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現役の時期のお金の課題が「増やすこと」だとすれば、終活の時期の課題は「取り崩すこと」と「分かりやすくしておくこと」です。どれだけ資産があっても、本人の判断能力が落ちれば動かせなくなり、家族もどこに何があるか分からなければ手が出せません。この記事では、取り崩しの考え方、口座が使えなくなる前にできる5つの備え、NISAやiDeCoの受け取りと相続の扱いを整理します。個別の商品や配分については扱いません。
この記事の結論
- 高齢期の課題は「増やす」ではなく「減らさない・分かりやすくする・渡せるようにする」です
- 判断能力が落ちると、自分の口座でも売却も解約もできなくなります
- 備えの中心は金融機関を減らすこと。口座が多いほど、家族の負担は増えます
- 金融機関にはあらかじめ代理人を届け出ておける仕組みがあります。まず窓口で確認してください
- NISA口座は、亡くなると非課税のままでは引き継げません。課税口座に移されます
- 企業型の年金は、手続きを忘れると自動移換され、運用されないまま手数料が引かれ続けます
- 最後に必要なのは「どこに何があるか」を書いた1枚です
この記事でわかること
- 高齢期に起きる3つの変化と、考え方の切り替え
- 資産の棚卸しと、金融機関を減らす手順
- 認知症になると何ができなくなるか
- 口座が使えなくなる前の5つの備え
- NISA・iDeCo・企業型年金の受け取りと相続の扱い
- 公的年金の繰上げ・繰下げ
- 取り崩しの考え方(定額と定率)
- 家族に残す1枚の作り方
高齢期に起きる3つの変化
| 変化 | 何が起きるか | 必要になる備え |
|---|---|---|
| 収入が年金中心になる | 毎月の不足分を資産から補う生活に変わります | 取り崩しの計画 |
| 判断能力が落ちる可能性がある | 売買・解約・契約ができなくなります | 代理人・後見・信託の準備 |
| いずれ相続が起きる | 家族が資産を把握し、手続きすることになります | 一覧と、遺言書 |
この3つは順番に来るとは限りません。判断能力の低下は、予告なく訪れます。だからこそ「まだ元気だから」という理由で先送りしにくい領域です。
「増やす」から「分かりやすくする」へ
現役期の考え方
- 時間を味方につける
- 下落しても待てる
- 収入があるので回復を待てる
- 口座が複数あっても管理できる
- 手続きは自分でできる
終活期の考え方
- 使う時期が近い
- 下落からの回復を待つ時間が短い
- 取り崩しながらの運用になる
- 口座が多いほど管理が難しい
- 手続きを他人に頼む日が来る
本記事は投資の助言を行うものではありません
どの商品を持つか、どう配分するかは、資産の状況、家族の構成、健康状態、考え方によってまったく異なります。本記事では特定の金融商品の推奨や、利回り・配分についての助言は一切行いません。制度の仕組みと、終活として必要な手続きだけを扱います。運用の判断が必要な場合は、金融機関の窓口や、金融商品仲介の登録を受けた事業者、有資格の専門家にご相談ください。
まず資産の棚卸しをする
何よりも先にやることは、一覧を作ることです。これがないと、減らすことも、渡すことも、相談することもできません。
| 種類 | 書き出す内容 | 確認の方法 |
|---|---|---|
| 預貯金 | 金融機関名・支店名・口座の種類 | 通帳、キャッシュカード |
| 証券口座 | 証券会社名・口座の種類(特定口座かNISAか) | 取引報告書、取引残高報告書 |
| 個人年金・企業年金 | 加入している制度の名称・連絡先 | 年に一度届く通知書 |
| 生命保険・医療保険 | 会社名・証券番号・受取人 | 保険証券、契約内容のお知らせ |
| 不動産 | 所在・地番・名義 | 固定資産税の課税明細書、登記事項証明書 |
| 借入 | 金融機関・残高・完済予定 | 返済予定表 |
| その他 | 会員権、貸金庫、外貨、暗号資産 | 契約書、取引記録 |
金額は書かなくても構いません
棚卸しの目的は、「どこに、何があるか」を分かるようにすることです。金額は変動しますし、書いた紙の管理も難しくなります。金融機関名と口座の種類だけで、家族は問い合わせができます。金額を書きたい場合は、年に一度だけ更新する日を決めてください。
金融機関を減らす
これが終活として最も効果の大きい作業です。口座が多いほど、次の3つの負担が増えます。
- 自分の管理の負担残高の把握、住所変更、書類の管理。判断能力が落ちるほど難しくなります。
- 家族の相続手続きの負担相続手続きは金融機関ごとに行います。口座が10あれば、10回同じ書類をそろえます。
- 見落としの危険紙の通知が来ない口座は、存在自体に気づかれません。
| 段階 | やること |
|---|---|
| ①数える | 使っている口座と、使っていない口座を分けます |
| ②決める | 年金の受取口座、生活費の口座、貯蓄の口座の3つを軸に、残すものを選びます |
| ③移す | 公共料金・保険料などの引き落としを、残す口座にまとめます |
| ④解約する | 引き落としがなくなったことを確認してから解約します |
| ⑤記録する | 残した口座を一覧に書き、家族に置き場所を伝えます |
※ 長期間動きのない預金は、休眠預金として扱われる場合があります。預金者の権利がなくなるわけではなく、手続きをすれば引き出せますが、手間が増えます。使わない口座は解約しておくほうが確実です。
認知症になると何ができなくなるか
ここを知らずに先送りしている方が非常に多いため、具体的に整理します。
| やりたいこと | 判断能力が低下すると |
|---|---|
| 投資信託や株式を売る | できません。証券会社は取引を受け付けられなくなります |
| 定期預金を解約する | 難しくなります。本人の意思確認ができないためです |
| 大きな金額を引き出す | 窓口で制限されることがあります |
| 不動産を売る | できません。売買契約を結べません |
| 生命保険を解約する、受取人を変える | できません |
| 遺言書を書く | できません。あとから無効を主張される可能性があります |
| 贈与する | できません |
| 年金を受け取る | 受け取り自体は続きます |
| 公共料金の引き落とし | 続きます |
家族でも代わりに手続きはできません
「家族なのだから代わりにできるはず」と考えがちですが、本人の同意なく資産を動かすことは認められていません。介護費用が必要でも、施設の入居費用が必要でも、原則は同じです。本人のための支出であることが確認できる場合に限り、親族からの引き出しに応じ得るという考え方が金融機関の間で共有されていますが、これは例外的な取扱いであり、確約されたものではありません。あてにせず、事前に備えておくことが必要です。
口座が使えなくなる前の5つの備え
| 備え | 内容 | 費用の感覚 | 手間 |
|---|---|---|---|
| ①金融機関を減らす | 管理できる数まで集約する | かからない | 小 |
| ②代理人を届け出る | 金融機関の代理人制度を使う | かからないことが多い | 小 |
| ③任意後見契約を結ぶ | 判断能力が落ちたあとの代理人をあらかじめ決めておく | 公証役場の費用 | 中 |
| ④家族信託を検討する | 財産の管理を家族に託す仕組みを作る | 専門家への費用 | 大 |
| ⑤一覧と遺言書を作る | どこに何があるかを残し、渡す先を決めておく | 遺言の形式による | 中 |
順番があります。①と②は今日からでき、費用もほとんどかかりません。まずこの2つを済ませてから、③以降を検討してください。いきなり信託の相談に行くと、費用の大きさで足が止まります。
金融機関の代理人制度
あまり知られていませんが、多くの銀行・証券会社には、あらかじめ代理人を届け出ておける仕組みがあります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 誰を指定できるか | 配偶者や子など、一定の範囲の親族が一般的です |
| いつ届け出るか | 本人に判断能力があるうちに。低下してからでは届け出られません |
| できること | 金融機関によって異なります。入出金のみのところ、幅広く認めるところがあります |
| 費用 | かからないことが多いですが、金融機関によります |
| 手続き | 本人と代理人がそろって窓口に行く形が一般的です |
窓口での聞き方
「将来に備えて、家族を代理人として届け出ておきたいのですが、制度はありますか」と尋ねてください。名称は金融機関によって異なります。取扱いの有無、指定できる人の範囲、代理人ができることの範囲を、その場で確認しておいてください。取り扱っていない金融機関もあります。その場合は、他の備えを検討する材料になります。
任意後見と家族信託の位置づけ
| 比べる点 | 代理人の届出 | 任意後見 | 家族信託 |
|---|---|---|---|
| いつ効き始めるか | 届け出た時から | 判断能力が落ち、家庭裁判所が監督人を選んだ時から | 契約した時から |
| できること | 金融機関が定めた範囲 | 契約で定めた代理行為 | 信託した財産の管理・処分 |
| 不動産の売却 | できません | 契約に含めれば可能 | 可能 |
| 継続的な費用 | 基本的になし | 後見人・監督人の報酬 | 受託者への報酬を定めた場合 |
| 手続きの重さ | 軽い | 中 | 重い |
| 死亡後 | 終了 | 終了 | 契約で定めれば承継の指定も可能 |
この3つは競合するものではなく、重ねて使えます。実務では「日常の入出金は代理人の届出で、判断能力が落ちたあとの全般は任意後見で」という組み合わせがよく取られます。家族信託は自由度が高い一方、設計と費用の負担が大きく、専門家の関与が前提になります。
NISAの終活で知っておくこと
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 年齢の上限 | ありません。何歳でも口座を開設し、利用できます |
| 非課税で保有できる期間 | 期限は設けられていません |
| 売却したとき | 売った分の枠は翌年に復活します |
| 亡くなったとき | 非課税のまま相続することはできません。相続人の課税口座へ移されます |
| 移されたあとの扱い | 取得価額は死亡日の価額として扱われます |
| 相続税 | 相続財産として課税対象になります |
| 手続き | 相続人が同じ金融機関に口座を持っていることが求められる場合があります |
「非課税だから子や孫にそのまま残せる」は誤りです
NISAの非課税の扱いは、本人が生きている間のものです。亡くなった時点で非課税の扱いは終わり、相続人の課税口座へ移されます。相続税の対象にもなります。また、相続人がその金融機関に口座を持っていない場合、開設から始めることになり、手続きに時間がかかります。どの証券会社を使っているかを、家族に伝えておいてください。
iDeCo・企業型年金の受け取りと自動移換
| 場面 | 扱い |
|---|---|
| 受け取りの開始 | 原則として60歳から。加入期間によって開始できる年齢が変わります |
| 一時金で受け取る | 退職所得として扱われます |
| 年金で受け取る | 雑所得として扱われ、公的年金等控除の対象になります |
| 亡くなったとき | 死亡一時金として遺族に支払われます |
| 死亡一時金の課税 | 相続税の対象です。死亡退職金の非課税枠(500万円×法定相続人の数)の適用を受けられる場合があります |
| 受取人の指定 | あらかじめ指定できます。指定がない場合は法令で定められた順序になります |
企業型の年金は「自動移換」に注意してください
会社を退職したあと、一定期間内に移換の手続きをしないと、資産が国民年金基金連合会へ自動的に移されます。この状態では運用が行われないまま、管理の手数料だけが引かれ続けます。受給できる年齢に達しても、自分から手続きをしなければ受け取れません。心当たりのある方は、「自分の年金が自動移換されていないか」を確認してください。問い合わせ先は国民年金基金連合会です。転職を繰り返した方、早期に退職した方は特にご確認ください。
公的年金の繰上げ・繰下げ
| 選択 | 受け取り始める年齢 | 1か月あたりの増減 | 最大 |
|---|---|---|---|
| 繰上げ受給 | 60歳から64歳 | 減額されます | 最大24%の減額 |
| 本来の受給 | 65歳 | - | - |
| 繰下げ受給 | 66歳から75歳 | 増額されます | 最大84%の増額 |
- 増減した金額は、生涯続きます。あとから元に戻すことはできません
- 繰上げると障害年金を請求できなくなるなどの制約があります
- 繰下げると受け取り始めるまでの生活費を他でまかなう必要があります
- 年金額が増えると、社会保険料や医療・介護の自己負担割合に影響することがあります
- 健康状態、資産の状況、家族の構成によって適した選択は変わります
※ 繰上げ・繰下げの判断は、個別の事情によって結論が変わります。年金事務所または街角の年金相談センターで、ご自分の見込額を確認したうえで決めてください。相談は無料です。
取り崩しの考え方
取り崩し方には、大きく2つの考え方があります。どちらが優れているというものではありません。
定額で取り崩す
- 毎月・毎年、決まった金額を取り崩す
- 生活の見通しが立てやすい
- 資産が減っているときも同じ額を引き出す
- 資産の減りが早まることがあります
定率で取り崩す
- 残高に対する一定の割合を取り崩す
- 資産が長持ちしやすい
- 受け取る金額が毎年変わります
- 減っているときは受取額も減ります
終活としては「手間の少なさ」も判断材料です
どれだけ理屈のうえで有利でも、年を重ねてから毎年計算し直す方式は続きません。また、判断能力が落ちたあとに家族が引き継ぐことも考えると、単純な仕組みのほうが実務では機能します。金融機関によっては、投資信託を定期的に一定額または一定率で売却して受け取る仕組みを用意しているところもあります。窓口で確認してみてください。
生活防衛資金を分けておく
取り崩しの計画とは別に、すぐ動かせるお金を分けておいてください。
| 用途 | 置き場所 | 考え方 |
|---|---|---|
| 当面の生活費 | 普通預金 | 数か月分。年金の受取口座と同じにすると分かりやすい |
| 医療・介護の備え | 普通預金 | 急に必要になります。売却の手続きが要るものは向きません |
| 葬儀・死後の費用 | 普通預金 | 口座は凍結されます。頼む相手に伝えておくか、別の手当てが必要です |
| 当面使わない資産 | 本人の判断による | 本記事では扱いません |
葬儀費用は「凍結される」ことを前提に考えてください
亡くなると口座は凍結されます。ただし、遺産分割前でも一定の範囲で払い戻しを受けられる制度があり、金融機関ごとに上限が定められています。それでも手続きには戸籍などの書類が必要で、すぐには間に合いません。葬儀費用については、頼む相手に事前に預けておく、生命保険で受取人を指定しておくなど、口座に頼らない手当てを考えておいてください。
保険の見直し
- 受取人が現在の状況と合っているか。離婚・死別後にそのままになっていることがあります
- すでに亡くなった人が受取人のままになっていないか
- 保険料の払込みが終わっているか、続いているか
- 解約返戻金があるか(あれば相続財産として扱われます)
- 死亡保険金には非課税枠(500万円×法定相続人の数)があります
- 証券番号と保険会社名を一覧に書いてあるか
- 契約者・被保険者・受取人の関係で税金の種類が変わることがあります
高齢期に注意したい勧誘
仕組みが分からない商品は契約しないでください
高齢者に対して、仕組みが複雑で、途中で解約すると大きく損をする金融商品が販売され、問題になった例が繰り返し報告されています。判断の基準は単純です。「自分の言葉で家族に説明できないものは契約しない」。これだけで大半は避けられます。
- その場で判断を求める勧誘には応じない
- 「元本が保証される」という説明があった場合、その根拠を書面で確認する
- 手数料と、途中で解約した場合の扱いを必ず確認する
- 家族に相談してから決める、と決めておく
- 不安を感じたら消費者ホットライン「188」、または金融サービス利用者相談室へ
相続のときにどう扱われるか
| 資産 | 相続税での評価の考え方 | 手続きの窓口 |
|---|---|---|
| 預貯金 | 死亡日の残高(既経過利息を含みます) | 各金融機関 |
| 上場株式 | 死亡日の終値など、定められた複数の価額のうち最も低い額 | 証券会社 |
| 投資信託 | 死亡日に解約した場合の価額を基礎に評価します | 証券会社・銀行 |
| 生命保険金 | みなし相続財産。500万円×法定相続人の数まで非課税 | 保険会社 |
| iDeCoの死亡一時金 | みなし相続財産。死亡退職金の非課税枠の対象になる場合があります | 運営管理機関 |
| 不動産 | 路線価または固定資産税評価額を基礎に評価します | 法務局 |
| 暗号資産 | 相続財産として扱われます | 取引所 |
※ 評価の方法には細かな定めがあり、資産の内容によって扱いが変わります。実際の申告にあたっては、税務署または税理士にご確認ください。
家族に残す1枚
記入例
【預貯金】
◯◯銀行 △△支店 普通 ……年金の受取と生活費
□□銀行 ××支店 普通 ……貯蓄用
【証券】
◇◇証券 特定口座とNISA口座
※ 連絡先は取引報告書に記載
【年金】
厚生年金・国民年金(年金証書は仏壇の引き出し)
企業型の年金 ◯◯(退職時に移換手続き済み)
【保険】
◯◯生命 証券番号 ××× 受取人 妻
△△共済 証券番号 ××× 受取人 長男
【不動産】
自宅(◯◯市◯◯町) 権利証は金庫
【借入】 なし
【代理人の届出】 ◯◯銀行に長男を届出済み(2026年8月)
【記入日】 2026年8月24日
※ 暗証番号・パスワードはこの紙に書かず、別の封筒に分けて保管してください。
年代別・やっておくこと
| 年代 | やること |
|---|---|
| 50代 | 口座と保険の棚卸し。退職金と年金の見込みを確認する。企業型年金の移換予定を把握しておく |
| 60代 | 金融機関を減らす。年金の繰上げ・繰下げを検討する。取り崩しの方針を決める |
| 70代 | 代理人の届出。任意後見の検討。一覧を作って家族に置き場所を伝える |
| 80代以降 | 仕組みを単純にする。手続きが必要な資産を減らしておく。遺言書を確認する |
やってはいけないこと
| やってはいけないこと | 理由 |
|---|---|
| 家族名義の口座に資産を移しておく | 名義預金として、本人の相続財産と判断されることがあります。贈与として認められるには要件があります |
| 暗証番号を家族に教えて引き出してもらう | 金融機関の規約に反します。他の相続人との間で争いになることもあります |
| 仕組みが分からない商品を契約する | 途中で解約できない、大きく損をする場合があります |
| 口座を増やす | 相続手続きの負担が金融機関の数だけ増えます |
| 紙の通知を止めたままにする | 家族が存在に気づけません |
| 「元気なうちは大丈夫」と先送りする | 判断能力の低下は予告なく訪れます |
よくある質問
- 高齢になったら運用はやめるべきですか。
- 一律の正解はありません。本記事では、やめる・続けるの助言は行いません。ただし終活の観点から言えば、「自分が管理できなくなったとき、家族が引き継げる形になっているか」は確認しておく必要があります。売却や解約に本人の意思確認が必要な資産は、判断能力が落ちると動かせなくなります。
- NISA口座は家族に引き継げますか。
- 非課税のまま引き継ぐことはできません。亡くなった時点で非課税の扱いは終わり、相続人の課税口座に移されます。取得価額は死亡日の価額として扱われ、相続税の課税対象にもなります。家族にはどの証券会社を使っているかを伝えておいてください。
- 親の口座からお金を出せなくなりました。
- まず取引のある金融機関に、事情を説明して相談してください。本人のための医療費・介護費の支払いであることが確認できる場合、対応してもらえることがあります。ただし例外的な取扱いであり、確約されたものではありません。状況が続く場合は、成年後見制度の利用を検討することになります。市区町村の地域包括支援センターが相談窓口になります。
- 代理人の届出は、どこの銀行でもできますか。
- 取り扱っていない金融機関もあります。名称や、代理人ができることの範囲も金融機関によって異なります。まず取引のある金融機関の窓口で「代理人を届け出る制度はありますか」と確認してください。本人に判断能力があるうちでなければ手続きできない点にご注意ください。
- 家族信託は誰に頼めばよいですか。
- 司法書士・弁護士など、家族信託の実務経験がある専門家に相談することになります。設計の自由度が高い反面、内容を誤ると意図した効果が生じません。費用も、代理人の届出や任意後見に比べて大きくなります。まず①金融機関を減らす、②代理人を届け出る、という費用のかからない備えを済ませたうえで、それでも足りない場合に検討する順序をおすすめします。
- 企業型の年金が自動移換されているか、どう調べますか。
- 国民年金基金連合会に問い合わせると確認できます。自動移換された状態では運用が行われず、管理の手数料だけが引かれ続けます。転職や早期退職を経験した方、退職時に何も手続きをした覚えがない方は、一度確認する価値があります。手続きをすれば、他の制度へ移すことができます。
- 年金は繰り下げたほうが得ですか。
- 一律には言えません。健康状態、他の収入、資産の状況、家族の構成によって結論が変わります。繰り下げると受給額は増えますが、受け取り始めるまでの生活費が必要になり、年金額が増えることで社会保険料や医療・介護の自己負担に影響することもあります。年金事務所でご自分の見込額を出してもらったうえで判断してください。相談は無料です。
- 暗号資産を持っています。何をしておけばよいですか。
- 相続財産として扱われますが、家族が存在に気づけないことが最大の問題です。取引所の名称を一覧に書いておいてください。秘密鍵やパスワードは一覧とは別に保管し、置き場所だけを伝えます。取引所を通さずに自分で保管している場合、鍵を失うと誰も取り出せなくなります。
- 資産が少ないので、何もしなくてよいですか。
- 資産の多少は関係ありません。むしろ資産が少ない場合ほど、金融機関を減らして一覧を作るという作業だけで、家族の負担が大きく減ります。相続手続きは金額の大小にかかわらず、金融機関ごとに同じ書類が必要になるためです。
- 家族に資産の額を知られたくありません。
- 一覧に金額を書く必要はありません。金融機関名と口座の種類だけで、家族は問い合わせができます。それも知られたくない場合は、一覧を封筒に入れて封をし、「私が亡くなったあと、または判断できなくなったときに開けてください」と書いて保管する方法があります。
- 相談はどこにすればよいですか。
- 内容によって窓口が違います。年金は年金事務所、税金は税務署または税理士、後見や信託は司法書士・弁護士、金融商品のトラブルは金融サービス利用者相談室です。何から相談してよいか分からない場合は、市区町村の地域包括支援センターで交通整理をしてもらえます。相談は無料です。
- 今日から始めるなら、何をすればよいですか。
- 通帳とキャッシュカードを全部出して、口座がいくつあるか数えてください。30分で終わります。それが棚卸しの1歩目であり、金融機関を減らす作業の出発点になります。次に、取引のある銀行の窓口で「代理人の届出はできますか」と聞いてください。この2つだけで、備えの半分は進みます。
まとめ|資産を「動かせる形」で残すことが終活です
終活のお金の話は、増やす話ではありません。自分が管理できなくなったとき、そして亡くなったときに、資産が動かせる形になっているかどうかが本題です。
やることは、実は単純です。①金融機関を減らす ②代理人を届け出る ③一覧を作って置き場所を伝える。この3つは費用がほとんどかからず、今日から始められます。任意後見や家族信託は、この3つを済ませたうえで検討すれば十分です。
制度の面で見落とされやすいのが2つあります。NISA口座は亡くなると非課税では引き継げず、課税口座に移されること。そして企業型の年金は、手続きを忘れると自動移換され、運用されないまま手数料だけが引かれ続けることです。どちらも心当たりのある方は、確認してみてください。
そして、取り崩しの方法を選ぶときは、有利さだけでなく「続けられるか」「家族が引き継げるか」も判断材料に加えてください。年を重ねてから毎年計算し直す仕組みは、たいてい続きません。
最後に、いちばん大事なことを。資産がどこにあるかを書いた1枚を残してください。金額は書かなくて構いません。金融機関名だけで、ご家族は動けます。
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本記事は、編集部が金融庁・厚生労働省・国税庁・日本年金機構をはじめとする公的機関の公開情報をもとにまとめたものです。本記事は制度および手続きに関する一般的な情報提供であり、特定の金融商品の推奨や、投資に関する助言を行うものではありません。投資には元本を割り込む可能性があり、最終的な判断はご自身の責任で行っていただく必要があります。制度の内容(NISA・iDeCo・公的年金・税制)は法令の改正により変更される場合があります。金融機関の代理人制度の有無および内容、判断能力が低下した場合の取扱いは、金融機関ごとに異なります。必ず取引のある金融機関にご確認ください。年金の受給開始時期に関するご相談は年金事務所または街角の年金相談センター、税金に関するご相談は税務署または税理士、後見・信託に関するご相談は司法書士・弁護士をご利用ください。金融商品に関するトラブルは、金融サービス利用者相談室および消費者ホットライン「188」でご相談いただけます。

























