アメリカの終活事情|日本との違いを比較|遺言・葬儀費用と学べること

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アメリカには「終活」にあたる言葉としてエンドオブライフ・プランニングという考え方があります。日本と同じく、亡くなったあとの手続きと、医療の希望をあらかじめ決めておく取り組みです。

ただし制度の作りがかなり違います。とくに大きいのが、「亡くなったあと、裁判所の手続きが必要になるかどうか」という点。ここが日本との最大の違いです。

この記事では、日本とアメリカの違いを6つの軸で比較し、日本で取り入れられる考え方を整理します。

先に結論だけ

  • アメリカでは遺言がないと「プロベイト」という裁判所の手続きになります
  • それを避けるために「リビングトラスト」が広く使われています
  • 口座は受取人を指定しておけば、裁判所を通さず承継できます
  • 医療の希望は「事前指示書」として書面で残すのが一般的です
  • 制度は州ごとに大きく異なります。「アメリカでは」と一括りにできません
  • 日本で真似できるのは、受取人の指定・医療の希望の書面化・生前契約の3つです

この記事の前提

アメリカの相続・医療の制度は州によって法律が異なり、内容も改正されます。この記事は日本との構造的な違いを理解するための一般的な整理であり、具体的な手続きの根拠として使えるものではありません。

実際にアメリカに資産や親族がある場合は、必ず日米双方の専門家にご相談ください。統計の数値や金額は年ごとに変わるため、本記事では記載していません。

目次

  1. アメリカの「終活」にあたる言葉
  2. 日本とアメリカの違い【6つの軸で比較】
  3. 違い① 遺言と「プロベイト」
  4. プロベイトを避けるリビングトラスト
  5. 違い② 口座の承継|受取人を指定しておく
  6. 日本の口座凍結との違い
  7. 違い③ 医療の事前指示
  8. 事前指示書に含まれる4つの要素
  9. 違い④ 葬儀の形
  10. 違い⑤ 遺産にかかる税
  11. 違い⑥ 誰に相談するか
  12. アメリカでも共通している悩み
  13. 日本で取り入れられる考え方3つ
  14. 取り入れにくいもの
  15. アメリカに資産・親族がある場合の注意
  16. 日本在住でアメリカ国籍・永住権がある場合
  17. 言葉の対応表【日英】
  18. アメリカの終活について多い疑問
  19. アメリカの終活から持ち帰れること

アメリカの「終活」にあたる言葉

日本語アメリカで使われる言い方指す範囲
終活(全般)end-of-life planning最も近い表現。医療・財産・葬儀を含みます
相続・財産の準備estate planning財産の承継が中心。専門職の分野として確立しています
医療の希望を決めるadvance care planning日本の「人生会議」にあたります
事前指示書advance directive医療の希望を書面で残したもの
遺言書will-
生前信託living trust裁判所の手続きを避けるために使われます
片づけ・生前整理downsizing住まいを小さくする文脈で使われます

日本の「終活」に完全に対応する語はありません

日本の「終活」は、葬儀・お墓・財産・医療・持ち物の整理までを一つにまとめた概念です。アメリカではこれらがestate planning(財産)とadvance care planning(医療)に分かれており、扱う専門職も違います。

終活の言い換え表現は終活の言い換え・別の言い方一覧|場面別の使い分け、英語表現は終活を英語では何という?終活関連用語とあわせて一覧で紹介をご覧ください。

日本とアメリカの違い【6つの軸で比較】

軸日本アメリカ(一般的な傾向)
遺言がない場合相続人が遺産分割協議を行います裁判所の検認手続き(プロベイト)になります
手続きの中心相続人どうしの話し合い裁判所と、指名された執行者
よく使われる備え遺言書・生前贈与リビングトラスト(生前信託)
口座の承継死亡で凍結 → 相続手続き受取人を指定しておけば直接承継できます
医療の希望人生会議。書面化は普及の途上事前指示書として書面で残すのが一般的
葬儀火葬がほぼすべて。仏式が中心土葬と火葬の選択。形式の自由度が高い
遺産にかかる税相続人が納める相続税遺産全体に課される連邦の遺産税。非課税枠が非常に大きい
法律の適用全国一律州ごとに異なります
相談先弁護士・司法書士・税理士エステート・プランニングを扱う弁護士など

※ アメリカの制度は州によって大きく異なります。表は構造的な傾向を示したものです。

違い① 遺言と「プロベイト」

プロベイト(probate)は、亡くなった方の財産を裁判所の監督のもとで整理・分配する手続きです。日本にはこれに相当する一般的な制度がありません。

項目内容
いつ必要になるか遺言の有無にかかわらず、個人名義の財産があると必要になることがあります
誰が進めるか遺言で指名された執行者、または裁判所が選任した管理人
やること財産の確定、債務の清算、税の申告、相続人への分配
かかる時間数か月から、事案によっては1年以上
費用裁判所の費用と専門職の報酬がかかります
公開性記録が公開されることがあります
州による違い手続きの簡略化制度がある州もあります

「遺言を書けば裁判所を通さずに済む」わけではありません

ここが誤解されやすい点です。遺言があっても、その遺言が有効かを確認するためにプロベイトが必要になるのが基本です。

遺言の役割は「手続きを省くこと」ではなく、「誰に何を渡すか」と「誰が手続きを進めるか」を自分で決めることにあります。

プロベイトを避けるリビングトラスト

時間と費用がかかるプロベイトを避けるために、アメリカで広く使われているのがリビングトラスト(living trust/生前信託)です。

遺言(will)リビングトラスト
効力が生じるとき亡くなったあと作った時点から
裁判所の手続き必要になるのが基本避けられることが多い
財産の名義本人のまま信託の名義に移します
本人が判断力を失ったとき効力がありません後継の管理者が引き継げます
記録の公開公開されることがあります公開されにくい
作る手間・費用比較的軽い重い
財産の移し替え不要1件ずつ名義を移す作業が必要

日本の「家族信託」と似ていますが、同じではありません

日本にも家族信託(民事信託)という仕組みがありますが、使われる主な目的が違います。

アメリカのリビングトラストはプロベイトを避けることが大きな動機です。日本にはプロベイトがないため、家族信託は主に認知症になったあとの財産管理を目的に使われます。制度の名前が似ていても、狙いが違う点に注意してください。

違い② 口座の承継|受取人を指定しておく

アメリカで広く使われているのが、口座や証券にあらかじめ受取人を指定しておく仕組みです。

仕組み対象効果
受取人指定(銀行口座)預金口座本人の死亡後、指定した人が直接受け取れます
受取人指定(証券口座)証券・投資口座同上
生命保険の受取人保険金日本と同じく受取人固有の権利です
退職口座の受取人年金型の口座同上
共有名義(生存者権つき)不動産・口座もう一方の名義人に移ります

この仕組みの利点は「早さ」です

受取人が指定されていれば、裁判所の手続きを待たずに資金を受け取れます。葬儀費用や当面の生活費を、遺族がすぐに使えるということです。

設定も簡単で、金融機関の書類に受取人を書くだけのことが多くあります。

日本の口座凍結との違い

日本アメリカ(受取人指定がある場合)
死亡したとき金融機関が把握した時点で凍結指定された受取人が請求できます
引き落とし止まります(公共料金が未払いに)-
葬儀費用口座から出せなくなります受け取った資金を充てられます
必要な書類戸籍一式・相続人全員の印鑑証明など死亡証明書と本人確認書類が中心
かかる期間書類がそろってから1〜2か月程度比較的短い
仮払い一定範囲の払い戻し制度があります-

日本では「口座は使えなくなる」前提で備えてください

日本にはアメリカのような受取人指定の仕組みが預金口座には一般的でないため、亡くなると口座は凍結され、葬儀費用を出せなくなります。

対策は「現金を手元に用意しておく」「葬儀費用の出どころを決めておく」です。詳しくは家族が亡くなったら銀行口座はいつ凍結される?解除までの流れをご覧ください。

違い③ 医療の事前指示

アメリカで最も定着しているのが、医療の希望を書面で残す文化です。

日本アメリカ
呼び方人生会議(アドバンス・ケア・プランニング)advance care planning
書面の位置づけ法的な拘束力はありません州法で定められた様式があります
医療代理人制度として確立していません書面で指名するのが一般的
延命治療の希望エンディングノートなどに記載事前指示書に記載
蘇生措置の指示医療機関ごとの運用専用の指示書があります
普及の度合い広まりつつある段階入院・入所時に確認されることがあります
州・地域差全国ほぼ共通州ごとに様式が異なります

最大の違いは「医療代理人を指名する」こと

アメリカでは、本人が判断できなくなったときに代わりに医療上の判断をする人を、書面で指名しておくのが一般的です。

日本では家族が事実上その役割を担いますが、誰が決めるのかが曖昧なままのことが多く、家族の間で意見が割れると決めた人に後悔が残ります。

「迷ったら◯◯に決めてもらってください」と1人指名しておく。これは日本でもすぐ真似できる、非常に実用的な考え方です。

事前指示書に含まれる4つの要素

要素内容日本で真似できるか
①医療代理人の指名判断できなくなったとき、代わりに決める人できます(法的効力はないが実務上有効)
②延命治療の希望人工呼吸器・栄養補給・輸血などをどこまで行うかできます
③蘇生措置の希望心停止時に蘇生を行うかどうか医療機関と相談のうえ
④臓器提供の意思提供するかどうかできます(意思表示カード・保険証の欄)

日本でもエンディングノートに書けます

この4つは、いずれも日本のエンディングノートに書けます。法的な拘束力はありませんが、医療の現場では本人の意思を示す資料として尊重されるのが実情です。

書き方は終活ノートの書き方例|項目別の記入サンプルの「医療・介護の希望」の項目を参考にしてください。看取りの考え方は看取りとは?意味や定義、ターミナルケアとの違いで解説しています。

違い④ 葬儀の形

日本アメリカ
火葬・土葬火葬がほぼすべて土葬と火葬の選択。火葬が増えている傾向
宗教仏式が中心キリスト教が中心だが多様
形式通夜・葬儀・告別式ビューイング(対面)・葬儀・埋葬
近年の傾向家族葬・直葬が増加「セレブレーション・オブ・ライフ」(人生を祝う会)が広がっています
遺体の扱いドライアイスで安置エンバーミング(遺体の保全処置)が一般的
時期数日以内1〜2週間後のこともあります
服装喪服(黒)黒が基本だが、「明るい服で」と指定されることも
お墓家単位が中心個人単位が中心
費用どちらも高額です。内訳が異なるため単純比較はできません

※ 傾向を整理したものです。地域・宗教・コミュニティによって大きく異なります。

「セレブレーション・オブ・ライフ」という考え方

悲しみを中心に据えるのではなく、故人の人生を振り返り、祝うという形式です。好きだった音楽を流し、写真を飾り、思い出を語り合います。服装も「黒でなくてよい」とされることがあります。

日本でもお別れの会・偲ぶ会という形で近い発想が広がっています。「葬儀は簡素に、あとで気楽に集まってほしい」という希望を持つ方には、参考になる考え方です。

違い⑤ 遺産にかかる税

日本の相続税アメリカの連邦遺産税
誰が納めるか財産を受け取った相続人亡くなった方の遺産(遺産全体)
非課税の枠基礎控除(法定相続人の数で決まります)非常に大きく、大多数は対象になりません
対象になる人の割合一定数いますごく限られます
州の税ありません州独自の遺産税・相続税がある州があります
配偶者配偶者の税額軽減があります配偶者への承継は優遇されます
申告期限10か月以内州・事案によります

※ 税制は日米ともに改正されます。具体的な金額・税率は記載していません。最新の内容は国税庁および現地の専門家にご確認ください。

「アメリカは相続税がない」は誤りです

正確には「連邦の遺産税は非課税枠が非常に大きく、大多数の人は対象にならない」ということです。加えて州独自の税がある州もあります。

また、課税の考え方も違います。日本は財産を受け取った人が納め、アメリカは遺産そのものに課される。この構造の違いは、国際相続で混乱のもとになります。

違い⑥ 誰に相談するか

相談内容日本アメリカ
遺言・相続の準備弁護士・司法書士・税理士エステート・プランニングを扱う弁護士
医療の希望医師・ケアマネジャー医師・医療ソーシャルワーカー
財産管理金融機関・税理士ファイナンシャルプランナー・信託銀行
葬儀葬儀社フューネラルディレクター
看取りの付き添い訪問看護・ホスピスホスピス・デスドゥーラ(看取りに寄り添う支援者)
身寄りがない場合自治体・地域包括支援センターソーシャルワーカー・後見制度

「デスドゥーラ」という職種

出産に付き添うドゥーラになぞらえ、亡くなる過程に寄り添う支援者という役割が広がっています。医療行為はせず、本人と家族の心の整理、希望の聞き取り、看取りの場づくりを担います。

日本にもグリーフケアや終活の相談職がありますが、「亡くなる過程そのものに寄り添う」役割は、まだ確立していません。今後、日本でも広がる可能性のある考え方です。詳しくは終活におけるグリーフケアとは?方法や資格などを紹介をご覧ください。

アメリカでも共通している悩み

悩み日本アメリカ
準備を先延ばしにする共通遺言を作っていない人が相当数います
家族に切り出しにくい共通共通
何から始めるか分からない共通共通
財産の一覧がない共通共通
デジタル資産の引き継ぎ共通共通
葬儀費用の負担共通共通
単身高齢者の増加共通共通
認知症になったあとの財産管理共通共通

制度が違っても、つまずく場所は同じです

興味深いのは、制度がこれだけ違っても、人がつまずく場所はほぼ同じだという点です。「先延ばしにする」「切り出せない」「一覧がない」は、どの国でも共通しています。

逆に言えば、制度の違いに関係なく効く対策があるということです。財産の一覧をつくり、希望を書き、家族に伝える。これはどこでも変わりません。

日本で取り入れられる考え方3つ

  1. 受取人を指定しておくアメリカの口座の仕組みは日本の預金では使えませんが、生命保険の受取人は同じ発想です。受取人が指定された保険金は受取人固有の財産で、口座凍結の影響を受けません。葬儀費用や当面の生活費を確保する手段として使えます
  2. 「判断を任せる人」を1人決めておく医療代理人の考え方です。法的な制度はありませんが、「迷ったら◯◯に決めてもらってください」とエンディングノートに書き、本人にも伝えておくだけで、家族の負担がまったく違います
  3. 生前に契約しておくアメリカでは葬儀や埋葬の生前契約が広く行われています。日本でも永代供養墓の生前契約、葬儀社との事前相談ができます。決めておけば、遺族は迷いません

2番目が、いますぐできて最も効きます

「判断を任せる人を1人決めて、本人に伝えておく」。これは0円で、今日できて、効果が非常に大きい備えです。

医療の現場では、書かれていない事態が必ず起きます。すべてを想定して書くことはできません。だからこそ「最終的に誰が決めるか」を決めておくことが実用的です。

取り入れにくいもの

アメリカの仕組み日本での扱い
リビングトラスト日本には家族信託がありますが、目的が異なります(プロベイトがないため)
預金口座の受取人指定一般的ではありません。口座は凍結されます
事前指示書の法的効力日本では法的拘束力がありません
医療代理人の制度制度としては確立していません
遺言の自由度日本には遺留分があり、配偶者・子・親の取り分が保護されます
土葬法令上は不可能ではありませんが、実際にはほぼ行われません
エンバーミング行われていますが、一般的ではありません

「遺留分」は日本に特有の重要な違いです

日本では、配偶者・子・親には遺留分(最低限受け取れる取り分)があり、遺言でもこれを完全には奪えません。

ただし兄弟姉妹には遺留分がありません。そのため、相続人が兄弟姉妹だけの方は、遺言書で財産の渡し先を自由に決められます。海外の情報をそのまま当てはめず、日本の制度で考えてください。

アメリカに資産・親族がある場合の注意

状況注意点
アメリカに銀行口座があるプロベイトの対象になる可能性があります。受取人指定の有無を確認
アメリカに不動産がある所在地の州法が適用されます
アメリカの証券・投資口座がある受取人指定・税の扱いを確認
相続人がアメリカに住んでいる書類の取得・署名に手間と時間がかかります
日米両方に財産があるどちらの国の法律が適用されるかが問題になります
税金二重課税の可能性があります。租税条約・外国税額控除の確認を
必要な書類翻訳・公証・アポスティーユが求められることがあります

国際相続は、必ず専門家に相談してください

日米に財産がまたがる相続は、どちらの法律が適用されるか、税をどちらに納めるかという論点が生じ、個人で判断できる範囲を超えます。

日本の弁護士・税理士に加えて、現地の専門家の関与が必要になることがほとんどです。財産が少額でも、手続きが複雑になることがあります。詳しくは海外在住・海外赴任中の終活ガイド|国際相続の注意点と備えをご覧ください。

日本在住でアメリカ国籍・永住権がある場合

  • 国籍・居住地によって、適用される法律と税が変わります
  • アメリカの納税義務が残っている場合があります:国籍や居住状況によります
  • アメリカに口座・年金・保険がないか確認する:本人しか知らないことが多い
  • 受取人の指定を見直す:古い指定のまま放置されていることがあります
  • 書類の保管場所を家族に伝える:英語の書類は遺族が判断できません
  • 日本語の説明を添えておく:「これはアメリカの◯◯の書類です」と一行
  • 現地の連絡先を残す:金融機関・弁護士・親族
  • 早めに日米双方の専門家に相談する

英語の書類には、日本語の一行を添えてください

遺族がいちばん困るのが、「英語の書類が出てきたが、何なのか分からない」という状況です。捨ててよいのか、重要なのかが判断できません。

「これはアメリカの◯◯銀行の口座の書類です。連絡先は◯◯」と日本語で一行書いた付箋を貼っておくだけで、遺族の負担がまったく違います。

言葉の対応表【日英】

日本語英語補足
終活end-of-life planning最も近い表現
相続の準備estate planning財産の承継が中心
遺言書will-
生前信託living trust-
検認手続きprobate日本に相当する一般制度はありません
遺言執行者executor-
事前指示書advance directive-
人生会議advance care planning-
医療代理人healthcare proxy-
ホスピスhospice-
緩和ケアpalliative care-
火葬cremation-
土葬burial-
葬儀社funeral home-
お別れの会celebration of life人生を祝う会
遺産税estate tax遺産そのものに課されます

英語で説明するときのコツ

日本の「終活」を説明するときは、「end-of-life planning」と言ってから、具体的に何を含むかを補うのが確実です。一語で対応する概念がないためです。

終活に関する英語表現は終活を英語では何という?終活関連用語とあわせて一覧で紹介で詳しくまとめています。

アメリカの終活について多い疑問

アメリカに「終活」という言葉はありますか?
完全に対応する一語はありません。最も近いのは「end-of-life planning」です。ただしアメリカでは、財産の準備(estate planning)と医療の希望(advance care planning)が分かれており、扱う専門職も違います。
プロベイトとは何ですか?
亡くなった方の財産を裁判所の監督のもとで整理・分配する手続きです。日本にはこれに相当する一般的な制度がありません。数か月から1年以上かかることがあり、費用も生じます。記録が公開されることもあります。
遺言を書けばプロベイトを避けられますか?
避けられません。遺言があっても、その有効性を確認するために手続きが必要になるのが基本です。遺言の役割は「誰に何を渡すか」と「誰が手続きを進めるか」を自分で決めることにあります。
リビングトラストは日本でも使えますか?
日本には家族信託(民事信託)という似た仕組みがありますが、目的が違います。アメリカではプロベイトを避けることが大きな動機ですが、日本にはプロベイトがないため、家族信託は主に認知症になったあとの財産管理に使われます。
アメリカには相続税がないのですか?
誤りです。正確には「連邦の遺産税は非課税枠が非常に大きく、大多数の人は対象にならない」ということです。加えて州独自の税がある州もあります。また日本は相続人が納め、アメリカは遺産そのものに課されるという構造の違いもあります。
日本ですぐ真似できることはありますか?
「判断を任せる人を1人決めて、本人に伝えておく」が最も効きます。アメリカの医療代理人の考え方です。0円で今日できて、家族の負担が大きく変わります。ほかに生命保険の受取人指定と納骨先・葬儀の生前契約も取り入れられます。
アメリカでは口座が凍結されないのですか?
受取人を指定しておけば、指定された人が直接受け取れる仕組みが広く使われています。裁判所の手続きを待たずに済むため、葬儀費用や当面の生活費に充てられます。日本の預金口座には一般的でない仕組みです。
日本とアメリカ、どちらの制度が良いのですか?
一概には言えません。アメリカは受取人指定などで手続きが早い一方、遺言がないと裁判所の手続きになり、州ごとに法律が違うという複雑さがあります。日本は全国一律で分かりやすい反面、口座凍結や戸籍集めの負担があります。
アメリカに口座があります。何をすべきですか?
受取人が指定されているかを確認し、書類の保管場所と連絡先を家族に伝えてください。英語の書類には日本語で一行説明を添えると、遺族が判断できます。国際相続は複雑なので、早めに日米双方の専門家にご相談ください。
日米に財産がある場合、税金はどうなりますか?
二重課税の可能性があります。租税条約や外国税額控除の適用を検討することになりますが、個人で判断できる範囲を超えます。必ず税理士および現地の専門家にご相談ください。
「セレブレーション・オブ・ライフ」とは何ですか?
悲しみを中心に据えず、故人の人生を振り返り祝うという形式の会です。好きだった音楽を流し、思い出を語り合い、服装も「黒でなくてよい」とされることがあります。日本のお別れの会・偲ぶ会に近い発想です。
「デスドゥーラ」とは何ですか?
亡くなる過程に寄り添う支援者です。医療行為はせず、本人と家族の心の整理、希望の聞き取り、看取りの場づくりを担います。日本ではまだ確立していない役割ですが、今後広がる可能性のある考え方です。

アメリカの終活から持ち帰れること

アメリカの終活事情・要点

  • 最も近い言葉は「end-of-life planning」。一語で対応する概念はない
  • 最大の違いは「プロベイト」=裁判所の検認手続きがあること
  • 遺言を書いてもプロベイトは避けられない。だからリビングトラストが普及
  • 口座は受取人を指定しておけば、裁判所を通さず承継できる
  • 医療は「事前指示書」で書面化。医療代理人を指名するのが一般的
  • 制度は州ごとに異なる。「アメリカでは」と一括りにできない
  • 「相続税がない」は誤り。非課税枠が大きいだけで、州の税もある
  • 日本には遺留分がある。海外の情報をそのまま当てはめない
  • 日本で真似できるのは、受取人指定・判断を任せる人の指名・生前契約
  • 日米に財産がある場合は、必ず双方の専門家へ

制度はこれだけ違っても、人がつまずく場所は日米でほぼ同じでした。先延ばしにする、家族に切り出せない、財産の一覧がない。どの国でも変わりません。

裏を返せば、制度に関係なく効く対策があるということです。財産の一覧をつくり、希望を書き、家族に伝える。それだけです。

アメリカから1つだけ取り入れるなら、「迷ったら◯◯に決めてもらってください」と1人指名しておくこと。0円で、今日できて、家族をいちばん助けます。

※ 本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、法律・税務に関する助言ではありません。アメリカの相続・医療・税の制度は州によって大きく異なり、法改正によって変更されます。本記事は日本との構造的な違いを理解するための概要であり、具体的な手続きの根拠として使えるものではありません。統計の数値や金額は年ごとに変わるため記載していません。日米にまたがる相続・税務が生じる場合は、必ず日本の弁護士・税理士および現地の専門家にご相談ください。日本国内の相続・遺言・医療の希望については、日本の制度にもとづいてご判断ください。

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