
本ページはプロモーションが含まれている場合があります。
尊厳死とは、回復の見込みがない終末期に、延命のための措置を行わない、あるいは中止して、自然な経過にゆだねることを指す言葉です。薬などによって死期を早める安楽死とは区別されます。日本には、尊厳死も安楽死も認める法律はありません。それでも医療の現場では、本人の意思が最も重視されます。この記事では、言葉の整理、日本での扱い、延命措置の具体的な中身、そして意思を書面で残す方法を実務の順にまとめます。
結論
- 尊厳死は「延命措置をしない・やめる」こと、安楽死は「薬などで死期を早める」ことです
- 日本には、どちらについても定めた法律がありません
- その代わり、厚生労働省が話し合いの進め方についての指針を示しています
- 書き残したものに法的な拘束力はありません。それでも本人の意思として尊重されます
- 書面よりも「代わりに判断してくれる人」を決めておくことが最も重要です
- 「痛みや苦しさを取ること」は、尊厳死とはまったく別の話です。混同しないでください
- 延命措置はひとまとめではなく、1つずつ選べます
目次
- 尊厳死・安楽死・平穏死という言葉の整理
- 日本の法律ではどう扱われているか
- 延命措置とは具体的に何を指すのか
- 意思を残す3つの方法
- 尊厳死宣言公正証書の作り方と費用
- 書いたものにどこまでの効力があるか
- 救急車を呼ぶと何が起きるか
- 家族に伝えるときの言い方
尊厳死とは何か
尊厳死という言葉に、法律上の定義はありません。一般には次の意味で使われます。
よく使われている意味
治る見込みがなく、死期が迫っている状態で、単に死を先延ばしするだけの医療をやめ、自然な経過にゆだねること。本人が望まない延命措置を行わない、あるいは中止することを指します。苦痛を和らげる医療は、引き続き行われます。
「何もしない」という意味ではない点が重要です。痛みや息苦しさを取る医療、体をきれいに保つケア、家族と過ごす時間の確保。これらはむしろ手厚く行われます。やめるのは「死期を先に延ばすためだけの処置」です。
安楽死との違い
| 比べる点 | 尊厳死 | 安楽死(積極的安楽死) |
|---|---|---|
| 何をするか | 延命措置を行わない、または中止する | 薬物の投与などにより死期を早める |
| 死に至る原因 | もともとの病気の経過 | 行われた行為 |
| 日本での扱い | 法律はないが、指針に沿った手続きのもとで行われています | 刑事上の責任を問われる可能性があります |
| 医師の関与 | 治療方針の決定として関わります | 実行行為を行うことになります |
| 本人の希望があれば | 尊重されます | 希望があっても認められていません |
日本では、安楽死を認める法律はありません
本人が明確に希望していたとしても、薬物の投与などによって死期を早める行為は、刑事上の責任を問われる可能性があります。過去の裁判で、例外的に許容される場合の要件が示されたことはありますが、それは法律として安楽死を認めたものではありません。一部の国や地域には制度がありますが、日本の状況とは異なります。
紛らわしい4つの言葉を整理する
| 言葉 | 意味 | 備考 |
|---|---|---|
| 尊厳死 | 延命措置を行わない・中止して自然な経過にゆだねる | 消極的安楽死とほぼ同じ意味で使われます |
| 積極的安楽死 | 薬物の投与などで死期を早める | 日本では認められていません |
| 間接的安楽死 | 苦痛を和らげる治療の結果として、死期が早まる可能性がある場合 | 苦痛の緩和が目的であり、通常の医療の範囲とされます |
| 平穏死・自然死 | 尊厳死とほぼ同じ意味で使われる言い方 | 医療の用語ではありません |
家族の間で話すときは、言葉より中身で確認してください。「尊厳死を望む」と言われても、人によって思い描いている内容が違います。「人工呼吸器はどうするか」「食べられなくなったらどうするか」と、1つずつ具体的に聞くほうが確実です。
日本の法律ではどう扱われているか
| 項目 | 日本の状況 |
|---|---|
| 尊厳死を認める法律 | ありません |
| 安楽死を認める法律 | ありません |
| 事前指示書の法的な効力 | 効力を定めた法律はありません |
| 実際の医療現場 | 厚生労働省の指針に沿い、本人・家族・医療とケアの担当者による話し合いで方針が決められています |
| 本人の意思 | 最も重視される材料として扱われます |
「法律がないから意味がない」ということではありません。むしろ法律がないからこそ、本人が何を望んでいたかを示す材料が、そのまま判断の基礎になります。何も残されていなければ、家族が推測で決めるしかなくなります。
厚生労働省の指針が示していること
厚生労働省は、人生の最終段階における医療とケアの決め方について指針を示しています。要点は次の4つです。
- 本人の意思が基本になる医療とケアの方針は、本人の意思を確認したうえで決められます。
- 1人で決めない医師1人ではなく、医療・ケアの担当者からなる複数の職種のチームで検討します。
- 本人の意思が確認できない場合家族などが本人の意思を推定します。推定できない場合は、本人にとって最善の方針をチームで慎重に判断します。
- 気持ちは変わってよい時間の経過や状態の変化によって意思は変わります。繰り返し話し合うことが前提とされています。
この指針は、安楽死について定めたものではありません
指針が扱っているのは、どのように話し合い、どう記録するかという手続きの部分です。生命を短縮させる行為については対象としていません。混同されやすい点なので、はっきり分けて理解してください。
延命措置とは、具体的に何を指すのか
「延命措置は望まない」と書いただけでは、現場では判断できません。何を指すのかを知ったうえで、1つずつ考える必要があります。
| 措置 | どんなものか | 考えるときの視点 |
|---|---|---|
| 心肺蘇生 | 心臓マッサージ、電気ショック | 高齢で衰弱している場合、肋骨が折れることがあります |
| 人工呼吸器 | のどに管を入れる、または切開して呼吸を助ける | いったん装着すると、外す判断は非常に難しくなります |
| 昇圧剤 | 血圧を保つ薬 | 状態を保つために使われます |
| 人工透析 | 腎臓の働きを機械で代替する | 導入するか、続けるかの両方が論点になります |
| 胃ろう | おなかから胃へ管を入れて栄養を送る | 口から食べられなくなったときの選択肢の1つです |
| 鼻からの管による栄養 | 鼻から胃へ管を入れる | 本人にとって苦痛を伴うことがあります |
| 点滴による栄養 | 血管から栄養を送る | 終末期にはむくみの原因になることもあります |
| 輸血 | 血液を補う | 原因によって意味合いが変わります |
| 抗菌薬 | 感染症の治療 | 状況によって、治療にも延命にもなり得ます |
やめる・やめないは1つずつ決められます
すべてを一括で決める必要はありません。実務では、次のように分けて希望を示すことができます。
| 措置 | 希望の例 |
|---|---|
| 心肺蘇生 | 望まない |
| 人工呼吸器 | 望まない |
| 胃ろう | 一時的なものであれば受け入れる。回復が見込めない場合は望まない |
| 点滴 | 苦痛がない範囲で受け入れる |
| 抗菌薬 | 使ってよい |
| 痛みを取る治療 | しっかり行ってほしい |
| 入院するか | できれば自宅で過ごしたい |
「全部やめてほしい」と書くより、こうして分けたほうが、家族も医療の担当者も判断しやすくなります。また、書きながら自分の考えも整理されます。
「痛みを取ること」は、まったく別の話です
最も多い誤解です
延命措置を望まないことと、苦痛を和らげる医療を受けないことは、まったく別です。緩和ケアは、延命措置をやめたあとも継続して行われます。むしろ、そこからが緩和ケアの中心になります。「延命は望まない」と書いても、痛みを我慢することにはなりません。
心配な方は、書面に「苦痛を和らげる医療は十分に行ってください」と明記してください。これを一文入れておくだけで、意図が正確に伝わります。
意思を残す3つの方法
| 方法 | 作り方 | 費用 | 強さ |
|---|---|---|---|
| エンディングノートの医療欄 | 自分で書く | 0円 | 手軽だが、見つけてもらえないことがあります |
| 事前指示書(リビングウィル) | 自分で書く。医療機関や団体の書式もあります | 0円〜 | 内容が具体的で、実務で使いやすい形です |
| 尊厳死宣言公正証書 | 公証役場で作成する | 公証人の手数料 | 本人の意思であることの証明力が高い |
※ いずれの方法でも、法的な拘束力を与える法律は日本にありません。違いは「本人が確かにそう望んでいた」ことをどれだけ確実に示せるかにあります。
事前指示書(リビングウィル)
最も手軽で、実務で広く使われている形です。決まった様式はありません。医療機関や自治体が用紙を配布していることもあります。
- 日付を必ず書く(新しいものが本人の意思とみなされます)
- 署名する
- 写しを、代弁者とかかりつけ医に渡しておく
- 入院・入所するときに提出する
- 気持ちが変わったら書き直す
- 家に1部、代弁者に1部、医療機関に1部が目安です
しまい込むと意味がありません
いちばん多い失敗は、丁寧に書いて金庫や引き出しにしまってしまうことです。必要になるのは救急の場面であり、そのときに探している時間はありません。写しを人に渡しておくことまでが「書く」作業だと考えてください。
尊厳死宣言公正証書とは
公証役場で作成する公正証書の形で、自分の意思を残す方法です。公証人が本人の意思を確認したうえで作成します。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 作成する場所 | 全国の公証役場。どこの公証役場でも作成できます |
| 必要なもの | 本人確認書類(印鑑登録証明書と実印、運転免許証など) |
| 証人 | 原則として不要です(遺言の公正証書とは異なります) |
| 費用 | 公証人の手数料。金額は公証役場にご確認ください |
| 原本の保管 | 公証役場が保管します。紛失の心配がありません |
| 本人が受け取るもの | 正本・謄本。これを家族や医療機関に渡します |
| 出張 | 入院中などの場合、公証人に出向いてもらえることがあります |
| 撤回 | いつでもできます |
この方式の利点は「本人の意思であることの証明力」です
自分で書いた紙は、「本当に本人が書いたのか」「そのとき判断できる状態だったのか」を後から問われる余地があります。公正証書は、公証人が本人と面談し、意思を確認したうえで作成するため、この点の疑いが生じにくくなります。家族の間で意見が割れそうな場合には、検討する価値があります。
ただし公正証書にしても、法的な拘束力が生じるわけではありません。あくまで意思を確実に示すための方法です。
作成の流れ
- 内容を考えるどの措置を望まないか、痛みの緩和をどうしてほしいか、誰に判断を任せるかを整理します。
- 公証役場に連絡する「尊厳死宣言公正証書を作りたい」と伝えます。相談は無料です。電話で予約を取ります。
- 案文をやり取りする希望を伝えると、公証人が文案を作成してくれます。内容を確認して修正します。
- 公証役場に出向く本人確認書類を持参します。本人が行く必要があります。
- 内容を確認し、署名する公証人が読み上げ、内容を確認したうえで署名・押印します。
- 正本・謄本を受け取るこれを代弁者、かかりつけ医、入所している施設などに渡します。
書いておく内容と記入例
記入例(事前指示書の場合)
私の医療に関する希望(2026年8月24日 現在の気持ちです)
1 私の病気が治る見込みがなく、死期が迫っていると医師によって判断された場合、単に死期を先に延ばすためだけの延命措置は望みません。
2 具体的には、心肺蘇生と人工呼吸器の装着は望みません。胃ろうについては、一時的なもので回復が見込まれる場合は受け入れますが、回復が見込まれない場合は望みません。
3 痛みや息苦しさを和らげる医療は、十分に行ってください。そのために意識が低下することがあっても構いません。
4 私が自分の意思を伝えられない状態になったときは、長女 ◯◯ ◯◯ に判断を任せます。家族の間で意見が分かれた場合も、長女の判断を私の意思としてください。
5 できれば住み慣れた家で過ごしたいと考えていますが、家族の負担が大きい場合は無理をしないでください。
6 この書面にもとづく判断について、関係された方々に責任を問うことは一切ありません。家族も同じ考えです。
7 気持ちが変わったときは、書き直します。
氏名 ◯◯ ◯◯ ㊞
※ 上記は書き方の形式を示す例です。内容はご自身の考えに合わせて自由に決めてください。作成にあたっては、かかりつけ医や医療機関の相談室にご相談いただくことをおすすめします。
書いたものに、どこまでの効力があるか
| 問い | 答え |
|---|---|
| 書けば必ずそのとおりになりますか | いいえ。拘束力を定めた法律はありません |
| では意味がないのですか | 大きな意味があります。本人の意思を確認・推定する最も重要な材料になります |
| 医療者はどう扱いますか | 指針にもとづく話し合いのなかで、本人の意思として尊重されます |
| 家族が反対したら | 実務上は、家族の反対があると進みにくくなります。だから事前に伝えておくことが重要です |
| いつのものが有効ですか | 日付が新しいものが、その時点の意思とみなされます |
書面より大切なこと|代弁者を決める
1人決めるだけで、家族の負担が大きく減ります
「自分が話せなくなったとき、誰に判断してほしいか」を1人決めて、本人に伝えておいてください。これが最も効果の大きい備えです。
家族が複数いると、意見はほぼ必ず割れます。「本人が指名していた」という事実があるだけで、その人も、他の家族も、決めたあとの重荷がまったく違ってきます。指名された人は「自分が決めた」のではなく「本人の意思を伝えた」立場になれるからです。
- 近くに住んでいて、連絡が取りやすい人
- 自分の考えを理解してくれている人
- 本人が引き受けることを承諾している人
- できれば予備の人も決めておく
- 他の家族にも「この人に任せる」と伝えておく
救急車を呼ぶと何が起きるか
意外に知られていない、非常に重要な点です。
救急隊は、原則として心肺蘇生を行います
119番通報を受けて出動した救急隊は、原則として心肺蘇生を実施します。本人が書面で「望まない」としていても、その場でただちに中止できるとは限りません。一部の地域では、かかりつけ医や家族への確認が取れた場合に対応を変える運用が整えられていますが、地域によって異なります。
自宅で最期を迎えたいと考えている場合、あらかじめかかりつけ医や訪問看護の担当者と、亡くなったときにどこへ連絡するかを決めておいてください。連絡先が決まっていないと、家族はとっさに119番をかけることになります。
| 状況 | 連絡する先 |
|---|---|
| 在宅医療を受けている | かかりつけ医、または訪問看護の事業所(24時間の連絡先を確認しておきます) |
| 施設に入所している | 施設の職員。施設の方針を事前に確認しておきます |
| 急に容体が変わり、判断がつかない | 119番。迷ったら呼んで構いません |
| かかりつけ医がいない | 119番。在宅での看取りを考えるなら、かかりつけ医を持つことが前提になります |
家族に伝えるときの言い方
この話題は切り出しにくいものです。相手が身構えない入り方を用意しておくと、話が進みます。
| 切り出し方 | 使える場面 |
|---|---|
| 「知り合いが入院したときに、家族が決められなくて大変だったらしい」 | 他人の話から入る。最も抵抗が少ない方法です |
| 「自分の希望を書いてみたから、一度読んでほしい」 | 書面を先に作り、それを見せる |
| 「もし私が決められなくなったら、お前に任せたい」 | 代弁者を頼む。1つだけ伝えるなら、これです |
| 「延命のことだけ、考えを言っておきたい」 | 範囲を限定して短く済ませる |
| 健康診断や通院の帰りに | 医療の話をしている流れで自然に入れます |
1回で終わらせようとしないでください
この話題は、1回の会話ですべて決める必要はありません。「今日は代弁者だけ決める」「今日は人工呼吸器の話だけ」と区切ってください。厚生労働省の指針も、繰り返し話し合うことを前提にしています。
気持ちが変わったら
変わって当然です。元気なときに「延命はいらない」と言っていた人が、実際に病気になると考えが変わることは珍しくありません。それは迷いでも矛盾でもありません。
- 書面には必ず日付を入れる。新しいものがその時点の意思になります
- 「気持ちが変わったら書き直します」と一文を入れておく
- 見直す節目……大きな病気をしたとき、入院・手術のあと、家族の状況が変わったとき、介護が必要になったとき
- 節目がなければ年に1回。誕生日や年末に決めておくと続きます
- 書き直したら、写しを渡してある人に新しいものを渡す
認知症の場合
認知症では、判断能力が少しずつ変化していきます。だからこそ、早い段階で意思を残しておく意味が大きくなります。
| 段階 | できること |
|---|---|
| 診断前・診断直後 | この時期に書いておくのが最も確実です。公正証書にすることもできます |
| 進行してきた段階 | 本人が繰り返し述べていたことを、家族が記録しておきます |
| 意思の確認が難しい段階 | 過去の言動から意思を推定します。記録があるかどうかで大きく変わります |
後見人が付いても、医療行為への同意を代わりに行う権限は認められていません。財産の管理とは別の問題です。したがって、医療の希望については、本人が判断できるうちに書き残しておくしかありません。
相談できる窓口
| 窓口 | 相談できること | 費用 |
|---|---|---|
| かかりつけ医 | 病状に即した具体的な相談 | 診療の範囲 |
| 病院の相談室(医療ソーシャルワーカー) | 療養の場、制度、家族との調整 | 無料 |
| 訪問看護ステーション | 在宅での療養と看取りの体制 | 相談は無料の場合が多い |
| 地域包括支援センター | 高齢者と家族の総合的な相談 | 無料 |
| ケアマネジャー | 介護サービスとの調整 | 介護保険の範囲 |
| 公証役場 | 尊厳死宣言公正証書の作成 | 相談は無料 |
| がん相談支援センター | がんの療養に関する相談 | 無料 |
尊厳死宣言でよく聞かれること
- 日本で尊厳死は認められているのですか。
- 尊厳死を定めた法律はありません。ただし、医療の現場では厚生労働省の指針にもとづき、本人の意思を確認したうえで、医療とケアのチームによる話し合いを経て方針が決められています。「法律がない=できない」ということではありません。
- 書いておけば、そのとおりにしてもらえますか。
- 確約されるものではありません。拘束力を与える法律がないためです。ただし本人の意思を確認・推定するうえで最も重要な材料として扱われます。何も残っていない場合、家族が推測で決めることになります。その差は非常に大きいものです。
- 公正証書にすると、法的な効力が生まれますか。
- 生まれません。公正証書にしても、医療機関に従う義務が生じるわけではありません。違いは「本人が確かにその意思を持っていた」ことの証明力にあります。家族の間で意見が割れる可能性がある場合に、意味が大きくなります。
- 費用はどのくらいかかりますか。
- 事前指示書を自分で書く場合は0円です。尊厳死宣言公正証書の場合は公証人の手数料がかかります。金額は公証役場にお問い合わせください。相談は無料です。入院中などで出向けない場合、出張してもらえることがありますが、その場合は別に費用がかかります。
- 家族が反対しています。
- 実務上、家族の反対があると希望どおりに進みにくくなります。だからこそ、書面を作るだけでなく生前に話しておくことが重要です。反対の理由の多くは「見捨てるようで嫌だ」という気持ちです。「苦痛を取る医療はしっかり受けたい」と併せて伝えると、受け止め方が変わることがあります。
- 延命措置をやめると、苦しむのではないですか。
- 苦痛を和らげる医療は継続されます。延命措置をやめることと、痛みを我慢することは別です。心配な場合は、書面に「苦痛を和らげる医療は十分に行ってください」と明記してください。具体的な緩和の方法については、主治医にご相談ください。
- いったん人工呼吸器を付けたら、外せませんか。
- 非常に難しい判断になります。装着しないという判断と、装着したものを外すという判断では、医療者にとっての重みが異なります。だからこそ、装着する前の段階で意思を示しておくことに意味があります。個別の状況については、必ず主治医とご相談ください。
- 1人暮らしです。代弁者になる家族がいません。
- 家族以外でも構いません。信頼できる知人、かかりつけ医、ケアマネジャー、訪問看護師などが相手になり得ます。むしろ頼れる家族がいない方こそ、医療とケアの担当者に考えを伝えておく意味が大きくなります。まずは地域包括支援センターにご相談ください。無料です。
- 尊厳死と献体・臓器提供は関係がありますか。
- 別の話です。それぞれ独立して意思を示すものです。臓器提供の意思表示は、健康保険証・マイナンバーカード・運転免許証の裏面などで示せます。献体を希望する場合は、生前に大学等へ登録しておく必要があります。いずれも、家族が知らなければ実現しません。あわせて伝えておいてください。
- エンディングノートに書くだけでもよいですか。
- 書かないよりはるかによいです。ただし2点だけ注意してください。①日付を入れること ②必要なときに見つけてもらえる場所に置き、置き場所を代弁者に伝えること。いざというときに探している余裕はありません。写しをかかりつけ医に渡しておくと、さらに確実です。
- 人生会議(ACP)とは何が違うのですか。
- 人生会議は「繰り返し話し合う取り組み」そのものを指します。この記事で扱っている尊厳死宣言や事前指示書は、その話し合いの結果を書き残す方法です。書面だけを作って話し合いをしないと、いざというとき家族が受け入れられません。話し合いと書面は、両方あって機能します。
- 何歳から考えればよいですか。
- 年齢は関係ありません。事故や急な病気は年齢を問わず起こります。実際、判断が必要になる場面の多くは、突然訪れます。まず「自分が話せなくなったとき、誰に決めてほしいか」を1人決めるところから始めてください。これだけなら5分で終わります。
まとめ|1人決めて、1枚書けば十分です
尊厳死と安楽死の違いは明確です。尊厳死は延命措置をしない・やめること、安楽死は薬などで死期を早めること。そして日本には、どちらについても定めた法律がありません。
法律がないからこそ、本人が何を望んでいたかを示す材料が、そのまま判断の基礎になります。書き残したものに拘束力はありませんが、医療の現場では本人の意思として尊重されます。何も残っていなければ、家族が推測で決めるしかありません。
書くときは、「延命措置は望まない」の一言で終わらせないでください。心肺蘇生、人工呼吸器、胃ろう、点滴。1つずつ分けて考えるほうが、家族も医療の担当者も判断できます。そして「苦痛を和らげる医療は十分に行ってください」の一文を必ず添えてください。延命措置をやめることと、痛みを我慢することは別です。
それでも、いちばん大切なのは書面ではありません。「自分が話せなくなったとき、誰に決めてほしいか」を1人決めて、その人に伝えること。家族が複数いれば、意見はほぼ必ず割れます。本人が指名しておくだけで、その人も、他の家族も、決めたあとの重荷がまったく違ってきます。
そして気持ちは変わってかまいません。だから日付を入れ、「変わったら書き直します」と添えておいてください。それで十分です。
次に読んでおきたい関連記事
次に読む
本記事は、編集部が厚生労働省をはじめとする公的機関の公開情報および一般的な実務の流れをもとにまとめたものです。本記事は、延命措置を受けること・受けないことのいずれかを推奨するものではなく、医学的な助言を行うものでもありません。治療の選択については、必ず主治医および医療・ケアの担当者にご相談ください。日本には、尊厳死・安楽死について定めた法律はなく、事前指示書や尊厳死宣言公正証書に法的な拘束力を与える法律もありません。これらは本人の意思を確認・推定するための材料として扱われます。公正証書の作成に必要な費用および手続きは、公証役場にご確認ください(相談は無料です)。救急要請時の対応、在宅での看取りの体制、自治体や医療機関が配布する用紙の有無は、地域や施設によって異なります。お住まいの市区町村、かかりつけ医、病院の相談室、または地域包括支援センターにご相談いただけます。




















