後見人にできないこと|身元保証・入院同意・死後事務の誤解

本ページはプロモーションが含まれている場合があります。

終活の相談で後見人の話が出るのは、たいてい「認知症になったら誰が手続きをするのか」という不安からです。ところが実際に制度を使い始めてから、「それはできません」と言われて驚く場面が非常に多くあります。身元保証、手術の同意、介護、亡くなったあとの手続き。この記事は、後見人にできることとできないことを線引きし、できない部分をどう手当てするかまでをまとめたものです。

結論

  • 後見人の仕事は財産の管理と契約などの法律行為。それ以外は原則として職務の外
  • 身元保証人にはなれない。ここが最も多い誤解
  • 手術などの医療行為に同意する権限はないとされている
  • 介護や買い物の付き添いといった実際の世話はしない
  • 後見は原則として本人が亡くなるまで続き、途中で気軽にやめられない

目次

  1. 後見人にできること・できないことの線引き
  2. 終活相談で多い7つの誤解
  3. 身元保証を求められたときの現実的な対応
  4. 医療の同意は誰がするのか
  5. 死後の手続きをどう手当てするか
  6. 途中でやめられないという制度の重さ
  7. 後見以外の選択肢の比較
  8. 相談先の使い分けと手続きの流れ

終活相談で後見人の話が出る場面

相談のきっかけ本当に困っていること
親が認知症になりかけている預金がおろせなくなること
実家を売りたい本人が契約できない状態にあること
施設に入る話が出た入所の契約を誰が結ぶか
身寄りがない入院や入所のときに保証人がいないこと
親族に財産を使われている本人を守る手立てがないこと
相続の手続きが進まない相続人の中に判断が難しい人がいること

この表の右側を見てください。後見制度が解決できるのは、そのうちのいくつかだけです。とくに4行目の「保証人がいない」は、後見では解決しません。理由はあとで説明します。

後見人は「何でも代わりにやってくれる人」ではない

制度の目的は、判断能力が十分でない人が不利益を受けないように守ることです。世話をすることでも、家族の代わりをすることでもありません。

仕事の中身は大きく2つ

  • 財産管理……預貯金の出し入れ、収入と支出の管理、必要な財産の処分
  • 身上保護……介護サービスや施設入所などの契約を結ぶこと

身上保護は「世話をすること」ではなく、世話を受けるための契約を代わりに結ぶことです。この違いが、誤解のほとんどを生んでいます。

後見制度には2種類ある

任意後見法定後見
始める時期判断能力があるうちに契約する判断能力が低下してから申し立てる
誰が選ぶか本人が選ぶ家庭裁判所が選ぶ
内容契約で決めた範囲法律で定められた範囲
取消権ない類型に応じてある
手続き公証役場で契約を結ぶ家庭裁判所に申し立てる
開始能力が低下した時点で監督人の選任を申し立てる審判で開始する

2つの違いの詳細は任意後見と法定後見(成年後見)の違いにまとめています。本記事は、どちらにも共通する「できること・できないこと」を扱います。

法定後見の3つの類型

類型対象となる状態の目安支援する人
後見判断能力が欠けているのが通常の状態成年後見人
保佐判断能力が著しく不十分保佐人
補助判断能力が不十分補助人

※ どの類型にあたるかは、医師の診断などをもとに家庭裁判所が判断します。自分で選ぶものではありません。

後見人にできること

  • 預貯金の管理と、必要な支払い
  • 年金や給付の受け取りに関する手続き
  • 税金や社会保険料の支払い
  • 介護サービスの利用契約を結ぶこと
  • 施設への入所契約を結ぶこと
  • 本人に不利益な契約を取り消すこと(日常生活に関する行為を除く)
  • 本人の財産を守るために必要な手続き
  • 家庭裁判所への定期的な報告

居住用の不動産を売るには許可が要ります

本人が住んでいる(住んでいた)不動産を処分する場合、家庭裁判所の許可が必要とされています。後見人の一存では売れません。「後見人になれば実家をすぐ売れる」と考えている場合は、そこを確認してください。

後見人にできないこと

できないこと理由
身元保証人・身元引受人になる職務の範囲外。立場が衝突する問題もある
手術など医療行為に同意する同意する権限はないとされている
介護・家事・買い物などの世話をする事実行為であり、職務の範囲外
本人を強制的に施設へ入れる居所を強制的に決める権限はない
遺言を書く・代わりに作る本人だけができる行為
結婚・離婚・養子縁組を代わりにする本人だけができる行為
本人の財産を家族のために使う本人のために使うことが原則
日常の買い物を取り消す日常生活に関する行為は取消の対象外
亡くなったあとの手続きを幅広く行う後見は本人の死亡で終了する

ここから、実際に相談の多い誤解を1つずつ見ていきます。

誤解1:身元保証人になってもらえる

これが最も多い誤解です

入院や施設入所のときに求められる身元保証人・身元引受人に、後見人は原則としてなりません。職務の範囲外であり、支払いを保証する立場と、本人の財産を守る立場が衝突するためです。

ここでよくある行き違いは、次のようなものです。

  • 施設から「保証人を立ててください」と言われる後見人がいても、この要求は別に出てきます。
  • 後見人に頼むと断られる職務外なので、断られるのが通常です。
  • 身寄りがないので誰もいないここで止まってしまう相談が非常に多くあります。

身元保証を求められたときの対応

求められている中身後見人が担える部分
利用料の支払い本人の財産から支払える
契約を結ぶこと後見人が結べる
緊急時の連絡先連絡を受けることはできる
医療行為への同意できない
退所時の身柄の引き取り職務外
亡くなったあとの引き取り職務外(後見は終了する)

「保証人」を一括りにしないのが解決の糸口

施設が求めている中身を分解して確認してください。支払いと契約は後見人で足りることが多く、残るのは医療同意と引き取りです。この2つをどうするかを個別に相談すれば、話が前に進むことがあります。

なお、身元保証人がいないことだけを理由に医療機関が受診や入院を拒むのは適切でないという考え方が示されています。困った場合は、地域包括支援センターや市区町村の窓口に相談してください。

身寄りがない場合の備え全般は身寄りなし・子なし夫婦が任意後見で備えるべき5つのことを参照してください。

誤解2:手術の同意をしてもらえる

後見人には、手術や検査といった医療行為に同意する権限はないとされています。これは制度上の空白として、長く議論されている部分です。

場面実際の扱い
本人に判断能力が残っている本人が決める
本人が決められない・家族がいる家族に説明し、意向を確認するのが一般的
本人が決められない・家族がいない医療機関が慎重に判断する。倫理委員会等を経る場合がある
緊急を要する医療機関の判断で必要な処置が行われる

だからこそ、本人が先に書き残す意味があります

同意する人がいないなら、本人の意思をあらかじめ書いておくのが最も確実な備えです。延命治療をどうするか、どこまでの処置を望むか。一行でも書いてあれば、医療機関も家族も判断の根拠を得られます。書き方は終活ノートの書き方例を参照してください。

誤解3:介護や身の回りの世話をしてくれる

後見人がするのは契約を結ぶことであって、実際に世話をすることではありません。

後見人がすること

  • 介護サービスの契約を結ぶ
  • 利用料を本人の財産から払う
  • サービスが適切か確認する
  • 施設の入所契約を結ぶ

後見人がしないこと

  • 身体の介護
  • 食事の用意、掃除、洗濯
  • 買い物の付き添い
  • 通院の送迎

右側は、介護サービスや家族、地域の支援で手当てする部分です。後見人を立てても、実際に世話をする人は別に必要だと理解してください。

誤解4:亡くなったあとの手続きもやってくれる

後見は、本人が亡くなった時点で終了します

葬儀、納骨、家財の片づけ、各種の解約。これらは原則として後見人の職務ではありません。ただし、相続人に引き継ぐまでの間に必要な範囲で、家庭裁判所の許可を得て一定の事務を行える場合があるとされています。範囲は限られており、頼めば何でもやってもらえるものではありません。

死後にやるべきこと誰がやるのか
死亡届の提出親族など、法律で定められた届出人
火葬・埋葬の手配親族、または死後事務を委任された人
葬儀親族、または死後事務を委任された人
住まいの片づけと明け渡し相続人
公共料金・携帯などの解約相続人
財産の分配相続人

死後の手続きをどう手当てするか

身寄りがない、または頼める親族がいない場合、後見とは別の契約を用意しておく必要があります。

  • 死後事務委任契約を結ぶ葬儀、納骨、家財の処分、各種の解約などを、生前に誰かへ委任しておく契約です。
  • 費用の出どころを決めておく誰が立て替え、どこから精算するのかを契約に書きます。
  • 遺言書とセットで考える財産の行き先は遺言書、手続きの実行は死後事務委任。役割が違います。
  • 自治体の支援を確認する身寄りのない方への支援を行っている自治体があります。

委任できる相手や契約前の確認点は終活で外部に頼めること、財産の行き先は終活で重要な遺言書とはを参照してください。

誤解5:気に入らなければやめられる

ここが制度で最も重いところです

法定後見は、いったん始まると原則として本人の判断能力が回復するか、本人が亡くなるまで続きます。「思っていたのと違うからやめたい」という理由で終わらせることはできません。後見人を替える場合も、正当な理由と家庭裁判所の判断が必要になります。

よくある期待実際
実家を売るときだけ使いたい売却が終わっても後見は続く
相続の手続きの間だけ使いたい手続きが終わっても後見は続く
報酬が高いのでやめたいそれだけでは終了の理由にならない
後見人と合わないので替えたい正当な理由と家庭裁判所の判断が要る

だから「申し立てる前」に考えることが重要です

目的が一時的なもの(不動産の売却、相続手続き)である場合、後見以外の方法がないか先に相談してください。始めてしまうと、長期にわたって続く制度です。

誤解6:家族が必ず後見人になれる

法定後見では、誰を選ぶかを決めるのは家庭裁判所です。申し立てのときに候補者を挙げることはできますが、そのとおりに選ばれるとは限りません。

専門職が選ばれやすい事情内容
財産が多い、内容が複雑管理に専門性が要る
親族の間で意見が割れている中立性が求められる
本人と候補者の利害が対立する相続人どうしの場合など
不動産の処分や訴訟が絡む手続きが複雑になる
候補者が遠方・高齢継続して務められるか

本人が選びたいなら、任意後見です

誰に任せるかを自分で決められるのは、判断能力があるうちに契約する任意後見だけです。ここが終活として最も大きな違いになります。頼む相手の選び方は任意後見人は誰に頼む?を参照してください。

誤解7:本人の財産を家族のために使える

後見人が管理する財産は、本人のために使うのが原則です。家族であっても、次のような支出は認められないことがあります。

  • 同居している家族の生活費(本人の扶養義務の範囲を超える部分)
  • 孫への入学祝いや援助
  • 相続税を減らす目的の生前贈与
  • 親族への貸付
  • 家族が使う目的での住まいの改修

相続対策は原則としてできなくなります

後見が始まると、生前贈与などの相続対策は基本的にできなくなります。本人の財産を減らす行為だからです。相続対策を考えているなら、判断能力があるうちに済ませておく必要があります。生前贈与については終活で考えるべき贈与税とはを参照してください。

費用と報酬の考え方

費用の種類内容
申立てにかかる費用収入印紙、郵便切手、診断書の作成料など
鑑定が必要な場合の費用必要と判断された場合にかかる
後見人の報酬家庭裁判所が事情に応じて決める
監督人が付く場合の報酬同上

※ 報酬は家庭裁判所が個別の事情に応じて決定するため、一律の金額はありません。目安の考え方は任意後見の費用相場を参照してください。費用の負担が難しい場合、助成の制度を設けている自治体があります。市区町村の窓口にご相談ください。

後見以外の選択肢

後見が唯一の答えではありません。困っている中身によっては、もっと軽い手段で足りることがあります。

手段できること始める条件
任意後見契約能力低下後の支援者を自分で決めておく判断能力があるうち
財産管理の委任契約能力があるうちから財産管理を任せる判断能力があるうち
死後事務委任契約葬儀・納骨・解約などを任せる判断能力があるうち
遺言書財産の行き先を決める判断能力があるうち
日常生活自立支援事業日常的な金銭管理や書類の預かりを支援契約内容を理解できること
見守りのサービス安否確認と連絡いつでも
信託の活用財産の管理と承継を設計する判断能力があるうち

「判断能力があるうち」が並んでいることに注目してください

選べる手段が多いのは、元気なうちだけです。判断能力が低下してからでは、法定後見しか残りません。これが、終活で後見の話を早めにしておくべき理由です。

始めるべき時期・まだ早い時期

状況考えること
元気で判断能力に問題がない任意後見や委任契約を検討する時期
物忘れが出てきた契約できるうちに任意後見を結ぶ最後の機会
預金の手続きができなくなった法定後見の申立てを検討する
金融機関に口座を止められたほぼ法定後見が必要な段階
本人が契約の意味を理解できない任意後見の契約はもうできない

相談先の使い分け

相談したいこと窓口
そもそも後見が必要か地域包括支援センター、市区町村の窓口
申立ての手続き家庭裁判所
書類の作成司法書士、弁護士
親族間で争いがある弁護士
日常の金銭管理だけ支援してほしい社会福祉協議会
費用の負担が難しい市区町村の窓口、法テラス
身寄りがない場合の備え地域包括支援センター、社会福祉協議会
相続・税のこと司法書士、税理士

最初の一歩は地域包括支援センター

どこに相談してよいか分からない場合、まずここです。相談は無料で、後見が必要かどうかの整理から、必要なら適切な窓口への案内までしてもらえます。

法定後見の手続きの流れ

1相談する地域包括支援センターや家庭裁判所で、必要かどうかを整理します。
2診断書をもらう本人の状態について、医師に作成してもらいます。
3書類を準備する申立書、戸籍、財産の目録、収支の予定などをそろえます。
4家庭裁判所へ申し立てる本人の住所地を管轄する家庭裁判所です。
5調査・審理本人や親族から事情を聞き、必要に応じて鑑定が行われます。
6審判・後見人の選任類型が決まり、後見人が選ばれます。
7開始財産目録を作り、以後は定期的に家庭裁判所へ報告します。

申し立てる前に確認する8項目

  • 解決したいことは、後見でしか解決できないか
  • 目的が一時的(売却・相続手続き)ではないか
  • 始めると長く続くことを理解しているか
  • 候補者が選ばれない可能性を受け入れられるか
  • 報酬が継続して発生することを見込んでいるか
  • 相続対策ができなくなることを理解しているか
  • 身元保証と医療同意は別に手当てが必要だと知っているか
  • 死後の手続きを誰に頼むか決めてあるか

後見人の権限でよく聞かれること

後見人は身元保証人になってくれますか。
原則としてなりません。職務の範囲外であり、立場が衝突する問題もあります。施設が求めている中身(支払い・契約・連絡先・医療同意・引き取り)を分解して、個別に相談してください。
手術の同意はしてもらえますか。
後見人に医療行為へ同意する権限はないとされています。だからこそ、本人が元気なうちに希望を書き残しておくことが最も確実な備えになります。
介護もお願いできますか。
できません。後見人がするのは介護サービスの契約を結ぶことで、実際の介護は職務外です。世話をする人は別に必要です。
亡くなったあとの葬儀や解約はやってもらえますか。
後見は本人の死亡で終了するため、原則として職務ではありません。限られた範囲で家庭裁判所の許可を得て行える場合がありますが、確実にしたいなら死後事務委任契約を別に結んでください。
実家を売りたいだけなのですが。
後見人でも、本人が住んでいた不動産の処分には家庭裁判所の許可が必要です。また売却が終わっても後見は続きます。目的が一時的な場合は、他に方法がないか先に相談してください。
途中でやめられますか。
原則としてやめられません。本人の判断能力が回復するか、本人が亡くなるまで続きます。始める前によく検討してください。
家族が後見人になれますか。
なれる場合もありますが、選ぶのは家庭裁判所です。財産が多い、親族間で意見が割れている、利害が対立するといった事情があると、専門職が選ばれることがあります。
自分で後見人を選びたいのですが。
判断能力があるうちに任意後見契約を結んでください。自分で選べるのはこの方法だけです。能力が低下してからでは法定後見しか残りません。
後見人に孫への援助を頼めますか。
できません。本人の財産は本人のために使うのが原則です。生前贈与などの相続対策も、後見が始まると基本的にできなくなります。
費用はいくらかかりますか。
報酬は家庭裁判所が事情に応じて決めるため、一律の金額はありません。申立ての費用とは別に、継続して発生します。負担が難しい場合は助成の制度がある自治体もあるので、市区町村の窓口にご相談ください。
そこまで重い制度は使いたくありません。
日常的な金銭管理だけであれば、社会福祉協議会が行う支援事業が使える場合があります。まず地域包括支援センターで、何に困っているかを整理してもらってください。
身寄りがないのですが、何から始めればよいですか。
地域包括支援センターに相談してください。判断能力があるうちであれば、任意後見・財産管理の委任・死後事務委任・遺言書という4つを組み合わせて備えることができます。

後見人に頼めない部分の備え方

後見人は、本人が不利益を受けないように財産を管理し、契約を結ぶ人です。世話をする人でも、家族の代わりでもありません。

とくに覚えておいてほしいのは3つです。身元保証人にはなれない。医療行為に同意する権限はない。亡くなったあとの手続きは原則として職務ではない。この3つは、後見を立てても別に手当てが必要になります。

そして最も重いのが、始めると原則としてやめられないことです。「実家を売るときだけ」「相続手続きの間だけ」という使い方はできません。

選べる手段が多いのは、元気なうちだけです。任意後見も、財産管理の委任も、死後事務委任も、遺言書も、すべて判断能力があることが前提です。まだ何も起きていない今こそ、地域包括支援センターで一度話を聞いておく価値があります。

本記事は、編集部が公的機関の公開情報と一般的な実務の考え方をもとにまとめたものです。後見人の権限の範囲、家庭裁判所の許可が必要な行為、報酬の額、死後の事務の取り扱いは、個別の事情や運用によって判断が異なる場合があります。実際の申立てや契約にあたっては、家庭裁判所、地域包括支援センター、市区町村の窓口、社会福祉協議会、または弁護士・司法書士などの専門家に必ずご確認ください。医療行為への同意の取り扱いは医療機関の判断によります。費用の負担が難しい場合は、市区町村の窓口または法テラスにご相談ください。

おすすめの記事