものです

通知書は受理されたときに自動的に届くもの、証明書は請求して交付してもらうものです。債権者や金融機関から「証明書を出してほしい」と求められることがあります。その場合は、申述した家庭裁判所へ交付を請求してください。

★放棄しても残る「管理の義務」

ここは見落とされがちですが、重要です

相続放棄をしても、放棄の時にその財産を現に占有していた場合は、次に管理する人へ引き渡すまで、保存する義務が残ることがあります。「放棄したから、実家はもう関係ない」とはならない場合があるということです。とくに空き家や、傷みが進んでいる建物がある場合は、放棄したあとの扱いを専門家に確認してください。

状況放棄後の扱い
実家に住んでいた引き渡すまで保存の義務が残ることがあります
遠方で、一度も立ち入っていない占有していたとは言いにくい場合があります
全員が放棄した相続財産清算人の選任を申し立てる方法があります
空き家がある近隣への影響が問題になることがあります
ペットがいる引き取り先を探す必要があります

次の順位の人へ移ります【誰に連絡するか】

放棄した人次に相続人になる人
子が全員放棄父母などの直系尊属
直系尊属も放棄(または既に死亡)兄弟姉妹
兄弟姉妹が死亡している甥・姪(代襲)
配偶者配偶者が放棄しても、血族相続人の順位は動きます
全員が放棄した相続人がいない状態になります

連絡しないと、親族が突然の請求を受けます

自分が放棄すると、次の順位の人が何も知らないまま相続人になります。そしてその人の3か月は「自分が相続人になったことを知った時」から始まります。連絡が遅れると、債権者からの通知で初めて知ることになり、驚かせてしまいます。放棄したら、必ず次の順位の人へ知らせてください。これは義務ではありませんが、親族関係を保つうえでとても大切です。

未成年の子が相続人になる場合

状況やること
未成年の子が申述する法定代理人(親権者)が代わりに行います
親も子も放棄する同時に申述すれば、特別代理人は不要とされます
親は放棄せず、子だけ放棄する利益が相反するため、特別代理人の選任が必要になります
特別代理人の選任家庭裁判所へ申し立てます
時間選任に日数がかかります。逆算してください

親子で扱いが分かれる場面です。「親は相続して、子だけ放棄する」という形は、利益が相反するとみなされ、家庭裁判所で特別代理人を選んでもらう必要があります。手続きが1つ増えるので、3か月の期限にはとくに注意してください。

ほかの相続人が放棄したか確認する方法

方法内容
相続放棄・限定承認の申述の有無の照会家庭裁判所へ照会できます
誰が照会できるか相続人・利害関係人など
必要な書類戸籍・利害関係を示す資料など
どこへ被相続人の最後の住所地の家庭裁判所
何が分かるか申述されているかどうか

「自分は相続人なのか」がはっきりしないときに使える仕組みです。先順位の人が放棄していれば、自分が相続人になっています。その場合の3か月は、それを知った時から数えます。手続きの詳細は、家庭裁判所に問い合わせてください。

よくある質問

期限の3か月はいつから数えますか
「自己のために相続の開始があったことを知った時」からです。亡くなった日からではありません。債権者からの通知で初めて知った場合は、その通知を受け取った日から3か月です。
3か月を過ぎてしまいました
あきらめないでください。借金の存在をまったく知らず、財産がないと信じる相当な理由があった場合など、認められることがあります。すぐに弁護士・司法書士へご相談ください。
相続人全員でやる必要がありますか
ありません。一人でもできます。ただし限定承認は相続人全員でそろって申述する必要があります。
どこへ申し立てますか
亡くなった方の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。自分の住所地ではありません。遠方でも郵送で提出できます。
葬儀をしても大丈夫ですか
葬儀を行うこと自体は、社会的に相当な範囲であれば問題とされにくいとされています。ただしその費用を故人の預貯金から支払うと争いになる余地があります。立て替えて領収書を残すほうが安全です。
形見をもらってもよいですか
経済的価値のない写真や手紙などは、問題になりにくいとされます。ただし貴金属や高価な品を持ち帰ると、処分とみなされるおそれがあります。迷ったら触らないでください。
財産を調べるだけなら大丈夫ですか
調べるだけなら問題になりにくいとされます。むしろ判断のために必要な作業です。「動かさない・使わない・払わない」を守ってください。
賃貸の部屋を片づけなければいけません
これはとくに難しい場面です。片づけが「処分」とみなされるおそれがあります。管理会社に事情を伝え、動かす前に必ず専門家へ相談してください。
放棄したら、実家はどうなりますか
放棄の時に現に占有していた場合は、次に管理する人へ引き渡すまで保存の義務が残ることがあります。全員が放棄した場合は、相続財産清算人の選任を申し立てる方法があります。
受理されたら撤回できますか
できません。受理されたあとの撤回は認められていません。だからこそ、財産と借金を調べてから決めてください。調べきれないなら、期間を延ばす申立てをします。
次の順位の人に連絡する義務はありますか
法律上の義務ではありません。ただし連絡しないと、その方が債権者の通知で初めて知ることになります。親族関係を保つためにも、必ず知らせてください。
費用はどのくらいかかりますか
自分で行う場合は、収入印紙・郵便切手・戸籍の取得費といった実費だけです。専門家へ依頼する場合の費用は事務所によって異なるため、事前に見積りを取ってください。

まとめ

この記事の要点

  • 期限は「知った時から3か月」。亡くなった日からではありません
  • 動かさない・使わない・払わない——迷っている間はこの3つ
  • 葬儀費用を故人の預金から出すのは慎重に。立て替えて領収書を残します
  • 調べきれないなら期間を延ばす申立て(3か月以内に)
  • 申述先は亡くなった方の最後の住所地の家庭裁判所
  • 戸籍集めに2〜4週間かかります。逆算してください
  • 放棄しても、現に占有していれば管理の義務が残ることがあります
  • 放棄したら、次の順位の人へ必ず連絡してください

相続放棄は、決して後ろめたい手続きではありません。借金を引き継がないための、法律が用意した正当な選択肢です。大切なのは期限の数え始めを取り違えないことと、迷っている間に財産へ手をつけないこと。この2つを守れば、選択肢は残ります。まずは通帳と郵便物を確かめるところから始めてください。

本記事は一般的な情報を整理したものです。相続放棄が認められるかどうか、どのような行為が「処分」にあたるかは、個別の事情によって判断が変わります。必要書類・費用・手続きの運用は家庭裁判所によって異なることがあります。実際に手続きされる際は、申述先の家庭裁判所、または弁護士・司法書士などの専門家にご相談ください。

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