おひとりさまの終活|倒れたとき誰が気づくかを決める4つの備えと窓口

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「もし家の中で倒れたら、誰が気づいてくれるのだろう」——一人暮らしの親を持つ方、あるいはご自身が一人暮らしの方が、ふとした瞬間に考えることです。エンディングノートや遺言のことは調べていても、この一点だけは手つかずのまま、という状態は珍しくありません。

この問題が扱いにくいのは、答えが「誰かに毎日来てもらう」しかないように見えるからです。子は遠方にいる、近所付き合いも薄い、そこまで頼める相手はいない。そう考えて止まってしまいます。しかし実際に必要なのは、毎日誰かが訪ねてくることではありません。

結論|「気づく経路」を2本、できれば3本つくる

結論から申し上げます。備えるべきは訪問の頻度ではなく、異変が起きたときに外部へ伝わる経路を、種類の違うものから2本以上持っておくことです。

経路には〈人〉〈機器〉〈サービス〉〈自治体の制度〉の4種類があります。同じ種類を2本持っても、共倒れになれば意味がありません。たとえば「近所の人」と「別の近所の人」は、どちらも相手の都合で途切れます。種類の違うものを組み合わせるのが要点です。

そしてもう一点。この備えは、要介護認定を受けていなくても、元気なうちから作れます。むしろ元気なうちにしか作れません。相談先は市区町村の地域包括支援センターで、費用はかかりません。

この記事でわかること

  • 自宅で亡くなった一人暮らしの方のうち、発見までにどれだけ日数がかかっているかの実数
  • 異変が外部へ伝わる「4種類の経路」と、組み合わせ方の考え方
  • 費用をかけずに作れる経路と、有料になる部分の切り分け
  • 地域包括支援センターに相談できる内容と、要介護認定が要らない理由
  • 緊急通報システム・救急医療情報キットなど、自治体の制度の調べ方

30秒でわかる|状況別・まず作る経路

状況まず作る経路
親が一人暮らし。子は遠方で年に数回しか帰れないサービス。配食など、定期的に人が訪れる仕組みを入れる
本人が「見守られる」ことを嫌がる機器。人が介在せず、生活の変化だけを検知する形から始める
持病があり、倒れる可能性が具体的に想定される自治体の制度。緊急通報システムの対象になるか市区町村へ確認
身寄りがない、頼れる親族がいない地域包括支援センターへ相談する。個別の事情に応じて制度を組み合わせる必要がある
何から手をつけるか判断できない同じく地域包括支援センター。相談は無料で、整理できていない段階でも構わない
すでに介護保険のサービスを使っている担当のケアマネジャーへ。既存のサービスに安否確認を組み込めることがある

数字で見る|発見までに何日かかっているのか

備えの必要性を判断するために、まず実態の数字を押さえます。ここは推測ではなく、公表されている統計で確認できます。

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自宅で亡くなった一人暮らしの方は年間76,020人

警察庁が2025(令和7)年4月に公表した令和6年中における警察取扱死体のうち、自宅において死亡した一人暮らしの者についてによれば、令和6年中の警察取扱死体204,184体のうち、自宅において死亡した一人暮らしの方は76,020体で、全体の37.2%を占めています。

年齢別の内訳では、65歳以上が58,044体。自宅で亡くなった一人暮らしの方の約76%が高齢者です。

4割は、4日以上経ってから見つかっている

この統計でもっとも重要なのは、死亡から発見までの経過日数です。

発見までの経過日数人数割合
0〜1日28,75637.8%
2〜3日15,42120.3%
4〜7日9,98713.1%
8〜14日7,5159.9%
15〜30日7,3969.7%
31〜90日5,1386.8%
91〜180日1,1651.5%
181〜365日3890.5%
366日以上2530.3%
総数76,020100%

※警察庁刑事局捜査第一課「警察取扱死体のうち、自宅において死亡した一人暮らしの者(令和6年)」より。割合は総数から算出。

翌日までに見つかっているのは37.8%にとどまります。4日以上経ってから発見された方が31,843人、全体の41.9%を占めます。1か月以上が経過してから発見された方も6,945人(9.1%)います。

この数字が示しているのは、亡くなった後のことだけではありません。発見までに4日かかる状態とは、「倒れて動けなくなっても4日間気づかれない状態」と同じです。

脳梗塞や骨折で倒れた場合、助かるかどうかは発見の早さで変わります。備えの目的は、看取りではなく助かる可能性を残すことにあります。

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「近親者のいない高齢単独世帯」が急増していく

国立社会保障・人口問題研究所が2024(令和6)年4月に公表した日本の世帯数の将来推計(全国推計)令和6年推計によれば、単独世帯の割合は2020年の38.0%から2050年には44.3%へ上昇し、2,330万世帯に達すると見込まれています。

65歳以上の方の独居率は、2020年から2050年にかけて男性が16.4%から26.1%へ、女性が23.6%から29.3%へ上昇します。さらに注目すべきは、高齢単独世帯に占める未婚者の割合です。男性は33.7%から59.7%へ、女性は11.9%から30.2%へ上昇し、国立社会保障・人口問題研究所は「近親者のいない高齢単独世帯が急増する」と指摘しています。

配偶者も子もいない一人暮らしが標準的な形のひとつになる、ということです。「いざとなれば家族が」という前提が使えない人が増えていきます。

気づく経路は4種類|組み合わせて2本以上にする

ここからが本題です。異変が外部へ伝わる経路には4つの種類があり、それぞれ弱点が違います。弱点の異なるものを組み合わせるのが、備えの基本形です。

種類具体例強み弱点
家族の定期連絡、近隣、民生委員、友人異変の中身まで判断できる相手の都合で途切れる。頼む側が遠慮する
機器センサー、電気ポット、スマート家電、通報ボタン相手に気を使わない。24時間動く検知するのは「変化」であって原因ではない
サービス配食、新聞・郵便の配達、宅配、訪問介護生活に必要なものと安否確認が同時に片づく頻度が週数回だと空白の日ができる
自治体の制度緊急通報システム、安否確認の訪問、救急医療情報キット費用が無料または低額。消防や救急とつながる市区町村ごとに内容と対象条件が違う

組み合わせの考え方

2本を選ぶときの原則は、「毎日わかるもの」と「異常時に強いもの」を1本ずつです。

STEP 1

毎日の変化がわかる経路を1本
機器(センサー等)またはサービス(配食等)。空白の日を作らない

STEP 2

異常時に人を呼べる経路を1本
自治体の緊急通報システムなど。本人が押せる形にしておく

STEP 3

駆けつける人を決めて、鍵の置き場所まで共有する
通報が届いても、家に入れなければ止まる

STEP 3を抜かす例が非常に多く見られます。異変を検知する仕組みと、実際に家へ入る手段は別物です。鍵の預け先、あるいは緊急時に開錠する方法を決めていないと、通報から到着までの時間がそこで消えます。自治体の緊急通報システムには、この鍵の扱いまで含めた運用を用意している市区町村があります。

間違えやすい4点|✕ではなく○へ

✕ 毎日電話するから大丈夫だと考える
 ○ 電話は本人が出られる状態でしか機能しない。倒れた直後こそ出られない

✕ 近所の人に「何かあったらお願い」と頼んで終わりにする
 ○ 何をもって「何かあった」とするか、誰に連絡するかまで具体的に決める

✕ 要介護認定を受けてから相談しようと考える
 ○ 地域包括支援センターは認定がなくても相談できる。元気なうちに行く

✕ 見守り機器を入れれば完了だと考える
 ○ 通知の受け手と、駆けつける人と、家に入る手段までを一組で決める

1つ目は特に見落とされます。定期連絡は「連絡が取れない」という事実によって異変を知らせる仕組みですが、次の連絡予定まで空白が生まれます。週1回の電話なら、最大で7日近い空白ができることになります。前掲の統計で4日以上が4割を占めているのは、この空白の長さと無関係ではありません。

費用の目安|0円で作れる部分と、有料になる部分

手段費用の目安備考
地域包括支援センターへの相談0円市区町村が設置。要介護認定は不要
民生委員への相談・見守り0円担当者は市区町村の窓口で確認できる
救急医療情報キット0円(配布している自治体の場合)持病・服薬・連絡先を筒に入れ冷蔵庫へ保管する仕組み
自治体の緊急通報システム無料〜月数百円程度対象条件・自己負担は市区町村により大きく異なる
配食サービス1食あたり数百円〜手渡しの事業者を選べば安否確認を兼ねられる
民間の見守りサービス月1,000円前後〜センサー型・訪問型・通報型で内容と価格が変わる
訪問介護(介護保険)原則1〜3割の自己負担要介護認定が前提。ケアプランに組み込む

※金額は2026年9月時点の一般的な目安です。自治体の制度は市区町村ごとに内容・対象・負担額が異なります。

表のとおり、最初の3つは費用がかかりません。「お金がかかるから後回し」という判断は、実際には成り立ちません。まず0円の部分を埋めてから、足りない部分に費用を充てる順序が合理的です。

よくある失敗3つ

1. 本人に相談せずに機器を設置して、反発される

見守りは「監視されている」と受け取られやすい領域です。カメラのように生活が映るものほど拒否感が強くなります。センサーや電気の使用状況など、生活の様子が具体的に見えない形から始めると受け入れられやすくなります。目的は「元気だとわかること」であって、行動を把握することではない、と説明する形が現実的です。

2. 経路を作ったあと、一度も試していない

通報ボタンを押したことがない、通知の受信設定を確認していない、鍵の預け先の電話番号が変わっている。こうした状態は珍しくありません。作った経路は、年に1回は実際に動かして確認してください。訓練していない仕組みは、本番で使われません。

3. 医療情報を本人しか知らないまま放置している

救急隊が到着しても、持病・服薬・かかりつけ医がわからなければ処置に時間がかかります。救急医療情報キットを配布している自治体があるのは、この空白を埋めるためです。配布がない地域でも、持病・薬・連絡先・かかりつけ医を1枚にまとめて冷蔵庫に貼るだけで同じ効果があります。

関連する制度・窓口

費用をかけずに使える公的な仕組みを整理します。どこから始めるか迷う場合は、最初の地域包括支援センターだけ覚えておけば足ります。他の制度もそこで案内を受けられます。

地域包括支援センター|最初に相談する場所

介護保険法第115条の46にもとづき市区町村が設置する、高齢者の総合相談窓口です。厚生労働省の資料によれば、保健師等・社会福祉士等・主任介護支援専門員等が配置され、総合相談支援、権利擁護、介護予防のケアマネジメントなどを担います。

厚生労働省老健局の調べでは、令和7年4月末時点ですべての市町村に設置されており、全国に5,487か所あります。身近な場所で相談を受け付けるブランチ、支所にあたるサブセンターを含めると7,374か所です。住んでいる市区町村に必ずある窓口だということです。

誤解されやすい点
介護保険という名前がつくため「要介護認定を受けてから」と考えられがちですが、認定がなくても相談できます。相談は無料で、内容が整理できていない段階でも構いません。「一人暮らしの親が心配だが何をすればいいかわからない」という相談の仕方で通じます。
窓口の場所は、市区町村名と「地域包括支援センター」で検索するか、役所の高齢福祉担当課で確認できます。

緊急通報システム|市区町村の事業

ボタンを押すと消防や委託先の受信センターへつながる装置を貸与する事業です。多くの市区町村が実施していますが、対象となる年齢や世帯の条件、自己負担額、鍵の取り扱いは自治体ごとに異なります。「一人暮らしで65歳以上」を条件とする例が多い一方、慢性疾患があることを要件に加える自治体もあります。実施の有無を含め、市区町村の高齢福祉担当課への確認が必要です。

救急医療情報キット|冷蔵庫に入れる筒

持病・服薬内容・かかりつけ医・緊急連絡先を書いた用紙を専用の容器に入れ、冷蔵庫で保管しておく取り組みです。救急隊が駆けつけた際、決まった場所から情報を取り出せるようにするのが目的です。配布している自治体では無料で受け取れます。実施していない地域でも、同じ内容を紙にまとめて冷蔵庫に貼る形で代用できます。

民生委員|地域の相談役

民生委員法にもとづき厚生労働大臣から委嘱される特別職の地方公務員で、担当区域の住民の相談に応じ、必要な支援へつなぐ役割を担います。任期は3年で、給与は支給されません。相談は無料です。担当者は市区町村の福祉担当課で確認できます。一人暮らしの高齢者の見守りは、民生委員の活動の中心的な部分にあたります。

孤独・孤立に関する国の窓口

孤独・孤立対策推進法が2023(令和5)年6月に公布され、2024(令和6)年4月1日に施行されました。地方公共団体には、関係機関で構成する孤独・孤立対策地域協議会を置く努力義務が定められています。

国は支援制度・窓口を検索できるサイトとしてあなたはひとりじゃない(内閣府)を運営しています。制度の全体像は内閣府「孤独・孤立対策」で確認できます。

身寄りがない場合に検討する仕組み

仕組みカバーする範囲
日常生活自立支援事業判断能力に不安が出てきた段階での福祉サービス利用援助、日常的な金銭管理。社会福祉協議会が実施
任意後見制度判断能力があるうちに、将来の支援者と支援内容を契約で決めておく
死後事務委任契約葬儀・納骨・行政手続き・住居の片づけなど、亡くなった後の事務。成年後見は死亡で終了するため、別に備える必要がある
身元保証等高齢者サポート事業入院・入所時の身元保証。契約内容と費用の確認が特に必要な分野

これらは本記事の主題である「倒れたときに気づく仕組み」とは別の備えですが、身寄りのない方の場合は同時に検討することになります。いずれも地域包括支援センターで相談の入口になります。

よくある質問

Q. 親が見守りを嫌がります。どう切り出せばよいですか?

「見守る」「心配だ」という言葉は、本人に衰えの指摘として届くことがあります。目的を本人側の利益として説明する方が通りやすくなります。たとえば緊急通報システムであれば「倒れたときに自分でボタンを押せば救急車が来る仕組み」であり、監視ではありません。また、配食のように生活の利便が主で安否確認が副次的なものから入る方法もあります。

Q. 子が遠方に住んでいます。何ができますか?

遠方であること自体は障害になりません。むしろ遠方の子がやるべきなのは、現地の経路を作ることです。親の住む市区町村の地域包括支援センターには、家族からの相談も可能です。帰省時に確認しておきたい健康面の項目は離れて暮らす親の健康チェック4項目|食事・聞こえ・足腰・口の衰えサインにまとめています。

Q. 配食サービスは安否確認になりますか?

手渡しで届ける事業者を選んだ場合は、実質的な安否確認を兼ねます。応答がなければ事業者が異変に気づく仕組みを設けている例もあります。ただし週2〜3回の配達では空白の日ができるため、それだけで完結させない方が安全です。介護保険や自治体の助成が使えるかどうかは配食サービスは介護保険で使える?自治体の助成・申請の流れと自己負担で解説しています。

Q. 民間の見守りサービスは、どれを選べばよいですか?

センサー型・カメラ型・訪問型・通報型で、できることと費用が異なります。本人の受け入れやすさと、通知を受ける側の体制で選ぶことになります。4つの型の違いと自治体制度との使い分けは高齢者の見守りサービスの選び方|4つの型と自治体制度の使い分けで比較しています。

Q. 一人暮らしの健康面で、先に見ておくべきことはありますか?

一人暮らしの高齢者では、食事が簡素になり栄養が不足しやすくなります。低栄養は筋力低下と転倒に直結し、転倒は「倒れて気づかれない」事態そのものを招きます。判断の目安は高齢者の低栄養|親の食事が心配なときに見る5つのサインとチェックリストを参照してください。夜間の状態が気になる場合は寝つきが悪い・眠りが浅い高齢者|光・体温・食事で整える順番と目安もあわせてご覧ください。

Q. 災害のときの安否確認も同じ備えでよいですか?

重なる部分はありますが、停電や通信の途絶を前提とする点が異なります。機器に依存した経路は災害時に止まる可能性があるため、別に考える必要があります。高齢者の災害への備え|避難の準備・安否確認・被災後の手続きリストで整理しています。

Q. 実際に亡くなった場合、残された側は何をするのですか?

自宅で亡くなり警察が関わった場合、通常の死亡とは手続きの流れが変わります。検案書の交付や警察での手続きが先に入るため、期限のある届出が後ろにずれ込みます。突然死・事故死のあとにやること|警察の手続きと検案書・期限順の一覧に期限順の一覧があります。

まとめ|0円で作れる部分から、今日決める

「倒れたときに誰が気づくか」は、家族の有無や近所付き合いの濃さで決まる問題ではありません。種類の違う経路を2本、そこに駆けつける人と家に入る手段を足す。それだけで、発見までの日数は大きく変わります。

今日から進める順番

  1. 市区町村の地域包括支援センターの場所と電話番号を調べる(0円)
  2. 緊急通報システムと救急医療情報キットの実施状況を市区町村に確認する(0円)
  3. 持病・服薬・かかりつけ医・連絡先を1枚にまとめて冷蔵庫へ(0円)
  4. 毎日の変化がわかる経路を1本入れる(配食・センサー等)
  5. 駆けつける人と、家に入る手段を決めて共有する
  6. 作った経路を年1回、実際に動かして確認する

1から3までは費用がかかりません。そして、この備えは判断能力と体力があるうちにしか作れません。先送りできる期限がない、という点が終活のなかでもこの項目の特徴です。

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出典

※本記事は一般的な情報の提供を目的としたもので、個別の制度適用を保証するものではありません。
※緊急通報システム、救急医療情報キット、配食サービスへの助成などの内容・対象条件・自己負担額は市区町村により異なります。詳細はお住まいの市区町村の窓口または地域包括支援センターへご確認ください。
※統計数値は警察庁および国立社会保障・人口問題研究所が公表した資料にもとづきます。割合は公表された実数から算出しています。
※制度の内容は2026年9月時点の情報です。最新の状況は各機関の公式サイトでご確認ください。

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