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エンゼルケアとは、遺体を清潔にしたり容姿を整えたりする死後処置のことをいいます。
ご遺体に行う処置ということで怖いと思うかもしれませんが、実はエンゼルケアにはとても大切な3つの目的があります。
エンゼルケアに関する由来や、資格は必要なのかといった様々な疑問についてわかりやすく解説していきますので、是非ご覧ください。
▼この記事を読んで理解できること ・エンゼルケアって何?由来や目的について ・エンゼルケアは誰がやるの? ・エンゼルケアの手順や流れ ・エンゼルケアの料金相場 など |
目次
エンゼルケアとは
まずエンゼルケアとは何なのか、意義を調べてみるとウィキペディア(Wikipedia)には以下のように記述されています。
エンゼルケア(After Death Care、End of Life Care)とは、死後に行う処置、保清、エンゼルメイクなどの全ての死後ケアのことで、逝去時ケアとも呼ばれる。病院であれば、患者が亡くなった後、お見送りするまでを含めていう。
簡単にいうと、遺体を綺麗にするために行う死後の処置全般のことをエンゼルケアといいます。
耳や鼻などに穴詰めを行ない、ご遺体の身体を拭いて清潔にしたり、お化粧をして表情を整えたりします。
基本的に、故人が亡くなってから納棺されるまでの間に行われます。
ちなみに間違えられやすいですが「エンジェルケア」ではなく「エンゼルケア」です。
「エンジェルケア」は英語で新生児ケアの意味となり、別物の意味となるので注意しましょう。
エンゼルケアを英語では(After Death Care)や(End of Life Care)といいます。
また、エンゼルケアは別名「死後処理」や「逝去時ケア」と呼ばれたりもします。
エンゼルケアの由来や歴史
実は遺体を綺麗にするという行為は日本ではかなり昔から行われてきました。
かつては人が亡くなったら、家族や近親者が遺体を入浴させて身体を清めていました。
これを湯灌(ゆかん)といいます。
元々、この湯灌は仏教の儀式のひとつでした。
現代では病院で最期を迎えることが多くなったことで、死後処置は看護師が行ってくれるのが一般化しました。
死後処置を病院で行われるということで、今までの儀式的なものから医療的な仕事へと変わっていき『エンゼルケア』という言葉が生まれたそうです。
エンゼルケアが広まったことにより、現在はあまり湯灌が行われなくなりました。
湯灌を希望される場合は、葬儀屋など専門の業者へ依頼することで可能です。
湯灌の費用は業者にもよりますが、だいたい10万円前後で行えます。
エンゼルケアの目的
エンゼルケアを行う目的は大きく分けて以下の三つです。
・故人の尊厳を守るため
・遺族ケアのため
・感染症予防のため
ひとつずつ説明していきます。
故人の尊厳を守るため
病院で亡くなった場合、それまでの治療により遺体に点滴や胃ろうチューブが刺さっている場合が多くあります。
また、闘病により長い期間お風呂に入れなかったなどの事情で着衣や身体が汚れてしまっていることがあります。
そういった姿のまま人生最期のときを迎えて、家族や親族の前に姿を見せるのは自分だったら嫌ですよね?
人生の最期をその人らしくいられるように身なりを整え、故人の尊厳を守るためにエンゼルケアは行われます。
「胃ろう」とは?
食事を口から取ることが困難になった人が、栄養を摂取するために行う医療処置です。
おなかに小さな口を作り、チューブなどを用いて胃へ直接栄養を送ります。
遺族ケアのため
故人の闘病生活が長かったりする場合、頬がこけていたり黄疸といって皮膚が黄色く変色してしまっていたりする場合があります。
生前と変わり果てた姿を見るのは遺族にとってはつらいことです。
小さい子供などは怖いと感じてしまい、トラウマとなってしまうおそれもあります。
そのため、エンゼルケアでは故人を生前時のような姿に整えてあげることで遺族の心のケアをする目的もあります。
また、ご家族の方が看護師と一緒にエンゼルケアをする場合もあります。
これは「最期に自分達でケアをしてあげられた」とご家族の方が感じて「故人の死を受け入れるきっかけ」になるようにという目的があるそうです。
出典:緩和ケア病棟
アンケートによると、エンゼルケアへの参加率は亡くなられた方のお子さんが参加するケースが一番多いです。
参加者が女性の場合はお化粧などの整容、男性の場合は髭剃りなどのお手伝いをメインで行います。
エンゼルケアの参加は、看護師から声かけをしてくれる場合が多いです。
感染症予防のため
亡くなった直後の遺体には感染症のリスクがあります。
ですが、もしもご自身の大切な方が亡くなったときに感染症のおそれがあるからと、ご遺体に会えずにお別れをするなんてなったら悲しいですよね。
そのため、エンゼルケアでは口腔ケア(こうくうケア)といって口の中や顎まわりを消毒したり、鼻腔や挿入物が入っていた部位などに詰め物をします。
そういった作業で体液や血液などが漏れないようにして、感染症を防ぐという目的もエンゼルケアにはあります。
エンゼルケアは誰がやるのか
エンゼルケアの由来の項目で説明したように、現代のエンゼルケアでは看護師の方が行うのが一般的です。
これは、現代の日本では病院で亡くなる方が多いという理由からです。
ですが、病院によってはエンゼルケアを行っていない病院もあります。
また、エンゼルケアは故人が亡くなってから納棺されるまでの間に行われます。
そのため、病院以外で亡くなった場合はほかの方がエンゼルケアを行う場合もあります。
それでは結局、誰がエンゼルケアを行うのかというと主に以下の人達が行います。
・看護師(看護助手)
・医者
・葬儀業者
・納棺師
・介護職員
・訪問看護師
・故人のご家族
色々なケースがありますが、基本的には故人が亡くなった場所によってエンゼルケアをする人が変わってきます。
病院で亡くなった場合
病院で亡くなった場合は基本的に看護師がエンゼルケアを行ってくれます。
施設によってはお医者さんがエンゼルケアを行う病棟もあるようで、実は特定のルールはありません。
また、病院でエンゼルケアは行っておらず葬儀屋や専門業者などに依頼しているところもあります。
その場合は納棺師や葬儀業者がエンゼルケアを行います。
▼「納棺師」とは?
納棺師とは、その名の通り「納棺(のうかん)」をするプロの方です。
映画『おくりびと』で存在が有名となりましたが、死者を棺に納めるために必要な作業を行ってくれます。
納棺については以下の記事で説明しているので、興味がある方はこちらもご覧ください。
納棺師についても更に詳しく書かれています。
介護施設で亡くなった場合
亡くなった方が直前まで老人ホームなどの介護施設に入居しているケースです。
入居者が病状の改善が見込まれなかったり、延命治療のような医療行為を行わない場合、介護施設では看取り介護をしてくれる施設があります。
介護施設で看取ってもらい人生の最期を迎える場合、エンゼルケアは介護職員が行ってくれることが多いです。
看護師と一緒に行ったり、葬儀屋などの専門業者を呼んで一緒にエンゼルケアを行ってくれる施設などもあるようです。
▼「看取り」とは?
「看取り」とは、患者や要介護者などに対して行われる看護や介護のことです。
無理な延命治療は行わず、自然な形で最期を迎えられるように見守ることを「看取り」や、「看取り介護」「看取りケア」といいます。
ちなみに看取りは介護中心の意味合いですが、医療が中心の場合は「ターミナルケア」といいます。
看取りに関しては以下の記事で詳しく説明しているので、興味がある方はこちらもご覧ください。
自宅で亡くなった場合
自宅で亡くなった場合は、葬儀業者や専門業者に頼んでエンゼルケアをして貰うことが多いです。
ほかには、在宅医療などにより訪問看護を受けている場合、訪問看護師がエンゼルケアをしてくれるケースもあります。
また、ご家族でエンゼルケアをするという手もあります。
実際に大切なご家族の最期のときを、自分達の手で綺麗にしてあげたいと考えている方は多くいます。
エンゼルケアって資格は必要?
そう思う方もいるかもしれませんが、エンゼルケアは医療行為にあたらないので法律的に何も問題はありません。
ただし、そうは言っても
・医療器材を外す
・排泄物を排出したり身体の消毒をする
・開口への対応
上記のような処置は知識や技術が要ることですので、訪問看護師や病院のスタッフに行ってもらう必要があるでしょう。
それ以外の、身体を清潔にして着替えさせてあげたり、お化粧をして容姿を整えてあげるといった処置をご家族の手だけで行うことは可能です。
ご家族の手でエンゼルケアを行うための必要物品がまとめられている、エンゼルケアセットやキットも販売しています。
また、在宅時に自分達でエンゼルケアをするためのセミナーや研修なども各所で実施されています。
興味がある方は参加してみてもよいかと思います。
エンゼルケアのエピソード
エンゼルケアとはどういったものかは何となくわかって頂けたかと思います。
ここではちょっと趣向を変えて、エンゼルケアのエピソードをひとつご紹介します。
現役の看護師が立ち会った、印象的なエンゼルケアのシーンです。
これまでで一番印象的だったのは最後のお化粧を二人の娘さんが
「お母さんは頬紅は濃いめよね」「口紅はこっちの色のほうが好みだったわ」
「そうそうこんな感じよ」
などど会話しながら一生懸命にされていたケースですね
私もこんな風に送ってほしい ととてもうらやましく思いました処置にあたった時は「ご苦労様でした きれいにして皆さんにお会いしましょうね」って心の中で話しかけてます
ちょっと想像つきにくいかとは思いますが、とても厳粛で大切なケアですよ出典:yahoo知恵袋
亡くなった方が娘さんに愛されていたというのが伝わりますし、最期のときまで大切に想われて見送られたのがよくわかります。
看護師の感想と同じく、どこか羨ましくも思います。
エンゼルケアに対して怖いといったイメージを持たれる方も多いのですが、故人に対して何かをしてあげられる最後の場でもあります。
エンゼルケアの参加に関しては、看護師から声掛けしてくれる場合が多いです。
もしも今後そういった機会がありましたら、参加を考えてみてはいかがでしょうか。
エンゼルケアの手順、流れ
それでは、実際にエンゼルケアはどのようなことをやるのかを説明していきます。
エンゼルケアなどの死後処置について、海外ではマニュアル化されている国もあります。
ですが、現在(2019年)の日本においては法整備がされているわけではありません。
そのため、病院の方針やご家族の希望などにより手順には差があります。
ここでは、一般的に多い作業の順番を記載しましたので参考にしてください。
▼エンゼルケアの手順、流れ
1.医療器具を取る
2.傷口の処置
3.排泄物の処置
4.口腔ケア
5.穴詰め
6.清拭
7.着替える
8.化粧(エンゼルメイク)や整髪を行う
順を追って説明していきます。
医療器具を取る
まずは点滴の管や、PEG(胃ろうにチューブを入れる手術)のチューブなど、身体に挿入されている医療器具を全て取り外します。
ペースメーカーは火葬場で爆発を引き起こしますので必ず取ります。
また、身体から漏液してしまった体液などの吸引除去も行います。
血液などで遺体の衣服が汚れないように気をつけながら医療器具を全て取り外します。
傷口の処置
外傷部分の処置をします。
医療器具を外した部分から出血したりする場合があります。
そういった出血を絆創膏や包帯を用いて止血したり、傷に含まれる膿を消毒液で消毒をしたりします。
気管切開した場所は、青梅綿やガーゼを詰めたりして縫合します。
排泄物の処置
胃の中に残っているものや、排泄物を身体から取り出します。
また、遺体を搬送するときの振動を考慮して紙おむつを履かせたりもします。
口腔ケア
口腔ケアは腐敗の抑制や防止、口臭の除去のために行われます。
口の中や顎まわりを消毒したり、口や鼻に消毒液を染み込ませたガーゼを入れたりします。
顎は死後硬直が最初に現れるので、場合によっては一番最初に行う場合もあります。
穴詰め
耳や鼻腔、膣、肛門などの腔部に詰め物をしていきます。
死後の身体は色々な機能が停止しているので、体液が流出してしまいます。
そのため、清らかな身体を保つために口腔ケアや穴詰めが必要となります。
ただし、最近は詰め物をしないケースも増えているそうです。
なぜ詰め物をしないかというと、穴詰めでは体液流出防止の効果は薄いといわれているからです。
そのため、詰め物をせずに保冷剤を用いて冷却したり、セーフティセットアプリケーターといった器具を用いて専用ゼリーを注入し漏出を防止したりする場合もあります。
最新のエンゼルケアとは
死後処置が看護技術として認められたのは比較的最近の出来事です。
そのため、エンゼルケアの手順や工程は、今も研究や見直しが進んでいます。
▼エンゼルケアにおいて、見直しが考えらている項目一覧
・鼻の詰め物の有無
・腹部圧迫しての排便排出について
・お化粧の仕方
・顎バンドなどの装着の有無
・手を組むか組まないか
・腕を組むか組まないか
そのため、今後この記事でご紹介している手順が大きく変わる可能性はあるかもしれません。
清拭
清拭(せいしき)とは、ぬるま湯で濡らしたタオルで全身を拭いて、肌の汚れや体液・血液などを取り除くことです。
ちなみに、このときのお湯の温度は40度程度が最適だそうです。
遺族の方が故人に触れる場合に、なるべく清らかな体で触れられるようにするために行います。
ただし、水分が肌に付着すると乾燥が進んでしまいます。
そのため、清拭後は油分の含んだクリームなどを塗って保湿してあげたりもします。
また、頭髪の汚れが気になる場合はこのときにドライシャンプーや洗髪をします。
着替える
ご遺体には白装束や着物、浴衣などを着せます。(故人の好きだった服に着替える場合もあります)
着替えるときの注意点として以下の三つがあります。
・襟は左前に着せる
・結び方は縦結び
・帯は結ばない
「襟は左前に着せる」「縦結び」は、死者であることを表すためです。
「帯を結ばない」のは、ご遺体はお家に帰った後に腐敗抑制のためドライアイスを腹部に入れます。
そのときに、帯を結んでいると冷却効果が薄くなってしまう可能性があるからです。
また、宗教によって手の組み方や細かい点に違いがある場合があります。
そのため、宗旨に配慮して腕はおろしておくことが多いです。
化粧(エンゼルメイク)や整髪を行う
髪の毛をくしで整えて、お化粧をして顔色を良く見せたりなどで容姿を整えます。
このときの化粧のことを「エンゼルメイク」といいます。
また、他の言い方で「死化粧(しにげしょう)」ともいいます。
お化粧方法は通常のお化粧と大きく変わりはありません。
男女ともに、まずはクレンジングや乳液で手入れをしてあげます。
▼女性の場合
下地の次にファンデーションを塗り、パウダーで肌の明るさを整えます。
その後に血色がよく見えるよう、チークを入れたり口紅をさしたりしてメイクアップします。
爪の色も変わるので、ラストネイルを施すことも多いです。
使用する化粧品は専用のものでも、薬局などで買えるようなものでも問題はありません。
▼男性の場合
男性の場合でも顔色を良くするためにメイクは行います。
肌の色を整えたり、髭剃りを行います。
髭をそるときは皮膚を傷つけないように、傷油分を多く含むクリームを剃刀につけて行います。
長期間外していた入れ歯などは、再び装着しても歯茎が退化しているので合わないことが多いです。
その場合は脱脂綿などで歯のない部分を補正して整えます。
末期の水(まつごのみず)
最近では少なくなりましたが、ご臨終直後に末期の水(まつごのみず)という儀式を行う場合もあります。
末期の水とは、亡くなった人の口に水を含ませる行為です。
▼末期の水の流れ
1.脱脂綿を割りばしに巻き付ける
2.脱脂綿に水を含ませる
3.故人の唇を潤す
といった順序で行われます。
最近は病院では行われないので、自宅などに安置するときに葬儀屋から案内されて行う場合があるようです。
末期の水は「死に水」と言い換えられる場合もあります。
「死者の命が甦るように」「来世で乾きに苦しまないように」という願いを込めて行われる仏教の儀礼です。
※浄土真宗では死後の世界で故人が苦しむという概念がないため、末期の水は行いません。
エンゼルケアの手順を動画で見る
エンゼルケアの手順を説明してきました。
文書だとわかりにくいと思いますので、動画で手順を確認していきましょう。
1.「着衣とクーリング」
着物の着せ方や帯の結び方、靴下の履かせ方など。
また、ドライアイスを腹部に入れて身体を冷やすクーリングの仕方などがわかります。
クーリングが必要なときは、室温を下げて温めないように気をつけましょう。
2.「口腔内ケア」
口の中や顎まわりを消毒する方法や、その後の口の閉じ方などが動画でわかります。
3.「エンゼルメイク」
髪の毛を整えたり、お化粧をして容姿を整えるエンゼルメイクが動画でわかります。
エンゼルケアの豆知識「妊婦さんはエンゼルケアに参加しないほうがよい」といった話があります。
これは亡くなった方が寂しくて赤ちゃんを連れて行ってしまうからという、昔ながらの迷信が原因です。
勿論、科学的な根拠は何もありません。
一説によるとお腹に鏡を入れておけば大丈夫といった話もあり、妊娠中のナースなどはお腹に鏡を入れてエンゼルケアをする方もいるようです。
ほかにもこういった迷信は
・火事を見るとあざがある子が生まれるので火事場には近寄らない
・お通夜や葬式のときはお腹に外向けに鏡を入れる
といったものがあります。
こういった、妊娠に関する迷信や噂話は意外とたくさんあります。
だいたいが根拠がないものとなりますが、気になる方は色々調べてみても面白いかもしれません。
エンゼルケアの料金、費用の相場
ここでは、エンゼルケアの料金相場について説明します。
まず、エンゼルケアは病院でやってもらうのか、葬儀会社に依頼するのかで費用は変わってきます。
施設ごとでも料金に違いはありますが、平均としては以下の表くらいの金額となります。
病院 | 5,000円~15,000円 |
訪問介護 | 10,000円~20,000円 |
葬儀屋 | エンゼルケア:30,000円~ 湯灌:10万円~ |
エンゼルケアを病院で行う場合は、1万円前後が一番多いようです。
エンゼルケアの最後、着替えるときに使う「浴衣」や「白装束」などの衣装に別途料金が必要な場合もあります。
病院によっては無料で行ってくれる場所もあります。
葬儀屋さんに頼む場合は、内容によって料金が変わります。
一般的なエンゼルケアの場合は2~3万円前後が相場のようですが、湯灌をしてもらうとなると費用が上がります。
遺体の拭き取りや着替えが中心の「古式湯灌」の場合は6万円前後。
浴槽やシャワーを用いて、お清めをした後に着替えたりする「湯灌」の場合は10万円~が相場となっています。
エンゼルケアを頼む場合は、医療機関や葬儀屋側にどういったことをしてもらいたいのか、要望をしっかり伝えた上で料金の確認を行いましょう。
エンゼルケアの保険適用について
エンゼルケアは治療行為ではありませんので、医療費控除がされません。
保険適用外となっており、保険点数も算定されないため全額自己負担となります。
ちなみに保険適用外料金には、全て別途消費税もかかり請求されますので、こちらもご注意ください。
生活保護の受給者が利用できる「葬祭扶助制度」もエンゼルケアに対しては適用外となります。
ただし、エンゼルケアを葬儀屋でやってもらう場合は葬儀費用の中に含まれるということで、葬祭扶助制度が適用されて料金が無料となる可能性もあるそうです。
葬祭扶助制度(そうさいふじょせいど)とは?
生活保護の受給者が費用面の問題で葬儀を行えない場合、国が最低限度の葬儀を行うことができる費用面を負担してくれる制度です。
エンバーミングについて
エンゼルケアと混同されがちな言葉として「エンバーミング」があります。
どちらも故人の身体を綺麗にするという点が同じですが、それぞれで行う目的や、やることに違いがあります。
この項目では、エンゼルケアとエンバーミングの違いについて説明します。
エンバーミングとは
それではまず、エンバーミングとは何なのかを説明します。
エンバーミングとは簡単にいうと、遺体を修復しつつ腐敗しないように長期保存するための方法です。
日本語では遺体衛生保全といいます。
これだけ読むと「それってエンゼルケアと同じでしょ?」と思うかもしれませんが、エンゼルケアとエンバーミングには明確な違いがあります。
エンゼルケアとエンバーミングの違い
エンゼルケアとエンバーミングは遺体を綺麗にするという意味で共通していますが、処置内容や行う人に違いがあります。
簡単に違いを表でまとめたので、下記をご覧ください。
項目 | エンゼルケア | エンバーミング |
誰がやるか | ・看護師や医師 ・葬儀屋や納棺師 など | ・エンバーマー |
処置内容 | ・遺体の消毒や化粧 ・遺体を綺麗にする | ・殺菌、消毒、防腐処置、修復 ・遺体の保存期間を延ばす |
資格 | ・不要 | ・必要 |
大きな違いとして、エンバーミングは行うには資格が必要です。
エンゼンルケアは看護師や葬儀屋の方など様々な人が行いますが、エンバーミングを行うのはエンバーマーと呼ばれる有資格者のみとなります。
目的にも大きな違いが!
エンゼルケアは故人の尊厳を守るためや、遺族ケアのために故人の外見を整えることが主な目的です。
そのため、お通夜から火葬が終わるまでの最短2~3日程度の期間、遺体の保存状態や外見を保つための応急処置的な要素があります。
エンバーミングは何らかの理由で葬儀ができない場合などのため、遺体の保存期間を延ばす目的もあります。
そのため、エンゼルケアと比べて遺体の保存期間が長く、火葬までを急ぐ必要がないという点も大きく違いがあります。
ちなみに、エンゼルケアとエンバーミング共に料金が全額自己負担なのは同様です。
ただしエンバーミングの料金は15万円~20万円程度と、エンゼルケアよりも料金は高く設定されています。
エンバーミングについての詳細は別記事で解説しているので、興味がある方はこちらもご覧ください。
エンゼルケアとグリーフケアの違い
エンゼルケアに混同されがちなものはほかに「グリーフケア」という言葉があります。
結論からいうと「エンゼルケアはグリーフケアの一環」です。
グリーフケアとは、身近な人との死別で悲観に暮れている人が悲しみから立ち直れるように支援することをいいます。
「エンゼルケアの目的」の項目でも説明しましたが、エンゼルケアは遺族の心のケアをする目的もあります。
これはグリーフケアの「大切な人を失ったときの悲しみから立ち直れるように支援すること」に直結します。
そのため、エンゼルケアとグリーフケアは別物ではなく「エンゼルケアはグリーフケアの一環である」といえるでしょう。
エンゼルケアの資格について
これまで何度か説明しましたが、エンゼルケアを行うために資格は必要ありません。
ですが、エンゼルケアに関する資格は存在します。
何を言っているんだと思ったかもしれませんが、詳しく説明していきます。
遺体感染管理士
エンゼルケアに関する資格として、遺体感染管理士という資格があります。
遺体感染管理士とは、簡単にいうと遺体からの感染予防の専門家となるための資格です。
有限会社エル・プランナーが付与する死後ケアの認定資格で、死後処置に携わる看護師や助産師、介護福祉士などの方を対象に作られています。
遺体感染管理士は民間資格ですし、この資格を持っていなければエンゼルケアをやってはいけないというわけではありません。
ですが、保持している方はより深くエンゼルケアに対して知識があると言ってもよいでしょう。
講習会や研修、セミナーなども開催
エンゼルケアに関しての講習会や研修、セミナーなども各所で定期的に開催しています。
基本的には看護師や介護士さんなど、普段から死後処置に携わる可能性が高い方に向けたものが多いです。
例えば、エンゼルメイク・アカデミアというイベントは毎年、東京都と大阪府で開催されています。
ほかにも、日総研という看護や介護の教育研修を行っている会社や、エムハンクといった会社が定期的にエンゼルケアのセミナーを開催しています。
個人向けのセミナーも数は多くないですが不定期で開催しています。
認定看護師といった、特定分野に詳しい看護師などが開催しています。
エンゼルケアのセミナーや勉強会などに興味がある方は、一度参加してみてもよいかもしれません。
また、エンゼルケアに関する本を読むことでも知識を深めることができます。
新生児・小児のエンゼルケアとグリーフケア |
新生児・小児のエンゼルケアとグリーフケア―限られた時間で生前の面影を蘇らせる |
【価格】 定価:4801円 |
【特徴】 新生児や小児のエンゼルケアとグリーフケアについての本です。 亡くなられたのが赤ちゃんや小さいお子さんの場合、子を亡くした親の悲しみはひときわです。 ・新生児や小児へのエンゼルケア方法 ・親御さんへのグリーフケア方法 このふたつがよくわかる、良書となっています。 基本的に看護師など医療関係者向けの本となりますが、そうでない方にもオススメです。 |
人の死というデリケートな話題だからこそ、あまり話を聞く機会も多くないと思います。
セミナーや書籍では、そういった人から聞けない知識を得ることができるでしょう。
ペットのエンゼルケア
エンゼルケアは何も人間だけのものではありません。
いまやペットも大切な家族の一員ということで、最近はペットのエンゼルケアをする方が増えています。
現代の日本では3世帯に1世帯以上が何かしらのペットを飼っているといわれています。
中でも犬と猫は不動の人気を誇るペットで、4人に1人以上が犬か猫どちらかを飼っているとのデータがあります。
お子さんを持つ家庭と同じくらいペットを持つ家庭がある現代ですので、ペットへのエンゼルケアも当然の流れなのかもしれません。
ペットのエンゼルケアの目的
ペットのエンゼルケアをする目的は主に以下の理由です。
・飼い主の心のケアのため
・ペットの尊厳を守るため
人間のときと同様に、ペットの死後の変わり果てた姿を見てショックを受ける方は多いです。
最期に生前時のような姿に整えてあげることで、飼い主の心のケアをする目的でエンゼルケアは行われます。
ペットロスの対策にも!
「ペットロス」という言葉を一度は聞いたことがあると思います。
大切な家族であり子供同然のペットを失くしたときの悲しみで、日常生活にも支障が出てしまう方は少なくありません。
そういったペットロスへの対策として、ペットの最期のときに自らの手でペットを綺麗な姿にして見送ってあげることで「ペットの死を受け入れるきっかけ」になります。
また、エンゼルケアをすることで大切な家族であったペットの尊厳を保ち、きちんとお別れをすることができます。
ペットのエンゼルケアは誰がやる?
ペットのエンゼルケアは人間のときとは違い、飼い主が自らの手でやる場合が多いです。
ただし、
・悲しくて自分の手ではできない
・専門家にエンゼルケアをしてもらいたい
といった方は、動物病院やペット葬可能な霊園などでエンゼルケアを行っているので依頼するとよいでしょう。
ペットのエンゼルケア料金は施設ごとで違いはありますが、平均として以下の表くらいの金額となります。
動物病院 | 3,000円~5,000円 |
ペットシッター | 10,000円~15,000円 |
ペット葬・霊園 | 火葬等を依頼するときに一緒に行ってくれるケースが多い |
ペットが病院で亡くなった場合、エンゼルケアを無料で行ってくれる動物病院もあるようです。
ペット葬を行っている霊園では、火葬するため自宅からペットの遺体を霊園へ運ぶときにエンゼルケアをしてくれる霊園が多いです。
霊園がエンゼルケアを行ってくれるのか、どういった内容のケアを行うのかなどを事前に確認しておきましょう。
悲しいですが、愛するペットがいつか亡くなってしまうのは自然な流れです。
別れを考えるのは辛いことですが、事前に考えておくことでいざというときに大切なペットをスムーズに弔ってあげることができます。
終活.comではペットの終活についての記事も書いているので、あわせてこちらもご覧ください。
まとめ
エンゼルケアについて紹介しました。
エンゼルケアとは、簡単にいうと遺体を綺麗にするために行う死後の処置全般のことです。
エンゼルケアを行う目的は、大きく分けて以下の三つとなります。
・故人の尊厳を守るため
・遺族ケアのため
・感染症予防のため
現代のエンゼルケアは基本的には看護師が行うことが多いです。
ただし、エンゼルケアを行うには特別な資格は必要ありません。
そのため、故人が亡くなった場所やケースに応じてエンゼルケアは様々な人が行うケースがあります。
また、
・エンゼルケアは医療行為ではありません。
そのため、ご家族の手でエンゼルケアを行うことも可能です。
故人に対して何かをしてあげられる最後の場でもあるので、今後そういったシーンに直面した場合はエンゼルケアへの参加を考えてみてはいかがでしょうか。
エンゼルケアは基本的に亡くなってから火葬するまでの間、遺体の保存状態や外見を保つための処置です。
終活.comでは、この火葬についても詳しく記事を書いています。