お墓はいらないと思ったら|決める前の確認と家族への伝え方

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お墓はいらない。そう考える人は年々増えています。ただ、この言葉には2つの意味が混ざっています。「墓石を建てない」と「遺骨の行き先を決めない」です。前者は選べますが、後者は選べません。遺骨は必ずどこかに行きます。この記事は、決める前に確認すべきことを整理し、そのうえで家族と親族にどう伝えるかまでをまとめたものです。

この記事の結論

  • 墓石は建てなくてよい。ただし遺骨の行き先は必ず決まる。決めないと家族が決める
  • 「いらない」と思う理由は3つ。費用・継ぐ人・供養の形。理由で答えが変わる
  • 焼骨を埋めてよい場所は法律で限られている。庭に埋めることはできない
  • すでに墓がある場合はまったく別の話。手続きと親族の同意が要る
  • 墓を守る立場(祭祀承継者)は相続とは別。相続放棄しても関係する

この記事でわかること

  1. 「お墓はいらない」で本当に困ること
  2. 理由別(費用・継ぐ人・供養)の答え
  3. 法律上できること・できないこと
  4. 決める前に確認する10項目
  5. すでにお墓がある場合の手続き
  6. 祭祀承継者という立場
  7. 家族・親族への伝え方と文例
  8. 決めなかった場合に起きること

本当に困るのは、遺骨の行き先

「お墓はいらない」と決めても、火葬は行われ、遺骨は残ります。そして遺骨は、誰かがどこかに納めなければなりません。

決めたことまだ決まっていないこと
墓石を建てない遺骨をどこに納めるか
費用をかけない誰が手続きをするか
子どもに負担をかけない命日にどうするか
先祖の墓には入らない先祖の墓を誰がどうするか

決めないと、家族が決めることになります

本人が「いらない」としか言い残していない場合、家族は何もしないわけにいかず、判断を迫られます。そして急いでいる状況では、費用のかかる無難な選択をしがちです。「いらない」と思っているなら、その代わりに何をするかまで決めてください。

「いらない」と思う3つの理由

まず、自分がどの理由なのかをはっきりさせてください。理由によって、答えがまったく違います。

理由本当の悩み向かう先
費用が理由建てる費用と、続く管理料費用の小さい納骨先を選ぶ
継ぐ人がいないのが理由あとで無縁になること管理を任せられる形を選ぶ
供養の形が理由墓という形式そのものへの違和感形を変える。手元に置く選択もある

3つが混ざっている場合もありますが、いちばん強い理由を1つ選んでください。それによって、次の3つの章のどれを読むかが決まります。

理由1:費用が理由の場合

墓にかかる費用は、最初にかかる分とずっと続く分に分かれます。負担として重いのは後者です。

費用の種類内容続くか
永代使用料区画を使う権利に対する費用最初だけ
墓石の費用石材と工事最初だけ
管理料霊園や寺院に毎年払う続く
法要のお布施年忌ごと続く
修繕年月とともに必要になる続く

費用が理由なら、墓を諦める必要はありません

「続く費用がない形」を選べば足ります。合葬や、一定期間後に合祀される形の納骨先であれば、管理料が発生しない、または期間が限られる契約になっていることがあります。契約前に「毎年かかる費用があるか」「期間が終わるとどうなるか」の2つを書面で確認してください。

※ 費用は地域・形式・事業者によって大きく異なります。複数から書面で見積もりを取ってください。費用の全体像は終活にかかる費用は?、費用が用意できない場合はお金がない人の終活を参照してください。

理由2:継ぐ人がいないのが理由の場合

これが最も多い理由です。子がいない、遠方にいる、負担をかけたくない。

心配していること手当ての方向
誰も参れなくなる管理者が供養を続ける形を選ぶ
管理料が払われなくなる最初にまとめて払う形、または管理料のない形を選ぶ
荒れて迷惑をかける屋内の納骨先、または合葬を選ぶ
撤去の費用を負わせるそもそも撤去の必要がない形を選ぶ

継ぐ人がいないなら「管理を任せる形」があります

承継者がいなくても、寺院や霊園が管理と供養を引き受ける形があります。これも一種のお墓です。「お墓はいらない」ではなく「継がせない形の墓にする」という考え方に切り替えると、選択肢が広がります。詳しくは永代供養とは納骨堂の種類・費用を参照してください。

理由3:供養の形が理由の場合

墓という形式そのものに納得がいかない場合、無理に合わせる必要はありません。ただし残された人が手を合わせる場所を、どうするかは考えてください。

  • 遺族には拠りどころが要ることがある本人が不要でも、残る家族には場所が必要な場合があります。ここは家族に聞いてください。
  • 全部を撒いてしまうと、戻せない散骨をする場合でも、一部を手元に残す選択があります。
  • 形式は選べる屋内、樹木、海、自宅。それぞれに向き不向きがあります。

手段ごとの比較はお墓を持たない選択肢|樹木葬・散骨・手元供養の比較に詳しくまとめています。

法律上、してよいこと・いけないこと

焼骨を埋められる場所は法律で限られています

火葬したあとの遺骨を「埋める」ことができるのは、許可を受けた墓地に限られると法律で定められています。自宅の庭や、所有している山林に埋めることはできません。ここは費用や気持ちの問題ではなく、法令上の制約です。

やりたいこと一般的な扱い
墓石を建てない問題ない
許可を受けた墓地に納める問題ない
納骨堂に納める問題ない
自宅に遺骨を置いておく置くこと自体は禁じられていない
自宅の庭に埋めるできない
散骨する明文の規定がなく、条例等の確認が要る
遺骨を放置・遺棄するしてはならない

※ 取り扱いは自治体の条例等によって異なる場合があります。実際に行う前に、市区町村の窓口で必ずご確認ください。

自宅に置き続けることはできるか

遺骨を自宅に置いておくこと自体は、禁じられていません。ただしそれは「先送り」であって、決着ではありません。

いまあとで起きること
自宅で保管している保管している人が亡くなったとき、次の人が決めることになる
引き継ぐ人がいない誰も決められないまま残る
住まいを移る持って移動することになる
施設に入る施設で預かってもらえないことが多い

手元に置くなら、最終的な行き先を書き残してください

「自分が亡くなったら、この遺骨は〇〇に納めてほしい」。この一行があるかどうかで、次の世代の負担がまったく違います。手元供養は、行き先を決めたうえで選ぶものです。

散骨を考えるときの注意

  • 戻せない一度撒くと取り返しがつきません。一部を残す選択を検討してください。
  • 場所に制約がある自治体によっては条例で制限を設けている場合があります。事前に確認してください。
  • 遺骨は粉状にする必要があるそのまま撒くことは想定されていません。
  • 家族の同意を得るあとで「相談されていない」ともめる例が非常に多くあります。
  • 手を合わせる場所がなくなる残された人にとって、これが想像以上に重いことがあります。

詳しくは散骨(海洋葬)の費用・手続き・業者の選び方ガイドを参照してください。

決める前に確認する10項目

  • 遺骨の行き先を、具体的な場所として決めたか
  • その場所に、続く費用があるか確認したか
  • 期間が終わったらどうなるか、書面で確認したか
  • すでにある先祖の墓を、どうするか決めたか
  • 配偶者はどうするか、話し合ったか
  • 家族が手を合わせる場所が必要か、聞いたか
  • 親族に反対しそうな人がいるか、把握したか
  • 手続きをする人を決めたか
  • 費用を誰がどこから出すか決めたか
  • 決めたことを、書き残したか

6項目め「家族に聞く」を飛ばさないでください

本人にとっては不要でも、残された人には手を合わせる場所が必要なことがあります。「どこかに行けば会える気がする」という感覚は、想像より強く働きます。聞いたうえで決めれば、あとで責められません。

すでにお墓がある場合は、別の話です

ここからは「建てない」ではなく「たたむ」の話になります

先祖の墓がすでにある場合、「自分はいらない」だけでは済みません。その墓を誰がどうするのかという問題が残ります。放置すると、管理料の滞納や、最終的に無縁として扱われる事態につながります。

墓じまいの手続きの流れ

1親族に相談するここを飛ばすと必ずもめます。手続きより先です。
2遺骨の新しい行き先を決める先に受け入れ先を決めないと、次に進めません。
3現在の墓地の管理者に伝える寺院墓地の場合は、丁寧に事情を説明します。
4改葬の許可を取る市区町村の窓口で手続きします。書類の様式は自治体ごとに異なります。
5遺骨を取り出す閉眼供養などを行う場合があります。
6墓石を撤去して区画を返す石材店に依頼します。費用がかかります。
7新しい場所に納める受け入れ先に納骨します。

手続きと費用の詳細は墓じまいの費用・手続き・業者選びの注意点ガイドにまとめています。

墓じまいで起きやすいトラブル

トラブル防ぎ方
親族に相談せず進めた手続きより先に、必ず相談する
寺院との話し合いがこじれた事情を先に説明し、書面をやり取りする
撤去費用が想定より高かった複数の石材店から書面で見積もりを取る
受け入れ先が決まる前に動いた行き先を先に決める
誰が費用を出すかで割れた始める前に負担を決めて書面にする
他の親族の遺骨も入っていた誰の遺骨が入っているか事前に確認する

最後の行は見落とされがちです

墓の中には、本人が把握していない親族の遺骨が入っていることがあります。その方のご遺族に無断で動かすと、深刻なもめごとになります。取り出す前に、誰が納められているか確認してください。

祭祀承継者という、相続とは別の立場

ここを知らないまま話を進めると、あとで困ります。

墓や仏壇は、相続財産とは別に扱われます

お墓、仏壇、位牌などを引き継ぐ人を祭祀承継者といいます。これは預貯金や不動産を分ける相続とは、別の仕組みです。誰がなるかは、慣習、本人の指定、それでも決まらない場合は家庭裁判所の判断によるとされています。

よくある誤解実際
長男が必ず継ぐ必ずしもそうではない。指定もできる
相続を放棄すれば墓も関係ない別の仕組みなので、関係する場合がある
財産を多くもらった人が継ぐ連動しない
継ぐと必ず費用を負担する義務がある管理料などの支払いは契約による
拒否できない争いになれば家庭裁判所が判断する

本人が指定しておけます

誰に引き継いでほしいかは、本人が生前に指定できるとされています。遺言書に書いておくのが確実です。指定がないまま亡くなると、親族の話し合いに委ねられます。遺言書については終活で重要な遺言書とはを参照してください。

家族に伝えるときの順番

  • 結論から言わない。「墓のことを考えている」と切り出す
  • 理由を言う(費用か、継ぐ人か、形式か)
  • 家族に手を合わせる場所が必要かを聞く
  • 候補を2つ以上示す。1つだけだと押しつけになる
  • その場で結論を出さない。日を置く
  • 決まったら書き残し、場所を伝える

「いらない」から入らないでください

この言葉は、聞く側には「供養しなくていい」「自分は忘れられてよい」と響くことがあります。そうなると話し合いになりません。「負担をかけたくない」から入ると、同じ内容でも受け取られ方がまったく違います。

親族に伝えるときの言い方

文例1:継ぐ人がいない場合

先のことを考えていて、うちには墓を見ていく者がいません。荒れたまま置いておくほうが、ご先祖にも申し訳ないと思いまして、管理をお願いできる形に移すことを考えています。ご意見をいただけませんか。

文例2:費用が理由の場合

正直なところ、この先ずっと管理料を出していけるか不安があります。子どもに負担を残すくらいなら、いま形を変えておいたほうがよいのではと考えています。

文例3:反対されたとき

おっしゃることは分かります。すぐに決めるつもりはありません。ただ、私が動けるうちに話しておきたかったのです。もう少し考えて、また相談させてください。

反対されたときの落としどころ

反対の理由落としどころ
先祖に申し訳ない供養を続けてもらえる形を選ぶ。閉眼供養を行う
参る場所がなくなる合祀ではなく、参拝できる形を選ぶ
世間体が悪い近年は同様の選択が増えていることを伝える
自分が継いでもよいその場合の費用と手間を具体的に共有する
費用を出したくない誰がいくら負担するかを先に決める

「参れる形」にすると、反対はかなり減ります

反対の多くは、手を合わせる場所がなくなることへの抵抗です。合祀ではなく、個別に参拝できる納骨先を選ぶだけで、話がまとまることがよくあります。

配偶者と意見が違う場合

  • 同じ場所に入る必要はありませんそれぞれの希望を、それぞれ書き残せば足ります。
  • 先に亡くなったほうが決まらないと動けない片方が「いらない」、片方が「墓に入りたい」なら、両方の希望を書いておいてください。
  • 実家の墓に入るかどうかも別の問題配偶者の実家の墓に入ることは、義務ではありません。
  • 子どもに判断を丸投げしない親が割れたまま亡くなると、子が一番困ります。

決めたら、こう書き残す

文例:墓を建てない場合

私の遺骨は、〇〇(納骨先の名称と所在地)に納めてください。契約の書類は仏壇の引き出しにあります。墓石を建てる必要はありません。法要も、無理のない範囲で構いません。

文例:手元供養を選ぶ場合

しばらくは家に置いてもらって構いませんが、置いている者が動けなくなったら、〇〇に納めてください。ずっと家に置き続けなくてよいです。

文例:先祖の墓をたたむ場合

〇〇寺の墓は、私の代でたたむつもりです。遺骨は〇〇に移します。手続きは長女に頼みます。費用は私の預金から出してください。親族には私から話しています。

書く場所に注意してください

納骨先の希望はエンディングノートで足りますが、祭祀承継者を指定したい場合は遺言書に書くほうが確実です。エンディングノートには法的な効力がありません。書き方は終活ノートの書き方例を参照してください。

決めなかった場合に起きること

決めないまま亡くなると家族が直面すること
遺骨の行き先がない火葬のあと、急いで決めることになる
希望が分からない親族の意見が割れる
費用の出どころが不明誰かが立て替える
先祖の墓が残る管理料の滞納、最終的に無縁として扱われる
誰が継ぐか決まっていない話し合いがつかなければ家庭裁判所へ

「いらない」の一言だけが最も困ります

家族は何もしないわけにいきません。行き先を書いておけば、家族は迷わず、費用も抑えられます。これが「いらない」と考えている人にとって、最も効率のよい終活です。

費用をかけない選択肢の比較

参拝続く費用取り出せるか
合葬・合祀共同の場所でかからない形が多いできないことが多い
永代供養墓(個別安置)個別に参れる期間中はかかる場合あり期間中は可能な場合あり
納骨堂屋内で参れるかかる場合が多い契約による
樹木葬形式により異なる契約による形式による
散骨場所は残らないかからないできない
手元供養自宅でかからない可能

※ 内容は事業者や寺院によって大きく異なります。契約前に、続く費用の有無と、期間が終わったあとの扱いを必ず書面で確認してください。それぞれの詳細はお墓を持たない選択肢永代供養とは樹木葬とはを参照してください。

よくある質問

お墓を建てないことはできますか。
できます。ただし遺骨の行き先は必ず決まります。墓石を建てないことと、行き先を決めないことは別です。
遺骨を自宅の庭に埋めてもよいですか。
できません。焼骨を埋められる場所は、許可を受けた墓地に限られると法律で定められています。
自宅に置いておくのは違法ですか。
置くこと自体は禁じられていません。ただし、置いている人が亡くなったあとどうするかを決めておかないと、次の世代が困ります。最終的な行き先を書き残してください。
散骨はしてもよいのですか。
明文の規定がなく、節度をもって行われる限り問題ないとされていますが、自治体によっては条例で制限がある場合があります。事前に市区町村の窓口でご確認ください。
全部散骨すると後悔しますか。
一度撒くと戻せません。家族が手を合わせる場所を求めることがあるため、一部を手元や納骨先に残す選択を検討してください。
先祖のお墓がありますが、自分は入りたくありません。
入る義務はありません。自分の納骨先を別に決めて書き残してください。ただし、先祖の墓を誰がどうするかは別に決める必要があります。
相続を放棄すれば、お墓も関係なくなりますか。
なりません。墓や仏壇を引き継ぐ立場(祭祀承継者)は、相続とは別の仕組みです。相続を放棄しても関係する場合があります。
長男が必ず継がないといけませんか。
必ずしもそうではありません。本人が生前に指定することもできます。指定がなく話し合いがつかない場合は、家庭裁判所が判断するとされています。
親族に反対されました。
反対の多くは「参る場所がなくなること」への抵抗です。合祀ではなく個別に参拝できる形を選ぶと、まとまることがよくあります。すぐに結論を出さず、日を置いてください。
墓じまいの費用が出せません。
まず複数の石材店から書面で見積もりを取ってください。金額の幅が大きい分野です。費用の負担を誰がするかも、始める前に決めて書面にしてください。
配偶者と意見が違います。
同じ場所に入る必要はありません。それぞれの希望を、それぞれ書き残してください。割れたまま亡くなると、子どもが最も困ります。
結局、何を書き残せばよいですか。
3つです。遺骨をどこに納めてほしいか、その契約書類がどこにあるか、手続きを誰に頼みたいか。これだけで家族は迷いません。

まとめ

「お墓はいらない」という判断は、まったく問題ありません。ただし墓石を建てないことと、遺骨の行き先を決めないことは別です。行き先は必ず決まります。本人が決めなければ、家族が急いで決めることになります。

まず、自分の理由を1つに絞ってください。費用が理由なら「続く費用がない形」を選べば足ります。継ぐ人がいないのが理由なら「管理を任せられる形」があります。形式が理由なら、手段は複数あります。どの理由でも、墓そのものを諦める必要はありません。

すでに先祖の墓がある場合は、別の話です。手続きより先に、親族に相談してください。順番を逆にすると、必ずもめます。

そして最後に、書き残すのは3つだけです。どこに納めてほしいか。契約の書類はどこにあるか。手続きは誰に頼みたいか。「いらない」の一言だけを残すのが、家族にとっていちばん困る形です。

本記事は、編集部が公的機関の公開情報と一般的な実務の流れをもとにまとめたものです。特定の霊園・寺院・事業者の推薦や順位付けは行っていません。埋蔵・埋葬・改葬の取り扱い、散骨に関する規制は、法令および自治体の条例等によって定められており、地域によって異なる場合があります。実際に手続きを行う前に、市区町村の窓口で必ずご確認ください。費用は地域・形式・事業者によって大きく異なるため、複数から書面で見積もりを取ってください。祭祀承継者の指定や相続に関わる判断については、弁護士・司法書士などの専門家にご相談ください。

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