エンバーミングとは?費用と保存できる期間|遺体衛生保全士の資格と仕事

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エンバーミングは、ご遺体に薬剤による処置を行い、衛生的な状態を保つ技術です。日本ではまだ広く知られていませんが、遠方の家族が集まるまで日数がかかるときや、故人との時間をゆっくり過ごしたいときに選ばれています。この記事では、エンバーミングの内容と費用の目安、保存できる期間、そして処置を行う遺体衛生保全士(エンバーマー)の資格と仕事を、終活の視点から整理しました。

この記事の結論

  • エンバーミングは、薬剤を使って衛生を保つ処置です。見た目を整えるだけの化粧ではありません
  • 行うのは専門の教育を受けた遺体衛生保全士(エンバーマー)です
  • 国家資格ではなく、民間団体の認定資格です
  • 処置後は業界の自主基準で「一定期間内に火葬または埋葬する」と定められています
  • 費用は十数万円以上が目安で、葬儀費用とは別に発生します
  • すべての葬儀社が対応しているわけではありません。先に確認が必要です
  • エンゼルケアや湯灌とは目的も費用も違います

この記事でわかること

  1. エンバーミングとは何をする処置か
  2. エンゼルケア・湯灌との違い
  3. 選ばれる4つの場面
  4. 費用の目安と内訳
  5. 保存できる期間の考え方
  6. 処置の流れと所要時間
  7. メリットとデメリット
  8. 遺体衛生保全士になる方法
  9. 仕事内容と働く場所
  10. よくある質問12問

エンバーミングとは?何をする処置なのか

エンバーミングは、血液を薬剤に置き換えることでご遺体の変化を抑え、衛生的な状態を保つ処置です。日本語では遺体衛生保全と訳されます。単に見た目を整えるための化粧とは目的が異なります。

行うこと目的
洗浄と消毒衛生を保ち、感染のリスクを下げるため
薬剤の注入ご遺体の変化を抑えるため
体液の排出腐敗の進行を抑えるため
傷や損傷の修復事故や手術のあとを目立たなくするため
整容・化粧生前に近い表情に整えるため
着替え身支度を整えるため

「保存」ではなく「衛生保全」です

ミイラのように長期間そのまま保つ技術ではありません。火葬または埋葬までのあいだ、衛生的で穏やかな状態を保つための処置です。日本では処置後の期間について業界団体が自主基準を設けており、いつまでも安置しておけるわけではありません。

エンゼルケア・湯灌との違い

混同されやすい3つを並べます。目的も、行う人も、費用の桁も違います。

エンゼルケア湯灌エンバーミング
目的衛生と身支度お湯で洗い清める薬剤による衛生保全
行う人看護師・介護職・葬儀社専門のスタッフ遺体衛生保全士
行う場所病院・施設・自宅自宅・専用の設備専用の施設
所要時間30分〜1時間1〜2時間3〜4時間程度
費用の目安無料〜数万円数万円〜十数万円以上
ご遺体の移動不要不要な場合が多い専用施設への搬送が必要
宗教的な意味ありませんあるとされますありません

※ 費用は編集部が公開情報をもとにまとめた一般的な目安です。地域・事業者・処置の内容によって異なります。

エンバーミングが選ばれる4つの場面

場面なぜ選ばれるのか
火葬まで日数がある火葬場が混み合い、1週間以上待つ場合があります
遠方から家族が集まる海外や遠方からの到着を待てます
事故や闘病のあとがある修復により、穏やかな表情に整えられます
自宅で長く過ごしたいドライアイスに頼らずに時間を取れます

都市部と年末年始は火葬まで待つことがあります

火葬場の空き状況は自分では決められません。とくに都市部と年末年始は、1週間以上待つこともあります。その間の安置とドライアイスの費用も積み上がるため、日数が延びる見通しなら、エンバーミングを含めて比べる価値があります。

費用の目安と内訳

エンバーミングの費用は、葬儀の費用とは別に発生します。見積書に含まれているかどうかを必ず確認してください。

費用の項目内容確認すること
処置の基本料金エンバーミングそのもの十数万円以上が目安です
搬送費専用施設との往復距離で変わります
修復の追加損傷が大きい場合別料金になることがあります
着替え・化粧身支度基本料金に含まれるか確認します
安置の費用処置後の保管日数分が加算されます
葬儀費用式そのものエンバーミングとは別に発生します

見積書に「一式」とだけ書かれていたら要注意

何が含まれていて何が含まれていないのかが分かりません。搬送費、修復の追加、着替えや化粧が別料金かどうかを、項目ごとに出してもらってください。後から追加されると、支払う側は断りにくくなります。

保存できる期間の考え方

「何年ももつのか」という疑問をよく見かけますが、日本での運用はそうではありません。業界団体が自主基準を設けており、処置後は一定の期間内に火葬または埋葬することとされています。

疑問実際のところ
何年ももつの?日本では長期の保存を前提にしていません
どれくらい安置できる?自主基準で期間が定められています
ドライアイスは要らなくなる?処置後は不要になるのが一般的です
触れてもいい?手を握るなど、触れることができます
顔色は変わる?生前に近い状態に整えられます
海外へ搬送できる?国によって処置が求められる場合があります

※ 具体的な期間や運用は団体の基準・事業者の方針によって異なります。依頼する葬儀社にご確認ください。

処置の流れと所要時間

  1. 専用施設へ搬送する。処置は専用の設備がある場所でしか行えません
  2. 洗浄と消毒を行う。全身を清めます
  3. 薬剤を注入する。血液を薬剤に置き換えます
  4. 修復を行う。傷や損傷があれば目立たないよう整えます
  5. 整容と着替え。髪を整え、化粧をし、衣服を着せます
  6. 戻す。安置場所または斎場へ搬送します

所要時間は3〜4時間程度が目安で、搬送の時間を含めると半日ほどになります。この間、家族は立ち会えないのが一般的です。

メリットとデメリット

内容
時間の余裕ができる火葬までの日数を気にせず過ごせます
衛生面の安心感染のリスクを下げられます
表情が穏やかになる闘病や事故のあとを整えられます
触れて別れができる手を握って過ごすことができます
費用がかかる葬儀費用とは別に十数万円以上
対応していない事業者がある近くに施設がないと選べません
ご遺体が一度離れる搬送のあいだ、そばにいられません
抵抗を感じる方もいる親族間で意見が割れることがあります

親族の合意を先に取ってください

処置の内容に抵抗を感じる方もいます。あとから「なぜ相談しなかったのか」と言われるのは、いちばん避けたいことです。費用を出す人だけで決めず、近い親族には事前に説明して、合意を取ってから依頼してください。

日本ではどのくらい行われているのか

エンバーミングは、日本ではまだ広く知られた選択肢ではありません。亡くなった方のうち、この処置を受ける割合は限られています。それでも件数は少しずつ増えており、専用の施設も各地に設けられるようになってきました。

広まりにくい理由はいくつかあります。費用が葬儀とは別にかかること、対応できる事業者が限られること、そして「体に処置をする」ことへの心理的な抵抗です。とくに最後の点は、家族のあいだで意見が分かれやすいところで、費用を出す方だけで決めてしまうとあとで角が立ちます。

一方で、火葬までの日数が延びやすくなっているという事情もあります。都市部では火葬場が混み合い、1週間以上待つことも珍しくありません。その間ドライアイスを使い続けるより、処置をして落ち着いた状態で過ごしたい——そう考える方が増えてきたのが、件数が伸びている背景です。

海外ではどう扱われているのか

アメリカをはじめとする一部の国では、エンバーミングは葬儀の標準的な工程として広く行われています。土葬が中心であること、国土が広く家族が遠方にいることが多いことなど、事情が日本とは異なります。

日本広く行われている国
位置づけ希望する場合の選択肢標準的な工程のひとつ
葬送の中心火葬土葬が中心の国もあります
行う理由日数を置く、修復、衛生長距離の搬送、対面の習慣
資格民間の認定資格州や国の免許制の場合があります
費用の扱い葬儀費用とは別葬儀の見積もりに含まれることが多い

海外で亡くなったとき・海外へ搬送するとき

国をまたいでご遺体を搬送する場合、相手国の規則によってエンバーミングが求められることがあります。この場合は選択ではなく要件です。海外での不幸に直面したときは、まず現地の日本大使館・領事館と、搬送を扱う事業者に相談してください。

依頼から当日までの流れ

  1. 葬儀社に希望を伝える。対応しているかどうかを最初に確認します
  2. 親族に説明して合意を取る。ここを飛ばすとあとでもめます
  3. 見積もりを取る。搬送費や修復の追加が別かどうかを項目で確認します
  4. 着せる服と写真を渡す。生前の表情が分かる写真があると仕上がりが変わります
  5. 搬送してもらう。処置は専用施設で行われます
  6. 戻ってきてから対面する。ここで初めて家族が会う形になります

費用を比べるときの見かた

単純に「エンバーミングをすると高くなる」とは言い切れません。火葬まで日数がかかる場合、その間の安置とドライアイスの費用が積み上がるからです。比べるなら、両方の総額で見てください。

比べる項目エンバーミングをする場合しない場合
処置の費用十数万円以上かかりません
ドライアイス不要になるのが一般的日数分が加算されます
搬送専用施設との往復が必要安置先までの1回
安置の費用日数分日数分
面会のしやすさ触れて過ごせます冷却のため制約があります
総額の見え方日数が延びるほど差が縮まります日数が短ければ割安です

よくある誤解

よく聞く話実際のところ
ミイラのように保存できる日本では長期保存を前提にしていません
特定の宗教の儀式である宗教的な儀式ではありません
必ず行わなければならない希望する場合の選択肢です
湯灌と同じもの目的も行う人も違います
顔が別人のようになる生前に近い表情に整えるための処置です
どこの葬儀社でもできる専用施設と有資格者が必要です
火葬に影響する火葬の可否に影響するものではありません

遺体衛生保全士の働き方

勤務先は、専用の処置施設や葬儀関連の企業が中心です。亡くなるタイミングは選べないため、勤務は不規則になりやすい仕事です。待機や呼び出しがある職場も少なくありません。

また、処置だけを行う仕事ではありません。ご遺族に処置の内容を説明したり、生前の写真から表情を読み取ったりする場面があります。技術職でありながら、人と向き合う要素の大きい職種です。

働き方の特徴内容
勤務時間不規則になりやすい
1件あたりの時間3〜4時間程度
就職先処置施設、葬儀関連の企業
求人の数専門職のため多くありません
体力立ち仕事で体力を使います
継続的な学習技術と衛生の知識を更新し続けます

遺体衛生保全士(エンバーマー)とは

エンバーミングを行う専門職です。日本では国家資格ではなく、民間の団体が認定する資格として運用されています。医学や解剖学の知識に加え、遺族に接する仕事でもあるため、技術と人柄の両方が求められます。

項目内容
資格の種類国家資格ではなく民間の認定資格
認定する団体業界団体が認定しています
養成の期間認定校で2年程度が一般的
学ぶ内容解剖学、衛生学、防腐処置、修復技術など
実習実際の処置に立ち会う実習があります
働く場所専用の処置施設、葬儀関連の企業
人数国内では限られた人数の専門職です

遺体衛生保全士になるには

  1. 認定校を調べる。国内で学べる場所は限られています
  2. 入学して2年ほど学ぶ。解剖学や衛生学を基礎から学びます
  3. 実習を受ける。実際の処置に立ち会いながら技術を身につけます
  4. 認定を受ける。団体の基準を満たすと資格が与えられます
  5. 就職する。処置施設や葬儀関連の企業が主な就職先です

※ 養成校の所在地・学費・カリキュラム・認定の要件は変更されることがあります。進学を検討される場合は、認定団体および各校の公式情報を直接ご確認ください。

仕事内容と、向いている人

仕事の中身求められること
衛生保全の処置正確さと衛生管理の徹底
損傷の修復手先の技術と観察力
整容・化粧生前の写真から人物像をつかむ力
遺族への説明落ち着いて分かりやすく話せること
記録と管理薬剤や器具の管理
不規則な勤務亡くなるタイミングは選べません

「人の最後に立ち会う仕事」だという実感が要ります

技術職であると同時に、遺族の気持ちに向き合う仕事でもあります。処置の内容だけを見て決めるのではなく、職場見学や説明会に足を運んで、現場の空気に触れてから判断することをおすすめします。

依頼するときに確認すること

  • その葬儀社がエンバーミングに対応しているか
  • 費用の総額と、含まれる範囲
  • 搬送費が別にかかるかどうか
  • 処置にかかる時間と、戻ってくる日時
  • 処置後、いつまでに火葬・埋葬が必要か
  • 着せたい服を渡せるか
  • 生前の写真を渡せるか
  • 処置後に面会できる時間帯

終活として考えるなら

自分の希望として残しておくこともできます。ただし費用がかかることと、対応できる事業者が限られることを、あわせて書いておくのがおすすめです。

エンディングノートへの書き方の例

【葬儀までの過ごし方について】
遠方の親族が集まるまで時間がかかりそうなら、エンバーミングを検討してもらって構いません。
費用がかかることは承知しています。負担が大きいようなら、無理をしないでください。
判断は○○(長男)にまかせます。

よくある質問(FAQ)

エンバーミングは何日もちますか。
日本では長期の保存を前提にしておらず、業界団体の自主基準により、処置後は一定の期間内に火葬または埋葬することとされています。具体的な日数は依頼先にご確認ください。
費用はいくらくらいですか。
十数万円以上が目安で、葬儀費用とは別に発生します。搬送費や修復の追加が別料金になることもあるため、項目ごとの見積書をもらってください。
エンゼルケアとは何が違いますか。
エンゼルケアは亡くなった直後に行う清拭と身支度で、エンバーミングは薬剤を使って衛生を保つ処置です。行う人も場所も費用も異なります。
湯灌との違いは何ですか。
湯灌はお湯で洗い清める儀式的な意味合いを持つもので、エンバーミングは衛生保全を目的とした技術的な処置です。どちらか一方を選ぶ形が一般的です。
どの葬儀社でも頼めますか。
いいえ。専用の設備と有資格者が必要なため、対応していない事業者もあります。希望する場合は、葬儀社を決める段階で確認してください。
処置に立ち会えますか。
立ち会えないのが一般的です。専用施設で行われ、時間も3〜4時間程度かかります。処置が終わってから対面する形になります。
顔や手に触れられますか。
触れられます。ドライアイスを使わないため冷たくならず、手を握って過ごすことができます。これを理由に選ぶ方もいます。
感染症で亡くなった場合もできますか。
感染症の種類によって対応が異なります。できる場合もあれば、制限がかかる場合もあります。事業者に直接確認してください。
遺体衛生保全士は国家資格ですか。
いいえ。国家資格ではなく、民間の団体が認定する資格です。認定校で2年程度学び、基準を満たすと資格が与えられます。
どこで学べますか。
国内で学べる場所は限られています。所在地・学費・カリキュラムは変更されることがあるため、認定団体と各校の公式情報を直接ご確認ください。
年収はどのくらいですか。
勤務先や経験年数によって幅があり、一律の数字を示せる職種ではありません。求人情報を複数見て比べるのが確実です。専門職ですが、人数が限られる分、求人の数自体も多くありません。
宗教上の問題はありませんか。
宗教的な儀式ではないため、特定の宗派に反するものではないとされています。ただし考え方は人によって異なるため、親族間で意見が分かれることがあります。事前の相談をおすすめします。

まとめ|エンバーミングを知るための5つのポイント

  1. 目的は衛生保全見た目を整えるだけではなく、衛生と感染対策の意味があります
  2. 費用は別に発生する十数万円以上が目安。葬儀費用に含まれているか確認します
  3. 長期の保存ではない日本では処置後の期間について自主基準が設けられています
  4. 対応する事業者は限られる希望するなら葬儀社を決める段階で確認します
  5. 親族の合意を先に取るあとから相談がなかったと言われるのを避けられます

資格として目指す方にとっては、限られた人数の専門職であり、技術と人柄の両方が求められる仕事です。学べる場所が限られているので、まず認定団体の公式情報を確認するところから始めてください。

※ 本記事は編集部が公開情報をもとにまとめた一般的な内容です。エンバーミングの費用・対応の可否・処置後の取り扱い、また資格や養成校に関する要件は、事業者や団体によって異なり、変更されることもあります。実際に検討される際は、依頼する葬儀社および認定団体の公式情報を直接ご確認ください。

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