
本ページはプロモーションが含まれている場合があります。
要介護認定の認定調査(訪問調査)では、74項目の基本調査を中心に、心身の状態や普段の介助状況などを確認します。思いつくままに質問されるわけではなく、確認する内容は決まっています。
調査は原則1回で行われます。その限られた時間で、普段の暮らしを正確に伝えるのは簡単ではありません。調子のよい日に当たれば、実際より軽く見えることもあります。
この記事では、厚生労働省が認定調査員向けに配布しているテキストをもとに、何を聞かれるのかと家族が何を用意しておけばよいのかをまとめました。
この記事でわかること
- 訪問調査の内容が認定に反映される仕組み
- 基本調査で確認される5つの分野
- 項目には3通りの聞き方があること
- 状態に波があるときは「頻度」が重要になること
- 家族が渡すメモの書き方(そのまま書き写せる形)
訪問調査の内容が認定に反映される仕組み
訪問調査の内容は、2段階の判定を経て認定に反映されます。この流れを知っておくと、当日に何をすればよいかが決まります。
特記事項は、基本調査の選択肢だけでは伝わらない具体的な状況を、調査員が文章で記載する欄です。厚生労働省のテキストは、記載のポイントとして「選択根拠」「手間」「頻度」の3つを挙げています。つまり、選択肢を選んだ理由や、実際にかかっている介護の手間・頻度も書かれます。
家族が用意するメモは、普段の状況を調査員へ具体的に伝え、必要に応じて特記事項へ反映してもらうための材料になります。
この2段階には役割の違いがあります。一次判定は全国で同じ基準にそろえるためのもので、選択肢が決まっています。そのため、選択肢に当てはまらない事情は数字として残りません。二次判定では、一次判定の結果に特記事項と主治医意見書の内容を加えて検討します。限られた訪問で伝えきれない部分を補うのが、この段階です。
申請の手順や要介護度の区分、自己負担の割合については、介護保険の使い方|要介護認定の受け方と自己負担額で扱っています。この記事は調査当日に的をしぼります。
基本調査で確認される5つの分野
基本調査の74項目は、5つの分野に分かれています。何を聞かれるかを知っておくだけで、当日の心構えが変わります。
| 分野 | 聞かれることの例 |
|---|---|
| 第1群 身体機能・起居動作 | 寝返り、起き上がり、立ち上がり、歩行、視力、聴力 |
| 第2群 生活機能 | 食事、排尿・排便、洗顔、着替え、外出の頻度 |
| 第3群 認知機能 | 意思の伝達、生年月日を言う、短期記憶、場所の理解 |
| 第4群 精神・行動障害 | 物を壊す、同じ話を繰り返す、外に出たがる、物を集める |
| 第5群 社会生活への適応 | 薬の内服、金銭の管理、買い物、簡単な調理 |
※分野の名称は厚生労働省の認定調査員テキストによります。各分野の項目数と具体的な質問は、実際の調査票に沿って行われます。
この5つを見ると、調査が生活の全体を見ていることが分かります。歩けるかどうかだけでなく、薬を決まった時間に飲めているか、お金の出し入れができているかまで含まれます。介護が必要かどうかは、体の状態だけで決まるわけではありません。「体は元気だから関係ない」と考えていると、第3群から第5群で伝えるべきことを見落とします。
とくに第3群と第4群は、本人が自覚していないことを聞かれる分野です。同じ話を繰り返していること、日付が分からなくなっていることは、本人だけでは把握しにくく、家族からの補足が重要になります。
項目には3通りの聞き方がある
74項目は、すべてが同じ聞き方をされるわけではなく、3通りに分かれます。厚生労働省のテキストは、調査項目を3つに分けています。
| 聞き方 | 何を見るか | 家族が注意すること |
|---|---|---|
| 能力で評価する | 実際にできるかどうか | その場でやってもらう場面がある。できた/できなかったの一回きりで決まらないよう、普段の様子を添える |
| 介助の方法で評価する | どんな介助が行われているか | ここが頻度で決まる。週に何回そうなるかを伝える |
| 有無で評価する | その行動があるかどうか | 本人の前では言いにくいことが多い。伝え方をあらかじめ決めておく |
この3つのうち、家族の情報がいちばん効くのが「介助の方法で評価する」項目です。できるかどうかではなく、実際にどんな手助けが行われているかを見るためです。本人ひとりでは手伝ってもらっているという感覚がないことも多く、家族からの補足が判断の助けになります。
なぜ頻度が決め手になるのかは、次の章で説明します。
状態に波があるときは「頻度」が重要
介助の方法が時間帯や体調によって違う場合、いちばん頻度の多い状態で選ばれます。「できる日もある」「できない日もある」という場合に、どちらを選ぶかを決めるルールです。
例えば、普段は食事摂取が「1.介助されていない」であっても、週に1~2回「4.全介助」となる場合は、「2.見守り等」、「3.一部介助」といった両方の中間の選択をすることは誤りとなる。また、最も重い状態で選択し「4.全介助」とすることも誤りとなる。この場合は、最も頻度の多い「1.介助されていない」を選択し、「4.全介助」となる場合の具体的な内容や頻度は特記事項に記載する。
この一文は、家族にとって重要なことを2つ示しています。
| 読み取れること | 意味 |
|---|---|
| 間を取るのは誤り | 「たまに介助が必要だから真ん中で」という選び方はしない。いちばん多い状態が選ばれる |
| 重いほうで選ぶのも誤り | 実態より重く見せることは、制度が求めていない |
そして「週に1〜2回ある全介助」は、特記事項に書くことになっています。基本調査の選択肢からは消えても、記録としては残る仕組みです。
ここが、この記事でいちばん伝えたいところです
実態を正確に伝えることは、家族の都合ではなく、制度が求めていることです。厚生労働省のテキストは、軽く見せることも重く見せることも同じように誤りだと書いています。後ろめたさを感じる必要はありません。頻度を正確に伝えることが、そのまま正しい調査への協力になります。
調査で実態が伝わりにくくなる3つの場面
調査員は決められた手順で聞き取りをします。それでも実態が伝わりにくくなることがあり、多くは短時間の訪問という構造から生じます。
① 本人が普段よりしっかり受け答えしてしまう
来客があると気が張ります。普段は手助けが要ることでも、その場では「できます」と答えてしまうことがあります。本人が嘘をついているわけではなく、そのときは本当にできてしまうためです。
② 調子のよい日に当たる
体調に波がある場合、調査の日がたまたま調子のよい日ということが起こります。一度の訪問では、波の存在そのものが見えません。
③ 家族が同席していない
本人の説明を補える人がいないと、普段の頻度を伝える機会が減ります。調査員は本人や介護者から日頃の状態を聞き取ることになっていますが、一度の訪問では見えない時間帯のことは、家族から伝えるほうが確実です。
3つとも、事前にメモを用意しておけば補えます。次の章で、そのメモの形を示します。
家族が渡すメモの書き方
判定が頻度で決まる以上、メモに書くべきことは決まっています。「週に何回」「どの場面で」「どんな手助けが要るか」の3点です。
そのまま書き写せる形
〔場面〕のとき、週に〔回数〕くらい、〔どんな手助けが要るか〕。
書き方の例
- 夜中にトイレへ行くとき、週に3〜4回くらい、支えないと立てません
- 入浴のとき、毎回、背中と足は洗えないので手伝っています
- 薬を飲むとき、週に2回くらい、飲んだことを忘れて二度飲もうとします
- 買い物のあと、月に1〜2回、同じ物を買ってきます
数を思い出せないときは、直近の1週間を数えてみてください。能力や介助方法など、多くの項目では調査日から概ね過去1週間の状況が基準になります。一方、認知症に伴う行動など一部の項目では、概ね過去1か月を見るものもあります。「だいたい毎日」「ときどき」ではなく、数で書くほうが伝わります。
| ✕ 伝わりにくい書き方 | ○ 伝わる書き方 |
|---|---|
| 最近よく転びます | この1か月で2回転びました。どちらも夜中にトイレへ行くときです |
| 物忘れがあります | 週に2回くらい、さっき食べたことを忘れて「まだ食べていない」と言います |
| 着替えが大変です | ボタンは自分で留められません。毎朝、上着だけ手伝っています |
メモはA4 1枚程度を目安に、困っている場面を、頻度の多いものから順に書くと読みやすくなります。判定で重視されるのが頻度なので、そこから並べるのが理にかなっています。
書くタイミングは、思い出したときではなく、その場でが確実です。手助けをした直後に一言だけ残しておくと、あとから回数を数えられます。冷蔵庫にメモ用紙を貼っておく、携帯電話のメモ機能を使う、といった方法で十分です。調査の日が決まってから慌てて思い出すより、正確な数になります。
同じ内容を家族で共有しておくことも大切です。離れて暮らす家族が調査に同席する場合、普段の様子を知っているのは同居している家族のほうです。事前に電話で聞き取って書き足しておくと、当日に食い違いません。
調査の日に家族ができること
当日は同席できるかどうかが大きいので、日程を決める段階で調整してください。
日程を決めるときに伝えておくこと
- 家族が同席できる日時を先に伝える
- 普段の様子が分かる場所を選ぶ。厚生労働省のテキストも、調査は原則として日頃の状況を把握できる場所で行うとしている
- 本人の調子に時間帯の波があるなら、それも伝えておく
本人の前で言いにくいことを、無理にその場で言わなくてかまいません。メモに書いて渡す、別室で伝える、といった方法があります。あらかじめ決めておくと、当日に迷いません。
本人の話を家族がその場で否定すると、本人が不快に感じて口を閉ざしてしまうことがあります。本人が話し終えてから補う、あるいはメモに任せると、当日の空気が保たれます。
調査では基本調査の74項目など必要な事項を確認しますが、質問の順番は固定されていません。厚生労働省のテキストは、調査項目の順番にこだわらず、答えやすい質問の導入や方法を工夫するとしています。
限られた訪問の中で普段の状況を伝えやすくするため、事前にメモをまとめておくと役立ちます。メモは、調査員が特記事項をまとめる際の参考になります。
調査が終わったあと、伝え忘れたことに気づくこともあります。その場合は、申請先の市区町村へ早めに相談してください。追加情報をどのように扱うかは、自治体や審査の進み具合によって異なります。
結果を待つ間にやっておくこと
調査が終わったら、結果を待つ期間に入ります。申請から認定結果の通知までは原則30日以内です。ただし、介護保険法は、心身の状況の調査に日時を要するなど特別な理由がある場合に、処理見込期間と理由を通知したうえで延期できると定めています。30日を超えることがあります。
この期間は、何もせずに待つ必要はありません。むしろ結果が出てからでは慌ただしくなるため、先に手をつけておけることがあります。認定結果に応じて、地域包括支援センターやケアマネジャーとの相談が始まり、サービスの調整と生活の立て直しが同時に進みます。待っている今のうちが、いちばん落ち着いて準備できる時期です。
この期間にできること
- 困っている場面のメモを続けて記録する(結果を見て相談するときの材料になります)
- 家の中で移動しにくい場所を家族で確認しておく
- 本人のかかりつけ医と服用中の薬を一覧にしておく
- 介護保険が使えない消耗品を先に揃えておく
4つ目は見落とされがちです。おむつや使い捨て手袋、食事用エプロンなどは介護保険の対象外で、認定を待たずに揃えられます。一方、手すりや一部の杖などは介護保険の対象になることがあります。自己判断で買う前に、ケアマネジャーや福祉用具専門相談員へ確認してください。この切り分けは介護用品の準備リストで、借りられる物と買う物を確認するにまとめました。
1つ目の記録は、認定が出た後にも役立ちます。ケアマネジャーや地域包括支援センターへ相談するときの材料になるためです。調査のために書いたメモを、そのまま続ければ十分です。
よくある質問
Q. 訪問調査では何項目くらい聞かれますか?
基本調査は74項目で、身体機能・起居動作、生活機能、認知機能、精神・行動障害、社会生活への適応の5つの分野に分かれています。これに加えて、調査員が文章で書く特記事項があります。実際にかかる時間は市区町村や本人の状態によって異なります。
Q. 家族は同席したほうがよいですか?
同席をおすすめします。本人が普段よりしっかり受け答えしてしまうことがあり、その場合に普段の様子を補える人が必要になるためです。日程を決める段階で、家族が同席できる日時を伝えてください。
Q. 実際より大変なように伝えたほうがよいのでしょうか?
いいえ。厚生労働省の認定調査員テキストは、最も重い状態で選択することも誤りだと明記しています。軽く見せることも重く見せることも、どちらも正確な調査になりません。実態をそのまま伝えることが、制度が求めていることです。
Q. 「できる日とできない日がある」場合はどう伝えますか?
週に何回そうなるかを数で伝えてください。介助の方法で評価する項目は、いちばん頻度の多い状態で選ばれます。頻度の少ない状態も、具体的な内容とあわせて特記事項に記載されることになっています。
Q. 本人の前では言いにくいことがあります。
メモに書いて渡す方法があります。別室で伝えるという方法もあります。本人の話をその場で否定すると口を閉ざしてしまうことがあるため、あらかじめどう伝えるかを決めておくと当日に迷いません。
Q. 更新のときや、区分変更を申請したときも訪問調査はありますか?
認定調査は新規の申請だけでなく、更新のときや区分変更を申請したときにも行われます。厚生労働省の認定調査員テキストは、新規の認定調査は市町村職員または事務受託法人が実施し、更新および区分変更申請に係る認定調査は、それに加えて指定居宅介護支援事業者などの研修を修了した者も実施できるとしています。調査の準備は新規のときと同じ考え方で進めてください。
Q. 認定結果が出るまでどのくらいかかりますか?
申請から認定結果の通知までは原則30日以内です。ただし、調査や審査に時間を要するなど特別な理由がある場合は、30日を超えることがあります。その場合は処理見込期間と理由が通知されます。待っている間にできることもあるため、困っている場面の記録を続けておくとよいでしょう。
訪問調査は試験ではなく、必要な介護の手間を伝える場
訪問調査に身構えてしまう方は少なくありません。試験のように感じられ、悪い点を見せなければならないような気まずさがあるためです。
ただし調査は、本人や家族の良し悪しを評価するものではありません。必要な介護の手間を判断するために、いまの状態を伝える場です。できないことを並べるのは、本人を否定することではなく、必要な手助けを受け取るための情報を渡すことにあたります。
本人が同席している場面で「できない」と言われるのがつらい、という声もあります。その場合は、この記事で挙げたようにメモを使ってください。口に出さずに伝える方法があると分かっているだけで、当日の気持ちは軽くなります。
まとめ
要介護認定の訪問調査は、次のポイントを押さえておけば備えられます。
- 基本調査は74項目。身体のことだけでなく、認知機能・行動・金銭管理まで含まれる
- 介助の方法が時間帯や体調で違う場合は、いちばん頻度の多い状態で選ばれる
- 間を取るのも、重いほうで選ぶのも誤り。実態を正確に伝えることが求められている
- 特記事項には、選択根拠・介護の手間・頻度が書かれる。家族のメモはその材料になる
- メモは「場面・週に何回・どんな手助けが要るか」の3点を、A4 1枚程度に
- 同席できる日時を、日程を決める段階で伝える
正確に伝えることに、後ろめたさは要りません。制度そのものが、実態どおりの記録を求めています。
本記事は一般的な情報をまとめたものです。認定調査の運用や認定結果の通知までの期間は、お住まいの市区町村によって異なる場合があります。実際の手続きについては、市区町村の窓口、地域包括支援センター、ケアマネジャーにご確認ください。























