本ページはプロモーションが含まれている場合があります。
納棺とは、遺体を棺の中に納める事ですが、納棺式または納棺の儀、納棺の儀式とも呼ばれています。
単に遺体を棺に納めるのではなく、湯灌や清拭によって故人の遺体を清めたり、死化粧を施して死装束を着せて故人があの世へと旅立つための身支度をします。
納棺は遺族が故人の死と向き合うための大切な儀式でもあります。
▼この記事を読んで理解できること ・納棺とは何か?その意味 ・納棺は何をするのか?納棺式の流れ ・納棺時のマナー ・納棺師について など |
納棺についてできる限りわかりやすく解説していますので、ぜひ最後までお読み下さい。
目次
納棺とは?
はじめに、納棺(読み方:のうかん)の意味についてウィキペディア(Wikipedia)で調べてみたところ、「納棺」としての掲載がありませんでした。
ウィキペディア(Wikipedia)では掲載がありませんが、コトバンク(デジタル大辞泉)で以下のように記述されています。
遺体を棺の中に納めること。入棺。
出典: コトバンク デジタル大辞泉の解説
納棺とは、遺体を棺(ひつぎ)の中に納める事だというのがわかります。
納棺の別の言い方として「入棺(じゅかん)」とも言います。
※地域によっては「にっかん」と言う事もあります
直接的な意味としては上記の通りですが、納棺はとても奥深い意味が込められている言葉でもあります。
「どんな意味が込められているのか?」次の項目を通してぜひ知って頂ければと思います。
「納棺」英語では?
placing of body in coffin(プレイシング オブ ボディ イン コーフィン)
訳すと「棺の中に体を置く」となるので、意味合いとしては近いのではないかと思われます
ほか、place a person’s body in a coffin(プレイス ア パーソンズ ボティ イン ア コーフィン)
訳すと「人の体を棺に入れる」となります
納棺式(納棺の儀・納棺の儀式)
最初に納棺の直接的な意味について触れましたが、納棺は故人の身支度を綺麗に整えて棺へと納める儀式でもあります。
そのため、納棺する事を「納棺式」または「納棺の儀式・納棺の儀」とも言われています。
単に納棺する事が納棺式と覚えるのではなく、なぜ儀式という言葉が用いられるのか、以下のようにとても大切な意味が込められています。
納棺式に込められている大切な意味
故人の身支度を整える
「身支度を整える」というのは、故人を棺に納める際、遺体に化粧を施したり、髭を剃ったり、死装束を着せて死への旅立ちの準備を整えてあげる意味が込められています。
死と向き合うための大切な儀式
家族や近しい方の死は大きな悲しみに暮れてしまうものですが、納棺はお通夜・葬儀の前に近親者だけで故人と過ごせる大切な時間です。
納棺式を行うというのは「故人の死と向き合う」意味が込められています。
このように、納棺といってもただ単に故人の遺体を棺に納めるという事だけではなく、とても奥深い意味が込められているという事を知っておきましょう。
納棺に込められた意味を知っておく事で、故人との時間がより意味のある時間となるものだと思われます。
納棺式のタイミングはいつ?流れや手順
▼納棺式はいつ行う?タイミングは?
納棺式を行うタイミングは特に「いつ」と決まりがあるわけではありません。
タイミングに決まりはありませんが、お亡くなりになってからお通夜までの間で行われているのが一般的です。
▼納棺式の流れ
まずは全体的な流れとして、ご逝去~納棺までの流れが以下のようになります。
※ご逝去から一般的なお通夜、告別式を伴う葬儀の流れになります
ご逝去 ≪遺族がやること≫ 葬儀社へ電話連絡します ※法律により24時間は火葬する事ができないため、故人の遺体を安置する必要がある 搬送 葬儀社の方が寝台車で病院または亡くなられた場所へ迎えに来てくれます 遺体を安置するための場所へと葬儀社が搬送してくれます(自宅安置か他安置場所にて安置か選択できます) ≪遺族がやること≫ ・病院で医師に死亡診断書の発行をしてもらう ※死亡届は死亡診断書(死体検案書)と同じ用紙になっており、左半分を遺族の方が記入し、右半分は医師による署名、押印を行ってもらう ・自宅安置の場合、下記いずれかの市区町村の役所、役場の戸籍係または住民登録窓口にて死亡届を提出し、火葬許可証を発行してもらう ✔ 故人の本籍地 ✔ 届出人の住所地 ✔ 故人の死亡地 ※自宅安置の場合でなくとも、死亡届の提出は必要となります ※死亡届の提出、火葬許可証発行は葬儀社が代行してくれる場合もあります ※死亡届の提出は死後7日以内と決められています 安置 ご自宅での安置または安置施設や葬儀社へ安置をお願いする事になります 葬儀社へ安置をお願いした場合、葬儀社提携の遺体安置室や保冷庫にて遺体を安置してもらいます ≪遺族がやること≫ お通夜・告別式などについて、葬儀社との打ち合わせ ご自宅での自宅安置の場合、布団や枕飾り(まくらかざり)を用意します 枕飾りに関してはこちらの記事で詳しくまとめていますので、参考にして下さい 納棺(納棺式) 遺体を安置している場所で納棺(納棺式)が行われます ≪遺族がやること≫ ・故人の身支度を整えて副葬品を棺に納める |
ご逝去から納棺までの流れとしてはこのようになります。
次に、納棺がどのような流れや手順で行われるものなのか?
「故人の身支度を整えて副葬品を棺に納める」この部分を掘り下げていきます。
▼納棺式は誰が行う?
遺族、葬儀社の方、湯灌師(ゆかんし)、納棺師(のうかんし)
※湯灌師、納棺師についてはこの後それぞれ解説しています
▼どこで行う?
ご自宅や葬儀式場
▼かかる時間
およそ30分~1時間程
▼すること
納棺式ですること、つまり納棺の工程は以下のような流れになります。
※仏式の一般的な納棺式の流れです
1.末期の水(まつごのみず) |
2.湯灌(ゆかん) |
3.死化粧(しにげしょう) |
4.死装束(しにしょうぞく)を着せる |
5.副葬品を入れる |
仏式の一般的な納棺式の流れとしては、5つの工程で行われています。
では、各工程ごとにそれぞれ解説していきます。
末期の水(まつごのみず)
末期の水(まつごのみず)とは、故人があの世で渇きに苦しまないようにという意味と願いを込めた風習になります。
遺族(配偶者や親族、友人知人も可)が、故人の唇を軽く湿らせる事で、末期の水は「死に水(しにみず)」とも言います。
やり方は、茶碗に水を用意して、割り箸の先に綺麗な状態の脱脂綿やガーゼを挟み、水を含ませて故人の唇を潤します。
末期の水を行う順番は、故人と関係が深かった順に行います。
湯灌(ゆかん)
湯灌とは、納棺する前に遺体をお風呂(ぬるま湯)に入れる事です。
湯灌には「この世での汚れを全て落とし、綺麗な身体で来世へ」という意味があり、湯灌の儀(ゆかんのぎ)とも言われています。
お湯に入れる事で死体硬直がほぐれ、遺体を棺に納めやすくするという意味もあるようです。
湯灌は、お湯に遺体を入れるものですが、入浴させずに遺体をアルコールやお湯で拭く事で湯灌の替わりとしているケースもあります。
お湯には入れずに丁寧に遺体全体を拭く事を清拭(せいしき)と言います。
かつては遺体の湯灌が遺族によって行われていましたが、病院で最期を迎える事が多くなってきた現在では、看護師が死後措置の一環として清拭を行う事が通例となっています。
そうした流れもあってか、最近では遺体を入浴させた状態で清める湯灌よりも、代わりに清拭を行うケースが多くなっているようです。
湯灌の代わりに清拭を行う事が、遺体を清める・綺麗にするという役割を担っているという事になります。
湯灌の費用
納棺する際、湯灌を行うか清拭を行うかは葬儀社によって変わってきます。
湯灌を希望する場合は葬儀社や専門業者へ依頼する事になりますが、費用相場は大体10万円前後だと言われています。
ちなみに納棺と湯灌の違いについて気にされる方もいらっしゃるようですが、これまで触れてきたように納棺と湯灌はそれぞれ意味が違います。
納棺は遺体を棺の中に納める事であり、湯灌は納棺する前に遺体をお風呂(ぬるま湯)に入れて故人の身を清める意味があるものです。
遺体の湯灌、清拭は一般的には葬儀社の担当の方、または湯灌師(ゆかんし)や納棺師(のうかんし)といった職業の方によって行われますが、遺族の方も行ったりする事もあるようです。
湯灌師とは?
遺体(故人)を入浴させ、洗顔や洗浄を施す湯灌作業を専門としている職業の事。
※納棺作業を専門としている職業の場合は納棺師
納棺師に関しては、このあとの「納棺師について」にて解説しています。
死化粧(しにげしょう)
死化粧とは、故人が男性の場合は髭を剃って綺麗に、女性の場合は薄化粧や口紅が施される事を言います。
遺体の髪を整えたり化粧する事は、弔問客に対して『故人が生前と同じような表情で対面する事ができるようにしてあげる』という意味があります。
死化粧の際、爪を切ったりもしますが、地域や病院によっては故人に刃物を向ける事を嫌う場合があるようです。
また、病院によっては死化粧をしないところもあるので、その場合は納棺の前までに遺族の方々で行うか、葬儀社に依頼するようにしましょう。
死装束(しにしょうぞく)を着せる
死装束とは納棺の際、故人に着せる着物の事を言います。
かつては遺族の方々によって縫って作られていましたが、現在では葬儀社で用意されている死装束を着せるようになっています。
地域や宗教、宗派によって様々な考え方がありますが、ほとんどは仏式の習慣で死装束が用意されています。
死装束は仏式において「故人が死への旅または巡礼する」という意味があり、巡礼者や修行僧の衣装が白色の着物である事から白装束(しろしょうぞく)とも呼ばれます。
※仏式の中でも浄土真宗では「死後は浄土の旅に出ずにすぐ成仏する」という考えがあるため、死装束を着せる事はないとされています
近年では葬儀の多様化もあってか、死装束は故人が愛用していた洋服や着物を着せ、必ずしも白装束ではなくなってきているケースもみられます。
神式(神道)やキリスト教の納棺 神式やキリスト教の納棺は、仏式とは異なる点がいくつかあります。 ▼神式の場合 仏式における死装束は、神式では「神衣」と呼ばれる衣装を着せ、「宮司」の方と一緒に行うのが通例です。 ▼キリスト教の場合 「牧師」が立会って納棺式を行います。 遺体に白い布をかけ、その周りを白い花で埋めてから棺の蓋をします。 祭壇には十字架やロウソク、遺影を置いて、両脇に白い花など飾ります。 ※カトリックとプロテスタントで少し異なる場合もあります |
副葬品(ふくそうひん)を入れる
故人が生前好きだったもの・愛用品(遺品)などを棺の中に入れますが、これを副葬品(ふくそうひん)と言います。
副葬品にはどんなものを入れても大丈夫なのか?どんなものを入れるのがNGになるのか?
以下、それぞれ一覧にまとめています。
副葬品として棺に入れられるもの | ||
お花 | 手紙や寄せ書き | 故人の写真 |
お守り | 故人が気に入っていた洋服(燃えやすい衣類) | タバコ |
お菓子類 | 故人の思い入れがあるもの(人形やフィギュアなど)※1 | 朱印、御朱印帳 |
棺に入れてはいけないもの | ||
ビン、缶などの飲み物(紙パックはOK) | 辞書、辞典など分厚い本類(書籍や厚みのあるアルバム) | 生きている方が写った写真 |
お金(硬貨、紙幣とも現金はNG)※2 | メガネ、サングラス | 入れ歯 |
アクセサリー(腕時計、指輪など) | ゴルフクラブ | 釣竿 |
革製品※1 | ビニール製品※1 | プラスチック製品※1 |
ポリエステル製品※1 | ゴム製品※1 | 発砲スチロール |
ガラス製品 | 金属製品※1 | 大きなぬいぐるみ |
原則として、副葬品は燃えるもの(可燃物)のみとなっています。
※1…故人の思い入れのある人形やフィギュアは、ビニールやゴムなどで出来ている場合がほとんどだと思われますが、入れる場合は葬儀社の担当者に確認下さい。
※2…お金(硬貨、紙幣)は基本的に入れてはいけないものとされていますが、北海道や東北の一部地域では、お守り袋などに硬貨(十円玉)を棺に入れる火葬の風習もあるようです。
その場合には葬儀社の担当の方や年配の方の指示を仰ぐようにするのがよいと思います。
基本的にお金がNGな理由とされているのは、現金を燃やす行為が違法(貨幣損傷等取締法)にあたるためです。
飲み物に関してですが、「故人がお酒が好きだったので」という理由で一升瓶や缶ビール等を入れるのは、燃えないためNGとなります。
結婚指輪など、思い入れや思い出のあるものだとは思いますが、副葬品として棺に入れるのはNGとなります。
※アクセサリー類に関しては火葬後に骨壷へ納める形であれば問題ないため、結婚指輪はその際に納められます
そのほか、ペースメーカーなどが故人の体の中に入っている場合、必ず葬儀社の方に確認するようにしましょう(火葬時に熱による爆発の懸念があるため)。
故人の歯に金歯がある場合、火葬後に火葬場側で回収されるが一般的なようですが、希望すれば遺族が持ち帰る事ができます。
納棺式のマナー
納棺式とは儀式でもあるので、服装や所作などマナーについて気になる方もいらっしゃるかと思います。
納棺に立ち会う事になったけど服装は何を着ればいいのか?
施主として、どこまで呼ぶべきなのか?
など、疑問に思われがちな主な点について解説します。
▼納棺式の服装
納棺式での服装についてですが、先に結論を言うと地域によって違いがあります。
身内だけで、友人知人が参列しない親族だけで行う場合など普段の私服で納棺を行うケースもあるようです。
ほか、自宅で行う場合は私服(平服)でも問題ないとされていたり、葬儀式場、セレモニーホールなどで行う場合は喪服を着用するという暗黙の了解のような節もあります。
そういった事も踏まえて、間違いがないと言えるのが喪服です。
地域性はありますが、喪服を着用すれば、おかしいという事もありませんし、間違いないと言えます。
▼納棺式に必要なもの
必要な持ち物としては特にありませんが、故人の遺族の場合、故人の愛用品など、副葬品として棺に入れるものを用意するのが一般的です。
▼納棺式の参加者(参列者)には誰を呼ぶ?
直系親族のみというケースもあれば、故人の家族、遺族のほか、故人と関係が深かった方が呼ばれるケースもあります
故人と親しくしていた友人知人なども参列する事もありますので、一概に「この範囲までが正解」とは言い切れないところがあります。
▼納棺式での喪主の挨拶について
納棺式では特に喪主が挨拶するタイミングはなく、火葬場または火葬施設へ移動する出棺(しゅっかん)の際、出棺時の挨拶として行われるのが一般的です。
お酒、お豆腐、縄を用いる納棺式の地域性
地域によっては、お酒とお豆腐を納棺式の前に遺族の方々で召し上がるという形もあります。
お酒を飲む意味合いは、お清めのためで、お豆腐については「畑からできた白いものを食べることで納棺式やお通夜(通夜式)、葬式をのりきるために食べる」など諸説あります(昔は農家が多かったから?)。
そのほか、親族や親しい方々がお酒を口に含み、故人に吹きかけるという事を納棺時に行っているところもあるようです。
※かつては、殺菌や消毒のために行っていたところがあり、その名残りだと思われます
また、納棺式に立ち会った全員に縄を配り、その縄を腰に巻いたり、たすき掛けにするという地域もあるようです。
納棺師について
納棺師(のうかんし)とは、一言でいうと「納棺のプロフェッショナル」です。
納棺作業を専門とする職業ですが、具体的には「遺体と直接向かい合う仕事であり、故人の身支度を整え、あの世へと送り出す人」が納棺師だと言えます。
2008年に公開された映画「おくりびと」のヒットによって、納棺師という職業の認知度が上がったのではないかと思われます。
納棺師は、特別な資格を必要とせず、性別や年齢も障害にならない職業で、先に少し触れた湯灌師についても同じ事が言えます。
▼納棺師になるためには?
納棺師になるためには、どうすればいいのか?
まだまだどうしたら納棺師になれるのかご存知でない方のほうが多いと思います。
納棺師になるためには、現在では主に以下の選択肢があります。
・葬儀関連のコースがある専門学校へ進学する
・葬儀会社に入社する
・湯灌や納棺の専門業者へ就職する
ほか、納棺師として活躍される木村光希さんが代表を務める「おくりびとアカデミー」も、納棺師を養成するコースがあります。
ちなみに木村光希さんの父親、木村眞二さんは映画「おくりびと」で納棺の所作などの指導にあたった方だそうで、光希さんも一緒に技術指導を行われていたようです。
納棺自体には特別な資格は必要ないため、葬儀社のスタッフが納棺作業にあたるケースも多いです。
葬儀社のスタッフの方で、納棺に関する知識をしっかりと学んで、実際に納棺作業の経験が豊富な方もいらっしゃいます。
また、ご逝去されてから納棺するまでの間、病院がどこまで受け持ってくれるのかによって、納棺師の役割も変わってくる事になります。
⇒ 一般的には病院で亡くなられるケースが多いため、看護師の方が死亡措置の一環で清拭を行ったりする場合など。
まとめ
遺体を棺に納める儀式、納棺について紹介しました。
宗教や地域によって若干違いなどもありますが、納棺に込められた意味をしっかりと知る事で、故人と遺族が向き合う時間として重要な役割があるという事がわかって頂けたかと思います。
最後に、この記事の要点をまとめたものが以下になりますので、おさらいとしてご覧下さい。
この記事では納棺について紹介しましたが、合わせて「出棺(しゅっかん)」についても終活.comではわかりやすくまとめています。
納棺と会わせてぜひご覧頂ければと思います。