銀行口座は死亡届では凍結されない|150万円まで払い戻す制度

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「役所に死亡届を出したら、銀行口座が凍結された」——よく聞く話ですが、これは正確ではありません。死亡届と銀行の手続きは、まったく別のものです。口座の取引が制限されるのは、金融機関へ連絡したときです。とはいえ「では黙っていればよい」という話でもありません。葬儀費用が払えなくて困るという事態に備えて、相続人が単独で払い戻せる制度が用意されています。上限は同じ金融機関で150万円。この記事では、凍結の始まる時点を整理したうえで、150万円の計算方法、戸籍の束を何度も出さずに済む制度、3か月と10か月という期限までまとめました。

この記事の結論

  • 死亡届を出した時点では、口座は凍結されません
  • 取引が制限されるのは金融機関へ連絡したときです
  • 凍結は相続人の取り分を守るための扱いです
  • 葬儀費用などのために、単独で払い戻せる制度があります
  • 上限は同じ金融機関で150万円です
  • 法定相続情報一覧図を使えば、戸籍の束を何度も出さずに済みます
  • 相続放棄は3か月以内、相続税の申告は10か月以内
  • 10年放置すると休眠預金になります(引き出しは可能です)

この記事でわかること

  1. まず結論|死亡届では凍結されない
  2. 凍結が始まるのはいつか
  3. なぜ凍結されるのか
  4. 凍結されると何ができなくなるか
  5. 葬儀費用が払えないときの制度
  6. いくら引き出せるか(計算式)
  7. 計算の具体例
  8. 制度を使うときの必要書類
  9. 150万円を超えるお金が要るとき
  10. 払い戻したお金の扱い
  11. 凍結の解除は4つのステップ
  12. ケース別・必要書類の目安
  13. 戸籍を何度も出さずに済む制度
  14. 一覧図の使い道と申出先
  15. 先に来る期限は3か月と10か月
  16. 相続放棄を考えているときの注意
  17. 10年放置すると休眠預金に
  18. 悩み別|どこへ相談するか
  19. 連絡する前に確かめる10項目
  20. よくある質問12問
  21. まとめ

まず結論|死亡届では、口座は凍結されません

いちばん多い誤解から解いておきます。市区町村へ死亡届を出しても、その情報が銀行へ自動的に伝わることはありません。役所と金融機関は、そういうつながり方をしていないからです。

死亡届は戸籍法にもとづく手続きで、死亡の事実を知った日から7日以内に市区町村へ届け出るものです。銀行の手続きとはまったく別物だと考えてください。

死亡届銀行への連絡
提出先市区町村取引先の金融機関
期限7日以内期限はありません
効果戸籍に記載されます取引が制限されます
連動するか連動しません。別々の手続きです

凍結が始まるのは、いつか

では、いつ制限がかかるのか。口座名義人が亡くなった場合、まず取引先の金融機関に連絡します。そしてその相続の連絡と同時に、亡くなった方の口座での入出金などの取引は原則として制限される——という流れになります。

つまり連絡した時点です。金融機関の側から見れば、連絡を受けるまで死亡の事実は分かりません。新聞のお悔やみ欄などで把握されることもありますが、基本は連絡が起点です。

ここで「では、連絡しないでおけばよいのでは」と考える方がいます。それは避けてください。次の章で見るとおり、凍結には理由があります。制限を避けるために黙っていると、あとで相続人どうしのもめ事につながります。

なぜ、凍結されるのか

これには裁判所の判断が関係しています。相続された預貯金は遺産分割の対象となる財産に含まれ、共同相続人が単独で払戻しを受けることはできない——という整理がされました。

つまり銀行が意地悪をしているのではなく、相続人みなさんの取り分を守るための扱いなのです。誰か1人が先に全部引き出してしまえば、あとで大きな争いのもとになります。

理由が分かると、少し受け止め方が変わるのではないでしょうか。凍結は「困らせるための仕組み」ではなく「守るための仕組み」です。

凍結されると、何ができなくなるか

できなくなること影響
現金の引き出し葬儀費用の支払いに困ることがあります
口座振替(自動引き落とし)公共料金などが引き落とせなくなります
振込の受け取り年金などが入らなくなります
通帳の記帳取引の履歴が見づらくなることがあります

口座振替が止まると、支払いが滞ります

見落とされやすいのが口座振替です。電気・ガス・水道・通信・保険料——故人名義の口座から引き落としていたものは、凍結後に落ちなくなります。支払いが滞ると督促が届き、場合によっては供給が止まることにもなりかねません。金融機関へ連絡する前に、「その口座から何が引き落とされているか」を通帳で確かめておいてください。多くの契約先では、コンビニで支払える払込票に切り替えてもらえます。慌てず、届いた払込票で払いながら名義の変更を進めれば問題ありません。

葬儀費用が払えないときの制度があります

遺産分割が終わるまで一円も動かせないのでは、生活費も葬儀費用も立ち行きません。そこで用意されているのが、遺産分割前に相続預金の払戻しを受けられる制度です。

家庭裁判所の判断を経ずに、相続人が単独で払い戻しを受けられます。当面の生活費や葬儀費用の支払いのために使える制度として設けられました。

「そんな制度があるとは知らなかった」という方が多いところです。金融機関の窓口で相談すれば案内してもらえます。言い方は「遺産分割前の払戻しの制度を使いたいのですが」で通じます。

いくら引き出せるか|計算式

ルール
計算式相続開始時の預金額 × 3分の1 × 払戻しを行う相続人の法定相続分
単位口座ごと(定期預金は明細ごと)に計算します
上限同一の金融機関から150万円まで
支店が複数ある場合全支店の合計で判断します

ポイントは上限が「同一の金融機関ごと」だという点です。複数の銀行に口座があれば、それぞれで150万円までということになります。同じ銀行の別支店にあった場合は、合計して150万円までです。

計算の具体例

言葉だけでは分かりにくいので、例で見ます。

前提内容
相続人長男・次男の2名
預金1つの口座に普通預金600万円
長男の法定相続分2分の1
計算600万円 × 1/3 × 1/2 = 100万円
結果長男が単独で払い戻せるのは100万円

この例では上限の150万円に届かないので、計算した100万円がそのまま払い戻せる額になります。もし計算結果が150万円を超えた場合は、150万円が上限です。

次男も同じように請求できます。それぞれが自分の分を請求する形なので、相続人の同意を取りつける必要はありません。ここが「単独で」という言葉の意味です。

制度を使うときの必要書類

用意するもの
被相続人の除籍謄本・戸籍謄本(出生から死亡までの連続したもの)
相続人全員の戸籍謄本
払戻しを希望される方の印鑑証明書
本人確認書類

「出生から死亡までの連続したもの」というのが、いちばん手間のかかるところです。本籍地を何度も移している方の場合、複数の市区町村へ請求することになります。

ただし金融機関によって必要な書類が異なる場合があります。集め始める前に、電話で「何が必要ですか」と確かめてください。集めたあとで足りないと分かるのが、いちばん時間の無駄です。

150万円を超えるお金が必要なときは

もう一つ、家庭裁判所の判断による仮払いの制度もあります。家庭裁判所に遺産分割の審判や調停が申し立てられている場合に、審判を得て相続預金の全部または一部を仮に取得し、単独で払戻しを受けられるというものです。

ただし仮払いの必要性が認められ、かつ他の共同相続人の利益を害しない場合に限られます。誰でも使えるわけではありません。

単独で払い戻す制度家庭裁判所の仮払い
想定される場面限度額のある小口の資金需要限度額を超える比較的大口の資金需要
手続き金融機関の窓口家庭裁判所への申立てが必要
使いやすさ書類がそろえば使えます調停や審判が前提になります

払い戻したお金の扱い

「もらい得」にはなりません

この制度で払い戻されたお金は、後日の遺産分割で、払戻しを受けた相続人が取得するものとして調整されます。つまり先に受け取った分は、最終的な取り分から差し引かれるということです。「早い者勝ちで多く取れる」制度ではありません。そこは誤解のないようにしてください。ただし、葬儀費用として実際に使った分については、あとで相続人の間で精算するという考え方もあります。領収書は必ず保管しておいてください。「何にいくら使ったか」を説明できる状態にしておくことが、あとの平穏につながります。

領収書を残しておくものあとで役に立つ場面
葬儀の費用相続人の間の精算、相続税の計算
お寺や神社へのお礼領収書が出ないときはメモを残します
入院費の精算故人の債務として扱われます
遺品の整理の費用相続人の間で分担するときに使います

領収書が出ないものもあります。その場合は、日付・相手・金額・目的をメモに残しておいてください。「何にいくら使ったか」を説明できる状態にしておくことが、あとの家族の関係を守ります。

凍結の解除は、4つのステップで進みます

ステップやること
1手続きの申し出金融機関へ連絡し、案内を受けます
2必要書類の準備遺言書の有無などで変わります
3書類の提出所定の用紙に相続人が署名捺印します
4払戻しなどの手続き日数がかかる場合があります

窓口の方が状況に応じて案内してくれますので、身構えなくても大丈夫です。ステップ2の書類集めがいちばん時間のかかるところですが、何が必要かは1で教えてもらえます。

ケース別・必要書類の目安

ケースおおむね必要になるもの
遺言書も遺産分割協議書もない被相続人の戸籍(出生から死亡まで連続)/相続人全員の戸籍/相続人全員の印鑑証明書
遺言書がある遺言書と検認調書または検認済証明書(公正証書遺言以外)/被相続人の死亡が確認できる戸籍/預金を相続する方の印鑑証明書
遺産分割協議書がある相続人全員の署名・捺印がある協議書が加わります

いちばん多いのが「遺言書も遺産分割協議書もない」ケースです。この場合は相続人全員の印鑑証明書が要るため、連絡が取りにくい相続人がいると手続きが止まります。早めに声をかけておいてください。

戸籍を何度も出さずに済む制度

複数の銀行に口座があると、分厚い戸籍の束を何度も持ち回ることになります。ここで便利なのが法定相続情報証明制度です。

法務局に一覧図と戸籍・除籍の謄本などを提出すると、登記官が確認のうえ、認証文を付した写しを無料で交付してくれます。

1枚で戸籍の束の代わりになります

この一覧図の写しは、相続の登記のほか、預金の払戻しの手続き、相続税の申告、年金などの手続きにも使えます。つまり1度作れば、あちこちで使い回せるということです。交付は無料で、必要な枚数を出してもらえます。銀行が3行、証券会社が1社、法務局で登記——といった状況なら、作らない手はありません。戸籍の束を持ち回る時間と、返してもらうまでの待ち時間が、まるごと省けます。

一覧図の使い道と、申出先

項目内容
費用無料
申出先被相続人の本籍地・最後の住所地、申出人の住所地、被相続人名義の不動産の所在地を管轄する登記所のいずれか
郵送郵送でも申出できます
保存期間5年間保存され、その間は再交付も受けられます

申出先が複数から選べるのはありがたい点です。自分の住所地を管轄する登記所でも申出できるので、遠方の本籍地まで行く必要はありません。郵送でも受け付けてもらえます。

もうひとつ、実務的な注意です。金融機関へ連絡する前に、通帳の記帳を済ませておいてください。連絡後は記帳ができなくなることがあり、直前までの取引の履歴が確かめにくくなります。

記帳した通帳は、どこから何が引き落とされているかを調べる材料にもなります。保険料、通信費、公共料金、サブスクリプション——解約すべき契約が、そこに全部並んでいます。

相続税の計算でも、亡くなる前の入出金の履歴が問われることがあります。記帳は、いちばん手軽で効き目の大きい準備だと考えてください。

先に来る期限は、3か月と10か月です

期限手続き起算日
3か月相続放棄の申述自己のために相続の開始があったことを知ったとき
10か月相続税の申告と納税死亡したことを知った日の翌日から

相続放棄の申述にかかる費用は、申述人1人につき収入印紙800円分と、連絡用の郵便料です。3か月以内に判断する材料がそろわない場合は、家庭裁判所に申し立てて期間を伸ばしてもらえる制度もあります。

相続税の申告は、死亡したことを知った日(通常は死亡の日)の翌日から10か月以内です。1月6日に亡くなった場合は、その年の11月6日が期限になります。

相続放棄を考えているときの注意

預金を動かす前に、確認してください

借金のほうが多いかもしれない、というときに使うのが相続放棄です。ここでいちばん怖いのは、故人の預金を使ってしまうと、相続を承認したとみなされて放棄できなくなる可能性があるという点です。葬儀費用のつもりで払い戻したお金でも、扱いが問題になることがあります。相続放棄を少しでも考えているなら、亡くなった方の預金を動かす前に、家庭裁判所か専門家に確認してください。順番を間違えると、取り返しがつきません。

10年放置すると、休眠預金になります

手続きを進めないまま長く放置すると、どうなるか。2009年1月1日以降の入出金などの取引から10年以上、その後の異動がない預金等は「休眠預金等」となり、預金保険機構に移管されます。

ただし移管されたあとも、取引のあった金融機関で引き出すことはできます。「取られてしまう」わけではありません。そこは安心してよい点です。

金融機関は最後の取引から9年を経過した預金について公告を行い、残高が1万円以上の場合は登録された住所へ通知を郵送することとされています。通知が届いたら、放置せず金融機関に問い合わせてください。

悩み別|どこへ相談するか

相談したいこと相談先
手続きの流れ・必要書類取引先の金融機関
戸籍の束をまとめたい法務局(法定相続情報一覧図の申出)
相続放棄・遺産分割家庭裁判所
どこに相談してよいか分からない法テラス(法制度・相談窓口の案内)
登記や書類の作成司法書士会の相談窓口
相続税税務署・税理士

連絡する前に確かめる10項目

  • その口座から何が引き落とされているか
  • 直近の残高
  • 他にどの金融機関に口座があるか
  • 遺言書があるかどうか
  • 相続人が誰と誰か
  • 連絡が取りにくい相続人はいないか
  • 借金がありそうかどうか
  • 葬儀費用をいくら立て替える必要があるか
  • 必要書類は何か(電話で確認)
  • 法定相続情報一覧図を作るかどうか

最後に、口座が複数ある場合の進め方を整理しておきます。まずは全部の口座を洗い出すことから始めてください。通帳、キャッシュカード、郵便物、そしてスマホの中のアプリも手がかりになります。

洗い出したら、残高の大きい口座から手をつけるのが効率的です。書類をそろえる手間は口座の数だけかかりますが、金額の小さい口座を先にやると、大きいほうが後回しになります。

そして、金融機関ごとに必要書類が微妙に違います。1行目で集めた書類が、2行目でそのまま使えるとは限りません。だからこそ法定相続情報一覧図が効きます。これがあれば、戸籍の部分は共通で足りることが多くなります。

銀行口座の凍結について、よくある質問

死亡届を出すと、自動的に凍結されますか
されません。死亡届は戸籍法にもとづく手続きで、銀行とは連動していません。取引が制限されるのは、金融機関へ連絡したときです。
では、連絡しないでおけばよいのでは
避けてください。凍結は相続人の取り分を守るための扱いです。連絡せずに引き出しを続けると、あとで相続人どうしのもめ事になります。
葬儀費用が払えません
遺産分割前に単独で払い戻せる制度があります。計算式は預金額×3分の1×法定相続分、上限は同じ金融機関で150万円です。窓口で相談してください。
複数の銀行があれば、それぞれ150万円ですか
そのとおりです。上限は「同一の金融機関ごと」なので、銀行が違えばそれぞれで判断されます。同じ銀行の別支店は、合計で150万円までです。
払い戻したお金は、もらい得になりますか
なりません。後日の遺産分割で、払戻しを受けた相続人が取得したものとして調整されます。領収書は必ず保管しておいてください。
150万円では足りません
家庭裁判所の判断による仮払いの制度があります。ただし遺産分割の審判や調停が申し立てられていることが前提で、必要性が認められる場合に限られます。
戸籍を何度も出すのが大変です
法定相続情報一覧図を作れば、1枚で戸籍の束の代わりになります。交付は無料で、預金の払戻し、相続の登記、相続税の申告、年金の手続きにも使えます。
一覧図はどこで申し出るのですか
被相続人の本籍地・最後の住所地、申出人の住所地、不動産の所在地を管轄する登記所のいずれかです。郵送でも申し出できます。
相続放棄を考えています。預金を使ってもよいですか
動かす前に確認してください。故人の預金を使うと、相続を承認したとみなされて放棄できなくなる可能性があります。家庭裁判所か専門家に相談してから動いてください。
期限はいつですか
相続放棄は3か月以内、相続税の申告と納税は10か月以内です。相続放棄は期間を伸ばしてもらう制度もあります。
ずっと放置するとどうなりますか
10年以上動きがないと休眠預金等になり、預金保険機構に移管されます。ただし移管後も、取引のあった金融機関で引き出せます。通知が届いたら問い合わせてください。
まず何から始めればよいですか
通帳を見て、その口座から何が引き落とされているかを確かめることからです。そのうえで金融機関へ電話し、「必要書類を教えてください」と聞いてください。

まとめ

この記事の要点

  • 死亡届を出した時点では、口座は凍結されません
  • 制限がかかるのは金融機関へ連絡したときです
  • 凍結は相続人の取り分を守るための扱いです
  • 連絡する前に、口座振替の中身を確かめてください
  • 葬儀費用のために単独で払い戻せる制度があります
  • 上限は同じ金融機関で150万円です
  • 法定相続情報一覧図は無料。1枚で戸籍の束の代わりになります
  • 相続放棄を考えるなら、預金を動かす前に確認を

銀行の手続きは、書類の多さで気が重くなりがちです。けれども、順番さえ守れば必ず前に進みます。まずは通帳を開いて、その口座から何が引き落とされているかを確かめてください。次に金融機関へ電話して、必要書類を聞く。集める書類が多いようなら、法定相続情報一覧図を作ることを検討する。この3つで、道筋が見えてきます。

本記事は、公的機関および金融関係の団体が公表している情報をもとに、一般的な進め方として整理したものです。必要とされる書類や取り扱いは金融機関ごとに異なり、制度も改正されることがあります。実際の手続きの前に、お取引先の金融機関および各機関の公式の案内でご確認ください。本記事は個別の法律相談・税務相談ではありません。ご事情に応じた具体的な判断や書類の作成は、弁護士・司法書士・税理士などの専門家、または各窓口にご相談ください。

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